Aqoursとバイト戦士   作:Re:クロバ

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第2話:お風呂が壊れたバイト戦士

「しゃっせー。400円になりやーす。あじゃじゃっしたー」

 

これがコンビニのスタンダードスタイルらしい。現にバイトの先輩が隣で実践している。なるほど、真面目に接客してきたのだが、こういうのをナウいというのか。

 

現代っ子は流行に敏感だからな。

よし、俺も試してみよう。

 

「し、しゃっ……え?」

 

目の前に置かれたのは、カフェイン錠。そしてそれを出したのは側頭部にお団子を乗せた少女。

 

──か、カフェイン錠……?未成年がカフェインを進んで取るのか?発育に問題があるって言われてるけど……まさか、これ以上発育しないつもりなの?と、失礼だとは分かっていながらも胸元をちらりと見る。

 

「あの……レジ……」

 

あ。忘れてた。いけないいけない、何をやってるんだ。

 

お団子少女に指摘されて俺はカフェイン錠を通す。本来ならば年上として未然に使用を防がねばならないけど……ま、他人だし。ナウいJKは気持ち悪いで一蹴してくるだろうし。

 

「ろ、680円にな、なりやーす。あ、1080円預かりやーす。うぃっす、うぃっす。どぞ、釣りの400円っす。あじゃじゃしたー」

 

本当にナウいのか?めっちゃ馬鹿にしてる表情してるんだけど、この娘。先輩の手本がまさか……いけなかった?あの人……バイトリーダーだぞ?ば、バイト戦士を舐めやがって……!

 

「……ぷふッ」

 

あ、今確実に嘲笑された。泣き寝入りするかも。ダイヤちゃんたちと同い年くらいの娘に馬鹿にされるのってここまで堪えるんだね。

 

「……あ、あがりやーす。う、うすうす。ウイッス」

 

「あぃー、ッ疲れしたー」

 

まぁ、そろそろマクドへ行く時間だし彼女のことも忘れよう。

 

けどなぁ……なんか露骨にフラグを建ててしまった気もするんだよなぁ……

 

 

 

「えー、テキヤキバーガーセッ……あ」

 

あの娘だ。現在、俺はスマイルを散布するクルーと成り果てていたのだが、まさか目の前にさっきコンビニでエンカウントした少女が来るとは。

 

「えっ……?あ……あぁ」

 

察されたよ。色々と。そして見事なまでにフラグを回収。主人公補正でもかかっているのでは?と、変なことを考えてみる。

 

「あの……ど、ドリンクは……」

 

「え?えーと……──」

 

──なんだこれ。

 

結局のところ彼女はコーラを選び、出来上がったセットを持って帰って言った。しかし……

 

「どこかで見たことあるんだよな……」

 

果たしていつ見たのか?けれど、店内は盛況してきたので俺は思っていたことを頭の片隅に留めることにした。

 

 

 

 

さぁ、今度こそバイトは終了だ。

 

家の玄関の入口を開け、中へと入った。少しほこりっぽい。また掃除しないと。

 

けれど、こんな時間に銭湯は開いてるかな?最近、シャワーが出なくなったからな。

 

業者に来てもらおうと思ってるほどなんだけど……そのためのお金がまだ貯まっていない。シフト増やそうかな?

 

仕方ない……もの凄く申し訳ないんだか、あの手を使おう。

 

 

 

 

「ご、ごめんくださ~い」

 

「え?……あ、清田くん。いらっしゃい。今日も?」

 

「あ、えーと……まぁ、はい。申し訳無いんですが…」

 

「大丈夫。お客さんはもう就寝なさったから。あ、大浴場を貸す代わりに…」

 

「わ、分かってます。風呂掃除と明日の朝ごはんの仕込みのお手伝いですよね」

 

「うん。ありがとうね、いつも」

 

いや、それをさせているのはそっちでは?と、言えたらなぁ……

 

俺は宿屋『十千万』に夜遅くにだが、来ていた。もちろん、宿泊するためではなく入浴のため。

 

近所にお風呂を快く貸してくれる可能性が高いのはここしか無かったのだが……本当に申し訳ない。

これでなにかと連続3日目だったりする。ほぼ常連化してしまった俺の姿に飽き飽きしていないだろうか。

 

「あの……じゃあ」

 

「はい、どーぞー」

 

眠いのだろうか、普段は真面目な美渡さんも気抜けしているようだ。

 

持参したお風呂セットを小脇に抱えて、廊下をお客さんに迷惑にならないように歩いていると、上階からそんな俺の努力を踏みにじるかのようにドッドッと音を立てて階段を降りてくるのがわかった。

 

「あっ、冬夏さんだー!こんばん──「しっ、静かに、千歌ちゃん!お客さんに迷惑だって!」

 

「冬夏さんの方がうるさいんじゃ……」

 

誰のせいだと。

 

「もしかしてお風呂?」

 

「そーだよ。ウチの風呂はまだ復旧してないんだ」

 

「それは……辛いね」

 

「分かってくれる?」

 

「もちろん!」

 

夜中だというのに、これだけ笑ってくれるのか、この娘は。

 

橙色の髪に大きな瞳。ルビィちゃんと似たような感じ?いや、あの娘はここまで陽気ではないしなぁ。別に馬鹿にしてるわけじゃないけど。

 

「ははっ。こんな夜遅くに笑顔をありがとう」

 

「それが私の仕事だからね!」

 

「仕事?あー……スクールアイドル?」

 

「そうだよ!皆に輝いてる私たちを見てもらうんだ!その為にもこうやって普段から笑顔じゃないとね!」

 

それは感心だな。今度、接客する時に参考にしようかな。その千歌ちゃんの心意気と──

 

「千歌ちゃんの可愛らしい笑顔を」

 

「……」

 

「ん?」

 

「えっ!?」

 

──ヤベッ、声に出てた。

 

「ふ……うわ……は、早くお風呂入ってー!」

 

「お、大きな声出さない!め、めめ迷惑になるでしょうが!」

 

流石にそれはうるさすぎるってば千歌ちゃん!ほら!美渡さんが怪訝そうにこっちを見てるから!

 

「い、行ってきまーす!」

 

「……んもぅ」

 

さっさと入浴して退散することにしよう。あ、そういえば手伝いあるんだった。まぁ……迷惑かけてしまったし、仕方ないか。

 

それにしてもさっきの千歌ちゃん。やけに顔が赤かったけど、体調悪くなったとか?それなら心配だけど……高校生だから体調管理くらいは出来るかな。

 

心配ごとは他所に追いやって、入浴するとしよう。

 

 

 

 

次の日。

 

今日は珍しくオフの日だ。さて、何をしたものか。バイトのせいで早起きが習慣となってしまったので……暇だ。

 

よし。

 

気分転換に沼津に行ってみるか。たまにはブラブラと目的も無しに出歩くのも悪くは無いだろう。

 

 

 

 

「う~……」

 

午前11時。もちろんこの唸り声は俺のものでは無い。目の前にいる少女。そう──

 

昨日のお団子少女だ。

 

現在ゲーセンにいる俺は、何をしようかと探していたところだったが、全く別のものを探し出してしまったようだ。

 

果たして、俺の幸運のパラメータはいくらぐらいなのか。偶然とはいえ、同じ人に三度出くわすとは。

 

すると、向こうもこちらに気づいたみたいで、ハッと身構える。その際に、ガタッと音がしたので下を見ると、そこにあったのは携帯ゲーム機。

 

すぐに彼女のものだと悟った俺は純粋な親切心からそれを拾ったが、その画面に映るのは見覚えのないゲーム。

 

って、これってもしや……

 

「これ……もしかして」

 

「かっ、かえして私の!」

 

「「猛狩3rd!」」

 

「え…?」

 

「あの……これって……昨日発売の猛獣狩人3rdだよね?ギルドカード表示になってるけどプレイ時間20時間って……まさかオール?」

 

「んなっ……!?み、見ないで!」

 

ひったくられた。拾ったのは俺なのに。

 

しかし、これで合点がいった。あのカフェイン錠も猛狩3rdを徹夜でするためのものだったのか。

 

「なるほど、カフェイン錠の理由はこれか」

 

「えっ?……って、アンタ昨日の……」

 

やっと気づかれたか。

 

「ヤバいヤツ……」

 

──やっぱ、気づかないで欲しかった。

 

ちょっとJKに色々と馬鹿にされ

、精神にもキてしまったので、退散しよう。

 

「はぁ……ダイヤちゃんとは大違いだ」

 

あ、声に出てた。悪い癖だ。

 

しかし、どうしたものか。少女は目を見開き、俺に質問してきた。

 

「ダイヤ?アンタダイヤを知ってるの?」

 

「──?え、まぁ、うん」

 

「黒澤家の関係者?そ、それなら失礼なことをした…し、しました。その……こ、このことはダイヤには言わないように」

 

「いや……お手伝いだけど……」

 

「んなっ!?よ、ヨハネとしたことが……!一生ものの不覚!ただのバイトにここまでへりくだってしまうとは……!」

 

「よ、よは……?」

 

「と、とにかく!ダイヤには黙っててよね!」

 

あ、逃げ足だけは早いんだな。

 

──なんだか……不思議な娘だったな。さてと……じゃあ、俺は本来の目的に戻ろうか。お、このゲームなんて面白そうだ。

 

しかし、猛狩3rdか……余裕が出来たら買ってみようかな。それを気づかせてくれただけでもあの娘には感謝だ。ヤバイなんて言われたけどさ。

 

 

 

 

 

 

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