姫野四葉は勇者である 作:水甲
須美SIDE
私の許嫁らしい人は、話に聞いていたとおり本当に同じ年の子だった。だけどそれよりもっと気になったのは、彼が誰かに似ていた。
「どうかしました?」
「い、いえ、ただ……その……神宮さんの……」
「桔梗でいいよ」
「桔梗くんのご両親の姿がないのが気になって……」
てっきり両親と一緒にこの部屋に入ってくると思っていたけど、彼は一人で入ってきた。とはいえ、私も一人でこの部屋で待たされたからなんとも言えないけど……
「……僕の両親は……いないんです」
「えっ?」
「昔事故で亡くなって……」
「ご、ごめんなさい」
「謝らなくっていいですよ。今はお爺ちゃんと一緒に住んでるから寂しくないし、それに……」
「それに?」
四葉SIDE
「何言ってるか聞こえないな」
「もうちょっと近づいてみる?」
「二人ともこれ以上近づくとバレちゃうからやめよう」
バレたらバレたで色々と問題があるし……特に私としてはね。
「それにしても須美の相手、かっこいいな~」
「きょうくん、学校でモテモテみたいだよ~」
「……二人とも悪いんだけど私は帰るね」
「「なんで?」」
「ちょっと用事があってね」
私はその場から離れ、敷地の外へと出るのであった。
「元気そうだったな……」
「……四葉か?」
敷地の外に止まっていた車から私の名前を呼ばれ、窓が開くとそこにはある人がいた。
「……お久しぶりです。神宮さん」
それは現神宮家当主だった。桔梗がいる時点で来ているだろうとは予想していたけど……
「お前がどうしてここにいるんだ?」
「友達の事が気になったので」
「そうか……」
「神宮さんは中に入らないんですか?」
「あぁ、これから大赦に向かうからな。それより四葉、たまには……」
「神宮さん」
神宮さんの言葉を遮った私、この人が何を言おうとしているのか私にはわかっている。
須美SIDE
「姉がいるんだ」
「お姉さんですか?」
「あぁ、今は色々と事情があって別々に暮らしてるけど……」
「別々に……」
何故か彼の姉の話を聞いて、頭に思い浮かんだのは四葉だった。どうしてなのかわからない。ただそう思ってしまっただけだけど……
「歌が好きで、僕が泣いたりした時に歌を歌って励ましてくれたりしたんです」
そして彼の話を聞くに連れてそうじゃないかと確信していく。どうして……
「あ、あの……そのお姉さんはなんて……」
「あぁ、そういえばごめん。ここに来た一番の理由を忘れてた。鷲尾さん、僕は君の許嫁の件、断ろうと思ってたんだ」
「!?」
「保護者同士決めたことだからと言って、やっぱり自由に恋愛したいだろうと思って……何だか自分勝手な理由でごめん」
「あ……あの……」
彼の申し訳無さそうな顔を見て、何故か引き止めたくなっていた。
「♪~」
そんな時、外から聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。これって……四葉の……
「この歌……」
彼は歌声を聞いて、直ぐ様敷地の外へと駆け出していった。私も彼の後を追っていくと
「姉さん!!」
そこには四葉と四葉のことを姉と呼ぶ桔梗くんの姿があった。
「………神宮くん。私は貴方の姉じゃないよ」
「まだそんなこと言ってるのかよ……」
桔梗くんは悲しそうな顔で、四葉は無表情でいた。この二人は姉弟なの?でも、どうして四葉は否定したのか……私にはわからない
「どうしたんだ?一体何が……」
「ひめちゃんときょうくん……どうかしたの?」
何処かに隠れていたのか銀とそのっちの二人も駆けつけてきた。何とも言えない空気の中、四葉は一人歩き出した。
「神宮くん、私は姉じゃない。私は姫野として生きていくために家族を捨てたひどい子だから……」
四葉はそう言い残して何処かへ行くのであった。私たちは追うべきなのだろうけど、何故かそれができなかった。
桔梗くんはただその場に立ち尽くしたままだった。
「な、なぁ、姉ってどういうことなんだ?」
「私にもわからない。そのっちは知ってるの?」
「……一応はね。でもきょうくんとひめちゃんの関係がここまでだったなんて知らなかった」
一体姫野と神宮って何なんだろうか?
『まだ話せそうにないので独り言です。姫野家と神宮家は300年前に結ばれて、一緒になっては離れ、一緒になっては離れてを繰り返してきた』
守り神様は本当になんでも知ってるな……神宮家に生まれた子供と姫野家の養子に……保護者は白鳥家のものだったけど、その二人が結ばれて子供が生まれて……
300年間、神宮家と姫野家は同じ家柄だった。そして今も……
だけど私は……
『宿命だからですか?宿命だから神宮の子を弟だと思わないようにしているんですか?』
違う。私は……姫野の役割を知って、神宮の名前を捨てた。だから……
『……姫乃はこんな事望んでないよ』
私はどうすればいいんだ……
次回に続きます。因みに四葉と桔梗が姉弟設定はこの小説内だけです