Fate/lewd dream [Midsummer night]   作:秋乃落葉

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プロローグ

 人生とは、何時どんな時に変容を強いられるかわからぬものである。運命などというものがあるのかどうかは知らないが、それは本当に予期せぬタイミングでやってくるのだ。まるで、かつて蒔いた負の種が、ある日突然花開くかのように。人は、それにただただ翻弄されるしかない。

 

 これは夢なのか現実なのか――。熱い真夏の夜過熱した欲望は、ついに危険な領域へと突入する。

 

 

 

「ちょっと浩治!あんた、いつまで寝てんのよ!」

 俺を目覚めさせたのは、母のけたたましい怒声だった。目覚まし時計よりもよほど目覚ましに効果的な声が耳をつんざき、一気に意識を覚醒へと向かわせた。

「ファッ!?ウ~ン・・・。なんだよ、人が気持ちよく寝てんのに・・・」

「気持ちよく寝てんのに、じゃないわよ。今何時だと思ってんの?」

 しかししつこく居座る眠気に後ろ髪を惹かれながら、無駄にでかい枕の元に置かれたスマホを見る。画面には六時三十分と表示されていた。

「あのさぁ・・・。今日は空手部の朝練はないって昨日言ったんだよなぁ・・・」

「あら?そうだったかしら。まあ良いわ、ほら、さっさと起きなさい。朝ごはんできてるわよ」

 俺を叩き起こした母は悪びれる様子もなく、それだけ言い残して去っていった。時間的にはあと三十分は寝ていられるのだが、あれの怒声をもう一度浴びるのは御免なので素直に起きることにする。キッチンからは包丁の小気味よい音と、味噌汁の良い香りが伺えた。

「しょうがねえなぁ・・・。じゃ、飯食うとすっか」

 

 

 ダイニングへ向かうと、既にテーブルに食事が並べられていた。

「ちゃっちゃと食べて片付けちゃいなさい」

「おっすおっす」

 適当に返答し、席についた。

 彼女は俺の母、田所栞奈。数年前に父を亡くし、母子家庭となりつつも俺たちを支えてくれる母親の鑑だ。なんだかんだ言いつつも母さんには頭が上がらない。

 朝食の納豆を混ぜつつ、テレビから流れるニュースを聞いていると、廊下からの扉が開いた。目を向けずともわかる、妹が起き出してきたのだろう。

「ふぁああ・・・おはよナス。兄ちゃん今日はゆっくりだな」

「おはよナス。萃香は早いじゃん。部活か?」

「そ、面倒くさいけどね」

「大会近いからね、しょうがないね」

 萃香はそのまま目の前の席に座る。

『・・・社の本社ビルが爆破された事件・・・はインターネット動画サイトの運営を・・・警察は爆発物を仕掛けた人物は動画サイト利用者の犯行と見て捜査を・・・。続いてのニュースです。・・・下北市市内で連続的に発生している通り魔事件ですが、本日未明に同一の人物の犯行と思われる事件が発生していたとのことです。被害にあったのは下北市に住む・・・で、関連があると思われる他の事件の被害者と同じように鋭利な刃物で複数回切りつけられるなどの・・・』

「下北も物騒になったもんねえ~。あんた達も気をつけなさいよ」

 栞奈が作業片手に言った。今ニュースで言っていた下北市の通り魔事件のことだろう。先週くらいから俺達の住む下北市で発生している事件で、確かこれまで四人くらいが被害を受けていたはずだ。同じ市内とはいえ広い市であるからそうそう自分が巻き込まれるとは思わないが。

 まあ、実際自分の住む街で大きな事件が起きていても、自分が巻き込まれなければ他人事にすぎないものだななどと思いつつ、混ぜ終えた納豆を白米にかけた。

 

 

 

「ん、もうこんな時間じゃんアゼルバイジャン。じゃあ母さん、俺出かけるから」

「はいはい、気をつけていってくるのよ」

「おっす行ってきまーす」

 今日は迫真空手部の部活が休みなので、先輩の三浦と、後輩の木村と遊びに行く予定があるのだ。時計の針は既に八時近くを差していた。

 集合場所の駅前についた時には、既に二人が待っているところだった。

「あ、先輩来ましたね」

「野獣遅いゾ~。あくしろ~」

 二人は俺と同じ、迫真空手部に所属する仲間だ。私生活でも仲がよく、偶にある部活がない週末などにはこうしてこの三人でつるんでいる。ちなみに野獣と言うのは俺のあだ名だ。

「おまたせ!二人とも早いっすね」

「そうなんですよ。三浦先輩が早くゲームセンター行きたいって僕の家に押しかけてきて・・・」

 木村が苦笑いしながら言った。

「景品にでっかいポッチャマのぬいぐるみがあるんだゾ。誰かに取られたら困るよなぁ?」

「大丈夫っすよ~、そんなの朝一で取りに行こうと思うのは先輩くらいですよ」

「あ、そっかぁ・・・」

 二人と軽口を交わしながらゲームセンターへ向かって歩き出す。空は晴れ渡り、既に真夏を感じさせる日差しが降り注いでいる。

「そういえば最近駅裏にぃ、上手いラーメン屋の屋台、来るらしいんですよ。良かったら夜、食っていきませんか?」

「お、食いてえなぁ」

「いいですね、僕も食べたいです」

「よし、じゃあ決まり!夜はラーメンな!」

 

 

 

 下北市の郊外には、一つの歴史ある神社がある。その名を博麗神社という。その社の軒先で、今日も巫女が茶を啜っていた。

「ぷはぁ、今日もいい天気ね」

 彼女こそが博麗神社の今代巫女、博霊れう。博麗神社は歴史こそ深いもののそれほど大きな神社というわけではない為、年がら年中参拝客が訪れるわけではない。この時、珍しく一人の来客が、博麗神社に足を踏み入れていた。

「・・・来たみたいね」

「れうさん?あ、どもこんちゃーす。またサボりっすか?」

「あんたには言われたくないわよ、エセ神父。私はただの休憩中よ」

 れうに「エセ神父」と呼ばれた男は、やはりその風貌からして神父とは見て取れぬ様子である。彼を一言で表すならば、チャラ男。茶色に染めた長髪、ラフな服装、そして言葉遣いに至るまで、俗に神父という職に就く者に対する印象とはかけ離れていた。

「で、何時になったら最後の一人が見つかるわけ?いい加減始めないと、殺気立ってるやつがいるわよ」

「そうそう、そのことなんだけどね、もうちょっとだけ待ってくれよな。で、れうさんにお願いがあんだけどぉ、聞いてもらえっかな?」

「皆まで言わなくてもわかるわよ。あれの対処でしょ」

 二人は何かを打ち合わせるような会話を交わしている。それはこれからこの下北市で始まる戦いの幕を開けるための前説のようなものだ。

「まだ役者が全員揃っていないのに大衆の目を引くような事されると困るんだよね。まあちょっとお灸を据えるくらいでいいからさ、パパパッと頼むよ!」

「それはいいけど、そっちも早く最後の一人を見つけてよね」

「わかってるって、ヘーキヘーキ!じゃあそういうことで、はい、ヨロシクゥ!」

 最後までどこか飄々とした態度の「エセ神父」は、次の瞬間にはそこからいなくなっていた。代わりに、嫌に薄ら寒い、真夏のそれとはまた違う生温い奇妙な風が、れうの髪を揺らした。

「・・・厄介な男」

 それだけ言うとれうもまた、役目を果たすべく何処かへと向かうのであった。

 

 

 

「ホンットに頭に来ますよ!!なんで今日に限って屋台来てないんですかねえ!!」

「ラーメン食べたかったゾ・・・」

 田所が怒声を上げた。三浦は対象的に落ち込んだ様子でトボトボと歩いている。その手には大きなぬいぐるみが抱えられていた。

「まあまあ、そういうこともありますって。適当にどっかのラーメン屋入りましょうよ」

 二人を宥めるように木村が行って聞かせた。というのも、夜に行こうと話していたラーメン屋の屋台がどこにも見当たらなかったのである。

「といってもこの辺に上手いラーメン屋なんてないからな・・・」

 田所は納得の行かない様子で歩いている。このあたりは店も少なく、比較的暗い町並みが続いているため、人通りも少ない。ふと朝聞いたニュースを思い出した。

「そういえばこの辺で・・・」

 その時、急にゾクッと背筋に寒気が走るのを感じた。まさかそんな、お約束のようなことが、と思いつつ後ろを振り返る。一人の女が歩いていた。いや、ただそれだけなのだが、なんとも言い難い異様な雰囲気を感じるのだ。

「先輩?どうしたんですか?」

 木村が怪訝そうに、立ち止まった田所に行った。木村は何も感じなかったようだ。

「いや・・・」

「・・・血の匂いだゾ」

 三浦のつぶやきに、田所も、木村も一様に驚きを隠すことが出来ない。木村は何を言っているんだこの池沼は、という表情をしているが、田所は合点のいった気持ちであった。異様な雰囲気の一つは、血の匂いが僅かに鼻につくという違和感だった。

「三浦さん、あれって・・・」

「多分、最近この辺で事件を起こしているという通り魔・・・だと思うゾ」

 突拍子もないことを言っているように思われると思うが、三浦も迫真空手を体得している者、人一倍感覚は鋭い。おそらく田所よりもより正確に捉えているはずだ。その彼が言うのだからまず間違いないだろう。

「通り魔って、どうするんですか。警察をよぶとか?」

「いや、警察に伝えたとして信じてもらえるとは思えない。多分現行犯とか、事件を起こした後とかじゃないと動いてもらえないだろう。・・・三浦さん、奴を追ってみませんか?」

 三浦は左手を顎に当て、思案しているようだ。彼はこう見えて思慮深い。

「よし、追ってみるゾ。あの匂いは、一般人には出せないはずだゾ」

 

 

 

 血の匂いを纏った女を尾行して数分、ひとまずのところ異常は見られなかった。特に不審な行動を取るようなこともなく、暗い道を歩いているのみだ。

「・・・なんかこれじゃ、僕達のほうが不審者みたいじゃないですか?」

「静かにしろ、木村。こういうことで三浦さんが間違えることはほとんどないんだぞ」

 木村の疑問は最もだが、田所の言うように三浦の予感は気の所為で済ませられる程度のものではないのだ。

「それとも木村、先輩の感覚が信じられないっていうのかよ?」

「い、いやそんなこと・・・」

「ん、おい、あいつ階段を降りていくゾ」

 三浦の言うとおり、女は階段を下っているようで姿が見えなくなる。

「あそこは河川敷ですよね。一体あの女、どこにいくつもりなんでしょう」

 女を見失わないよう、急ぎ足で階段へ向かう。しかし。

「ッ!?いない!?」

 女はどこにも見当たらなかった。女が下りた階段の先はほとんど開けた土地だ。見失う要素はほとんどなかった。河川敷といえども整備されており、街灯もあるためこの短時間で夜闇に紛れるような遠くまで移動したとは考えづらいが。

 思わず階段を駆け下り、当たりを見回す。

 

「こ ん に ち は」

 

「ッ!」

 背後、階段の上から声がする。低いが、女性の声だ。

「お兄さん達、気配隠すのうまいな。始めの数秒は気が付かなかったよ」

 尾行が気づかれていたのも驚くべき点であるが、何より、何時背後を取られた?・・・全く気配を感じることができなかった。

「野獣、こいつはただの通り魔なんかじゃないようだゾ・・・!」

 三浦が身構える。田所も、言われるまでもなく女の恐ろしさに気がついている。

「私と戦おうと言うのかね?」

 気のせいだろうか、女がその細目を僅かに見開かせると、強烈な威圧感を受けると共に女の目が妖しく煌めいたように見えた。

「ふふっ、こうなると悪戯心に火がつくな。そろそろ無抵抗の人間を殺すのにも飽きてきたところだったから嬉しいよ!」

 次の瞬間。三浦は凄まじい打撃を受けて吹き飛ばされ、地面を転がることとなった。

「・・・!?なっ、三浦先輩!?い、一体何が・・・!?」

 何が起きたのかわからず困惑する木村だが、田所は、何が起きたのかわかったが故に困惑していた。己の見たものが間違いでなければ、女が階段の上から飛び、放った蹴りで、三浦が吹き飛ばされたのだ。一回り以上も体格の差がある、なんなら少女と言っても差し支えない女の一蹴りを受けただけで。

 田所の脳内に警鐘が鳴り響く。この女は人外の類、恐ろしい力の持ち主であると。

「なあんだ、つまらないな、この程度?まあいいや、せめて殺す前に楽しませてよ。死んだほうがマシって思えるまで踏み潰して上げるからさ」

「ッ!木村!三浦さんを背負って早く逃げろ!!」

「先輩!?でもっ・・・!」

「大丈夫だって安心しろよ!俺が時間をかせぐ!そしたら俺も逃げるから!」

 田所が戦闘態勢を取り、細目の女に相対した。女はまるで争いを知らぬ少女のように、拳を構えることすらしない。

「わかりましたっ・・・!先輩、必ず生きて帰ってください・・・!」

 そういうと木村は三浦が吹き飛んだ方へとかけていき、彼を担いだ。予想に反し、女はそれをつまらなさそうな顔で眺め、ついに三浦を追撃することはなかった。

「なんのつもりなんですかねぇ・・・ッ!」

「あんたのほうが楽しませてくれそうだったからさ、死ぬ気で来てくれるんだろう?かかってきなよ」

「言われなくてもいきますよー、いくいくッ!」

 田所は右手を空にかざし、力を込める。その手を中心に、夜の闇が集まっていくようで、次第にそれは一振りの黒い刀へと姿を形作った。

「・・・邪剣『夜』。征きましょうね――ッ!」

「へえ・・・。お兄さん魔術師だったんだ」

 田所の最後の隠し玉、それが母栞奈より教えを受けた魔術だ。それ単体で戦えるほどの素質はなかったが、迫真空手をより引き立てる程度のものにはなっているつもりだった。

「楽しませてくれると嬉しいよ!・・・じゃ、死のうか」




この作品には、クッソ汚い淫夢要素が含まれます。閲覧の際には予めご注意ください。(激遅注意喚起)

浅学故に設定等ガバガバなので、気軽に間違いの指摘などしてくれると嬉しいよ!読者様がくれる感想はなんでも嬉しい!

というかサーヴァント召喚まで行けなかった・・・。すみません許してください!次回必ず召喚まで書きますから!
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