fate/sand rock   作:挨拶番長

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ivericia

8話 ivericia

 

1節 執念の怪物/幻想の悪魔

 

ボクは思うがままに目の前の魔力源達を喰らった。

 

ただの怪物のボクが...

 

マスターに愛される為には...!

 

7発目以降の魔弾を放ち続ける為には...、

 

我武者羅に喰らうしかない...!

 

必死に殺しまくるしかない...!

 

ボクはそれだけが取り柄の「怪物」なんだから...!

マスターは僕の愛を受けとめてくれた...!

 

初めて7発目の魔弾を耐えてくれたんだ...!

 

マスターは肯定してくれたんだ...!愛の証明とは喰らうことだって...!

 

なのに...ボクは負けた。

 

魂食い分の予備の肉塊もエネルギー切れ。

 

次にライダーの一撃でも喰らえばマスターと僕は負けてしまう...!

 

苦しみもがくボクにマスターは新たなる救済を与えてくれた。

 

「令呪をもって命ずる。日本を撃て。魔弾の射手。」

 

その言葉を最後にボクはもう2度と人の言葉を聞くことはなかった。

 

正真正銘の「魔王」と成り果てたから。

 

2節 蜘蛛糸の果て

 

アサシン・アヴェンジャー休戦協定一行は、魔力反応のあった川に来ていた。

 

「水が汚染されてる...黒い泥?」

 

ユウサクが川に流れる泥に触ろうとした手を老人は払った。

 

「いでっ、何すんだよ。」

 

「主よ。これはケイオスタイドです。」

 

けいおすたいど?

 

なんだそりゃ...いや...耳に覚えはあるような...無いような...

 

「第四次聖杯戦争にて確認された汚染物質だ。触れんほうがいい。」

 

「しかし、何故そんなものがあるのでしょうか?」

 

アサシンが呑気にそんなこと言ったと思えば腰の刀を構え、俺の脚を蹴り転ばせた。

 

「皆さん下がって!!!!!」

 

レインボーブリッジから方向から飛来したのはバレーボールサイズの魔弾だった。

 

「でぇりゃぁぁッ!!!」

 

その魔弾をアサシンは抜刀で跳ね除けると即座に、遮蔽物へ身を隠した。

 

間違いない。この攻撃はアーチャーだ...!

 

「主よ。私の翼ならば、アーチャーがいるあの橋へ一気に飛べますが、向かった方が宜しいでしょうか?」

 

「ああ。決着をつけよう。俺はここから支援する。」

アヴェンジャーは真っ直ぐ橋へと飛んで行った。

 

心配だ...大丈夫だろうか。

 

「アサシンも向かってくれ。私はスナイパーライフルで狙撃する。」

 

「御意。」

 

アサシンもまた橋へ向かって行った。

 

嫌な予感がするが...大丈夫だろうか。

 

心配してばっかだな俺...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

魔弾が飛んできた方向へ一直線へ飛ぶと、やはり橋の上のレールにはアーチャーがいた。

 

いや...アーチャーらしき何かと言うべきか。

 

アーチャーは前回見た時より大幅に姿が変わっていた。

 

蒼色の蝶の羽を生やし、脚から下は蜘蛛?の様な形態をしている。

 

頭には悪魔のようなツノとヒビ割れて半分だけの鬼の様な形相の仮面。

 

明らかに様子もおかしい...

 

「ウゥ...アァッ...!!!」

 

アーチャーはこちらに先程と同じくバレーボール程の魔弾を放ってきた。

 

大してスピードも無いので拳で払おうと魔弾を殴り返そうとしたが、

 

魔弾に拳が入った時、それは爆発した。

 

爆発した魔弾には「蜘蛛糸」が内包されており、蜘蛛糸はアヴェンジャーの翼を搦め捕った。

 

翼を封じられ、バランスを崩したアヴェンジャーは堪らず橋へと着地する。

 

そこをアーチャーは狩らんと、六本の足を齷齪動かし、此方へ向かってきた。

 

アヴェンジャーは魔力放出すら翼から行う。

 

そこを封じられて仕舞えば、ただの役に立たない修道女になってしまうのだ。

 

「でぇァッッッ!!!!」

 

いつの間に走ってきたのか、アサシンの渾身の一刀がアーチャーの後ろ左足に叩き込まれる。

 

その凄まじい一刀は見事に、左3本のうち2本を刈り取り、アーチャーのバランスを奪った。

 

「キィィ...シュラルァァ...!!!」

 

足を斬られ堪らず、アーチャーは青い蝶の羽根で空を飛び、逃げた。

 

アヴェンジャーはその後を追い、見事にアーチャーを空中で羽交い締めにした。

 

「ガァー!!!ルルァァ!!!!」

怪物はなんとか鱗粉でアヴェンジャーの邪魔を使用するが、アヴェンジャーはその両手を離さなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「セイバー!アレ見える?」

 

セイバーと燈達もまた、この川沿いへ来ていた。

 

「ああ。見える。」

 

怪物と化したアーチャーを空中で羽交い締めにするアヴェンジャー。

 

これはセイバー達には紛れも無い好機だった。

 

「セイバー、宝具を開帳して。2人ともここで纏めて始末しましょう。」

 

セイバーは何か迷いがある様に、自分の大剣へと目を向けた。

このいたいけな少女に、あの人を感じたからだ。

 

まさか、「あの人」なわけがない馬鹿馬鹿しいと脳内で一蹴したもののこの少女の無垢かつ邪悪な瞳には見覚えがないとはセイバーの中では断じることが出来なかった。

 

 

「どうしたの?セイバー?」

 

「...なんでもない。空中へ向けてならば俺の対城宝具の被害も小さいだろう。」

 

「セイバー...貴方の力ここで見せて。」

 

燈の声を聞くとセイバーはすぅぅと深呼吸をして、大剣を構えた。

 

セイバーの切り札は竜の心臓により生成されるより強力な魔力放出に加えもう一つ存在する。

 

生前、セイバーは常勝の王ではなかった。

敗北を繰り返し、その中に勝利を見出す不屈の王。

 

その意思が込められた竜星のごとく輝く全身全霊の一撃。

 

________その名も。

 

約束されざる勝利の剣(エクスカリバー・コルブランド」)

 

魔力を貯めた魔剣を大きく振り上げると、赤い光が東京の空を覆った。

 

 

 

流れるが如く空を翔け上がる赤き竜の息吹の閃光は、空に舞う黒翼の天使と糸蜘蛛を焼き尽くしてしまうには充分すぎる熱量だった。

 

光が2人に直撃する。

 

少年は叫び、

 

暗殺者は目を瞑り、

 

裏切り者は光を見た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あの日の事はいつでも鮮明に思い出せる。

 

私がたった銀貨30枚で主を売り、主が処刑される直前、

 

私が主と再会したあの日のこと。

 

「主よ、寵愛を注いだ弟子が薄汚い商人と成り果てた末の感想。聞かせてもらえないでしょうか?」

 

枷で両手を縛られ、足に楔をされても尚、主の穏やかな顔はビクともしなかった。

 

「...私のことを嫌いになったでしょう?恨んでいるのでしょう?答えてください...」

 

私の涙を浮かべた訴えに主は静かに口を開きこう言った。

 

「...貴女は最愛の弟子だった。そしてこれから先、ヨハネやシモンにも劣る事のない最も優秀な弟子になる。今でもそう信じています。」

 

拳に収めた銀貨をさらにグッと握りしめ私は声を荒げた。

 

「嘘をつくな!!!お前を死に至らしめた私が...このサタンですら恨まないと!?ふざけるな...!ふざけるなァ!!!」

 

檻の外で喚く私を主は静かに諭した。

 

「ユダ。私は君をとても愛している。この愛は初恋の人に向ける愛でもあり、長年連れ添った妻へと愛でもあり、自分への子供への愛でもある。私は全ての罪を許そう。ユダ。だから私の言うことを聞いておくれ。」

 

暖かく優しい声。

 

主は誰にだって、分け隔てなく、其れを向けてきた。

 

私にだけ向けて欲しかった。

 

私にだけその愛は欲しかった。

 

今になって愛されてるなんて...

 

そんなことを言われて私はどうすればいいというのだ...!?

 

「生きなさいユダ。例え堕天使の牙に噛まれ続けようと、世界中のあらゆる人から迫害を受けても、...私が処刑されてしまった後でも。私との約束です。」

 

主が初めて私に見せた、真剣な顔。

 

この約束は破ってはならないと暗に言われているような気がした。

 

当時の私はそんな事には目もくれず

汚れて錆びたナイフで必死に檻を破壊しようとしたが、それは処刑人らに取り押さえられてしまった。

その日を最後にもう主の声を聞く事はなかった。

 

私に啓示は届かない。

 

私は確かに自分のことを裏切り者だと自覚している。

 

だが決して銀貨30枚で主を売ったことに対してでは無い。

 

主の最後の言葉ですら裏切った私は正真正銘「裏切り者」に相応しい。

 

自分ですら、そう感じているからだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

セイバーの宝具が直撃する寸前、ユウサクは令呪でアヴェンジャーを転移させていた。

 

いくら預言とは言えど、流石に対城宝具を喰らって仕舞えば死ぬだろうという懸念からだ。

 

無理やり転移させたことに怒っているのかユダは余り機嫌が良くなかった。

 

スナイパーライフルを掲げた爺さんがあっちから走ってきた。

 

「ミッション失敗だユウサクくん。東京は今から燃え尽きる。」

 

え...?ウソだろ?アーチャーは倒したはずでは...?

 

俺の心の声が聞こえていたのか、或いは口から心の声が出ていたのか、爺さんはスマートフォンのワンセグからテレビ中継を見せてきた。

 

「新宿駅から巨大な塔が現れ〜」

 

見慣れた新宿駅からは刺々しい塔が不躾に聳え建ち、住民達を怯え上がらせていた。

 

バレットビルに似た形状...間違いない。アーチャーの宝具だ。

 

「もはや神秘の秘匿どころじゃないな...どう収拾つける気だ?」

 

爺さんは川の先の塔を見上げ果て、首を横に振った。

 

「アサシンの性能ではどうにもならん...君は?」

 

俺は首を横に振った。アヴェンジャーは恐らく対軍宝具すら持たない。

 

というかアヴェンジャーは閲覧出来るステータスが少なすぎてあまりにも未知だ。

 

ステータスの半分くらいがノイズのような靄で掻き消されているのだ。

 

「...とりあえずビルに向かってみようか。」

 

黒服が用意したリムジンに乗せてもらい、一同は新宿駅へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最終結論 「終局の輪廻曲」

 

「キャスターよ、バーサーカーは見つかったかね?」

 

プールで遊び、少し塩分くさいこの男は不機嫌そうにこう答えた。

 

「紆余曲折あったものの、なんとかバーサーカー...というよりは8人目のサーヴァントは発見しました。」

 

小麦色の肌をした金髪の男の写真をシムラに手渡した。

 

シムラはそれを乱暴に取り上げると、眼鏡を机に置き、目を細めた。

 

「...ギルガメッシュか?いや...でもこんな肌は黒くなかったような...まあいい御苦労。」

 

シムラは写真を胸ポケットに仕舞い込み、部屋の鍵を持って外へ出かける準備をした。

 

「屋上のレストランで東京が焼ける光景を見てくる。」

 

今までに見たことのない晴れやかな顔でシムラはキャスターに背を向けた。

 

「...いいえ、貴方はその光景を見ることはありません。」

 

シムラの背中に、キャスターのメスがグッと入り込む。

 

入り込ませたメスをグリグリと肉の奥にねじ込ませ、内臓へと届かせた。

 

「お前...何してる?」

 

「私は...東京が焼ける光景より、人の臓器だとか...骨を見ていたいんです。分かりますよね?つまり、困るんですよ今東京が無くなると。」

 

シムラはキャスターのメスを持つ手をはたき、距離をとった後、キャスターの襟を掴み引き寄せ、ショットガンををキャスターの腹部に叩き込んだ。

 

「いくらサーヴァントといえどお前はただの医者...いや医者でもないか。コイツは応えるだろう?」

 

撃たれて抉れてしまったところから臓器がはみ出ないように腹を押さえ、後退りをしながらこういった。

 

「確かに...でも貴方の身体にオレのメスが入った時点で...アンタはもう負けだ...。」

 

パチン、と指を鳴らす。

 

その音は質の良いこの一室ではよく響いた。

 

鳴り響くと同時にシムラの身体からは骸骨の手が背中から飛び出した。

 

続いて、右脚からは骸骨の足が飛び出す。

 

シムラは動揺もせず、冷静に今の状況を分析した。

 

「お前のコレクションを直接俺の肉体にわけか...たしかにコレならばお前に勝ち目はあるだろう。だが...」

 

シムラはハンドガンをこめかみに当て、引き金を引いた。

 

弾丸は老人の脳天を容易くブチ抜き、老人は意識を失った。

 

前例として弾丸が脳みそを突き抜けても生きていた人間はいるが、流石にこれでは生きてはいまい。

 

キャスターは医術スキルで自分の手術を開始する前にシムラの右手の令呪を確認した。

 

令呪は確認できなかった事はおろか、使用痕すらない。

 

つまりは...

 

「やはりない...この男は俺の本当のマスターじゃない...良い...良いぞ。運命は何故こうも俺もワクワクさせてくれるんだろうか...!」

 

キャスターは理髪店で髪を整えてもらった時のような高揚感に包まれていた。

 

自分の本当のマスター...コイツを探せばオレの解剖道はもっと開拓できる。そういう自信が不思議とあった。

 

「新しいマスターの骨...貰えるかなぁ...」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「教会に集まってもらった使い魔達にに報告だ〜アーチャー陣営は脱落が確認され、聖杯に令呪が戻った。討伐に貢献したセイバー陣営、アヴェンジャー陣営、アサシン陣営それぞれに令呪を一画を献上することを報告する。え〜以上。」

 

 

「あっ、以上じゃねえわ。新宿駅に突如生えてきた謎の塔は昨日の深夜に突然消えた。原因はおそらくアーチャーのマスターの死だろう。そんじゃ本当の解散だ。アバよっ。」

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