姫野四葉は勇者である 作:水甲
須美SIDE
お見合いの日から3日経った。四葉はあの日から学校にも来ていない。桔梗くんと会ったことで何かしらあったのかな?
お見舞いに行くべきなのだろうけど、行っても会ってくれるかわからない。
「はぁ」
「どうしたんだ?須美」
「わっしー、元気ないよ~それに考えすぎて眉間にシワ寄ってるよ~」
そのっちが眉間のシワを伸ばそうとしてきたが、私はそのっちの手を掴んだ。
「ねぇ、四葉のこと心配じゃないの?」
「そりゃ、心配だけどさ……」
「昨日ミノさんと二人で会いに行ったんだけど留守みたいなんだ~」
二人で会いにって……何で私を誘ってくれなかったのだろうか?いや、今はそのことより留守って……
「先生に聞いたら神様の力を扱えるように特訓してるって」
「でも安芸先生はすごく心配してるんだよ。今の精神状態だと危険だとか何とか……」
本当にどうにか出来ないものか……どうにか……
そんな事を考えていると教室に先生が入ってきた。まだ授業の時間じゃないけど、早く来たのかな?
「鷲尾さん、乃木さん、三ノ輪さん、お客様が来てます。授業は大丈夫なので、来賓室に行って下さい」
「「「お客様?」」」
誰だろう?もしかして……
三人で来賓室に行くとそこには桔梗くんともうひとり巫女装束を着た女の子がいた。誰だろうあの子……
「ごめん、急に呼び出して……」
「いえ、大丈夫だけど……」
「きょうくん、カイちゃん、久しぶりだね~ふたりとも学校はお休みなの?」
「園子……行ってやるなよ」
確かにそのっちの言うとおり、この二人同い年なのに学校へ行かずここに来ていて良いのかな?そのっちと四葉の話じゃ大赦の中では偉い家系なのに……
「ちゃんと許可はもらってるよ。というか同じ学校だし」
「私はそもそも学校に行ってないから大丈夫です。あぁ、自己紹介まだでしたね。私は上里海。大赦では巫女をやっています」
大赦の巫女……それに上里って大赦では乃木と並ぶトップの家系じゃ……それなのに学校に行ってないから大丈夫って……
「かいちゃんは巫女の役割が大変で学校に行きたいけどいけないんだよね~」
「中学生になったら通うので大丈夫です」
「須美、深く考えるのはやめたほうが良いぞ」
「そうね。銀の言うとおりにするわ。それでどうして私達を?」
「実はね。いい加減この姉弟の問題をどうにかしたいんですよ。こっちも忙しいのにも関わらず、話を聞かされて色々と溜まっているんです。もう爆発寸前です」
海さんは桔梗くんのことを睨みながらそう言い、桔梗くんは居心地悪そうにしていた。というか私達は巻き込まれたと言うべきか。でも四葉としっかり話すいい機会だ。
「分かったわ。何とか二人の関係をどうにかするわ」
「お願いします。鷲尾さん、三ノ輪さん、園子ちゃん」
こうして私達は海さんの依頼で四葉と桔梗くんの問題を解決することになったのだった。
その日の放課後、先生に四葉の居場所を聞くと今日は自宅に戻っているらしく、私、そのっち、銀、桔梗くんの四人で四葉の家の前に来ていた。
「なぁ、須美」
「何?」
「桔梗のやつ、一緒に連れて行く必要ないんじゃないのか?」
「気まずくって会えなくなるよ~」
「それは……二人はちゃんと話し合うべきだから……」
「須美さん、ありがとうございます」
「ううん、気にしないで」
「おや?」
「あれ~お見合いしていい関係に~」
このままだと誂われる可能性が出てきた。私は急いで呼び鈴を押すと、しばらくしてから玄関が開いた。
「誰………須美ちゃん達……それに桔梗……」
四葉は桔梗くんの姿を見て、直ぐ様扉を閉めようとした。だけど私は直前に扉を掴んだ
「四葉、閉めないで!!」
「……悪いけど今は話すことは……」
「何があったか知らないけど、ちゃんと話し合わないのはおかしいことよ」
私は四葉の腕を掴み、声を上げた。
「四葉のことは何も知らないけど、それでも桔梗くんと四葉は姉弟なんでしょ。それだったら仲良くするべきことよ!!」
「そうだよ。四葉。私も弟がいるから分かるんだ。喧嘩することもあるけど、お前みたいにいないことにされるのは物凄く辛いことだと思う……」
「ひめちゃん、姫野家としての役割は大切かもしれないけど、それでもきょうくんのことを蔑ろにしたらダメだよ」
「…………」
四葉は黙ったままうつむいていた。すると桔梗くんは四葉の目の前に立ち
「姉さん。姉さんは姫野の役割を背負うために僕のことを捨てたひどい子だって言ったよね。それは違うよ。僕の姉さんは優しくって僕のことをいつだって思ってくれている優しい人だって……だから自分のことをそんなふうに言わないでよ」
「……だってお母さんとお父さんが死んで悲しい思いをしている貴方をひとりぼっちにしたんだよ。そんな私は貴方の姉だって……」
「それでも……姉さんは僕の姉さんだから……」
桔梗くんは笑顔でそう告げた瞬間、四葉は涙を流しながら桔梗くんに抱きつくのであった。
とりあえず姉弟問題は終わったのかな?
四葉が落ち着くと何だか恥ずかしそうにしていた。何だか私達が見ている前で泣いたことが今になって恥ずかしくなったらしい
「ひめちゃんは意外と泣き虫なんだね~」
「言わないでよ……」
「そうだ。姉さん……これを」
桔梗くんはポケットからあるものを取り出した。それは剣の形をしたアクセサリーだった。
「神宮家に伝わるお守りなんだけど、これは姉さんが持っていて……」
「ありがとう。あれ?でもこれ……」
四葉はアクセサリーを見て何か考え込んでいた。そして……
「あれって……」
そのっちも同じように考え込んでいるのであった。