我は彼の奴隷なり   作:ふーじん

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原作キャラを登場させるときはいつも緊張します。
何かご指摘等ございましたら構わずどしどしお寄せください。


早い再会

 

 □【獣神】マグロ

 

 

 スターリングさんと並びギデオンの街並みを歩く。

 片や怪しさ満開ながらも愛くるしいデザインで道行く子供たちに群がられるクマ。

 片やその隣を歩く二足歩行のマグロもどきに扮した私。

 子供たちに向けて愛嬌を振りまくスターリングさんに合わせて私もはりきりキッズと戯れようとしてみたのだけど……

 

「びゃああああぁぁぁぁぁ……!!」

『なんでー!?』

 

 ……近寄る端から怖がられて泣かれてしまいました。はい。

 スターリングさんにまとわりついてたときはあんなにも笑顔満面だったのに、私が近づくと表情を一変させて後ずさる。

 両手でお菓子も広げて「こわくないよーおいしいよー」って優しく宥めてみても、何故か余計に距離を取られて終いにはギャン泣きされる始末。

 なんでや! 確かにちょっと大きくて威圧感あるかもだけどそんなんクマも一緒やんか!!

 

『ちょっとマグロネーサン、子供たちが怖がっちゃってるクマー』

『おかしいですよクマニーサン、東方のご当地お菓子とかキッズまっしぐらのはずマグロ』

 

 子供たちはスターリングさんの背中に隠れて、これじゃあすっかり私が悪者じゃないか。

 せっかく黄河や天地のご当地グルメを披露したというのに、なんて見る目のない子たちだよまったく!

 ……取り出したはいいけと着ぐるみ装備してるせいで自分で食べられもしないし。捨てるのも勿体無いのでスターリングさんに渡す。

 そこで初めてお菓子に興味を持った子供たちがスターリングさんを視線で追いかけ、彼が一口食べて「おいしいクマー」と言って差し出せば、今度は打って変わってお菓子に殺到しだした。解せぬ。

 

『――――――――』

『顔だけ真顔でも心の中で爆笑してるのが丸分かりなんですよクソァ!』

『やっぱそれダメだって。特に眼。子供なんてそういうのに特に敏感だから』

 

 子供に私の心はわからない……私が彼らを理解できないように。

 ぶっちゃけスターリングさんに合わせて着ぐるみデート♪ なーんて調子乗ったのは完全に失敗だったなぁと後悔しながら、さりとて今更着ぐるみを脱ぐのも負けた気がするとマグロ人間続行中な私です。

 勝敗ってどうでもいいことほどこだわること多いよね、きっとそれ。

 

『スタ……クマニーサンは子供たちの相手手慣れてるマグロ』

『まー普段から行く先行く先で注目集めてるし、人気者はつらいクマー』

 

 なんとなく語尾も着ぐるみに合わせてみる。……違和感半端ないなマグロ。

 対するスターリングさんは手慣れたもので、まるでネズミの国の名アクターのようだ。まぁ私行ったことないんだけど。

 なんというか、全体的にスターリングさんって器用だよなぁ。できないことって無いんじゃないかって思うくらい。

 

『ぶっちゃけなんで着ぐるみなんです? 初めて会ったときからでしたけど、今までなんとなく聞くことなかったですけども』

『いや、それがな……ちょっとトチってリアルそのままなんだよ、アバター。おかげで初期費用消えた』

『あー、それは仕方ない、のかな?』

 

 私もアバターはほとんど現実準拠だけど、そこまで気にしてないからなぁ。

 正直相当な有名人でもなければわざわざ隠し立てするようなこともないと思うし、母数も相当多いから特定の可能性もほとんど皆無だろうしね。

 ……まさか本当に超有名人って可能性も? いやぁ無いでしょ、ないない。

 

『おまけに特典武具もほとんど全部着ぐるみだから、まともな装備しようにも今更過ぎてなぁ』

『ああ、あるある。アジャストの結果か知らないけど、ありますよねそういうの。ていうかスターリングさんのそれ、特典武具だったんですねー。昔見たのとは別だと思ってましたけど』

『ん、まぁ一年前のアレのあとにちょっと<UBM>倒してな。ほらこれ』

 

 と言って装備の詳細画面を見せてくれたスターリングさん。

 ……なにこれ怖い。古代伝説級て、なんでそんな強敵からわざわざ着ぐるみなんてドロップするのか。

 いやでもこれ強いわ。確かにこの性能なら普段使いしててもおかしくはないけれど……

 

『最後のスキルが見えませんけど、そういう仕様です?』

『そういう仕様クマー。割りと秘密兵器なので詮索も無用クマー』

 

 ですよね。こういう情報って命綱ですし、根掘り葉掘り聞くのはマナーに悖るというものだ。

 ……少しでも見せてくれたのは親愛の証と思っていいのかなっ。ちょっと長年来の付き合いっぽくて憧れるなぁこういうの!

 

『ちょろいな、そなた……』

『しゃらっぷ。あ、中央広場に着いてたみたいですよ』

 

 いつの間にやら到着していた目的地にスターリングさんを振り返ると、そこには今まで以上にもみくちゃにされた子供山さんがいた。

 何十人と群がられて足の踏み場もないというのに、構わず歩いて子供たちを抱え上げ生きた遊具と化すスターリングさん。さすがはSTR特化、私なら間違いなく死んでるな(確信)

 

「何やってんだよ兄貴……」

 

 ちょっぴり羨みながら子供山を鑑賞していると、ふいにそう声をかける第三者が現れた。

 金髪のツンツンヘアーにちょっとダークな意匠の篭手具足……と少女連れ。

 カップルさんかなと思い、今しがた彼がこぼした言葉を理解して。

 

『おお、そこにいるのは我が愛しのブラザー、レイじゃないか!』

「いや、なんでそんな説明ゼリフ?」

 

 大きく両腕を広げて金髪の彼を出迎えるポーズをするスターリングさんで、彼らの関係がよくわかった。

 ちなみにそうする間も腕に子供たちを引っ掛けて人間ブランコ継続中である。マイホーム全開なパパさんか。

 でも、へぇ……スターリングさんって、弟さんがいたんだ。前々からお兄さんっぽいなぁとは思ってたけど、道理で。すごく納得。

 

「相変わらずすごい人気だな」

『まー着ぐるみは珍しいしな。いつもこんなもんクマー。今日は一段とだけど』

「祭りの日だから余計にか……っと、隣の人(?)は?」

 

 しばし歓談し合ってから、ふとこちらに目を向ける弟さん。

 心なしか私の人間としての存在に疑問を抱かれたような気もするが、ともかく。

 明らかに警戒の目で見られていることを察し、こわくないよーとヒレをぱたつかせてみる。

 ……あ、一歩距離置かれた。

 

『マグロちゃんクマー』

『マグロです』

「いや、見たまんまマグロなのはわかるけど……」

『いや、ネームがマグロなんだよ』

『マグロです』

「マジで!?」

「そこはシャケじゃないのか……」

 

 スターリングさんのご紹介に与り頭を……下げるのは(構造上)無理だったので、ヒレを動かして友好の意を示す。

 彼はそんな私の意を察してか、ヒレを掴んで握手(?)してくれた。

 

「えっと、レイ・スターリングです。よろしく……兄とはお知り合いですか?」

『マグロです。お兄さんには以前から大変お世話になってまして……実のご兄弟なんです?』

『リアルで兄弟クマー』

『成程……見たところその装備、特典武具ですよね? ひょっとして弟さんも<()

『うぉおおおおおおおお!?』

 

 突如としてニャン○ゅうみたいな声を上げたスターリングさんに引っ張られ壁際に追い詰められる。

 なぜだか焦った様子の彼に何事かと戸惑いながら、凄むスターリングさんに迫られ二の句を継げない私。

 

『秘密で』

『秘密って……<()

『そうそれ! とりあえず今は秘密にしといてほしいクマー!』

『えっと、その……はい、わかりました……』

 

 頷けないので必死に目と言葉で承諾すると、ようやく解放された。

 弟さんの前に何事もなかったかのように戻るが、案の定弟さんはジト目で怪しんでいるようだった。

 ……まぁ、突然目の前でクマがマグロを物陰に連れ込んだら何事かと思うよね。

 大丈夫、食べられてませんよ、私。

 

「おい兄貴、その人になんか脅してるんじゃないだろうな? ス――」

『<素敵大好き着ぐるみ愛好会>クマ! 俺達はこの国の<素敵大好き着ぐるみ愛好会>の仲間クマ、さっきのは愛好会の一環としてやってるパフォーマンスのネタが突然思いついたから居ても立っても居られなかったクマー!』

「いや、なんだよその<素敵大好き着ぐるみ愛好会>って……そうなんです?」

『え? あ、うん、はい……?』

『会員数二名クマー!』

 

 よくわからんがとりあえず流されておこう。

 思いがけず挙動不審なスターリングさんに面食らって、私もちょっとパニクってる。

 

「クマニーサンはともかく、そこのマグロネーサンは到底子供ウケするようには見えぬがのう」

「ばっ、失礼なこと言うなよネメシス! 人の趣味はそれそれなんだから……まぁ、眼はちょっとリアルすぎて怖いかな? とは思うけど」

「まさしく「死んだ魚のような眼」というやつだな」

『これ、そんなに不評ですかね……』

 

 活きの良さがウリだったのに、死んだ魚のようなとは……解せぬ。

 そしてさっきから静かだなと思ってたら、いつの間にかカトリ様が紋章に戻ってた。

 なんでだろ……まぁいいか。

 

『ところで、そちらの彼女さんは弟さんの<エンブリオ>ですか?』

「あ、はい。ネメシスっていって、メイデンなんですけど」

『メイデンかぁ……弟さんはいい<マスター>なんですね』

「ありがとうございます……? あ、俺のことはレイでいいですよ。弟さんってのもなんか、むず痒いし」

『それなら俺もシュウでいいクマー。レイと一緒だとスターリングさんじゃややこしいクマー』

『えっ、それはその……ハードルが高いというか、はずかしい……』

「『なんで?』」

 

 だって名前呼びとか、まるで幼馴染か一生モノの親友同士みたいで、敷居高いじゃん!

 ネームがそれしかないならともかく、フルネームで設定してるのを名前呼びなんて、その……照れる!

 あと根本的に誰かの名前を呼ぶことに慣れてない、ほんと照れる……。

 

「随分とシャイなマグロだのう。いや、表情はまったくわからんが」

『すみません……』

「まぁ本人がそういうなら、無理強いはしませんよ」

『あ、私のことは呼び捨てにしてください。敬語なんて畏まられても……恥ずかしい』

「そこは注文つけるのか御主!?」

『まぁまぁ、こういうやつだけどよろしくしてやってほしいクマー』

 

 ……こう、友達と遊んでたら思いがけず初対面のご家族が現れたという不安を分かってほしい。

 彼らの勝手知ったる身内ムーブはソロぼっちには肩身が狭いんです、はい。

 

 

 ◇

 

 

 あれからしばらく兄弟で歓談しあい、場所を移そうということで手近な店で食事しながら、となったのだけど。

 私はそれを辞退し、スターリングさんと別れてカトリ様と二人、中央広場で暇をつぶした。

 なんだか久々の再会みたいだったし、リアルでは長い間会ってないようだし、そんな兄弟同士の親交に水を差すのも悪いと思ったからね。

 決して身内同士特有の親密さに肩身の狭さを感じたからではない。私は気遣いのできる女なのだ。

 

「それにしてもスターリングさんはさすがだなぁ、子供だけじゃなくて小動物にもモテモテでしたね」

「…………」

 

 ふと思い出したのは、彼らとの去り際にクマ頭にへばりついていたヤマアラシっぽい小動物だ。

 よっぽどスターリングさんの頭の上が気に入ったのか、<マスター>と思しき女性(これまたクールな感じの美人さんだ)が言っても離れようとせず、なんとも愛らしい姿を見せてくれたので思わずほっこり和ませてもらった。

 大柄ながらも愛嬌たっぷりなクマ着ぐるみの頭に乗っかる小動物。もし手元に魔法カメラがあったらたまらず一枚お願いしてしまったに違いない。

 

 ……まぁその、私もちょっと羨ましくなって、小動物ちゃんを撫でようとして<マスター>のお姉さんにすごい顔で見られたのは、デリカシーがなかったかなと思うけど。

 正直めっちゃ怖かった。きっとよっぽど自分の<エンブリオ>に愛着がある<マスター>さんだったのだろう。

 やっぱりこの着ぐるみはウケが悪いなぁ、封印すべきだろうか……。

 

「そなたマジか」

「えっ、なにがです?」

「いや、気付いておらぬならばよい……」

 

 私には分かる。カトリ様のこの目は「どうしようもないアホの子を見る目」だということが。

 ……いやうん、お祭りで浮かれてる自覚はあるけど、そこまで憐れまれるように見られるほどじゃあ、ないとは、思うんだけど……ねぇ?

 やっぱり私も普段から注意かなにかをすべきだろうか。なにを注意すればいいのかわかんないけど。

 

「いや、やめろ。そなたが一人でなにかするのは地雷原を突っ切るカルガモを見守るより怖い」

「そこまで低評価でしたか……」

 

 《殺気感知》とか《危険察知》とか、その辺も全然だからなぁ私。

 どうせ警戒したところで私の場合死ぬときはあっさり死ぬから、警戒するだけ無駄なんだよね。

 その分カトリ様がその辺敏感だから、特に<超級>になってからは余計頼りっぱなしだ。いっそ依存と言っても過言ではない。

 

「まぁクマの戦士も警戒しておったからな、余が出る幕ではなかろう」

「???」

「気にするな。そなたが考えるだけ無駄なことよ」

 

 よくわからんがカトリ様の言うことに基本間違いはない、素直に聞いておくことにしよう。

 そんなこんなでしばし中央広場で時間を潰したあと、セミイベントの時間が迫ってきたのでそのまま中央闘技場へ向かう。

 ちなみに着ぐるみはもう脱いだ。さすがに闘技場でまでこれを着ていく勇気はない。スターリングさんはきっといつものままなんだろうけど。

 

 受付にチケットを提示してそのままボックス席へ。

 確かチケットに書かれていたのはLボックスだったかな、中央闘技場のボックス席で観戦するのも久々だから、より一層気分が高揚するというものだ。

 

 個人的に闘技場での興行は王国が一番だと思うんだよね。黄河はトップがトップだからちょっと格式高いし、天地は修羅の集うガチの国だから最早興行ではないし。

 ……本当の意味で命を懸けた決闘を見るなら、天地が一番なんだけどね。ただあそこ、基本野良死合(試合にあらず)で事前に勝敗を決して、闘技場はその結果を反映するだけだから味気がない。

 何度か在野でランカー同士の決闘を見たことあるけど、一度部外者の目を嫌う人に追いかけられて慌てて逃げた思い出がある。天地マジ怖い。

 

 指定のボックス席に向かうと、既に先客が三名ほどいた。

 やたら見目麗しい美少年&美少女のコンビと、メンズスーツにグラサンかけた怪しさ抜群の女性。

 様子を見るに彼らは知り合い同士のようだ。<マスター>同士の交友って見た目がチグハグなことも珍しくはないから、特段おかしくはない。カルディナにはアフロと幼女のコンビもいたし。

 

 とりあえず失礼にならないよう、軽く会釈だけして指定席に座る。

 カトリ様も適当なところに立って、大窓から舞台を見下ろしてセミイベントの開演を静かに待っていた。

 実はカトリ様が一番決闘を楽しみにしているんだよね。私は単純に見て楽しむだけなんだけど、カトリ様は闘技者を分析して己に組み込むために観戦する観戦ガチ勢だ。

 カトリ様のこういうところは昔から変わってない。だからこそ頼もしいのだけど。

 

「セミイベントの演目はなんだったか」

「第四位"黒鴉"ジュリエットさんと第八位"流浪金海"チェルシーさんの試合ですね。どちらも熟練の闘技者で、前座にしては豪華な組み合わせですよ」

 

 どちらも一年以上前からギデオンで活動している名ランカーだ。私も何度も彼女らの試合は観戦している。

 衆目に晒される闘技者のトップランカー勢ということで、特に手の内の知られている面々ではあるけれど、情報として知られるスペックと実際の戦い方はまったく別の話だ。

 むしろ手の内を知られながらランキング上位を維持する努力は細やかな戦法戦術にこそ現れ、何度観ても飽きがこないのが王国の決闘ランカーの面白いところだよね。

 カトリ様もそう思ってか、一挙手一投足を見逃すまいと舞台上を睨みつけていた。そんな彼女のイチオシは手数の広さという意味で決闘王者のフィガロさん。私? 私はビシュマルさん推しだよ。戦闘スタイルが親近感あって好きなんです。

 

「お飲み物でも買ってきましょうか? それとも果物でも?」

「要らぬ」

 

 すっかり観戦モードに突入したようだ。こうなると暫くは何を言っても動かない。

 これ以上は邪魔をするだけなのでおとなしく座席に戻り、お菓子を広げて静かに開演時間を待つ。

 そしてアナウンスが放送され始めたところで、新たにボックス席へ現れた人影が二つあった。

 

「マリー、ルーク、バビ、お待たせ! 間に合ったか?」

「中央闘技場は広いのう。危うく迷いかけたぞ」

「大丈夫です、ちょうど今から始まるところですよ」

「えへへー、この部屋ひろーい! 超豪華だよ~♪」

「あっこらバビ、あんまりはしゃいじゃダメだよ。他のお客さんもいるんだから……」

「あ、お構いなく。…………あれ、弟さん?」

 

 見覚えのある少女を連れて入ってきたのは、同じく見覚えのある金髪ツンツンヘアーの少年だった。

 思いがけず早い再会に声をかけてしまったが、対する向こうは私が誰か分からず訝しんだ様子を見せる。

 ……あ、そっか。あのときは着ぐるみをつけてたんだっけ。

 

 私は無言でマグロ着ぐるみを《瞬間装着》し弟さんへ向けてヒレを振った。

 そしたら連れの美少女メイデンが吹き出した。

 初めてウケた。やったぜ()

 

 




マグロ着ぐるみはこれにて暫く封印です。
フランクリンのゲーム編が終わったら諸国漫遊編を書いてみたいですね。

余談ですが、二次創作を書いてると原作キャラとの絡みが楽しくて仕方ありません。
とはいえかまけてばかりでは話が進まないので、ぼちぼち山場へ持っていきたいと思います。
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