fate/sand rock   作:挨拶番長

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praymaker

11話 praymaker

 

1節 祈りの日

 

ユダは俺が寝ている時にいつも手を合わせ、何かを祈っている。

 

何を願うのか、何を想うのか。

 

それを知る由はなかったが、祈っている時の彼女の顔があまりにも綺麗で薄めで覗いてしまうことが多々ある。

 

たまにそれがバレてしまってユダは少し怒って俺の頬をつまむのだが、なんだかそれは悪い気はしなかった。

 

どうしてこの娘は俺を守ってくれるのだろうか。

 

何も無い、空虚で、つまらないこの俺を。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1943年 私はアインツベルン家に使い魔として再び命を得た。

 

正確にはイスカリオテのユダという概念を得たただの女性としての誕生はここだった。

 

誕生とは祝福されるもの。主からはそういう教えを得ていたが彼らは私を祝福することはなかった。

 

彼らが第1に私に掛けた声は

 

「失敗か。」

 

という言葉であった。

 

「失敗」の理由を問い詰めたが、彼らは一向に答えることはなかった。

 

使用人ならば理由を知っているだろうと思い、無理やり問い詰めたのだが目を開ければ使用人は無残にも死んでいた。

 

私の右手に握られた使用人らしきはらわたを見る限り私が殺したことが見て取れる。

 

殺意も悪意もなかったのだが、死んでしまった。と主には弁解したものの、聞く耳を持ってもらえず地下に幽閉されてしまった。

 

私は同じく幽閉されたそこである少年と出会った。

 

瞳には光がなく、身体は栄養失調からか極端に痩せ細っている。顔色は紫に近い白さを発しており、誰が見てもこの少年の健康状態は危険な域であるとわかった。

 

私は急いで暖かいスープとパンを用意させ、食べさせるように言ったものの聞く耳を持たなかった。

 

聞く耳を持たなかったのは少年であった。

 

私は少年に寄り添い、食べ物を口にしない理由を問い詰めた。

 

「可愛い坊や。貴方はなぜ暖かいスープと柔らかいパンを口にしないのでしょうか?」

 

私が差し伸べた手を弱々しく小さい手で乱暴気味に振り払うと少年は漸く口を開き、掠れた声で答えた。

 

「食べ物を食べても...味がしない。飲み物を飲んでも...潤いが感じられない。前は確かに感じれた焼きたてのパンの香ばしい香りは感じられない。僕はホムンクルスだ...お姉さんが心配なんてしなくても死んだりはしないよ。」

 

力無く笑う少年はグッタリと倒れたまま動きはしなかった。

少年の背中を優しく撫でながらわかったのだがこの少年、莫大すぎる魔力が心臓あたりに入っている。

 

なんだ...どういうことだ...?

 

私の疑問にマスターであるユーブスタクハイトはぶっきらぼうに答えた。

 

「その少年は簡単に言ってしまえば聖杯を保管しておく箱だ。英霊がこの戦いで死ぬたびにその少年の中に英霊の魂が満たされ自動的に聖杯が現れるという仕組みなのだ。」

 

_______嗚呼。なんという理不尽か。

 

商人の子として産まれ、良き師に出逢えたこの私とは程遠いほどにこの子は理不尽な仕打ちを受けている。

 

それも私が氷獄で過ごした何千分の一の時でだ。

 

救わねばなるまい。

 

ホムンクルスとして大人の欲望の為の役割として造られたこの哀れな子を

私の手で救済せねばなるまい。

 

私の背中に生えた漆黒の翼は莫大なエネルギー体である。

 

これを少年の中に無理やり注入する事で擬似的に少年の内部にある聖杯への侵入を試みた。

 

聖杯の中にあったのはだだっ広い花畑だ。

 

その中心にいくつもの棺桶があり、中でも棺桶が囲うようにして守っている蒼く、四角い箱がある。

 

______これが聖杯か。

 

触れようと手を伸ばしたとき、誰もいないはずのこの聖杯内部で声を掛けられた。

「やめときな。そいつは原初の火が誕生したときから地球を観測し続けた樹が汚染されたものだ。お前みたいな奴が触っていい代物じゃないぜ。」

 

男には顔がなかった。というよりは明確な人の形がなかった。

 

言うならば真っ黒な人の形をした影

 

声からして少年だろうか。いや...分からない。

 

「...成る程な。お前もアヴェンジャーか。なら俺の後輩だな?先輩って呼べよな。ククク...」

 

自分以外のサーヴァントが既にここに到着していることに対しての驚きと、目の前の影に対しての不気味さから来る恐怖。私はこれが混じり合い半ば混乱状態となっていた。

 

「そもそもなー...なぜお前がここに入れる?真名は?お前どこの英霊だ?」

 

「私は...ユダ。イスカリオテのユダ。」

 

「成る程。だいたい状況がつかめてきた。俺と同じ....反英霊の中でも極点の存在なわけか...色気とかそういうモンがないのは単純に女っ気がないからというわけじゃないんだな。よしよし、わかった。」

 

影は胸から黄金の杯を取り出し、黒紅い液体をボトルから注ぎ込んだ。

 

「この四角い箱...スゲーんだぜ。あらゆる人の祈り、願い、それら全てを観測し、再現することができる。いや...正確には今日までは出来たというべきかな。」

 

杯に液体を注ぎ終わると、影は私にそれを差し出した。

 

「俺はその四角い箱によると、本来はお前の位置だったらしい。というよりは大体の結末からしてオレがその役割らしい。でも今回ばかりはお前さんが無茶苦茶にする役割らしいぜ。」

 

この男のいうことがまるで意味がわからない。

その意味を汲み取り終わる前に影は杯の中の泥を飲むように急かした。

 

 

「こいつを飲みな。お前がその箱を救いたいと心より願うならば、聖杯はお前を選ぶだろう。さればイスカリオテのユダという願いはきっと、世界を瞬く間に汚染する。」

 

今私がやろうとしていることは、銀貨30枚で主を売ったことと、何の違いがあるのだろうか。

 

目先の事しか考えず、後のことは全く考えることがない。

 

_______嗚呼、だからこそ躊躇いは無い。

 

救済してやろう。

 

哀れな子の少年を。

 

呑み込んでやろう。

 

この世、全ての悪を。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

二節 軋む因果

 

俺はアヴェンジャーとセイバー陣営への接触を図ることにした。

 

高いステータスにハイランクの対魔力。落としておけるなら落としておきたい相手だからという単純な理由だ。

 

「アヴェンジャー、ここだ。」

 

貯金から捻出したゼファーで強力な魔力の残り香が検出された工場跡へと到着した。

 

アヴェンジャーは俺の呼応に従い、すぐさま霊体化を解き、ボディーガードのようにべったらと俺にくっつきながら周囲を警戒している。

 

「やはり来ると思っていたよ。藤木遊作」

 

何処からともなく聞こえた声は二階のエレベーター入口近くからのようだ。

 

声の主は、黒いトレンチコートに長髪の男性...セイバーのマスターの情報とはかけ離れている。

 

「誰だ。」

 

ハンドガンを男に向け、威嚇しつつ距離を取った。

 

ここまで周到に自分達に準備してきた相手だ。確実に「何か」ある。

 

「私はティエリア、32歳で独身だ。時計塔の非常勤講師をやっていてね...趣味は映画鑑賞...と言っても私が好きなものは大衆が好むような名作ではなくB級だがねハハハ...酒とB級映画...最高だと感じているよ。」

 

自分が向けている拳銃にはまるで興味がないとでも言うかのようにティエリアは自己紹介を始めた。

 

やはり舐められている。その悔しさから左手の拳を握りしめた。

 

「殺せ。アヴェンジャー。」

 

俺の命令に従い、アヴェンジャーは二階へ飛び乗りティエリアに回し蹴りを喰らわそうと飛びかかった。

 

が、ティエリアはアヴェンジャーの回し蹴りを柔らかい物腰でたっぷりと余裕を持って回避した。

 

アヴェンジャーは回避の隙に拳を背中に叩き込もうとしたものの、受け止められ関節を決められてしまった。

 

「まだ終わってもない自己紹介の途中に攻撃を仕掛けてくるとは...なんと失礼な奴だ。ええ...コホン。そしてランサーのマスターだ。」

聖杯戦争開催地域は粗方調べ終えたつもりだったが...ランサーのマスターらしき証拠はなかった。つまりこいつはここに来て初めて姿を現したということだ。

 

...ここで殺しておこう。

 

「さっさとランサーを出せ。」

 

こいつがランサーを出した瞬間。令呪を一画使って宝具でランサー諸共吹っ飛ばす。

 

それで俺たちの「死因」は消え去るはずだ。

 

「こいつがランサーを出した瞬間。令呪を一画使って宝具でランサー諸共吹っ飛ばす。

 

それで俺たちの「死因」は消え去るはずだ。」

 

_____ッ!? この男...!俺が今たった今考えていたことこいつは一字一句違わず言い当てやがった...!

 

「と言ったことを考えてるんだろう?安心したまえ。私は君たちに危害を加えるつもりはない。私はね、終わらせに来たんだ。」

 

終わらせに...?まさか...?

 

 

「私は聖杯戦争の負の連鎖を終わらせに来た。それが目的で参加したのだ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今の子供たちは知らないおじさんにはついていくなと教育される。

 

そしてその教えを大半は忠実に守っていることだろう。守っていると信じたい。

 

俺は知らないおじさんについて来てしまった。

 

アヴェンジャーも知らないおじさんから貰ったキャンディーを手にしてからむき出しだった警戒心はどこへやらという状態である。

 

この人すごい舐めてるよ。美味しそうにすごい舐めてるよ。

 

「キャンディー気に入ってくれたようだね...おじさん安心したよウン。」

 

「おじさん俺にはなんかイカすプレゼントはないのか。」

 

強請ればなんか貰えるかも...という淡い期待でジョークを言ってみたのだが、このおっさんは聞こえていないかのようにシカトを決め込んだ。殴ろうかな2発くらい。

 

「聖杯戦争を終わらせたい...私はこれに関しては大真面目に考えている。そして今大真面目に協力者を集めている。」

 

「今何人協力者がいるんだ?」

 

「HAHAHA!0だ!」

 

「帰っていいか?」

 

「主よ。話を聞いてあげなさない。追加のキャンディーが貰えるかもですよ。」

 

「ウン。お前にな?俺は多分貰えないけどな?いや別に欲しいわけじゃないんだけどね!?」

「何だゆうさく君、キャンディーが欲しかったのか。欲しいなら欲しいって言えばいいのに。」

 

「本気で殴るぞ。と言うか俺たちはそもそも協力する気なんてないし...」

 

俺の微かな抵抗もむなしく、なんやかんやでオッさんに協力することになってしまった。もういいか。めんどくさいし。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ACT2 苦難

 

よく分からない即死(原因は自分)した眼鏡のおっさんに召喚され、

 

マスターはそこらへんの野良犬に設定されてたことが発覚した上に、

 

マスターの親権をホームレスと争い敗北。

 

犬の乏しすぎる魔力供給に死にかけていたというのがジョンハンターの三日間である。

 

ここまでの地獄は使えない上に愚痴を聞こえる距離で滝の様にで放ってくる職場で働いて以来だ。

 

いや、死骸を集めてることを近所のガキに馬鹿にされて近所関係が悪化して以来かな...?まあいいや

 

_________ともかく魔力だ。魔力がいる。

 

霊体化というシステムがあるにもかかわらず、なんか身体がスースーするという理由で霊体化したくない捻くれ者の自分には魔力が必要だ...!

 

その為にはあの犬をホームレスから取り戻さねば...!

 

「まだいるの君?」

 

この社会のゴミどもに除け者にされる屈辱...!このジョンハンターの尊厳かつ偉大なプライドには少々効くようだ。というかめっちゃ効くわ。ぶっ殺していいか?

 

しかしここで暴力に訴え、解剖してしまえば文明人である意味がない。

 

何より魔力の無駄だ。

 

______考えろ。ジョンハンター...!

 

お前はどんな窮地でも自らを救い続けた男だろうが...!

 

なんか思い付け...!あっ、そうだ。

 

「...分かりました。犬...いえオルガちゃんのことは諦めます。私はここから退散しようと思います。」

 

ホームレス達は漸く諦めたか、と言ったような気が抜けた顔を仲間同士で交換し合っている。

 

「そしてこの私から...一つここの皆さんに提案があります。」

 

「なんだまだあんのか?あってもなくてもさっさとここから消え去れゴミ野郎が。」

 

このゴミ野郎からの辛辣な言葉に、血管がはち切れそうなほどに腹が煮えくり変えったが、拳を握り締めることでなんとか怒りを鎮めた。

 

「この橋の下より住みやすい家...欲しくないですか?」

 

ホームレス達のどよめきは一層強まった。

 

END




欠片の男の手記

祈りの樹は、順調に果実を付けて成長を遂げている。

後は器次第という段階だ。

後は世界を征する槍と、漆黒の堕天使が揃えば役者は揃う。

良い。とても良いな。

魔術師達が目指す第三魔法の成就なんかよりもっとシンプルで単純明快な方法で再編に到達できる。

ああ。早く見たい。

とても平和な世界が。

戦争が、ない世界が。

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