姫野四葉は勇者である 作:水甲
須美ちゃんと園子ちゃんの二人が次の戦いに向けて、訓練を頑張っている中、私は安芸先生と一緒に大赦に来ていた。
「新しい勇者システム……ですか?」
「えぇ、既に二人には渡しているところよ」
新しい勇者システム……それさえあれば今後の戦いが有利になる。ただ気になるのは私だけ新しい勇者システムが組み込まれた端末をもらっていないことだ。
「あの先生。私の……」
「今回あなただけここに呼んだのは、ある選択をしてもらうためです」
「選択?」
「こちらです」
先生に案内された部屋に入るとそこには海ちゃんともう一人の巫女装束を着た少女、藤森けいなが待っていた。これは……
「先生……これは……」
「姫野四葉様、今回お呼びしたのはあなたに選択と対話の機会を与えるためです」
「選択と対話……」
海ちゃんは前に会ったときとは違う口調で話していた。真面目モードということか
「ひー……姫野さん。ここにあなたの新しい勇者システムが組み込まれた端末があります」
けいなちゃんが端末を見せながらそう告げた。わざわざ渡すためだけにここに呼んだだけじゃないよね。まさか……
「上里様、藤森様。あなた方が言いたいことはわかっています。その勇者システムを手にすれば、私は須美ちゃん、園子ちゃんと同じ力を扱えるということですよね」
「……はい」
「だけど問題がある。それはその勇者システムと私の守り神としての力は同時に使えることはできない」
「その通りです。本来勇者システムは神樹様の力を借りてのものですが、守り神の力と混ぜ合わせることは不可能なのです」
けいなちゃんの言葉を聞いて、私の予想は当たっていた。守り神の力を捨てない限り、私は新しい力を得ることはできない。
新しい力を得たところで、私は守り神の力を扱えない。これが与えられた選択……
「今、貴方がすべきことは……」
「わかっています」
私は目を閉じ、守り神様に呼びかけた。
『話は聞きましたよ。四葉』
「勇者として戦うために、力を得て、力を捨てるか。今までと同じように戦うか……前に守り神様は言ってくれました。私には運命を変える力があると……」
『はい。その通りです。貴方はこれまでの姫野と比べ、守り神の力を扱えるようになっています。ですが現時点では完全には扱えない。初代姫野は勇者の力と守り神の力を同時に扱えていましたが』
初代……私のご先祖様……今の私はご先祖様に劣っている。だとしても……
「守り神様、今の私ではどちらかを選ぶしかない。そうですよね」
『はい』
「でも今この場で、その二つの選択を打ち破ります」
私は目を開け、勇者の端末を手にするのであった。
須美side
新しい力『満開』でバーテックスを一体撃退する中、私の両足が動かなくなった。そしてそのっちも目が見えなくなるという現象に陥っていた。
「わっしー、なんだかおかしいよ。こんな戦い方でいいの?」
「わからない。でも今は……」
奥にいる巨大なバーテックスが巨大な炎の塊を発射しようとしている。このままだと元の世界で私たちのことを気にかけてくれている銀や家族のみんな……そしてこの場にまだ現れていない四葉のために……
「そのっち、私があれを止めるから、後はお願いね」
「わっしー!!」
「満開!!」
私は満開し、巨大戦艦に乗り込み、こちらに向かってくる炎の塊に向かって、砲撃で防いでいく。
「このまま……終わるわけには……」
炎の塊と砲撃が消えると同時に、私の満開は消えた。あとは……任せたよ。そのっち……
気を失いかけながら、地面まで落ちていく私。だけど何かがそっと私を抱きとめた。
「……四葉」
「ごめんね。遅くなって……」
「ううん、信じてたから……そのっちのことお願いね」
「……須美ちゃん、また歌を聞いてね」
「うん」
私はゆっくり目を閉じた。最後に見た光景は白い装束に、髪を一つにまとめた四葉の姿だった。
四葉side
私は須美ちゃんをゆっくり地面に下ろし、園子ちゃんの所に向かった。園子ちゃんは壁の近くまでバーテックスを押し戻していた。
「四国の壁……」
私は壁の外に出ようとしたとき、園子ちゃんが戻ってきた。だけど園子ちゃんの様子がおかしい
「ひめちゃん……壁の外が……」
「何があったの?」
「実は……」
園子ちゃんが何かを言いかけた瞬間、壁の外から炎の弾丸が飛んできた。私は鏡を取り出し、防いでいった。
そして壁の外から今まで退けてきたバーテックスがすべて現れた。まさか……再生している?
「園子ちゃん、須美ちゃんの所に行って」
「ひめちゃんは?それにその衣装……守り神の力を捨てたの?」
「ううん、違うよ」
私は持っていた端末を見せた。そこにはガーベラの花の紋章と勾玉と剣の紋章が映し出されていた。
「勇者の力と守り神の力を無理やり混ぜてみたの。だから園子ちゃんたちよりちょっと強いかな」
「で、でも……そんなことひめちゃんにできないって聞いてるよ……なのに……」
園子ちゃんはきっと私の体のことを心配してくれている、ごめんね、実はものすごく体が痛いし、気を抜くと意識がなくなりそうだった。
でも弱音は言ってられない。
「あとは私に任せてね。園子ちゃん」
次回、鷲尾須美の章最終回。
ちなみに現時点での四葉は通常状態で満開位の力を扱えるようになっています。
四葉の満開は結城友奈の章で登場予定です。