fate/sand rock   作:挨拶番長

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英霊召喚

2話 英霊召喚

 

1節 「擬態」

 

〜2ヶ月前の燈〜

 

「失礼します。ティエリア先生。」

 

「...座りたまえ。燈。なぜ私が君を呼びつけたかわかるか?」

 

眉間に皺を寄せ、我が師であるティエリアはじっと私を睨みつけた。

 

「卒業式の風景をインスタに乗せたことでしょうか...?」

 

「はぁ...そんなわけがないだろうが。燈。またヤバいことに首を突っ込んだな?」

 

ぎくっ...バレてる...!

 

「日本のトーキョーで聖杯戦争がアンダーグラウンドで行われようとしている。...お前それに参加するつもりだったな?」

 

「...はい。」

 

なんでもお見通しだなぁ...この鬼教師は...仕方ない。アレ使うか。

 

「はぁ...なんて事だ...これがエルメロイ2世氏に知れたら...」

 

「いいか!!!聖杯戦争に参加するってのはなぁ!全国の魔術師から注目されるってこと!!!即ち命を狙われるってことなんだぞ!?ホルマリン漬けにされたり解剖されたりしても知らねえからな!?と!に!か!く!だ!反省文とエルメロイ2世氏にアポを...」

 

「擬態の魔眼」これが私の最大の武器である。

 

対象と瞳を合わせることにより私の都合の良い擬態した事実を幻覚させる。

 

私とお話ししてるつもりのティエリア先生には悪いけど...

 

ごめん!!!!!

 

彼女の学び舎であった時計塔を背に、燈は空港へ向かった。

 

勿論行き先は戦いの地「東京」である。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ただっぴろい倉庫...元々はある小学校の体育館であったという。

 

この廃墟に私は魔術陣をセットしてある。

 

今夜の深夜0:00を後は待つのみ。

 

0:00になったら詠唱開始だ。

________よし。

 

 

「素に銀と鉄

礎に石と契約の大公

降り立つ風には壁を

四方の門は閉じ

王冠より出で

王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ

繰り返すつどに五度

 

ただ満たされる刻を破却する

________告げる

汝の身は我が下に

我が命運は汝の剣に

聖杯の寄るべに従い

この意この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に

 

我は常世全ての善となるもの

我は常世全ての悪となるもの

 

汝 三大の言霊を纏う七天

 

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

触媒であるエクスカリバーを中心に、蒼い閃光が私を包んだ。

 

眩しい...眼が灼かれてしまいそうだ。

 

閃光は徐々に勢いを失い、

 

やがて収まった。...ってアレ?

 

何も起こらない...おかしい...

 

最強のクラスであるセイバーが本来なら此処に来る筈なのだが...

 

「もしかして失敗しちゃった...?」

 

アレ...でも、「触媒」がいつの間にか消えている。

 

どういうことなんだろう...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

2節 「血の盃」

 

「先日、所属事務所から人気テレビタレントの六王紫苑さんが現在行方不明になっていることが記者会見で発表されました。警察の捜索も既に始まっているとのことですが、捜査は難航を極めており...」

 

「へへへ...六王紫苑はここですよっと...」

 

暗い部屋の中の一点の灯りの前で男はぼそり、と独り言を呟いた。

 

男もまた魔術陣を部屋にセットしていた。

 

しかしこの魔術陣には他とは違う特徴がある。

 

男が殺し、採取した「女の血」で描かれているのだ。

 

「韓国の売春王から盗んだ<英雄達の盃>こいつを使って誰が召喚されるかはお楽しみってとこか...」

「さてさて...召喚と行こうか。素に銀と鉄

礎に石と契約の大公

降り立つ風には壁を

四方の門は閉じ

王冠より出で

王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ

繰り返すつどに五度

ただ満たされる刻を破却する

 

_____セット。

汝の身は我が下に

我が命運は汝の剣に

聖杯の寄るべに従い

この意この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に

 

我は常世全ての善となるもの

我は常世全ての悪となるもの

 

汝 三大の言霊を纏う七天

 

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。」

 

血の魔術陣を中心に赤い閃光が男を包んだ。

 

赤い閃光は衰えることなくその光を増し、エーテルはやがてヒトの形となった。

 

_______赤い光の中から現れたのは紅の瞳をした東洋人の女であった。

 

「私の眠りを妨げた上に、使役しようとな?余程首を刎ねられたいようだ。なぁ?色男。」

 

青銅刀を首に向けられ今にも殺されそうなことに僅かばかりの感動を覚えた。

 

「使役、とは考えていない。」

 

「じゃあなんだ?答えてみろ。ただし考えて物は言えよ。発言次第ではお前の首は繋がっているモノは思うなよ。」

 

「これは同盟関係だ。ライダーと俺の。」

 

「.....。」

 

ライダーは青銅刀を振り下ろし機嫌が悪そうにソファーに腰掛けた。

 

「...酒と盃を持って来い。桃園の誓いとまでは行かずとも、お前との同盟関係を約定するという意味で盃を交わそう。」

 

互いの盃にはお互いの瞳が、お互いの思いが酒に写されているようであった。

 

「この盃に勝利を誓おう。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

3節

 

「無形」

 

私を召喚したのは初老の男であった。

 

彼は私を初めて召喚した時にくしゃっとした笑顔で迎え入れてくれた。

 

まるで孫娘を迎え入れるお爺ちゃんのようだった。

 

その屈託の笑顔を見た時、私は言い様のない感情に支配された。

 

なんだろう。なんて言えば良いんだろう。

 

「アサシンよ。誓ってはくれないだろうか。」

 

初老の男は鋭い目付きで私をしっかりと離さない。

 

その男の眼には確固たる覚悟がある。そう私に感じさせた。

 

_______あの時の新撰組達のような。

 

 

「どんな結果であろうとも、最期まで私と共に剣を振るってはくれないだろうか。」

________私はこの問い掛けに。

 

________我が剣はこの誓いに。

 

 

「...すみません。」

 

答える覚悟を今は持ってはいなかった。

 

腑抜けた今の私を土方さんが見たなら、

 

きっととても怒っていたんだろうな。

 

そんな事を考えていた私とは裏腹に、初老の男は黙って優しく私の肩を撫でた。

涙に気づかれないように目元を急いで拭ったが、初老の男には気付かれていたのだろうか。

 

そっとハンカチを差し出し、初老の男は廟の奥へと戻った。

 

 

私はハンカチを胸にしまった後、静かに嗚咽を漏らした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4節「外貌者」

 

「魚の骨をこう綺麗にとっている時、言いようのない幸福感に包まれるんです...この気持ち...分かりますよね?マスター」

 

洋食屋「ゲイボルグ」にて志村とサーヴァント達は食事を取っていた。

 

サーヴァントは魔術師にとっては最高に便利な使い魔であると言われる理由の一つとして食事、睡眠などの人間に必要な生理的活動を行う必要がないということが挙げられる。

 

にも関わらず、この男キャスターは積極的に食事、睡眠を取りたがる。

 

「全く分からんな...そんな嬉々として魚の骨を丁寧に取り出す奴は中々いない...君も中々に変人のようだ。」

 

志村はテーブルギリギリにギッシリと並べられた特大ステーキ8人前を豪快に頬張る。

 

鉄板でじうじうに焼かれた牛肉達は店中に芳ばしい匂いを充満させていた。

 

「ステーキを頬張る初老の男と、骨を嬉々として取る中肉中背の男...中々目立ちますね...大丈夫でしょうか?マスター」

 

御歳65歳にしてしっかり生えそろった真っ白な歯で豪快にステーキを噛み切ると、今度は勢いよくお冷やを暑さで枯れた喉を潤す為に注ぎ込む。

 

「...くぅ、うめえ。心配はしなくて大丈夫だ。それよりももっと危惧すべき事は山程ある。」

 

「ほうほう危惧すべきことって何です?」

 

志村はフォークとナイフをかちゃり、と置いた後、丁寧に口の周りの油をシートで拭き取りご馳走さまの意で手を合わせた。

 

「セイバー召喚を最後に全員揃った。祭りの主役達がな。俺たちもそろそろ動かねばならん。」

 

「八王子へ向かおう。アーチャーの報告では其処にセイバーのマスターがいる。」

 

「_______さあ狩猟の時間だ。」

 

「解剖できると良いなぁ」

 

明らかに異質な男達は会計をきちんと済ませ、店を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最終節 「狩猟魔王」

 

ガタン、と不穏な音がした。

 

______後ろに誰かいる。

 

そろりそろりと迂回して廃棄箱の中に隠れた。

 

セイバーの召喚に失敗した上に神秘の秘匿も失敗とか...お前は時計塔で何を学んだんだとか先生にグチグチ言われそうだ...

 

廃棄箱の隙間から私は恐ろしいものを見た。

 

40代くらいの男性...?の首を右手に持った血濡れのドレスの女性が...

 

「此方をしっかりと見ている」のだ。

 

まるで隠れていることなど御見通しであるかのように。

 

思い切って箱から出るか...?

 

______いやそんな事をすれば。

 

足りない頭で試行錯誤を繰り返している間に天使は此方へ迷いなく向かって来る。

 

やっぱバレてるし...!

 

勢い良く箱から飛び出し、男子に媚びる方ではない走り方で全力で疾走した。

 

天使もそれを確認すると恐ろしいスピードで此方に向かって来る。

 

30メートルぐらい走りきったところで天使に間合いを詰められてしまった。

 

_______くそ。一か八かやってみっか。

 

天使はその御姿に似合わないほどに鋭いフックを仕掛けて来る。

 

利き手ではない左腕でそのフックを受け、右手で天使の首を掴んだ。

 

左腕は関節がもう1つ増えたんじゃないかというほどに呆気なく曲がってしまった。が、「魔眼」の発動条件は整った。

 

________擬態発動。

よし。天使は幻覚を見せられて混乱しているのか静止してしまったようだ。

 

今の内に早く逃げないと...!

 

 

「慢心ってさァ...見てて楽しいよね♪」

 

「喰らえるって確信が胸を占める気がして堪らないよ...♪」

 

_____...!

 

横腹が何かに抉られる感覚があった。

 

その痛みに耐えられず、私は地面に伏した。

 

その隙を突かれ、天使は私に覆いかぶさった。

 

「あははははははははは!!!!!無様!無様!無様無様無様無様!!!あはははははははは!!!!!!!」

 

「ねえ!ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ!!!!!!!死ぬ前ってさぁ!!!!!!どんな!!!気持ち!!!!あははははははは!!!」

 

_____怖い。この天使が今から私に無慈悲に与える「死」が、

 

とても怖い。

 

私は思わず眼を閉じた。

 

____その時、血飛沫だろうか、私の顔に液体が飛び散った。

 

「えへへ...♪痛いなぁ♪だぁれ?君」

 

 

赤い紋様の入った鎧に身長のひと回り分大きい大剣。

 

________この人はまさか

 

「俺はセイバー。コイツを守り、」

 

 

「______世界を救う者だ。」

 

 

END

 





キャスターさん家の今日のご飯

キ「えーあまりのキャスター人気から始まったこのコーナー記念すべき1回目でございます。」

志「出番無い癖に調子乗るなよ」

ひよこさん「銀ちゃんとおま」


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