姫野四葉は勇者である   作:水甲

15 / 50
15 末路と現実

やってみるものだ。神の力がそれなりに使いこなせるようになったから、切り札としてこの姿になれた。

 

私は迫りくるバーテックスの尻尾を鏡で防ぎ弾いた。このサイズだと一人で戦うのは難しいけど……

 

私はバーテックスの周りを無数の鏡で囲んだ。鏡には私の姿が映し出され、その中から無数の私が現れた。

 

「勾玉よ。やつを貫きなさい!!」

 

無数の勾玉がバーテックスの身体を貫いた。中が弄くられるのが苦しいのか、何とか逃げ出そうとしていた。仕方ない、とどめを刺すか

 

「バラバラになりなさい」

 

無数の私が同時に勾玉を引くと、バーテックスの身体がばらばらになった。これであとは残りの敵を……

 

「かはっ!?」

 

残りの敵を倒そうとしたけど、突然私は血を吐いていた。なんで……それに何だか力が……

 

「四葉さん!?」

 

「あんず……ちゃん……すぐに毒を……」

 

駆け寄ってくる杏ちゃん。私は解毒のため、剣を腕に突き刺した瞬間、意識が消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと自分の部屋にいた。だけど自分の部屋だとは思えない。そして部屋の中心に巫女装束姿の女の子が一人いた。

 

「あなたは……」

 

女の子は悲しげな表情で私を見つめていた。この子、どこかで会ったことがある気がする。一体何処で……

 

「こうして会うのは初めてだね。四葉」

 

彼女の声を聞いてすぐにこの子が誰なのか気がついた。そっか会ったことがあるはずだよね

 

「ヒメノ様だよね」

 

「はい」

 

なんで私がこんな場所に来て、彼女と話しているのかわからない。それに彼女はずっと悲しい顔をしている。

 

「四葉、貴方はずっと戦い続けました。神の力も扱えるほどに……」

 

「うん、剣の力で人を癒やし、切り札も貴方の力を宿すことが出来るようになりました」

 

「………‥その結果、貴方は死にます」

 

死ぬって……なんでそんな事をいきなり言われなきゃいけないの?と普通だったら怒鳴り散らしたりするのだろうけど、彼女がそんなことを言う理由はわかっている。

 

「人の身で神の力を使えば使うほど、人の身では耐えきれず、いずれ死にます」

 

「なんとなく分かってたことだよ。剣を使ってからね。でもね、そうしなければならなかったから……」

 

私は笑顔でそう告げるが、彼女はまだ悲しそうにしていた。大丈夫、これから先の末路を知っても、私は最後まで戦い続けるから……

 

「ごめんなさい。こんな運命を背負わせて……」

 

「いいんです。みんなの守り神になれるのなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

大型バーテックスとの戦いで、姫野さんは意識不明の重体。伊予島さん、土居さんの二人は命に別状はなかったとは言え、治療のためこれから先の戦いには参加できない。

 

そして大社からカウンセリングを受けるようにとの指示が入っていた。理由としては伊予島さんが言っていた切り札の影響についてだろうけど……カウンセリングで何かが分かるわけは……

 

「千景さん」

 

「………何しに来たの?」

 

病院の待合室で一人で待っていたら、彼に出会った。

 

「カウセリングですか?」

 

「上里さんからある程度のことは聞いてるわ。あなた、大社の人間なのよね」

 

「えぇ、そうですよ」

 

「何も知らない人々に嘘をつく気分はどういう気分かしら?」

 

私がそう言った瞬間、何故か彼は悲しそうな表情をしていた。一体急にどうしたのだろうか?

 

「嘘というのは、勇者たちが遠征に成功したということですか?あれは僕がというよりも他の幹部の仕業ですよ。少しでも人々に希望をもたせたいからっていうね」

 

希望……聞こえは良い。だけど……いつかはバレるんじゃないの?

 

「………それにそんな人達の思惑にはずれて、人々は気がついていますよ」

 

「どういう……意味?」

 

彼の言った言葉がよくわからなかった。だけど彼は立ち上がり、どこかへ去っていこうとしていた。ここで呼び止めるべきなのだろうけど、何故かそれができなかった。

 

『あの男はうそつきよ。あの男が言っていることは全部ウソ』

 

何故か頭のなかに声が響く。一体この声は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉SIDE

 

「………四葉」

 

病院のベッドで眠り続ける四葉。医者が言うには度重なる戦いの疲労で眠り続けているとのことだけど、大社やひなたの見解では四葉は神の力を使い続けた結果らしい

 

「若葉ちゃん、四葉さんはまだ……」

 

「あぁ、眠り続けてる」

 

「………剣の力で自分自身の生命力を他者に与え、ましてや切り札として神の力を使い……もしかしたら……」

 

「ひなた、それ以上は言わないでほしい。あいつはこの事をわかった上で杏や球子を助けるために自分を犠牲にしたんだ」

 

「……‥」

 

私は眠り続ける四葉の頬にそっと触れた。守り神としてみんなを守りたいって願い続けた。だけど四葉のことは誰が守ってやれば良いんだ。決まっている……

 

「これからは私達がお前を守るからな。四葉」

 

決意を固めた私。ひなたもどこか満足そうにしていた。

 

「それでこそ若葉ちゃんです」

 

「きっとみんなも同じ思いのはずだ」

 

改めて確認するようなことじゃない。私はそう願っていた。

 

「それと若葉ちゃん、大社から新たに判明したことですが、切り札のことです」

 

「切り札の?」

 

「大社が改めて調べた結果、切り札は肉体のダメージだけではなく、精神的にもダメージが現れ、攻撃性の増加や自制心の低下が見られ、言語等にも大きく現れるそうです」

 

「……杏が思っていたとおりだな。だが、これから先の戦いであのクラスのバーテックス。それよりも大きなやつが来る可能性がある」

 

「必要に応じて若葉ちゃんと友奈さんに実装された切り札を使用するということですか」

 

「あぁ……」

 

私の『大天狗』友奈の『酒呑童子』今後のことを考えるとそれを使う必要があるはずだ。だけど負担が大きい……

 

「友奈には?」

 

「まだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

姫野さんの様子を見に行くと病室から乃木さんと上里さんの声が聞こえてきた。扉越しだからよく聞き取れないけど……

 

『友奈には………』

 

『仕方ないことです……彼女は』

 

『下手すれば……』

 

一体何を話しているの?高嶋さんのこと?

 

『二人は大切な友人である高嶋友奈を犠牲にするつもりよ』

 

またこの声!?一体誰なの?

 

『まだ気がつかないの?』

 

咄嗟に後ろを振り向くとそこには私がいた。私は笑みを浮かべていた。

 

『彼女たちはより強い敵との戦いに向けて、高嶋友奈に危険な切り札を使わせようとしている。自分たちが助かるために……』

 

そんなの嘘、嘘に……

 

『彼女たちは所詮大社の言いなり……それでいいのかな?』

 

そんな事は………そ……ん……な事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作と違う展開のため、壁の外のレオ・バーテックスと友奈の酒呑童子初登場はカットです。

千景メインのためか四葉の出番……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。