fate/sand rock   作:挨拶番長

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9話 ZEROへ

 

1節 戦いの後で

 

「ではアヴェンジャー・アサシン休戦協定はこれにて解除だ...セルフギアススクロールの約定通り3km離れるまではこちらは動かない。達者でなユウサクくん。」

 

アーチャーの討伐が無事に終わり新たな令呪を得た俺たちは協定を解除し、また闘いへ赴くことになった。

 

気になるのは同時契約していたキャスターの脱落報告がないことだが...まあいい。厄介な爺さんが消えるならそれに越したことはない。

 

バイクに乗ってアサシンの敷地から離れたは良いものの次はどこに行くか...

 

魔力供給の濃度が最も濃い場所は霊地、つまりはサーヴァントを召喚した場所なのだがアヴェンジャーは召喚した場所が未だ特定出来ておらず、魔力供給は肉体接触、過剰な食事、などに限られている。

 

それ故に今回のような大幅な消費があるとしばらくは潜伏して敵に会わないようにするのが最善策なのだが...

 

已む無くアサシンに手の内を晒さざるを得なかったのは痛い。

 

此方もアサシンの手の内は知れたのだが、恐らくアレは彼女の本気ですらないだろうし、何より切り札は愚か、彼女が持つカードはまだ一枚も切っていないだろう。

 

今回得れたのは新たなる令呪だが...アヴェンジャーを転移させるのに使ってしまった為、結局は令呪は全3画なことには変わりはない。

 

対して他陣営は4画...ここでもう不利が付いてしまっている。

 

自分は魔術師としてのアドバンテージも他と優れているわけではない。

 

デスクワーク専門の魔術研究者であった俺が無理やり聖杯に招ばれたというだけなので、他の参加者と比べれば2流も2流だろう。

 

そう考えると勝ち目は尚薄い...だがそれでも...

 

赤い髪の修道女、アヴェンジャーのあの記憶を思い出す。

 

幼気なあの娘が世界中からの悪意を今も受け続けている。

 

そのことを看過するわけにはいかない。

 

願いなど無くても、この闘いに負けてやる義理はないわけだ。

 

「よし...」

 

バイクのギアを上げ、「秘密基地」へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

眼を覚ますと、そこはフカフカのベッドの上などでは無く、薄暗い洞窟の中だった。

 

数秒ほど視線がおぼつかないものの、ここは自分が用意した工房の一つであることを理解した。

 

 

「ライダー...俺はどのくらい寝てた?」

 

冷えた布を絞りながらライダーは冷ややかな声で答えた。

 

「...2日だ。」

 

シムラとの自爆心中寸前、この地下室に設置した人形と、自らの肉体を「アポート」の対象に設定したものの爆炎が身体を蝕むのが早く傷を受け気絶していたとのことだった。

 

怪我と魔力消費で魔術回路がボロボロなことよりも、もう2日も消費してしまったことが紫苑に絶望を与えた。

 

ライダーはそのことを気にかけてくれたのか、こう言った。

 

 

「紫苑、今は焦るな。機を取らんと齷齪帆走るよりも今は身体を休め機を虎視眈々と待つが吉だろう。」

 

ライダーのその言葉に感謝はしないわけではないものの、紫苑は即座に立ち上がりコートに着替え始めた。

 

「私の台詞が聞こえていなかったか?」

 

「お嬢さんの可愛らしい声はしっかり聞こえてるさ...本当ならもう俺だって動きたくない。コートを羽織ろうとする腕ですら鉛のように重たいさ。だがな...俺には時間がない。」

 

紫苑の瞳には最早、光は無かった。

 

追い詰められた鼠...そう形容しかけたが違った。

 

此奴は確かに虎だ。虎なのだ。

 

貪欲な虎。

 

聖杯を穫らんとする虎なのだと。

 

ライダーは虎の穫りを邪魔する有象無象になりかけていたことを反省した。

 

「マスター...指示をくれ。」

 

「アサシンたちをここで倒す。準備を手伝ってくれ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

セイバーの魔力消費は当初想定していたよりも激しかった。

 

そこそこに優秀な魔術家系に生まれ、刻印にも、師匠にも恵まれた。

 

その根拠ある自負があるにも関わらず、私はセイバーの魔力消費に耐えれずへばっていた。

 

召喚サークルを設置した霊地で待機して尚、対城宝具を使った分の補填は1日では取り戻すことは出来なかった。

 

このペースでは次約束されざる勝利の剣を撃てるのは明後日...襲撃や邪魔が入ればもっと時間がかかるかも知れない...

 

苦しみ腹を押さえているところに、セイバーが霊体化を解き、歩み寄ってきた。

 

「...大丈夫かい?なんて言うつもりはない。正直に話そう。俺は約束されざる勝利の剣を君を殺すつもりくらいの威力で放った。君が魔力枯渇状態になれば、もう闘えないからだ。」

 

その2枚目フェイスでとんでもなく邪悪なことを言うものだ...ぐらいにしか思わなかった。

 

怒る気力だって今はもうない。

 

いや...セイバーはそれを狙ったのかも?なんて...

 

「俺は生前、王だった。ブリテンを導き救う王...なんて言えば聞こえはいいが、肩書きとはかけ離れたしょうもない活躍だった。戦には負け、沢山の民を死なせた。無能な王だ。」

 

月明かりがスポットライトのようにセイバーを照らした。

 

彼が悲劇の主人公であることを夜が祝福しているようでまるで気に入らなかった。

 

「にも関わらず死後、俺は英霊となり崇められた。かの高名なアーサー・ペンドラゴンのモデルとしてな。俺はアーサーペンドラゴンがどんな奴は生前知らなかったが、英霊になってから初めて知った。美化も美化。騎士道とはここまで清々しいものかと吐き捨てたくもなった。」

 

魔術回路の痺れが徐々に薄まり、ようやく立てるようになってきた。

 

これで散策くらいは出来そうだ。

 

「沢山の仲間を死なせた無能な王が英霊として祭り上げられている。俺はこれが許せない。そして...もう目の前で大事な人が死ぬのは見たくない。頼む。この戦いから降りてくれ。」

 

ヘタレ...あまりにも突飛な提案から唐突に浮かんだ3文字がこれだ。

 

こいつはヘタレだ。

 

目の前で民が死ぬことを恐れて何が王道か、騎士王か。

 

ふざけるな!とも怒鳴りたくなったがここは冷静になってみよう。

 

あのエセ神父から貰った予備令呪が使えそうだ...

 

「だからアーサー王をバカにしたような口調だったわけねーふーん...」

 

じりじりと180cmほどもある巨漢に近づき、右手をかざした。

 

「貴方は要するに英霊でいることが嫌。そして仲間が死ぬのも嫌。そういうことなのね。なら...悪いけど貴方にはもうこれしかないわ。」

 

サーヴァントのマスターが手段の一つとして取るのが自分の使い魔であるサーヴァントの自害である。

 

言うことを聞かない。身の危険がある。そういった厄介な使い魔を始末するために使われる手段である。

 

「第4の令呪をもって、我が使い魔セイバーに命じます。_____私の王子様になりなさい。」

 

セイバーは自害命令を覚悟で踏ん張っていた為、突拍子ない命令に思わず滑った。

 

「マスター...お前馬鹿か!?令呪をそんなくだらないことに使うなんて...」

 

大慌てしながら説得するセイバーに怖気付くことなく燈はこう答えた。

 

 

「私は大真面目よ。態度によっては2画目もやむなしと思いなさい。第一、そもそも私を死なせたくないことと聖杯戦争からの撤退は両立不可能だから。聡明な貴方ならわかるでしょうけど。」

 

「教会への保護前に待ち伏せて右手を切り取り、令呪を奪取...とかだね。まあどうでもいいや。とにかく!貴方は私の王子様として振る舞うの!」

 

この悲劇のヒロインぶったこの男の嫌そうな顔...これが見れるだけでなんだか愉しい。

 

成る程な。これが「愉悦」

 

 

「だいたい俺は王子様として振る舞うだなんて...そんな気持ち悪いことしたく...」

 

燈が令呪をチラつかせ、あっこの女は本気だなと悟り、セイバーを咳払いをした。

 

「お...僕はセイバー。この時より僕は君の剣となり、盾となろう。」

 

セイバーの謎の決め台詞に燈は腹を抱えて笑った。

 

「きゃー!!!!!はずかしー!!!」

 

2人の影が伸び、重なる。月明かりの中、行われなショーは決して悲劇などではなく、また英雄譚でもないことを証明しているようだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

2節 「新たなるマスター」

 

生来、もともと犯罪者寄りの人間ではあったものの計画して人を殺したのは初めての体験であった。

 

首相?なんのことやら...アレは解剖だ。解剖と殺人を一緒くたにされては困る。

まあそんなことはどうでもいい。

 

問題として上がったのは俺の本来のマスターの件だ。

 

魔力の流れをコレクション達に逆探知させ、俺の本来のマスターの位置を突き止めた。

 

なんと俺の本来のマスターは

 

現在橋の下の妖精(ホームレス)達に可愛がられていた。

 

きゃんきゃんと吠えながらホームレス達が用意した段ボール製のブーメランを必死に追いかけている。

 

なんと可愛らしいことか。

 

んなわけあるか。

 

まず第一のツッコミとしてなぜシムラはそこらへんの犬を俺のマスターにした!?

 

第二になぜ管理しない!?勝手にホームレスに匿われてるぞ!?

 

身体つきから恐らく3歳くらいなことで見て取れる。通りで元気なはずだ。

 

というかまあホームレスに匿われてるだけならば問題ない。

 

問題はホームレスの1人がこの犬の所有権を主張しだした。

 

なんとか抵抗しようとしたものの、どうしても犬の所有権を主張したいならば裁判で争おうというのである。英雄の座から提供される情報の中に日本の法律は含まれておらず、黙ってトボトボと帰路に立つしかなかった。

 

最悪コレクション達にホームレスを殺させるのも悪くはないと思ったがそれは俺の沽券に関わる。

 

何としてでもあの汚らしい奴を言い負かしたい...

 

そう思った時に現れたのはあのプールサイドで出会ったひよこ頭の男だった。

 

「何かお困りかなホネンビー」

 

「ホネンビーではないけどねウン」

どうやらこの男弁護士(自称なので全く信憑性がない上に弁護士バッジがダンボール製だったので多分というかこの日本という国がダンボール製のバッジをつけて弁護士を名乗ることを許されていない限り確実に詐称)なので、あのホームレス達を言い負かす事が可能だという。

 

そこまで豪語するのであれば、と思い依頼料300万を支払い彼に任せた。

 

後日、ホームレスにボコボコにされ、身ぐるみ剥がされたひよこ頭がいた。

この男に関わるのはやめようと切実に思った。

 

犬がマスター...しかもマスターは人に取られたまま...何という絶望だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

3節 「第三次聖杯戦争」

 

1940年、令呪で使い魔をコントロールし7つのクラスで争う形式の聖杯戦争が初めてソ連で行われた。

 

魔術の三代御三家、遠坂、マキリ、アインツベルンに加えソ連軍、ユグドミレニア、アニムスフィア、はこの戦いで聖杯の所有権を巡り覇を競うこととなった。

遠坂家...もといエーデルフェルト家からの刺客は2人の姉妹魔術師がセイバーをケイオスタイドで黒化させ、二つの側面に分ける事により実質2人の使い魔を使役するという作戦だった。

 

しかし、この姉妹魔術師は頗る仲が良くなく結果的にこの姉妹は敵対、家内で聖杯を取り合う事態が発生した。

 

アサシンのマスターであるマキリ・ゾォルゲンはランサーのマスターであるダーニック・ユグドミレニアと手を組むことにより、聖杯戦争をコントロールしようと考えたが、ダーニックの裏切りにより脱落。

 

マキリの家はここで滅んだ。

 

ダーニックは裏切りにより戦力を失ったことが遠因となり、セイバーに殺害されてしまった。

 

アニムスフィアは発掘されたソロモン王の指輪から古代バビロニアの王「キャスター」を召還したものの、王の不敬を買い殺されてしまい最初期に脱落。アインツベルンのホムンクルスにサーヴァントを奪われてしまう。

 

ソ連軍はバーサーカーを召還したものの、派遣した魔術師が病弱な狙撃手であったがために6日目で脱落したが、バーサーカーは聖杯の奇跡に触れ受肉。

 

今もどこかを彷徨い続ける。

_____最後に、

 

アインツベルン家は、アハト翁の提案と、家の悲願がために旧約聖書の写本で究極の英霊、善属性の極致、「セイヴァー」を召還しようと試みた。

 

しかし、召喚されたのは薄汚く、卑しい何の能力もない上に何のクラスにも該当しないただの女であった。

 

ただの女であったはずなのだ。

 

アサシンに無残に殺され、聖杯へと汲み取られた瞬間。

 

聖杯は黒く汚染された。

 

その女の存在がただの願いであった為に、

 

女はなまじ力を得てしまった。

 

聖杯の願いの力によりその女の存在は究極の悪、反英霊の極地へと姿を変えた。

 

その女が得た新たなクラスは「ビースト」。

 

闘いの地にに現れる漆黒の天使から放たれた明星の牙により

 

ソビエト連邦の地図から3つほど街を消し飛ばしてしまった。

 

これによりマスター全員の死亡が監督者により宣言された為、第三次聖杯戦争は終わりを告げた。

 

以降、聖杯戦争の儀式による根源の到達は禁止とされる予定だったがキャスターの宝具により聖杯を持ち帰られたことが原因となり、これ以降、奪われた大聖杯のデッドコピーを使った聖杯戦争は「亜種聖杯戦争」と名付けられることとなった。

 

 

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