姫野四葉は勇者である   作:水甲

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43 四葉の歌

ある日のこと、勇者部部室でみんなと集まっていると何故か樹ちゃんが暗い顔をしていた。

 

「はぁ~」

 

「どうしたの? 溜め息なんてついて」

 

心配そうに風さんがそう聞くと、樹ちゃんが落ち込んだ声で答えた。

 

「うん。あのね、もうすぐ音楽の歌のテストで上手く歌えるか占ってたんだけど……死神の正位置。意味は破滅、終局」

 

「な、何ていうか不吉だね」

 

「気にすること無いでしょ」

 

「そうだよ。こういうのってもう一度占ったら全く別の結果が出るもんだよ」

 

私たちがそう言うと、樹ちゃんは三回占うと三回とも死神のカードが出た。これは不吉すぎないかな?

 

「だ、だいじょーぶ。フォーカードだからこれはいい役だよ」

 

「死神のフォーカード」

 

「あぁ、いや悪い意味じゃなくて~」

 

これはもうどうにかしないと思ったのか、風さんは今日の議題として樹ちゃんの歌の特訓をすることになった。

 

「アタシたち勇者部は、困ってる人を助ける。もちろん、それは部員だって同じよ」

 

「歌が上手くなる方法か~」

 

「まず、歌声でα波を出せるようになれば勝ったも同然ね」

 

「α波……」

 

「いい音楽や歌というものは、大抵α波で説明がつくの」

 

「そうなんですか!?」

 

「んな訳無いでしょ」

 

「樹一人で歌うと上手いんだけどね。人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 

「そっか。それなら、習うより慣れろだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで友奈ちゃんの提案でカラオケに来ることになった私達、これは特訓だから遊びというわけじゃない。そう、決して遊んでるわけじゃないよね。

 

「イェ――イ! 聴いてくれてアリガト!!」

 

うん、完璧に遊んでるようにしか思えないよ。

風さん、友奈ちゃんと三好さんのデュエットが終わり、次は樹ちゃんの番になったのだが、どうにも緊張していてうまく歌えない感じだった。

 

「やっぱり堅いかな」

 

「誰かに見られてると思ったらそれだけで……」

 

「まぁ今はただのカラオケなんだし、上手かろうと下手だろうと好きな歌を好きに歌えばいいのよ。はい、次、四葉」

 

「私?」

 

私もこういう場所で歌うのは苦手なんだけどな……とりあえず気にせず歌ってみよう。

 

「♪~♪~」

 

歌い終わると何故かみんな静まり返っていた。もしかして下手だったかな?眠っていた間歌うことがなかったし……

 

「す、すごいよ!四葉ちゃん!」

 

「まさかこんな所に逸材がいるなんてね……」

 

「何だかプロみたいだったわ」

 

「ま、まぁいい声だったんじゃない」

 

だから東郷ちゃん、プロみたいって二年前と同じことを言ってるけど、それにしても思い出してはくれないか。

すると樹ちゃんが私の目の前に立ち、

 

「あ、あの私に歌を教えて下さい」

 

「え、えぇ……」

 

それって弟子入りってことなの?どうしよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず樹ちゃんに歌を教えるのを引き受け、今日は何故か風さんの家に泊まることになった。

 

「悪いわね~泊まりに来てもらって、着替えとか樹の借りてね」

 

「は、はい」

 

樹ちゃんの着替えって、いや、確かに体つきとか似てるけど……何だか悲しくなってきたんだけど……

 

『ま、まぁ、これから成長期ですから』

 

守り神様にも慰められた。

 

「それで夜通し樹ちゃんにレッスンをするってわけじゃないですよね。風さん、カラオケの最中、大赦から何か連絡でもありました?」

 

「……あんたも夏凛も鋭いわね~大赦から次の進行ではかなりの乱戦が予想されるって……」

 

「風さんはみんなを死なせたくないんですか?」

 

「そりゃ当たり前でしょ。みんなのリーダーだし、それにつらい思いだけはさせたくないから……」

 

つらい思いか……そうだよね。私もこんな気持で戦っていたことが有る。

 

「それと四葉、大赦に聞いたけどあんたの守り神の力って何?」

 

「……それは」

 

私がいいかけた瞬間、お風呂場から歌声が聞こえてきた。この歌……

 

「私、教えることないんじゃない?」

 

「まぁ、樹がどうしてもって頼んでるからね……」

 

「それはそうですけど……」

 

いい声だからこそ、後は緊張しないようにか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹SIDE

 

小学生の頃、知らない大人たちが家にやってきたことがあった。私はお姉ちゃんの背中に隠れているだけで、後でお姉ちゃんがお父さんとお母さんが死んだことを教えてくれた。

 

それからはお姉ちゃんは私のお姉ちゃんで、お母さんでもあって……ずっとお姉ちゃんの背中が安心できる場所だった。

 

でも、私一人ではお姉ちゃんを支えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

目を覚まし、お姉ちゃんが用意してくれた朝食を食べようとした時だった。

 

「ちょっと動かないで」

 

私の寝癖を直してくれた。寝癖を直し終わるとお姉ちゃんは笑顔で……

 

「よし、今日も可愛いぞ~ありゃ?元気ないね、どうした?」

 

「あのね……あのね、お姉ちゃん。ありがとう……」

 

「何、急に?」

 

「何となく言いたくなったの。この家の事とか、勇者部のこととか、お姉ちゃんにばっかり大変なことさせて……」

 

「そんな、私なりに理由があるからね」

 

「理由って?」

 

「まあ簡単に言えば、世界の平和を守るためかな?だって、勇者だしね」

 

「でも……」

 

「何だっていいよ。どんな理由でも、それを頑張れるならさ」

 

「どんな……理由でも?」

 

理由って……私にとって理由ってなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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