10話 GARDEN OF AVALON
記憶1
ここはどこだろうか。
うっすらわかるのは街自体が赤く焼けていることだけだ。
それに私という存在自体が悪意に染まっているような気がした。
ーーーああそうか。
この街を燃やしたのはきっと私だ。
三つばかりの赤子が脳液を垂れ流し、野垂れ死んでいるのをふと見た。
これも私の仕業か。
血を見て思い出した。
エミヤシロウ...ふとその名前が浮かんだ。
どこだ...?エミヤシロウはどこだ?
私は殺さなければならない。
私は彼を殺さなければならない。
善に溺れたアレは気に食わぬ。
非常に気に食わないのだ。
ーーー鋭い視線を感じた。
嗚呼...アレは騎士王...アーサー...
誇り高き剣士の英霊...
ああっ!?眩しい!?その光は...
やめてよ。
痛いよ。セイバー。
身体が光で焼けてとても痛い。
私の可愛い手が。
私の可愛い足が。
私の可愛いアジ=ダハーカが。
死んじゃうよ?
だからやめてよ。
ああッ!?
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ...
痛いよセイバー...
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記憶2
私のマスターエミヤシロウは人類を否定する獣の攻撃を受け致命傷を負った。
私は彼の名を必死に呼んだ。
私は愛する人の名を必死に叫んだ。
だが、私の声はどうやらハッキリは聞こえないらしく、ただシロウは目を細め、微笑むばかりであった。
アヴァロンの加護すら否定する獣の宝具は彼の身体を蝕んでいる。
シロウは最後の力を振り絞り私に告げる。
「セイバー...頼む...オレの義妹を救ってくれないか...義妹は...イリヤは...家族なんだ...オレの...」
「シロウ...!シロウ...!」
嫌だ...もう大事な人がいなくなるの
は...ここで失ってしまったら私は...!
「セイバー...愛し...て...」
シロウは息を引き取った。
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記録
著 ある童話作家
女の話をしよう。
女は産まれた時からヒトではなかった。
産まれた時既に女の役割は決定付けられた。
それはこの世全ての悪の写し身。
これが女の役割であった。
だが不幸にも女は自分の役割を知らなかった。
役割を知らないために罪を背負った。
罪の名は欲望。
女の欲望は世界を蝕むだろう。
なにせ欲望に勝てる人間などほんの一握りなのだから。
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物見の台からの記録
[やぁ目が覚めたようだね?]
[うん。察しの通りキミは死んで、ここ理想郷へ流れ着いた。]
[でもキミはアヴァロンの加護により肉体は死んでも、精神は燃え尽きなかった。精神だけは生きたままここに辿り着いたんだ。]
[うん。良い眼だ。アルトリアが惚れただけはあるね。]
[そんなキミにお兄さんから残酷な試練を与えよう。]
[キミにはもう一度生まれ変わって、新たなる別の人間として、火星の聖杯戦争に参加してもらう。]
[そこでキミのやり残したコト。アルトリアを救うコト。両方やり遂げるんだ。]
[勿論代償は払う事になる。キミはエミヤシロウでは無くなる。]
[キミはエミヤシロウであることを失うんだ。それでもいいかい?]
[うん良い返事だ。ではこれを持っていくといい。]
[このペンダントは君を救ってくれる英霊を呼ぶ触媒になる。ただし、召喚されるのは特定の誰かってわけではないからね。アーサー王伝説にまつわる誰かが召喚されるはずだ。]
[まあ一部の人間を除いたら君の力になってくれると思うから安心してくれよ。そこ!そんな不安そうな顔をしない。]
[では無銘の男に武運あれ]
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モルガンの記録
私のマスターは私を召喚した時点で瀕死だった。
すぐさま治癒を行うが、呪いを受けており治癒を肉体が受けつけない。
私はこれが反転の呪いと見抜くのには時間はかからなかった。
それと同時に私が呼ばれた理由もわかった。
この子を助けられるのは全ての英霊の中で私しかいないからだ。
奪われし理想郷
私の宝具は、今の彼には最適と言えた。
彼はすぐさま息を吹き返す。
「貴方がキャスターです...か...?」
宝石のような瞳は涙を浮かべこちらを見つめる。
「マスターじっとしていてください。まだ完全に治癒は」
言いかけた途端に突然、手を握られた。
「手、とても暖かいですね。」
私はおどろいた。
今まで出会った人間の中で初めてだったからだ。
私の手を「暖かい」と言ったのは。
もちろんそう感じる理由は知っていた。
この男の体は死体に近い状態であるため体温が非常に低く、私と比べれば暖かいと感じるのは当然だった。
だがそれでも嬉しかったのだ。
私を振り向かせるための言葉でもなく、
私の肉体を貪る為の口実でもなく、
私の手を純粋に暖かいと感じてくれる。
私を本当の意味で必要としてくれる。
それが嬉しかったのかもしれない。
私は両手でその手を握り返す。
「キャスターどうして...泣いているのですか...?」
雫は頬を伝い、地に落ちる。
降り注ぐ雨は夜が明けるまで止むことは無かった。
END