姫野四葉は勇者である 作:水甲
22 新たな始まり
神世紀298年、私姫野四葉は走っていた。出来る限り全力で走っていた。なぜなら……
「何で転入初日で寝坊しちゃうんだよ~」
とある事情で私は今日から神樹館に転入することになった。そのため準備をしっかりやっていたのだけど、何故か家の時計が止まっていた。
「ちゃんと確認すればよかった……もう~」
文句を言いながら走り続け、自分がこれから勉強する教室の扉を開けた瞬間、何故か教室にいるみんなが振り向こうとしなかった。というより時間が止まっていた。
いや三人だけ振り向いてはくれた。
「えっと……貴方はどうして……」
「久しぶり~寝坊したの~」
「それにしたって遅刻だぞ~」
彼女たちはもしかして私と同じ……
すると突然花びらが私たちを包み込み、気がついたら木に覆われた世界に来ていた。ここが樹海……
「ひめちゃん、久しぶり~」
「園子ちゃん、お正月以来だね」
「何だ?何だ?転校生と知り合いだったのか?」
「うん~お家関係でね~」
「話は聞いてたけど、本当に園子ちゃんもお役目に選ばれたんだね」
「あの、三人共、今は……」
黒髪の子が怒った顔をしていた。そうだった。今はお役目に集中しないとね。私たちは端末を取り出し、アプリに浮かんだ紋章に触れる私は灰色の衣装に両手には勾玉が埋め込まれた拳具が装備された。
「わぁ、ひめちゃんかっこいいね~」
「そ、そうかな?」
「二人とも今は集中」
「まぁ、まぁ鷲尾さんも落ち着いて、ほら敵が来たよ」
またあの子に怒られちゃった。するともうひとりの女の子が間に入ってくれた。彼女はなんかいい子だな~
でも彼女の言うとおり敵が現れたみたいだ。
敵は大橋の方からゆっくりとこちらに近づいてきた。水の球体が両サイドについているっていうことは、水関係の攻撃をしてきたりするのかな?
「行くぞ!!おらっ!!」
間に入ってくれた女の子が斧で攻撃をするが、浅かったのかすぐに再生しまう。おまけに近づこうとすると敵の攻撃が邪魔で近づけないし……
「大丈夫?えっと……」
「銀!三ノ輪銀!」
「私は姫野四葉。どうする?水が邪魔で近づけないし……」
「だったらなんとかするしかないだろ」
そりゃそうだけど……すると水柱がこっちに向かってきた。気がつくのに遅れ避けることが出来ずにいると私たちの前に園子ちゃんが出てきて、槍の先を傘みたいに広げて防いでくれた。
「これ、盾にもなるみたい……でもちょっと耐えきれない」
「園子!?」
武器をある程度変えることが出来る。私は拳を構え、思いっきり前に突き出した瞬間、巨大な勾玉が攻撃を防いだ。
「おぉ!?すごいな四葉」
「なんとなくやってみたけど………」
敵の攻撃がなくなった。水切れとかと思ったら、離れた場所にいる黒髪の子に向かって攻撃を始めていた。距離が遠すぎてちょっと間に合わなそう。だったら……
「鞭に代わって!!」
私が叫んだ瞬間、拳具が鞭に変わり、攻撃を食らいそうになったあの子を鞭で縛り上げ、救出できた。
「あ、ありがとう……」
「姫野四葉。四葉でいいよ」
「こんな時に自己紹介は……」
「これから一緒に戦うんだから名前ぐらい知っておかないといけないから。貴方は?」
「………鷲尾須美」
「よろしく、須美ちゃん。それでどうする?戦った感じ、須美ちゃんの矢では攻撃が通らない。唯一攻撃が効くのは銀ちゃんの斧ぐらいだけど、近づくのは難しい」
「四葉の鞭で縛り上げるとかは?」
「普通ならそれでいいけど、縛って動きが止めきれるか……」
「それだったらみんなで協力すれば良いんだよ~」
園子ちゃんの言葉を聞いて、須美ちゃんも銀ちゃんもすぐに理解した。なるほどね。一人で戦ってるんじゃないもんね
「それじゃ早速!!」
私は鞭で敵の身体を縛り上げ、動きを止めるが、敵はそれでも前へと進もうとしていた。だけど園子ちゃんが一緒に鞭を持ってくれた。
「綱引きだね~」
「あんまり楽しくない綱引きだけど……」
何とか進行を止めようとするけど、敵は私達に向けて攻撃を放ってきた。だけど攻撃は全部須美ちゃんの矢が撃ち落としていく。
「銀ちゃん!!今!!」
「おおおおおおおおおお!!」
斧の連撃を喰らわせると敵は見る見るうちに消えていき、辺りに花びらが舞った。これが話に聞いた『沈花の儀』。これで私達の初戦闘は終わったんだよね。
ふっと花びらが舞う中、何かを見つけた。あれは……女の子?
『………けた』
「今なんて………」
花びらが私を包み込んでいった。一体あの子は……誰なの?