8話
「シロウ構えろ」
イオニスは魔術でコーティングされたサーベルをゆったりと構える。
「これは誅伐だ」
ふぅん...なるほど...流石にナイトの称号を持つだけはあるな。
黒鍵では歯が立たなそうだ。
「最初に言っておくよイオニス。お前はオレを舐めすぎだ」
黒鍵をイオニスに向けて発射する
「はぁ?」
イオニスはこれを華麗に避けてみせた。
だが黒鍵は囮。
オレはこの好きに集中力を高めた。
魔術回路に電撃が走る。
俺が今から行うのは英雄の宝具の投影でもありながら
ーーーモルガンという人間の投影だ。
「I am bone of my sword...」
少年の両手にはふた振りの剣が現れた。
無を超える宝剣《アロンダイト》
「ランスロットとアーサー王の剣だと...!?馬鹿なッ...」
こう言いながらもこの時イオニスは慢心していた。
神父風情に負けるはずがないと。
その慢心がいけなかった。
「なッ!?」
人間とは思えないほどのスピードでシロウが間合いを詰めてきたことにイオニスは対応が遅れた。
一撃目。シロウはアロンダイトを振るう。
イオニスはこの一撃に身体を翻し、なんとか対応しようとした。
が、シロウはイオニスにアロンダイトをぶつける前にアロンダイトをしまい込んだ。
そう。シロウはこのフェイントのためにわざわざアロンダイトを投影した。
アロンダイトは名剣の中の名剣だが魔力消費が激しく、尚且つとても大振りであるこが弱点だった。
故にランスロット本人以外が使うにはフェイク以外の使用方法がないのだ。
二撃目。カリバーンはイオニスの脇腹を狙う。
イオニスは即座に構え、
「
空気の圧縮弾をシロウに放つ。だがしかし、
「I am bone of my sword...!」
シロウから生み出された風の結界はシロウの身体に弾丸が届くのを許さなかった。
そのままシロウはなんとカリバーンを投げ捨てた。
シロウはグッと拳を握りしめ、
イオニスの胴体に思い切り拳をねじ込んだ。
「ぐはァ!?」
イオニスの肋骨は完全に砕け散り、身体の中で骨が四散する。
拳を身体に捻じ込まれながらイオニスは半ば驚く。
拳一発ごときで人体を破壊する技など聞いたことがなかったからだ。
ーーー八極拳。
イオニスの肉体を破壊したのはその技であった。
だがシロウの八極拳は武術としての八極拳の型を取らない。
我流で人体を適切に破壊する為の武術として変質していた。
シロウは魔術師としては一流ではない。
魔術刻印も優秀とは言えず、特別に何か専門の魔術も習得しているというわけでもない。
だがシロウが戦闘面においては魔術師を遥かに上回る実力を持つ。
一つは我流八極拳。
自分の師、言峰璃正から学んだ八極拳を自己流に改造した究極の人体破壊術。
一つは無限の剣製。
キャスターの心を投影することにより、 キャスターが生前見た円卓の騎士の宝具を自由に投影する。
シロウはこの2つを組み合わせることにより魔術師に対し、幅広い戦略を取ることを可能にしている。
器用貧乏ならぬ、器用万能。それがコトミネシロウという魔術師であった。
ふっー。ふっー。とまさに虫の息とでも形容できそうな呼吸をしながらイオニスはシロウに問う。
「なぜ代行者たるお前が...なぜ聖杯大戦の管理者たるお前が...!俺を謀殺しようと企む...!?なぜだ...!?」
「この聖杯大戦の本当の管理者はオレじゃない」
「まあそいつが誰かすら知らずお前は死ぬわけだがな」
「ではアサシントドメを頼みますよ」
「御意。」
アサシンはゆったりとナイフを構えた。
「アサシン...!?なぜだ...やめろ!!!令呪を持って!!!命ずる!!!霊体化せよ!!!」
「...」
令呪による命令はまるで効かず、アサシンはゆったりとイオニスの方向に向かう。
「アサシンは既にあなたのサーヴァントではありませんよ。故に令呪による執行は無意味です。」
「おやすみイオニス。」
イオニスの胴体と頭は一瞬して別たれた。
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イオニスとの戦闘の3時間前のことである。
異様な形状をした小振りのナイフをシロウはハンカチで拭いていた。
「シロウなんですかそれ?」
レオは不思議そうに尋ねた。
「
「どんな宝具なんです?」
「簡単に言えば凡ゆる契約を断ち切る事が出来るんです。聖杯戦争というルールに依存する戦いでは抜群の効果を発揮するってわけですよ。」
「なるほどそれを使ってアサシンをこちら側につかせるというわけですね。」
「ええ。まあ強制的にやっても、こちら側に完全についてくれるかは疑問でしたので、条件付きの合意でやりましたがね。」
「条件?」
「アサシンに彼の加護を受けさせるという条件ですよ」
「ああなるほど。」
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「ここはどこなんだ?」
アサシンがおそるおそる尋ねる。
たくさんの本棚に囲まれた部屋の中に玉座があり、
そこには仮面を被った男が仰々しく腰をかけていた。
「大司祭。例の人物を連れてきました。」
「うむ。まあ座りなさいよアサシン君。色々質問とかしなきゃいけないからさ」
「は、はぁ...」
何もないところから現れたパイプ椅子に驚き呆れながら、アサシンは腰掛ける。
「一つ目の質問〜!!!趣味は?」
如何にも大魔法使いの様な見た目をしといてまさか趣味を聞かれるとは思わなかったのか、アサシンは反応が遅れる。
「趣味は...音楽でしょうか...モーツァルトの曲を弾くのを特に気に入っています。」
「ふむふむ...」
大司祭と呼ばれる男は必死にメモを取っている。まるで記者みたいに。
「ではでは2番目の質問〜!!!貴方がもし住むとしたらどこの国が良い?」
国...?なんだ意味わからんという感想を得たのだろう。反応がまたもや遅れる。
「やはり自分の出身地がいちば...」
「ストォォォォォォォッッップッッッ!!!それはダメです!!!ズバリ貴方の理想をお願いしますッッッ!!!」
アサシンの答えを遮るようにして大司祭はハリセンでツッコむ。
それにアサシンは引きながら、
「は、はァ...理想ですか...ロンドンとか...でしょうか...」
「ロンドンッッッ実に素晴らしいッッッ!!!」
大司祭は興奮しながら玉座から飛び降りる。
「では我が奇跡をお見せしようッッッ!!!」
大司祭は手に持っていたメモ帳をビリビリに引き裂きながら詠唱を始めた。
「これより我々が行うのはッッッ!!!真実の腐敗ッッッ!!!虚構の勝利ッッッ!!!」
「第1宝具展開ッッッ!!!
「う、ウワァァァァァァ!!!!やめろォォォォォ!!!!」
アサシンはノイズのような黒い塊に包まれる。ノイズはアサシンの霊基を激しく蝕む。
「頑張って堪えてください。貴方は
「そうッッッ!!!
ーーーノイズの侵食がおわり2時間ほどたった頃。その地に立つのは私が知っているアサシンではなかった。
「題名はそう。」
「死曲のハサンとでもしますか。」
黒いコートに琴の形をした弓を持ったアサシンは琴をかまえる。
「では曲を奏でましょう。」
「私の祝福されぬ生誕を。」
END