4話 失墜の日
1節 「素敵な解剖室」
「おはようございます。久世首相。」
7月27日深夜、スケジュールの合間を縫い腫瘍摘出の為に私こと久世橋通は手術に望んだわけだが、
______なんだか妙だ。
私は目の前に立つ赤髪の外人に執刀を頼んだわけではないし、なによりここは手術室ではない気がするのだ。
「...誰だね君は。」
「現代の医学はとても進んでいて俺感動してるんですよ...特に衛生面。俺、その点については本当に尊敬してます...。」
男は答えずに話を逸らし出した。
マズイな...この私ともあろうものが医療詐欺に引っかかるとは...後で秘書をしっかりと叱っておかねば。
「早くここから出したまえ。私を誰だか分かっているんだろうな?」
「知ってますよ?日本の元・首相でしょ?」
元...?なんだそれは...
私の反応を見て赤髪の男はテレビを付けた。
「久世首相が今朝未明、何者かによって殺害された事件について新しい情報が...」
!?!?!?!?...私が殺害...?どういうことなのだ...?
「貴方は世間的にはもう死人なんです。社会的な死人は日本ではどういう扱いを受けるかは勿論ご存知ですよね?」
冷や汗がスッーと背中を走っていく。
社会的な死人は...
「人権がないんです。貴方は今死体と同義の存在なんですよ。」
絶望、とはこういう感情か。
恵まれた環境だった故にあまり感じたことはない感情だったが、
こうも苦しく、胸が締め付けられるとは
「ちなみに貴方の付きの医者は肺ガンと診断されていたようですが肺ガンではありません。断言します。貴方は結核腫です。」
「けっかくしゅ?」
「盗んできたカルテには手の痺れが取れない、肺に影、風邪が治りづらい、体にぽつぽつと妙なアザ、とあります。確かに前者二つは肺ガンの特徴そのままですが体にぽつぽつとアザが出来ていることと、免疫力の低下による風邪の発症、細胞数の増加から見て結核腫で間違い無いです。恐らく前二つで早急に肺ガンと判断したか、或いはわざと肺ガンと決定付けて手術台に乗せ医療ミスで殺す予定だったか...」
ヤブ医者かと思い込んだが、飛んだ手違いだったようだ...この男は割とマトモな医者だ。
「では君はその結核腫を治してくれるのだね?」
「ハハハ!!!まさかぁ!そんな訳ないですよ!俺は今から死体を解剖するんですから!」
解剖か。なるほどそうかそうか。
...解剖?
「さっき言ったじゃないですか。貴方は今死体と同義の存在だって。人権なきゾンビなんです。俺は今から死体を解剖する作業に入るんです。」
_____あ。
「いや〜なかなか歴史的瞬間ですよね生きた死体を解剖する日が来るなんて。」
「やめろ!ここから出せ!早く!!」
「暴れても無駄ですよ。ここは俺の宝具内ですから。そんじゃ!そろそろ始めようか!カモン!俺の可愛いコレクション達!」
このヤブ医者の呼び声で現れたのはナース服を着た2mほど骸骨であった。
「それじゃあ今から解剖を始める。」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「結核腫患者の骨...まあまあだな。」
キャスターは透明な瓶にカランと骨を入れた。
「マスター。解剖終わりました。はい。はい。今すぐそちらへ向かいます。」
電話を切り、キャスターはスマートフォンとメスを机に並べまじまじと見つめた。
「便利な世の中になったなぁ...」
解剖者はウットリとしながらメスを丁寧に拭うのであった。
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2節 「ウィンチェスター」
ここ最近私たちは定期的に定食屋に行くのだが、私のマスターはいつも同じ物しか頼まない。
「切り刻んだ沢庵をお茶漬けに振りかけたやつを頼む。」
「いつものですね。はいよー。」
新撰組の問屋でも土方さんがこうやって頼んでいたのを思い出した。
本当にあの人は死ぬ程沢庵食べてたなぁ...
沢庵食べ過ぎて体中が黄色くなるんじゃないかと思っていた。
「どうした、アサシン。お前もこれを食べたいのか。」
「いや!そんなことはないです!決して!」
キッパリ返事をしておいた。あまり沢庵は好きな方ではない。
「うむ...そうか...」
キッパリ返事をしすぎたせいか落ち込んでしまった...なんかすいません...!
「現在私の部下の者達が東京中を嗅ぎ回っていてな。部下の1人が耳寄りな情報を拾ってきた。」
「耳寄りな情報とは?」
「八王子市の美術館近くにある廃校近くで莫大な魔術反応が検出された。サーヴァント、魔術師が動いた可能性があるとのことだ。今日我々は直に其処に足を運ぶことになる。」
「初陣だ。気合いを入れていくぞ。」
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「顔を全国に知られている六王紫苑ともあろうものが変装もせず堂々とこんな所に来ていいのか?」
ライダーと六王は魔術反応があった廃校へ来ていた。
「六王紫苑の最大の売りは化粧技術にある。下手にマスクやサングラスをするよりは髪型を変えて化粧していったほうがバレにくいのよ。見ろ、ライダー。」
六王は床にこびりついた血の跡を舌で舐めた。
「...女の味だ。」
「汚い上にキモいんだが。」
「しかも17歳から20歳辺りの味だな。間違いない。ファイルにあったセイバーのマスターだ。」
ライダーは三歩ほど六王から距離を取った。
ドン引きしたからではない。
________「気配」を感じたからだ。
「紫苑...いるぞ。」
「マジか...あんまタイマンは得意なタイプじゃねえ。ライダー、編んでる間に守ってくれねえか?」
並々ならぬ殺気...それも1つじゃない...
どこだ...殺気を放っている源の場所は...
入り口...?出口...?
いや...。
_______「上」だ。
「でぇりゃァァァァァ!!!!!」
日本刀を持った剣士が体育館の「天井」から飛び降り、斬りかかって来た。
ライダーは倚天剣を構え、受けの態勢に入る。
______その隙を突かれた。
ドンッと小気味良い発砲音が聞こえた頃には遅かった。
ライダーの倚天剣を持つ手はウィンチェスターライフルで撃ち抜かれてしまったのだ。
アサシンの袈裟斬りは迷い無くライダーの首を断ち切らんと一閃する。
ライダーは堪らず、体を捻るも剣士の剣は急所を逃がすことはなかった。
「がはァッ...」
一閃を受けたライダーは血を噴き倒れてしまった。
「終わりです。六王紫苑。」
アサシンは顔についた返り血を拭いながら、ゆらゆらと六王紫苑を斬らんと歩き出すが、その足は
ライダーによって力強く掴まれた。
「俺を一回殺すとはなァ...褒めて使わしてやるよ...。」
掴まれた脚はライダーの怪力によって思い切り引っ張り上げられ、剣士は宙へ吹き飛んだ。
「皇帝特権...てのはマジで便利だな。戦闘続行スキルすら獲得できちまうとは...中々にサーヴァントの身体も悪くない...!」
「...ッ!」
復活するのが予想外だったのか、剣士は着地した後、じりじりと後退りをし始めた。
「俺を愉しませてくれよ...!サムライ!唸れ...倚天剣!」
ライダーの猛反撃を剣士はギリギリで防ぐものの、1発1発の威力の大きさにアサシンは防御に徹するのが精一杯であった。
アサシンは攻撃特化のサーヴァントである。
どんな敵であろうとも彼女の一閃は平等に命を刈り取るが、いざ反撃を食らって仕舞えばジリ貧になってしまう。
故、分かりやすく強く、分かりやすく脆い。
その様子を天井から見守っていたマスターは空かさず、スモーク弾のピンを抜いた。
アサシンとライダーが対峙する方向へぽいっと投げると狙い通り煙幕が体育館を包んだ。
「ククク...煙幕か...良いだろう。逃げるチャンスをくれてやる。」
「...だが絶影の健脚から逃げられるかな?」
「カッコつけてるとこ悪いが俺たちも逃げるぞ。アイツらに俺の居場所を通報されたら堪らんからな。」
「...。」
カッコつけたのが空振ったことがあまりにも恥ずかしかったのか、顔を赤くしながら黒馬・絶影へと跨った。
「紫苑は後で打ち首だから。」
「なんで!?」
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3節「アポカリプトの夕陽」
「お目覚めでしょうか。主よ。」
また俺はアヴェンジャーの太腿で寝ていたようだ。
「すまない。また迷惑をかけてしまった。...ってアレ?」
目の前にある顔は赤い髪の美人ではなく、銀髪の少年であった。
「声似てました?あはは...」
「...何の用だ。」
「勿論貴重な助言タイムですよ。」
「...」
研究所でのこいつの助言...それは俺を死の運営から遠ざけた。
信頼しない理由はないが...何か胡散臭い。
...そうだ。
俺から何か質問してみるのはどうだろうか。
...そう。例えば...
「俺たちが勝ち残る方法を教えてくれ。」
「ああ、ありませんよ。貴方達マジで死にますから。」
コイツ...あの神父と同じくキッパリと言いやがったな。
「どういう風に死ぬんだ?」
「アヴェンジャーは槍で貫かれて死にます。その時に貴方は眼を失います。眼を失ったことが原因で貴方は転落死で息絶えて終わり。呆気ないでしょ。意外と、」
槍で貫かれて死ぬ。ここもあの福音と同じだが、
俺は「眼」を失う...?
「俺たちがそれを回避する手段は無いのか...?」
「定められた運命に多少抵抗しても詳しい状況が少し変わったりするだけで何も意味ないですよ。アヴェンジャーさんが槍で貫かれて、貴方の眼は無くなり、死ぬ。これは絶対に覆ることはないです。」
自分が死ぬ。
こうもキッパリと告げられてしまうと何だか実感が湧かない。
「だとすればお前の役割はなんだ?俺を死の運命から遠ざける...とは違うようだが...」
「僕は貴方の最期を見届ける役です。氷獄で血までもが凍り果て、魂が朽ちる。その時を見守るまではお守りをしてやろうって魂胆ですよ。」
「...すまん。意味がわからん。」
「ははは...そうでしょうね。ああ、そうそう助言だった。」
「アヴェンジャーさん探しに行った方がいいですよ。彼女、自分自身のスキルに抵抗して自害しようとしてます。」
自害...!?
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俺は銀髪の少年に告げられたアヴェンジャーの居場所を反芻しながら走った。
「アヴェンジャーのクラススキルには復讐者というスキルがあります。このスキルは少々特殊でしてね。簡単に言えば復讐者であることを霊基に刻まれ、強要されるというスキルです。しかし彼女は何故か復讐者のクラススキルに抗う要素があるようです。恐らく彼女のバックボーンに何かあったのでしょう。復讐者であることを拒む理由を探る。漢の見せ所ですよ。」
無茶言うんじゃない...!
銀髪の少年が言う通り確かにアヴェンジャーは砂浜にいた。
ここから見る限りは自害なんてしなさそうだが...
「どうかされましたか、主よ。」
「心配になって走ってきたんだ。」
「成る程...そうですか。」
アヴェンジャーは明らかに様子がおかしかった。
胸に突き立てようとでもしたのかナイフが逆手で構えられている。しかし、もう片方の腕がナイフを持った腕を牽制し、離さない。
「何してるんだ...?」
「主の御察しの通り、私は自害を試みていました。しかし如何やら私の貧弱すぎる力では霊基の強要には打ち勝てないようです。」
「...教えてくれ。アヴェンジャー...」
「お前は一体誰なんだ?」
______紅の月は男女を染めた。
海風が乾き、傷ついた心に沁みる。
女は突き立てようとしたナイフを乱暴に投げ捨て、ユウサクの方を真っ直ぐに向いた。
「________私は
「世界で一番悪い人。」
そこには俺を救ってくれた修道女の姿はもう無かった。
漆黒の二翼、血濡れの牙、悪魔の角、
俺の目の前に立っているのはきっと、
ただの獣だ。
END
キャスターさんちの今日のご飯 4話
キャ「アーチャー見ました?俺の活躍、カッコよくないですか?」
アー「黙れよ。青二才。」
キャ「すいませんでした。」
シム「すっかり尻に敷かれてるなぁキャスター」
キャ「アットホームな職場って感じで最高っすホント」
ひよこ「石川来ない?」
銀「おせんべ工場来ない?」
キャ「どちらかというと工場かな...労災でぐちゃぐちゃになった骨にまあまあ興味が...ってなんでいるんですか貴方」
銀「余りにも本編が更新されなさ過ぎるから遊びに来たのじゃ」
キャ「お土産に日本首相の骨とかあげますよ。」
銀「いらねー。のじゃ。」
キャ「どうしてこうも女性陣の当たりが厳しいんでしょうね。来世はイケメン俳優とかに生まれ変わりたかった。」
シムラ「32アイスクリームうまっ!」
完