姫野四葉は勇者である 作:水甲
初戦闘も無事に終わった。うん、無事に終わったのは良いけど……
「…………はぁ」
私はイネスで一人待ちぼうけをしていた。初戦闘後、私たちは大橋近くに戻され、須美ちゃんたちは先生に車で学校まで戻ったのだけど、私はと言うと転入初日でこんな事になったこともあり、転入は次の日になった。
しょうがないと思いながら今日転入し、私の転入は終わったのだけど、休み時間のとき、須美ちゃんから祝勝会をやらないかとのことで、私は先に待ち合わせ場所のイネスに来ていた。
「何で転入初日でバーテックスが襲ってくるんだろう?いや、そもそも遅刻した私が悪いし……」
自己嫌悪しながら、私は首に付けていた勾玉を見つめた。
代々私の家系に伝わる家宝……長女に生まれた子は勇者の素質が高くそして……
「神の子………でもご先祖様たちはその姿を一度も見た事ないんだよね。本当に私にそんな力があるのかな……」
何だか暗くなってきた……こういう時は……でも人の目があるけどあんまり聞こえないように………
「ラ~ララ~」
誰にも聞こえないように私は歌を歌った。死んだお母さんが教えてくれた。辛い時や悲しいとき、気持ちが暗くなったら歌を歌ったら、そんな気持ち吹き飛ぶって……
歌い終え、少し暗い気持ちが吹き飛んだ。やっぱり歌をうたうのはいいな……
「わぁ~」
気がつくと園子ちゃんが目をキラキラさせた状態でいた。それに銀ちゃんと拍手している須美ちゃんもいた。
もしかして聞かれてた?うぅ……
「恥ずかしい……」
「いやー四葉見つけて声をかけようとしたら、ノリノリで歌ってるんだもんな」
「姫ちゃんは昔か歌がうまいんだよ~」
「何というかプロみたいでした」
須美ちゃん、それは言いすぎだよ。私の歌声はそんなんじゃないからね。
みんなに(特に園子ちゃん)に誂われながら、私たちは祝勝会でソフトクリームを食べていた。
「改めまして、姫野四葉です。本当は昨日からだったんだけど今日からみんなとクラスメイトになります」
「私は三ノ輪銀。よろしくな、四葉」
「鷲尾須美です。あの姫野さんは……」
「別に呼び捨てでもいいよ。もしくは園子ちゃんみたいにあだ名とか付けてもいいし」
「いえ、それは……」
須美ちゃんは何というか固いな~もう少し柔らかくなればいいのに……
「どうして昨日遅刻なんてしたんですか?本来は昨日が転入初日のはずなのに……」
「そ、それは……朝起きたら家中の時計が止まってて……」
「それは……何というか不幸ね」
まさか家中の時計が止まってるなんて思っても見なかった。おまけにバーテックス襲撃もあったし……
「はいはい、私からいい?四葉と園子って知り合いみたいだけど、家の関係とかで?」
「うんとそんなところかな?私の家と乃木家、あとは上里、高嶋、伊予島、土居、白鳥、藤森、神宮のお家って、物凄く昔からの付き合いでね。お正月とか集まったりして……」
「お父さんたちはお酒でワイワイしてる中、私達子供は子供で遊んだりしたもんね~」
みんなと楽しく遊んだのは楽しかったな……そういえば今頃みんな何やってるんだろう?
「上里家……それにさっきあげた名前って……大赦内のトップクラスの家柄の……」
「何ていうか園子もだけど、四葉も金持ちだったりするのか……」
「いや、私は別にお金持ちって言うわけじゃないよ。色々とあってね」
両親が死んでからずっと一人で暮らしてる。とは言っても、神宮家の人が保護者になってくれているから生活面は特に問題なく過ごせている。ただ一人っていうのは……
「う~ん、四葉!!」
「ひゃい!?」
いきなり背中を銀ちゃんに叩かれて変な声が出た。一体どうしたんだろう?
「今日はいっぱい遊ぶぞ!折角の祝勝会だし、盛り上げていこうぜ」
「う、うん」
もしかして暗い顔をしていたから気を使われた?それはそれで申し訳ない。
四人の少女たちを密かに見つめる私、やっと見つけた。私が求めていた人を……
『彼女は一人……私と同じ……』
両親がおらず、一人ぼっちになった。だけど私にも彼女にも友達が……仲間がいた。
『どうか私と同じ運命を辿らないでね』
そう呟くが、彼女には届かない……まだ届かない。