姫野四葉は勇者である 作:水甲
神樹様の神託では、次の戦いではこれまで以上の戦いになるらしい。現状の戦力は若葉ちゃんと友奈ちゃんと歌野ちゃんだけ、杏ちゃんと球子ちゃんはまだ怪我が治りきらず、千景ちゃんは勇者になれなくなっているからだ。そして私は………
「ママ、お話って何?」
神宮家の有る一室で私は白い衣装を身にまとい、姫乃とある話をしようとしていた。
「ママが化け物と戦っているのを知っているよね」
「……うん」
「今度またあの化け物たちと戦うことになるけど、その戦いでママは……」
まだ幼い子に本当のことを言っていいものか……理解してくれるかどうかもあるし……
「頑張って頑張って戦うんだけどね。その後ママは姫乃前からいなくなっちゃうの」
「いなくなるって……死んじゃうの?」
死についてわかってるんだ。そうだよね。あんな光景を見てきたんだから、分かるよね。
「死んじゃうのかわからないけど、大丈夫。ママは見守っているから……そのためにこれを」
私は姫乃に勾玉を渡した。姫乃は不思議そうに勾玉を見つめ……
「これって……」
「いつでも見守ってるからね。姫乃。ちゃんと歌野ちゃんたちの言うこと聞くんだよ」
私は姫乃を抱きしめるのであった。こうして抱きしめてあげるのはこれで最後だよね
姫乃が部屋を出ていって、私が次に呼んだのは若葉ちゃんだった。
「四葉、用ってなんだ?」
「若葉ちゃん、次の戦い、物凄く大変なことになるのはわかってるよね」
「あぁ、だが逃げたりはしない」
「そうだよね。それでこそ若葉ちゃんだよ。それでね……これを」
私はポケットから小さな鏡がついているアクセサリーを取り出し、若葉ちゃんに渡した。
「これは……」
「私が使ってた手鏡の破片を加工したものだよ。言うなればお守りで……未来まで引き継いでほしいかな」
「未来まで……四葉、これはお前の形見ってやつか?」
「うん、今のうちに形見分けをって思ってね。3つある内、一つは神宮家……言うなれば大社に、一つは姫乃に、そして一つは若葉ちゃんに……大切にしてね」
「………やっぱりこんな方法しかないんだな」
若葉ちゃんはうつむき、身体を震わせていた。本当にごめんね。辛い思いをさせて……
「若葉ちゃん、大丈夫。ちゃんとみんなのこと見守ってるから……」
みんなに形見分けをしてから数日が経った。その間、私は儀式を始める準備を終え、大社が用意した儀式の間に来ていた。
「そろそろ若葉ちゃんたちが戦いを始める頃だよね」
「はい……乃木様も高嶋様も切り札である『大天狗』と『酒呑童子』を使いこなしているはずです。万が一負けるということは……」
「精霊の影響がある以上、その万が一ということがありますよ」
私がそう言うと大社の人は黙り込んだ。そして儀式の間に誰かが入ってきた。それは千景ちゃんだった
「千景ちゃん……」
「貴方がいう儀式は、もう一人必要だって聞いた。自身の思いと他者の思いが重ねることで貴方がやろうとしていることが出来る」
「そう……そのとおりだよ」
「手伝ってあげる………」
千景ちゃんは勇者に変身し、大鎌を構えた。ありがとう、こんな役割を背負ってくれて……
「……聞いたわ。彼に頼んだこと……いつか子供が出来た時に、姫乃と私達の子供を結婚させるって……」
「男の子かどうかわからないけど……繋いでほしいの。私がいたって言うことを……」
「…………」
千景ちゃんの頬から何かが流れていた。本当にごめんね。
「もしかしたら私は乃木さんたちを傷つけたかもしれない。そんな未来があったかもしれない」
「うん」
「でもそうならなかったのは彼……蛍と四葉、貴方がいてくれたから……」
「うん」
「だからかな?親友を殺すことは出来ないよ」
「千景ちゃん、ごめんね。そしてありがとう」
私は短刀を自分の胸に突き刺し、千景ちゃんが私の首を切り落とした。
「ごめん、ごめんなさい……」
気がつくとヒメノ様がいた世界に来ていた。ヒメノ様は悲しそうにしていた。
「こんな運命を背負わせてごめんなさい」
「いいよ。そしてずっと見守っていてくれてありがとうね。神様」
「………私は消滅しますが、貴方はこれから私の分まで……」
「うん、頑張るよ」
ヒメノ様は悲しそうにしながらも笑顔で消えていった。そして私は金色の光に包まれ、神秘的な衣装に姿を変えた。
「待っててね。若葉ちゃん、友奈ちゃん、歌野ちゃん」
私はその世界を飛び出し、樹海へと向かうのであった。すべてを終わらせるために……
次回で乃木若葉の章最終回です。そして物語は……