姫野四葉は勇者である 作:水甲
樹海へとたどり着くと激しい戦闘が起きているのがすぐにわかった。それに遠くからでも分かるくらいの大型のバーテックスの姿も見えている。
「敵も本気って言うことだね。とりあえずは神樹に近い所から……」
私は勾玉をいくつも重ね翼に変えた。依代になるものもなくっても武器が使えるっていうのは神の力って言うことなんだよね。翼を羽ばたかせ、神樹に近いバーテックスのところへと行くとそこには血だらけになった友奈ちゃんと歌野ちゃんの二人がいた。
「二人とも、大丈夫?」
「つぅ、その声……よっちゃん……本当に神様になったんだね」
「でも姿が見えないよ……」
私の姿が見えてない?これも神様の宿命ってやつなのかな?
友奈ちゃんは酒呑童子を発動してるけど、それでも大型バーテックスには苦戦してるみたいだ。
「二人とも、ここは私に任せて……」
白く輝く剣を取り出した瞬間、地面から大型バーテックスが姿を表した。地面に隠れて攻撃するタイプ……でも、それぐらい読めてるよ。
剣を軽く振った瞬間、バーテックス一体は真っ二つに切り裂かれ、消滅していった。
「まずは一体……」
今度は卵型の何かが飛んできた。鏡で防ぐが反射できずその場で爆発した。当たった瞬間爆発すれば反射できないって言うことか。
「それなら」
勾玉を取り出し、ミサイルを撃ってきたバーテックスの発射口を縛り上げ、もう撃てないように破壊し、剣で真っ二つに切り裂いた。
「すごい……敵が見る見るうちに……」
「ちゃんと見たかったな……よっちゃんのかっこいい姿……」
残った一体を勾玉で縛ろうとするけど、何故か幾つもの盾に防がれた。こいつの盾、どこかで見た覚えが有るけど……
「どんな盾でも切り裂けるよ」
盾を剣で切り裂き、自分の右腕に勾玉を巻きつけ、バーテックスを殴りつけた。
「こっちは終わりだね。あとは……」
残ってる敵と戦ってるのは若葉ちゃんだね。今すぐに行くから………
敵が集まっている場所にたどり着くと大型バーテックスの水の塊の中に取り込まれていた。私は剣で水の塊を切り裂き、落ちそうな若葉ちゃんを何とかキャッチできた。
「うぅ……誰?」
「………若葉ちゃん、お待たせ。頑張ったね。あとは任せて……」
「その声……四葉なのか?」
もう私の姿は誰も見ることが出来ない。悲しいことだけど、仕方ないことだよね。若葉ちゃん、今はゆっくり休んで……
「あとは私が頑張るから」
私は3つの武器を一つに重ねると、白く輝く太刀に変わり、向かってくるバーテックスをすべて切り裂いた。
「神刀!!姫葉刀!!」
大型バーテックスを全て倒し終えると樹海化が解けていった。これで戦いが終わる……そのはずだけど……
「結界の外から何かがいる」
今までであったバーテックスよりも強大で私の力によく似た存在を感じ取り、私は壁の外へと出た。そこには今までよりも巨大なバーテックスがいた。
「貴方が最後の敵ってことね」
神刀を構え、巨大なバーテックスを切ろうとした瞬間、上空から巨大な何かを感じ取った。
太陽のように眩く、全てを焼き尽くす何か……あれが……
「天の神だっていうのかしら?」
『………………』
ソレは巨大なバーテックスに何か指示を出した瞬間、巨大バーテックスは炎に包まれ、太陽へと姿を変えた。それにしても太陽と言うには人々を優しく包み込む光じゃなくって、人々を焼き尽くすような……
「いいわ。守り神としての力を見せてあげる!!」
太陽と天の神へと私は向かっていくのであった。
若葉SIDE
気がついた時は丸亀城にいた。あの時、私を助けてくれたのは……
「四葉!?」
「気が付きましたか?若葉ちゃん」
私のそばにはひたながいた。一体戦いはどうなったんだ?四葉がなんとかしてくれたのか?
「ひなた、一体何が起きたんだ?戦いは……四葉は……」
「そのことをお話するには……」
「お~い、ひなた~」
すると私たちの所に球子、杏、友奈、歌野の四人が駆け寄ってきた。四人ともどこに行っていたんだ?
「若葉さん、目が覚めたんですね」
「良かった……若葉ちゃんも四葉ちゃんに助けられたんだね」
「みんな、すまない。教えてくれ……戦いは終わったのか?バーテックスは……世界は……」
「………そのことだけど、もう四国以外は全て滅ぼされたよ」
歌野の言葉を聞いた瞬間、意味がわからなかった。滅ぼされたってどういう……
「やはり神樹様が言ったとおりでしたね」
「若葉さん、四国の外は炎の世界に包まれて、バーテックスに囲まれています」
「………炎の世界?なんで!?四葉は………」
「神樹様曰く四葉ちゃんは結界の外で巨大バーテックスと戦い、勝利はしたのですが……その隙を突かれ、天の神によって四国以外滅ぼされました。神樹様は四国を守るために結界を張り続けています。ですがそれはいつまで続くか……」
世界は滅んだ………奴らの勝ちって言うことか……
「四葉ちゃんは結界の外で炎を静め、眠りについています。またいつか戦いが起きた時に、自分の力を授けられるものが現れるまで……」
あいつ……本当に頑張ったんだな。それなら今度は私達が頑張る番だ。いつかあいつの役割がなくなるように……
「四葉、信じてくれ。私達を……人類を……」
『うん、信じてるよ』
どこからともなく四葉の声が聞こえた。きっと見守り続けているんだな。
それからバーテックスの進行は私達が生きている間にはなかった。歌野と水都の二人が引き取った姫乃は四葉が消えた何年後に自分のことを『姫野四葉』と名乗るようになった。そうすればきっとまた会えるだろうし、すごくかっこよく優しい神様のことを未来に引き継いでほしいと言う思いからだった。その結果、姫野家に生まれた長女は『姫野四葉』と名乗るように定められるようになった。
千景と神宮は結婚し、幸せな家庭を築いていたが、時折千景は四葉のことを思い出すと辛い顔をしていた。あいつ自身、何かを背負っている気がする。
友奈は自分にできることが何かと考え、勇者としての力を神樹様に全て捧げたらしい。もしかしたら未来に託したのだろう。
今は結婚して幸せみたいだ。
球子、杏、歌野、水都の四人もそれぞれの家庭を築きながらも、未来へ何かを託していった。
そして私とひなたは……
「お母さん、これ何?」
「これはな……お守りだ。優しい神様がお前のことを守ってくれるはずだ」
「そっか、でもいいの?もらっても……」
「これは乃木家に代々伝えてほしいからな。お前が持っていろ」
「うん」
四葉が託したものはこれからさきの未来、託し続ける。それがお前の願いだったな。
「若葉ちゃん」
「ひなた……」
「四葉さんの形見ですよね」
「あぁ、あいつが持っていたほうが良い。いつか、未来で返せれば良いけど……」
「そうですね。大赦も未来に希望を託すために勇者システムの研究と………」
ひなたは一本の短刀を取り出した。だけどどこか錆びつき、戦いには向かないような……
「二つの刀を作り出そうとしています。一つは炎を纏った刀、一つは水を纏った短刀……でも上手く行ってないみたいですね」
「神の力に近いものを作ろうとしているのか……無理だろうな」
「えぇ……あとは未来に託すみたいです」
「未来か……どうか平和な世界であってほしいな」
あいつが笑顔で過ごせるような世界で……あってほしい
これで乃木若葉の章、終わりです。
大赦が作ろうとした二つの刀は後々に明かされます。そしてそれぞれの子孫は鷲尾須美の章、結城友奈の章、勇者の章で登場予定です。
次回はちょっとした幕間的なものです。