我は彼の奴隷なり   作:ふーじん

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※第三話にて固有スキル効果を修正しました。



第五話

 □【高位従魔師】マグロ

 

 

『お嬢さーん? さすがの俺も初手土下座は面食らうクマ、クマは悪いクマじゃないクマー』

 

 ある日森のなかでクマと出会った私。

 土下座はこちらに害意が無いことを示す精一杯の所作のつもりだったのだが、よくよく様子を窺ってみれば彼はクマではなく<マスター>だった。

 

 いや、クマには違いないけど。

 妙にファンシーだしずんぐりむっくりしてるし、ちゃんと見ればキグルミだった。

 とはいえ外でキグルミ着込むなんて正気の沙汰じゃないし、傍に<エンブリオ>と思しき戦車を伴っていれば、どっちにしろ見た目の脅威度は大きかったが。

 

『……あんたの<マスター>、随分と面白おかしいやつクマ?』

『はぁ、情けない……みっともない姿を晒すでないわ、戯け』

 

 呆れた様子のカトリ様に足蹴にされ転がされる私。

 そこでようやく彼らが敵ではないことを悟り、土埃を払ってカトリ様の背に隠れる。

 ……と思ったら尻尾で前に押し出された。ひぎぃ。

 

『おっすおっす、俺はシュウ・スターリングクマ! こっちは俺の<エンブリオ>のバルドル、よろしくクマー』

「……えと、その、マグロです。こっち……ていうかそちらの方は、私の<エンブリオ>のテスカトリポカ、です」

 

 彼は随分と気さくというか物怖じしない性格の人だったようで、「よろしくクマー」とこちらの手を握ってぶんぶん振り回す。

 ……このクマ、妙に力が強い。腕千切れそう。きっとこの人も私なんかよりよっぽど強いんだろうなー。

 

『マグロちゃん、だっけ? その名前には見覚えがあるクマ、確か討伐ランキングに載ってたクマー』

「え、あ、はい、おかげさまで、その……載らせていただいてますです」

 

 普段カトリ様としかまともに会話してないせいで、イマイチ距離感を掴めず言葉に詰まる。

 なにより如何にも人好きのするっぽい彼のような人間(今はクマだけど)は、私の周囲には無いタイプだから余計に困った。

 

『下僕よ、そなたはとことん鈍いな?』

 

 はぁ、なにがでしょうか?

 

『目の前のそやつはそなたの先達ぞ、討伐ランキングの上位ランカーだ』

「それは、すごい……」

『いやぁ、照れるクマ~』

 

 実際凄い。あの馬鹿みたいに桁違いなポイントを叩き出す理不尽ランカーの一人とは。

 しかもそれがクマとは。でも見るからに強そうな戦車を従えているところを見ると、想像はつかないがそれくらいやらかしてもおかしくはないように思える。

 

『まさに我らが乗り越えるに相応しい壁というわけだ。ククク、今は及ばずとはいえ、目標が高いのは実に好いものよな』

『おっ、チャレンジャークマ。俺はそういうのどんとこいクマ、やれるもんならやってみろクマー』

 

 バチバチと火花を散らす二人。

 スターリングさんの人となりはともかくカトリ様は克己心旺盛なので、自分より強い相手を見ると闘志を燃やさざるを得ないのだ。

 そうなると狩りのハードルが上がるというもので、ほぼ二十四時間ぶっ通しで暴れ回ることもしばしば。その煽りを食らうのは当然私というわけだが。

 

「その、スターリングさんもこちらで狩りを? 先客がそちらなら、狩場を変えたほうがいいですかね……」

 

 久々に外で出会ったマトモ? な人物なので、意を決して話しかけてみる。

 すると彼は鷹揚に手を振って、「そんな小さいこと気にすんなクマー」と私の頭を撫でた。

 このさり気なくも不審を抱かせない撫でスキル、こいつ相当デキる……!

 

『袖振り合うも多生の縁クマ、そちらさえよければ一緒にどうクマ? 同じレベル帯でパーティ組むなんて滅多に無いから、寧ろ嬉しいし』

「ああ、たしかに……この辺は人少ないですもんね。私もこの辺で人に会うのは初めてですし」

『そうそう、だから折角だしパーティ組むクマ。フィガ公(ダチ)とはこういうことできないから新鮮クマ!』

 

 ダチ……お友達のことか。やっぱりフレンドは多いみたいだ。

 向こうから申請されたのを了承してパーティを組む。

 同時に見えるようになった彼のステータスには【破壊者】のジョブが。

 ステータスも貫禄のSTR特化型で、STRの補正に優れた壊屋系統であることを抜きにしても、随分と偏ったステータスだ。

 

「すごい……」

『マグロちゃんは【高位従魔師】クマ? <エンブリオ>もガードナーっぽいし、確かに相性いいクマ』

「あ、ごめんなさい。その、私……」

 

 だけどそうなると余計に悪目立ちするのが私のステータスだ。

 私はリソースの殆ど全てをカトリ様に捧げているせいで、私自身のステータスは軒並み最底辺というのは既に知っての通り。

 如何にカトリ様が強いとはいっても、ガードナー共通の弱点である<マスター>の私が人一倍死にやすいせいもあって、戦力としてはとてもじゃないが安定しない。

 

 ……つい流れでパーティ申請を受けちゃったけど、幻滅されるかな……。

 正直まともな<マスター>なら即解散レベルだし、誘ってくれた彼には悪いけどやっぱり私は――

 

『ん? ……ああ、そういうことか。気にすることないクマ、このステでここまでやってこれてる時点であんたも相当ヤベークマ』

「えっ……?」

『見た感じソロ専クマ? なのに俺とほぼ同レベルなのは普通じゃありえんクマ。そんなことができるのは素でよっぽどヤベーやつか――』

 

 彼はファンシーなクマ顔に凄みを乗せて。

 

 

『それ以上に()()()<エンブリオ>を持ってるか、だろ?』

『ク――クククハハハハハ――!!』

 

 

 その彼の言葉に呵々大笑したのは、ここまで成り行きを見守っていたカトリ様だった。

 ここ最近で一番の上機嫌っぷりを見せ、言い放ったスターリングさんの肩をバシバシと前足で叩く。

 私にも見せたことのないような、口角を上げて牙を剥いた獰猛な笑みを見せた。

 

『見る目があるではないか、クマの戦士。いかにも我が<マスター>は貧弱極まりない弱者なれど、その<エンブリオ>たる余は別よ。貴様のその曇りなき眼に、我らの力をとくと焼き付けるがいい!』

 

 うっわめっちゃテンション上がってる!

 ヨイショされて露骨に舞い上がってる! しかもすげー強そうなこと言っててすげー恥ずかしい!

 ヤメテ! それで私があっさり死んだら一生の恥だから!!

 

『あんたの<エンブリオ>、結構チョロいクマ?』

「言わないであげてください、普段あまり評価されないんです……」

 

 ああ、なんだかいつも以上に死にたくない気持ちが酷い……

 ううっ、胃がズキズキしてきた……

 

 

 ◇

 

 

 そんな私の不安はまったくの杞憂だった。

 

『ヒャッハー! モンスターは乱獲クマー!!』

『クハハハハ! 爆ぜる風、抉れる大地、薫る血風! 好い、実に好き狩りだ!!』

 

 飛び交うのは弾薬、爆薬の雨あられ。

 スターリングさんの<エンブリオ>――バルドルという名の戦車だったものは陸上戦艦と言うべき無限軌道付きの巨大兵器へと姿を変え、道行くモンスターを轢き潰しながら遠方の的までもマップごと爆撃している。

 彼曰く「この形態だと火力控えめクマー」とのことだ、とてもではないがそうは思えない火力の波だ。

 

 その一方でカトリ様はというと、そんな彼の爆撃の隙間を縫って戦場を駆け、高笑いしながら範囲攻撃スキルをメインに弱った敵を狩り尽くしていく。

 一定範囲内の敵位置と大まかなHPを把握する《ライフサーチ》。

 同じく一定範囲内の敵に音波ダメージを与え、抵抗に失敗した敵を極短時間スタンさせる《大咆哮》。

 自身の周囲にカマイタチの結界を展開する《リッパーサイクロン・アーマー》。

 いずれも普段の狩りでは使うことのない掃討用スキルだが、スターリングさんの撃ち漏らしを掃除するにはうってつけのラインナップだ。

 その上で《贄の血肉は罪の味》の効果も合わされば、さながら戦いは無双ゲーの如き様相を呈している。

 

「かと、カトリ様! 暴れるのはいいんですがもう少し丁寧にお願いします! 外れると回復が間に合わない~~!?」

『クハハハ、まだ死ぬには早かろう? 水を差してくれるなよマスター!』

 

 呈している、のはいいのだけど。

 テンションが上がるあまりいつもより雑になっているせいで、攻撃を外すことも多くスキルによる消耗と回復の釣り合いが崩れがちなのは困ったものだ。

 第一の固有スキル《贄の血肉は罪の味》は、進化を重ねた今では強化倍率も跳ね上がって、素晴らしい効果を出してくれているのだが、その分減少速度と回復量が上がり余計に安定性を失ってしまっている。

 つまりカトリ様が油断すると私の死が近づくというわけで、意地の悪いことに狙ってそうしてる節もあるのが憎らしい。

 

『俺もいろんな<エンブリオ>を見てきたけれど、マグロちゃんのほどヘンテコなのも珍しいクマ。いないことはないけど、最初のスキルでそういうのが発現するってよっぽどクマ』

 

 返す言葉もねぇ。

 私自身かなり鬱屈してるとは思うのだけど、<エンブリオ>がそうなっている以上、それが私の願望であることは否定できないのが悔しい。

 

 だけどその理屈で言うと、スターリングさんの<エンブリオ>も相当なんじゃないかなぁと思ったり。

 だってそれ、根っからの脳筋仕様ですよね? 乗ってる間はいいけど、見た限り狭い場所とかだと使えないはずだし。

 それなのにトップランカーを恣にしてるのは流石と言うしかないですけど。

 

『これでも素のスペックには自信あるクマ。足りない部分は技術で補えばいいクマー』

 

 まさかのリアルチートでござったか。

 ……そこは素直に、めちゃくちゃ、妬ましいくらい、羨ましいけど。

 まぁでも、この世界ではステータス面は皆平等だし、愚痴っても仕方ない。

 

『それに俺のバルドルもそこまで便利じゃないクマ。こうやって攻撃するたびに弾薬を消費するから、派手にやったあとはフォローがしんどいクマー。……いやマジで』

 

 最後の一言はガチトーンでしたね。成程金食い虫でもあったか。

 一般にはキャッスルやチャリオッツ系列に多い《弾薬製造》だけど、スターリングさんのバルドルにはそのスキルが組み込まれているみたい。

 さっきからバカスカ撃ってる弾薬の嵐もそれによるものだとか。……大丈夫なんです?

 

『あ、それは大丈夫クマ。いつもよりコストの低い弾薬だし。普段は自力で倒さないといけないからコスト嵩むけど、今はかとりんがいるから削るだけでいいクマ。超大助かりクマー』

『馴れ馴れしい奴め……まぁいい、特別に許そう』

 

 かとりん!?

 そして満更でもなさそうなカトリ様……えっ、じゃあ私もそう呼んで「戯けめ、貴様は下僕だ。客人とそなたでは天と地ほどの差がある。身の程を弁えよ」ですよねー……。

 強い者が大好きなカトリ様だから、スターリングさんはモロにその好みに合致したんだろう。

 全<マスター>中最弱を争える私には許されない扱いだ、およよ……。

 

『さて下僕、余の感知範囲内に敵はいなくなったようだ。しばし休息を挟むとしよう』

『ちょうどいいクマ、それじゃあちょいとドロップ回収タイムに入るクマー』

 

 了解です。私もポーション飲んどきまーす。

 今回は消耗が勝った分いつもよりHPの減りが激しかったせいで、実は割りとピンチなんだよね。

 戦闘中はとてもじゃないけど飲む余裕が無いから、こうして合間合間にコンディションを整えとかないと、次の戦闘で満足に動けないし。

 そういうわけなので一本いっときますか! キュポンとな。

 

「……あれ?」

 

 今まさに飲もうとしていたHP回復ポーションがなくなっている。

 中身じゃなくて器ごと消えてるんですけど……カトリ様のいたずらじゃあ、ないよねぇ。

 カトリ様はそういうお戯れはされないし、またドジして落としてしまったのかと思ったけど、やっぱり無い。

 

 あちこち探し回ってみるけど、やっぱり無い。

 ていうかよくよく見てみると、さっきまで戦ってた敵の――

 

『クマー!?』

「! カトリ様」

『乗れ下僕、急ぐぞ!』

 

 遠くへドロップ回収にいっていたスターリングさんの悲鳴が上がった。

 カトリ様の背に飛び乗り、彼のもとへ急ぐ。

 彼のピンチかと思い、全速力で駆けつけてみればそこには……

 

『ふてぇ野郎クマ! 俺のおまんまを根こそぎ奪いやがったクマー!!』

「KYUUUUKYUKYUKYU!!」

 

 妙にデカいカンガルー(のようなもの)に弾丸をばら撒いているクマがいた。

 

「な、なにごとですか!?」

『言ったとおりクマ! コイツが俺たちのドロップ品を取ってったクマ!!』

『なにィ!?』

 

 その言葉に目を剥いたのはカトリ様。ちなみに私もだいぶショックを受けている。

 下手人だとかいうモンスターを見てみれば、カンガルーらしくお腹に具えた袋にあちこちからいろんなものが吸い込まれていくのがわかった。

 今まさにスターリングさんの弾丸までもそのまま吸い込んでいって、超火力のはずの弾丸でダメージを負った様子も無い。

 そしてその頭上には――

 

「【旋風徴獣 サイクロンポケット】……?」

『<UBM>か! しかも遠距離メタ性能クマ!』

 

 ゆにーく・ぼす・もんすたー?

 なんだ、それ。初めて聞く単語だけど、語感的にボスモンスターの一種なんだろうけど……

 

『世界に一体しか存在しない固有ボスのことクマ! 大抵は普通のボスより数段強くて、倒すと専用の特典装備がもらえるクマ!』

「そんなのがいたんだ……」

 

 この世界で暮らし始めてそこそこ経つけど、そんなのがいるだなんて初めて知った。

 倒せば特典を貰えるなんて、いかにもゲームらしいボーナスエネミーだけど……

 

「KYUUUUUUUUU!!!」

『ッ、速いな……!』

『見たところAGI特化タイプクマ。そんじょそこらの敵では到底追いつけないクマ!』

 

 妙に可愛らしい声とは裏腹に、全身の筋肉は発達しているどころの話ではなく。

 特にその両脚は異常なくらい発達していて、見るからに強靭を誇っている。

 やがてそれは私の目にはまるで映らない速度を以て、バネのように跳ね回り始めた。

 

『余の索敵で捉えられぬのが不思議だったが……成程。こやつ、余の感知範囲の外から一瞬で跳ね飛んできたかッ!』

『大した瞬発力と脚力クマ。耐久は低そうだけど、体当たりでも食らったらひとたまりもないクマ』

 

 それって最悪じゃ……!?

 少なくともそれじゃあ逃げるに逃げられない、倒すしかなさそうだけど……でも勝ち目はあるの!?

 カトリ様はどうにか目で追えているようだけど、攻撃を当てるのも躱すのも簡単ではなさそうだし、遠距離攻撃は袋に吸い込まれるしで打つ手が無いんじゃあ……

 

『…………』

『ぬぅ、余とて尻尾を巻いて逃げるつもりは更々無いが、アレのスピードでは二人がかりでも千日手――』

『…………あ、これ余裕クマ』

『――なに?』

 

 え、マジで?

 あっけらかんとした彼の言葉と余裕の態度に訝しむも、彼は悠然と手を振って。

 

『バルドル、近接信管弾頭に切り替えて斉射クマー』

『了解』

 

 そう指示するや否や、バルドルの全砲塔から彼の言う近接信管弾頭が降り注ぎ、【サイクロンポケット】の袋にそのまま吸い込まれようとして……

 

『――起爆』

 

 その直前、一斉に爆破してそのまま【サイクロンポケット】を呑み込んだ。

 

 

 【<UBM>【旋風徴獣 サイクロンポケット】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【シュウ・スターリング】がMVPに選出されました】

 【【シュウ・スターリング】にMVP特典【はいぱーきぐるみしりーず さいくろんぽけっと】を贈与します】

 

 

「……………………」

『……………………』

『いやぁ最初はびっくりしたけど、こいつアホクマー。こんなに楽して特典GETクマー』

 

 のんびりとそう言ってほくほく顔(な気配)のスターリングさんを横目に、私とカトリ様の心中は一致した。

 すなわち――

 

((しゃ、釈然としない……))

 

 一連の緊張感とシリアスを返せ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

『今日は付き合ってもらってありがとうガル。……俺だけがいい思いしてて本当ごめん』

「いえ……こういうのは巡り合わせですから……」

 

 王都アルテアへの帰路につき、その道中で言葉を交わす。

 帰りは彼が送ってくれるということで、その厚意に甘えて私とカトリ様は戦車モードのバルドルへ相乗りさせてもらっていた。

 

 結局あの<UBM>にそれまでのドロップ品を盗られてしまったせいで仕切り直しとなり、私達は改めて狩りを再開する運びとなった。

 おかげであの辺の一部生態系は根こそぎ狩られ、しばらくは狩場に使えない有様となってしまったが、さておき。

 

「うむ、悔しいが我が下僕の言うとおりだ。そなたが我らよりも強かっただけのこと。それを僻むは愚者の行いよ、気にするな」

『そう言ってもらえると助かるガル。しかしこれ、俺にはうってつけの特典武具ガル、超便利ガル』

 

 そう言って上機嫌なスターリングさんの周囲には、轢き潰したモンスターたちのドロップが吸い寄せられている。

 彼が得た特典武具、【はいぱーきぐるみしりーず さいくろんぽけっと】なるアイテムは、その名の通り【サイクロンポケット】の姿を模したカンガルー型のキグルミで、「自分に所有権があるドロップアイテムの自動回収」なるスキルがついた、超便利機能付きの高性能きぐるみであった。

 ……くそう、正直めっちゃほしい~~!! ああでもキグルミだと色々厳しいところも……ああでもそのスキルはすっっっっごい羨ましい!!

 

「下僕よ、不躾な目で見るでないぞ。潔くせんか」

「ううぅ……すみません……」

『いや、気持ちはわかるガル。立場が逆なら俺も超悔しいガル』

 

 お互いコスト面で苦労するタイプだから、その言葉には重い説得力があった。

 まぁ、どちらかと言えばスターリングさんの方が余計に厳しいようだから、仕方ないか。

 

『そんなマグロちゃんに朗報ガル。レアなドロップ品や<UBM>を狙うならうってつけの場所があるガル』

「ほんとですか!?」

『うん、王都の墓地区画にある<墓標迷宮>っていう神造ダンジョンなんだけど、そこでなら高レベルボスやレアモンスターが出現しやすい上に、極稀に<UBM>も出没するっていう話ガル』

「ほう、神造ダンジョンか。余の運営側の記憶に情報があるな、確か深層未踏の高難易度ダンジョンだったか」

『そうそう、マグロちゃんとかとりんなら結構いい線いくと思うガルから、気が向いたら行ってみるといいガル』

 

 運営側の記憶って……ああそうか、メイデンの自我って私とこのゲームの両方から構成されてるんだっけ。ならそういうことを知ってることもあるのか。

 

「これまでは時期尚早と見て言い出さずにいたが、よい機会かもしれぬな」

 

 次なる獲物を見つけ牙を剥くカトリ様。いや~キツイっす。

 ていうか今回の<UBM>もスターリングさんがいたから楽勝だっただけで、私達だけだったら勝てたかどうかもわかんないじゃん?

 それなのに<UBM>が出るからってわざわざ行くなんて、私はちょっとご遠慮したいところなんだけど。

 

「……はぁ~、我が<マスター>ながらなんと情けない。そこは意地を張ってでも「楽しみだ」くらい言えんのか」

「私の方針はいのちだいじになんです!」

『かとりんは男前ガル、マグロちゃんは慎重ガル。二人合わせてちょうどいいガル』

 

 まぁ、そこは、否定しませんけど。

 そんなこんなで和気藹々としているうちに、王都の門前についた。

 運んでくれたバルドルに礼を言い、その<マスター>であるスターリングさんにも改めて頭を下げる。

 

「おかげさまでいろいろと助かりました。また機会があったらよろしくお願いします」

「うむ、世話になった。ああは言ったがそなたが居なければかの<UBM>に我らの命が危ぶまれていたのは事実。此度の活躍、褒めてつかわすぞ」

『光栄ガルー。こちらこそまた一緒に狩りいくガル』

 

 ……最後まで気持ちのいい人だ。

 こうやって誰かと長時間行動を一緒にするなんて初めてだけど、彼とならそれが苦じゃないのがなんだか妙に嬉しかった。

 まぁ、狩場にはまるで優しくない人だけどね。私達も同罪だけど。

 

「それじゃあ私達はこれで。カトリ様、戻りましょう」

「うむ。では下僕よ、輿を用意せい」

 

 アイテムボックスから一人乗りの人力車を取り出すと、カトリ様が悠然とそこへ座った。

 私は持ち手を握り、そのまま車を牽く。もう長いこと使ってきたせいで、随分と慣れてしまった。

 

 最後にもう一度スターリングさんに頭を下げ、そのまま王都へ入っていく。

 その背後で彼がぼそりと言い放った呟きには、気づかないまま。

 

 

『…………あれが噂の"土下座姫"だったか。世の中広いなー……<レジェンダリア>の連中よりはマシだけど』

 

 

 ……なんだかとても不名誉な称号が広まっている気がする。

 

 




クマニーサンが異様に使い勝手よくてヤバイ第五話。
間違いなく今後二次創作が流行る上でキーパーソンになる(確信)

そして原作では屈指の楽勝UBMとしてさらっと流されたサイクロンポケット。
具体的な描写は捏造ですが、少し絡めてみました。
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