姫野四葉は勇者である 作:水甲
合宿初日の夜、私は温泉に浸かりながらあることを考えていた。それはあの時守り神様から聞かされた言葉
『貴方なら運命を変えられる』
運命って何?姫野家にどんな運命が待っているっていうの?それともこれから先何が起きるっていうの……
「はぁ」
「どうしたの~ひめちゃん、せっかくの温泉なのにため息しちゃダメだよ~」
「もしかして訓練がつらすぎて……」
「四葉ちゃん、ごめんね。無理させちゃって」
園子ちゃん、須美ちゃん、桃ちゃんが心配そうに見ていた。何だか心配かけて申し訳ないな~
「ううん、訓練が辛いって言うわけじゃないよ。ただちょっとね……」
今は話すべきじゃない。でもいつかはちゃんと話すから……
そんなことを思っていると、何かの視線に気がついた。視線の主は銀ちゃんだけど、さっきから何を見てるんだ?
「何ていうかさ……須美も薄々思ってたけど、桃さんと四葉の二人も何気にでかいよな」
でかいって何のことかと考え込んだ瞬間、すぐに私は理解した。いくら女子でもそういう話はセクハラになるんだけど……
「私はそこまででかくないからね」
「ふ、普通くらいだよ」
「そ、それとその手つきは何かしら」
「いや、どんなものかって思ってな」
それから銀ちゃんは私達の胸を揉もうとしようとし、ちょっとした騒ぎになり、安芸先生に怒られるのであった。
「あいつら……俺がいること忘れてないか?というか男一人って寂しすぎだろ。もう一人くらい誘っておけばよかった」
男風呂で一人そうつぶやく優であった。
それから私たちは残りの訓練を行い、少しずつ連携が取れていけるようになった。とはいえ未だに優くんと桃ちゃんの訓練は私以外の三人はクリアできずにいるのであった。流石に難易度高すぎじゃないか?
合宿が終わってから私は家で瞑想を続けていた。少しずつだけど私の言葉を守り神様に届けられるようになったのは嬉しいけど、会話するにはもう少し頑張らないと……
「守り神様。聞こえますか?」
『まだ聞き取りづらいわね。でも少しずつ成長していけてるよ』
「ありがとうございます。あのお聞きしたいことが……」
『したいこと?何かをするの?それとも聞くことでもあるのかな?』
「いえ、ちゃんとお話ができるまで聞かないでおきます」
この機会に聞くべきことがあった。それは姫野家に伝わる秘伝『神成の儀』についてだ。それを行えば今後の戦いに大いに役立つ力を得ると言われている。
その方法を知りたかったけど、まだ無理そうだ。
『まだ話できないから諦めたのかな?でもね、四葉。私と貴方は……』
守り神様が何かを言いかけた瞬間、世界の時が止まった。どうやら敵の襲撃が来たみたいだ。
「行ってきます」
樹海に訪れみんなと合流すると大橋の方から角みたいな足が生えたバーテックス。カプリコーン・バーテックスが姿を現し、地面に四本の足を突き刺すと地震が起き始めた。
「わっと!?地震で倒そうっていうのか!?」
「足元が揺れて……矢が撃てない」
「ミノさん、突っ込む?」
「園子ちゃん、それは流石に厳しいと思うよ。地震起こすだけじゃないと思うし」
私がそう言った瞬間、カプリコーンが大きく上に飛ぶと足の一本をこっちに飛ばしてきた。
園子ちゃんは咄嗟に盾を展開して攻撃を防いだ瞬間、何故か驚いた顔をしていた。
「あれ~手加減してきたって言うことじゃないよね~」
「どうかしたのか?園子」
「うう~んと敵の攻撃がすごく軽く感じたの」
「軽く?」
「もしかしたら訓練の成果出てきてるんじゃないのかな?カプリコーンより優くんの方が重く感じたんじゃ」
だとしたらある意味優くんはバーテックス以上に強いってことになるような……まぁ高嶋家特有のものみたいだけど……
「だとしたら……」
私の言葉を聞いて、須美ちゃんはゆっくりと弓を引いた。そしてその目は何かに狙いを定めるかのように……
「行っけぇぇぇぇぇ!!」
放たれた矢は角の一本に目掛けて向かっていくが、余りの高さに届かないでいた。でも、どうして角を狙ったのかな?
「須美ちゃん、何を狙ったの?」
「三ノ輪さんが敵の角の一部を攻撃した時に小さなヒビが入っているのが見えて……」
これも特訓の成果っていうものかな?でもあの高さじゃ届かないというと……
「まずい!?三人共下がれ!!」
銀ちゃんの言葉が聞こえた瞬間、4つの角を回転させ、こっちに向かって発射させてきた。銀ちゃんは敵の攻撃を斧で防ぐけどこれはちょっとまずいかもしれない
「私が抑えている内に……敵を!!」
「銀ちゃん……須美ちゃん。あの回転の中でさっき言っていたヒビは見えてる?」
「え、はい」
「それだったらそこを狙って!!少しでも銀ちゃんを楽させられる」
「ヒメちゃん、私たちは?」
「敵が怯んだ瞬間に、攻撃を仕掛けるよ」
私は勾玉の鞭の先を鋭い槍に変え、いつでも仕掛けられるように構えた。
「三ノ輪さん………銀!!今!!」
須美ちゃんの矢が角の一本に突き刺さった瞬間、大きくヒビが入り、ほんの一瞬だけど敵の動きが変わった。私はその瞬間、敵の身体に勾玉で貫き、縛り上げ、力の限り引っ張った。
「園子ちゃん!今!!」
「ハアアアアアアアアアアア!!」
縛り上げた敵を私達の方まで引き寄せた瞬間、園子ちゃんの槍の一撃で敵を撃破するのであった。
戦いが終わり、私たちは大橋の近くで倒れ込んでいた。
「何だか無茶苦茶な特訓の成果がここまで出るとはな」
「うん、やってみるものね」
「そういえばわっしー、さっきミノさんの事、銀って呼んでたよね~」
「あぁ、それ私も聞こえてた。どうしたの急に?」
私達がそう聞くと須美ちゃんは顔を赤らめていた。
「あ、あれは咄嗟に……」
「銀でいいよ。もう私たちは仲間なんだから」
「で、でも……」
「それじゃそれじゃ私の事そのっちって呼んで」
「そのっち、銀……四葉」
須美ちゃんに名前で呼ばれた瞬間、何だか嬉しい気持ちで一杯になるのであった。こうして私たちはこの日、絆を深めるのであった。