6話 狩猟魔王の螺旋
1節 ペンドラゴン
午後22時、私は自分の未熟さを恥じた。
時計塔で習った結界とは基本は土地設置型であり基本動くことはない。
しかし今展開されている結界は自立する複数の骨の人形に結界核を埋め込むことにより変則的な探索結界を張るという前代未聞のタイプである。
土地設置型と踏んだ為に用意した結界破りが仇となり、1発で敵に勘付かれた。
「ヒャハハハハハヒャハハハ!!!ハハ〜ハハ!!!」
アーチャーが空中から滑空し、迫ってきた。
静かに着地し、我々の元へじりじりと近づいてきた。
「ボクに食べられたい間抜けちゃん達こんばんは♪今日は特製の魔弾でブチ抜いてあげるからね♪」
アーチャーは巨大な棺桶を顕現させ、構えた。
棺桶には何個も鎖が巻かれ、先端部分には銃口が取り付けられていた。
「コレはボクが持つ最強の宝具でね...
まあ食らって見なよ。コイツの威力をね♪」
「獲物を穿て!!!
フラッシュとともに放たれた魔弾が此方に向かって放たれた。
セイバーは霊体化を解き、魔弾を斥けようと魔力放出の構えに入る。
「
生前、竜の心臓を得たセイバーは莫大な魔力を保持する。
莫大な魔力をふんだんに使った魔力放出。
これで魔弾を無効化しようとセイバーは企んだ。が、
魔弾は竜王衝撃を躱した。
まるで弾丸に意思が込められているかのように。
「なッ...!?」
剣を既に振り下ろした態勢のセイバーは魔弾に対応することが出来ず、直撃してしまった。
「セイバー...!ごめん今すぐ治療魔術を...!ってアレ...?ウソ...!」
治療魔術を施したはずのセイバーのキズは未だに血をポタポタと垂らし続けている。
「ボクの魔弾には特性がある。第1の能力、この魔弾は因果逆転の呪いが付与されている。つまりは、絶対に外すことはない。第2の能力は魔弾で負わせたキズはボクが消滅しない限り治らない。どうだ?つえーだろ?最強だろ?」
アーチャーが自慢している隙を突き、セイバーはアーチャーの足を断ち切らんと大剣を振ったものの、華麗に避けられてしまった。
「あの時より動きが段違いだな。魂喰らいを死ぬほどやってきただけのことはあるか。」
「ブリテンの誉れ高き騎士王アーサーペンドラゴン様ではボクには届かないよ♪」
アーサー王...?セイバーが...?
「人違いだな...第1俺がそんな高名な英雄様ならとっくにエクスカリバーとやらでお前をぶった斬ってたさ。」
「アーサー王になれなくて悔しいんだね...♪わかるよ顔でね♪」
セイバーは剣を持つ逆の手から魔力放出を放つが、其れも避けられてしまった。
「さて...2発目だ。次はマスターを狙ってご退場願ってもらう♪君と遊べないのは残念だけどマスターが全員残らず殺せってうるさいからさ♪」
...万事休すか。そう思われた時、
アーチャーの胸を朱い槍が貫いた。
「いったぁ...♪」
「槍...ということはランサー!?」
「全く姿を現さない槍兵がようやく現れたか...。」
「やだなぁ...♪この槍抜けないんだけど...♪ウフフおかしいなぁ♪」
「今のうちに撤退するぞマスター。」
セイバー達は急いでアーチャーから離れた。
「アーチャーを表に出したということはいよいよシムラも本気を出してきたか。」
建物の影からふと姿を現したのはスーツにコートを着た長髪の男だった。
「おじさんがランサーのマスター?」
「さあな。俺がランサーかもしれん。」
「いいからこの槍の呪い解いてよ。」
煙草をふかしながら串刺しのアーチャーをまじまじと観察した。
「その槍は槍が刺さった人間の罪の数だけ棘の数が増す。数え切れないほどの罪を負ったお前は数え切れないほどに槍の棘が刺さるというわけだ。つまりは解除不可能ってわけよ。」
「なるほど♪つまり刺さったまま動いても何の問題もないわけだ♪」
槍が刺さったままよちよちと歩き出すアーチャーを見て男はぼりぼりと頬をかいた。
「普通の英雄なら即死なんだけどなぁ...普通の英雄じゃなくても動きは確実に封じれる...そう聞いたんだが...あのテキトーヤローには後で説教だな。」
「おじさんも気になるけど♪結界内に続々とサーヴァント達が集結してるみたいだし♪そろそろ次のフェイズに移らないとね♪...じゃあまたね。」
飛び去るアーチャーを見送りながら男はまたぼりぼりと頬をかいた。
「ランサーはもういい。引き続きアサシンのマスターを探せ。ああ?ああ。教え子は立派だったよ。」
この男はティエリア・アージット。
時計塔非常勤講師であり、
燈のかつての師であった。
2節 大決戦
「使い魔の情報によるとアーチャーはセイバーとの交戦後にランサーらしきものの攻撃を受けタワービルからバレットビルへ飛び去ったらしい。俺たちも向かおうアヴェンジャー!アヴェンジャー...?」
アヴェンジャーは何処か遠くを見て、佇んでいる。
「...います。私に関する人間...とても近くに」
「...行こう。おそらくこのチャンスを逃したら俺たちはそいつと出会えない。」
ユダの手を取り、彼女が指した方向を行こうとした途端。俺はユダに服の袖を掴まれた。
「敵は槍使いと判明したんでしょう?行って仕舞えばきっと私達は死んでしまう。」
そうだ...ユダは槍に貫かれて死ぬんだった。
「でも...行こう。俺たちは行かなきゃダメだ。そんな気がする。」
ユダの手を強くぎゅっと握りしめた。
痛かっただろうか、そんな心配をよそにユダは静かに笑った。
「ええ、行きましょう。」
「待ちたまえ。」
物陰からすかさず出て着たのは帽子を深く被った初老の男と長髪のサムライだった。
______こいつは...!
「アサシンのマスター...だな?」
この前使い魔で見たときは感じなかったが、この男老人にしては若々しい。
まるで人魚の血でも飲んだみたいに...
「左様。お前らに相談あってここに参った次第だ。もちろんアーチャーの件についてだ。」
「同盟、休戦の相談なら断る。俺たちは単独でやる。」
アヴェンジャーも俺も、協力というのには向いていない。
「まあ生臭坊主...そう早まるな。爺の話はしっかりと聞くもんだぞ。...新宿に新設されたバレットビルはわかるな?」
バレットビル...赤馬コーポレーションが建設したショッピンモールも含んだ娯楽施設か?
「ああ。アレがどうしたんだ?」
「アレはアーチャーの宝具だ。間違いない。」
「...!?」
あのビルが宝具...?どういうことだ?
「私の部下がここ数日のアーチャーの行動範囲を調べた。奴はどうもあのバレットビルから半径2km以内は絶対離れることはない上に、巨大な魔力反応、キャスターの工房を検知している。間違いない。」
「それだとアーチャーの拠点ではあっても宝具たり得ないぞ?」
「...アーチャーの真名を知っているか?」
この男...たった3日であのサーヴァントの真名を知り得たというのか...
恐ろしい。警戒せねば。
「奴はザミエル。狩猟魔王と恐れられた悪魔だ。魔弾の射手と言った方が馴染みが深いかな?」
俺を何度も殺したあいつは天使じゃなく悪魔...
ということは...
「アヴェンジャーの洗礼詠唱が効くんじゃないか?」
「出来ない事もないですが...サーヴァント級の悪魔を祓えるかは疑問なランクなので...ですが、足止めなら可能です。」
「...アーチャーはバレットビル内にいる人間を魔力源として装填し、東京に魔弾を放つつもりだ。このままでは日本という国が壊滅しかねない。そうなっては聖杯戦争どころではないだろう。協力をして欲しい。」
ユダをチラリと見たが、拒否する意思はなさそうだ。
「協力しよう。聖杯戦争がここで終わっては困る。」
「...交渉成立だ。直ぐに策を話す。黒服が案内する建物へ入ってくれ。」
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第三演義「六王紫苑」
「ライダー、作戦変更だ。バレットビルへ向かいアサシンとアヴェンジャーより先回りして待機するぞ。」
六王は何の役にもたってないひよこのカッパを畳みながらいそいそと準備をした。
「漁夫の利を狙うならあそこの中でというわけか。」
新宿に聳え立つ巨大なビルを見ながらライダーは不敵に笑った。
「んなことしねえよ。漁夫の利なんて卑怯な真似よりもっと効率いい方法思いついちまったからな。」
ひよこのかっぱを惜しそうに畳みながらライダーは怪訝な顔をした。
「そんなのあるのか?」
六王はアタッシュケースから小さな藁人形を3つほど取り出した。
「こいつさ。」
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ざわざわとバレットビル中の人々が騒ぎ出す。
当然である。
何故ならば行方不明中の俳優、六王紫苑に極々似た男が握手会を開きだしたからだ。
「はいちゃんと整列しろよ〜そうだ1人ずつだぞ1人ずつ。」
無論この男は六王紫苑本人である。
一般人から直接「握手」という接触方法で藁人形に「恩」を注ぎ込むのと、ここ2階にアーチャーの魔力源たる客を集めるのが狙いだった。
49人目...そろそろ頃合いか...
霊体化させておいたライダーにエネルギーの溜まった藁人形を柱にセットするように指示する。
アサシンのマスターであるあの老いぼれはアーチャーの宝具がバレットビルである。と言ったが、正確には違う。
アーチャーの宝具の性質は恐らく、銃の形をしたものに7発の魔弾を装填するというもので恐らくこのビルは大きく関係していない。
重要なのは銃の形をしたものに7発の銃弾を装填するということだ。
このビル、情報屋によると北東方向の壁が銃床のような壁になっており、先端部分にある屋上は不自然な穴、つまりは銃口部分にあたる部分がある。
このビルはアーチャーの宝具の威力をより強力にするためにアーチャーのマスターが作った巨大な銃のレプリカというわけだ。
そう、簡単な話なのだ。
______魔弾が装填されちまう前に銃ごとブッ壊す。
六王紫苑特製の藁人形は魔術回路を持っている。
この魔術回路はある条件を満たすと自立して回転し出し、自爆する法則を持たせている。
その条件は人の熱を持たせること。
握手は熱を回収するのには最適な手段というわけだ。
こいつを柱に設置し爆発させればアーチャーの目論見は崩れるわけだが...
「ふふふ...こんにちは♪」
いつの間に気配を察知したのか、圧倒的な殺意に満ちた天使がゆらゆらと向かってくる。
そうもうまく行かねえか...なんて思いながら腰に据えて置いたナイフを抜いた。
「ウヒヒヒヒ!!!!アハハハハハハ!!!」
ザミエルは藁人形の設置を阻止せんと俺に向かって飛びついてきた。
「ライダー!」
「笑止。」
霊体化を解きライダーがアーチャーの腕を剣で即刻断ち切った。
「狙いは逸れたが、利き腕は飛んだようだな。次は打ち首にしてやる。」
「槍が胸を貫き、片腕は捥がれ、ってお嬢さん瀕死だな」
フラフラと覚束ない足でやっと立っているようだ。
「ククク...おい...慢心してるだろ?ライダー...すでにボクの魔弾はお前の心臓を穿った後だぜ。」
「ハッタリならやめておけ無駄だ。」
「いいや。マジだ。」
胸付近に赤い光が一閃する。
ライダーの脅威的動体視力で得た閃光の中での光景は
「胸付近に到達する前の魔弾」であった。
「なァッ!?」
咄嗟に皇帝特権で獲得した魔力放出で弾丸を跳ね返そうと踏ん張るが、魔弾は心臓目掛けて進行を止めることはなかった。
「グァッ...ハァッ...!」
「貧乳が仇になったか...!」
弾丸は見事ライダーに風穴を開けた。
「だから慢心するなって言ったのに〜♪」
胸を抑え、ライダーは膝をついた。
「確かに慢心はいかんな。」
苦し紛れにライダーはアーチャーに向かって剣を投げるものの、軽くかわされてしまう。
「死ねェェェ!!!!!」
膝をつき、隙だらけのライダーに思い切り棺桶をぶつけんと、アーチャーは全力で棺桶を振った。
ライダーは臆することなく、右手で指笛の形をとり、笛を吹いた。
「駆けろ!絶影!」
影が豪速球で移動しているのかと錯覚させるほどに黒く、
その健脚はどの馬よりも逞しい、
帝王のような威圧感はけたゝましく、ビルの地面を抉る
之全てライダーの愛馬・絶影の事である。
心地いいほどの蹄の音を鳴らしながら絶影は思い切りアーチャーを轢いた。
「不正なタックルだなこれは。」
「所詮は雑魚狩り女だな。」
手慣れた手つきで、ザミエルの髪を掴み「斬首」した。
斬った首は最後まで不気味な笑顔で気持ち悪いので、放り投げた。
「呆気なかった。紫苑よ。これで予備令呪は我々のものだ。」
「ああ...早くここから脱出しよう。」
_________ツン、と冷たい視線が背中を撫でるように走る。
圧倒的な威圧。
獲物を狩らんとする獅子の如く圧倒的なプレッシャーを放つそれはビルのステンドグラスに静かに佇んでいた。
腕と足の袖だけを見事に破いたスーツを着て眼鏡をかけた禿げた男...
凡人ならばこの男をただの奇人ぐらいにしか思うまい。
_____だが俺ならわかる。コイツはアーチャーのマスターであり、プレッシャーの主だと。
「アーチャーをここまで追い詰めるとは大したものだ。六王紫苑とライダーよ。」
この変態がステンドグラスから垂直に飛び降り淡々と此方へ向かうのはかえって不気味だった。
「ライダー...構えろ。アーチャーはまだ死んではいない。」
「おいなんだコイツらは...!?」
いつの間にかライダー達は珍妙な奴らに囲まれていた。
コスプレをする骨の人形達に、だ。
「不味い...結界が踏み荒らされる...!」
結界への意識が行った一瞬の隙を突いて、変態は恐ろしいスピードで間合いを詰めて来た。
たまらずナイフで対応しようとしたが、変態は有無を言わせないスピードで右手から獲物を叩き落し、足を払って転ばせた後、関節を固めることで完全に俺を無力化してしまった。
俺がシムラと戯れている間にアーチャーは自ずから首を接合し、復活していた。
「んー、ありがとマスター。」
ライダーは消耗しきっている...アーチャーとはこれ以上戦えない...!
シムラはコンバットナイフを腰から取り出し、令呪のついているはずの俺の右手を淡々と「切断」し始めた。
「あァッ...!」
シムラは令呪を確認するため切断した方の右手についている手袋を剥がしたが、
「...おいおいどういうこった。」
「令呪」はついていなかった。
「おい...てめえまさか...。」
魔力を貯めた人形は3つ作ってある。2つは柱に貼る用。
もう1つは...
「俺と一緒に来いよ...クソジジイ。」
________自爆用だった。
「音叉爆裂ノ人柱陣、術式能其一。」
バレットビル2階は爆炎に包まれた。
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〜管制塔にて〜
「今週のプリキュアは水着回か〜視聴しながらツミッターで実況だな。アストルフォちゃんの水着とか絶対トレンド入りするぜ。」
キャスターはポテトチップスを食べながら、テレビを見ていた。
「なにっ!?オリヴィエ寝返るのか!?敵に!?ええ!?殴り殺すの!?同担のオタクを!?」
キャスターのコレクションが視聴中のオタクにつんつんと指でちょっかいをかける。
「ごめん待って今いい所だからアストルフォちゃんの服が魔神柱に破かれてるシーンだから。」
キャスターはシムラの出動の合図をテレビの録画で無駄にしていた。
「ええ!?ニチアサに乳首を!?もうそこまで行くんだったら交尾シーン出せよ!」
テレビの前で必死に抗議する様子はまるで英霊の座に選ばれた英霊とは到底思えない情けなさである。
「仕方ない...そろそろ働いてやるか。来い!コレクション達!」
キャスターの呼びかけに呼応し、コレクション達がぞろぞろと集まってくる。
「マスターの命令通り、バーサーカーを探すぞ。街に繰り出してな。」
キャスターは大学病院から勝手に盗んだ白衣を着て街に繰り出すことになった。