お待たせしました。
扉を開けると目の前には、トロールの死体が転がっていた。
先に入ったハリーが倒したとは考えにくい、恐らくハリー達より先に入った何者かが殺害したのだろう。そうなるとハリーがその何者かと接触している可能性が高い。
私は死体を避け、急ぎ次の扉を開ける。
扉を開き部屋の中心までやってくると、一瞬にして周囲に炎が現れ、炎の檻の中に閉じ込められる。炎の壁の向こうには次の部屋への扉があった。
部屋の中心にあるテーブルの上に数個のツボと1枚の紙がある。
紙には謎の数式と『3つは毒、1つは先へ進む道標、残りは葡萄酒』と書かれている。
「なるほど、なぞなぞね、作った人は相当なひねくれ者だわ」
紙を破り捨て炎の壁に向かって両手を突き出し銃を乱射しながら炎の檻に飛び掛かる。
体を回転させながらも、両手の銃を連射し続け、発射された弾幕によって炎の壁を撃ち破り勢いそのまま扉をぶち破る。
通路を抜けた先は大広間があり、燭台に灯された蝋燭が周囲を照らしていた。
中心にある巨大な鏡の前にハリーは棒立ち状態で鏡を見つめている。
その後ろにはターバンを巻いた男…確かクィレルだったか…
「何が見えている!早く言いなさい!」
「僕が…僕がクィディッチの試合で優勝して、ダンブルドアと握手してる!」
『嘘を言うなぁ!』
周囲にクィレルのとは違う、憎悪の籠った擦れた様な声が響いた。
『俺様を見るんだ!』
クィレルがターバンを取ると後頭部には酷く歪なもう一つの顔があった。
『俺様が誰か分かるだろう…ハリー…』
「ヴォルデモート…」
『そうだ…貴様のせいでこのような姿になり!ユニコーンの血で命を飲まなければ魂を維持できない体になってしまった!』
「うわぁああ!」
ハリーがその場から逃げようとする。
『逃がすな!捕まえろ!』
ヴォルデモートが叫びそれに従いクィレルがハリーの手を掴んだ。しかしすぐに手を放してしまい、ハリーはその場で尻餅をついた。
「あがあああ!私の腕が!」
クィレルの腕がハリーに触れた所が焼け落ち、クィレルは苦悶の表情を浮かべていた。
『使えぬ奴め…捕えられぬなら殺せ!』
酷く歪な表情のクィレルが無事な方の左手で杖を構える。
「死ねぇ!!」
呪文を唱えながら、杖が緑の閃光を帯び後は発射されるだけとなった。
大きく手を振るい、魔法が発射される寸前…
私は右手の銃を撃ち、弾丸を発射する。
放たれた弾丸は、魔力を十分に帯びた杖の芯を確実に打ち抜き、轟音と共に破壊する。
「あがああああああ!」
杖が粉砕されたせいか、込めていた魔力が暴走したようでクィレルがの左手が吹き飛び、周囲には血が飛び散った。
『貴様!何者だ!』
苦痛に喚くことなくヴォルデモートが叫ぶ。
「ただの生徒よ、それよりここは関係者以外立ち入り禁止なはずだけれど」
「ベヨネッタ!無事だったんだね!」
ハリーは嬉しそうに叫び私の元へ駆け寄る。
「ああがああああああ!」
『うるさいぞ!』
「ですが…我が君…このままでは…」
両手を失ったクィレルが苦痛に顔を歪め、大きく肩で息をしている。
『クィレルよ、俺様に体を預けろ…』
「しかし…我が君!それでは!」
『貴様が死ぬな。だが最早、いつ死んでもおかしくは無かろう。少しでも俺様の役に立て」
「あ…ああ…あ」
苦痛の顔が絶望の表情に塗り替えられる。
『早くせぬか!』
「わかり…ました、我が君!栄光を!」
その直後、クィレルの首がダラリと力無く項垂れると、先程まで曇っていたヴォルデモートの声がクリアになり周囲に響く。
「貴様ら!生きて帰れると思うなよ!」
項垂れた頭が急に天を仰ぐと目が見開かれ、ヴォルデモートの叫び声が響く。
「来たれ!精霊にして神使よ!その姿を我が眼前に姿を現せ!」
直後周囲が黄金色の光に包まれる…とても暖かく、酷く不快な光に。
「なんだ!何が起こっているんだ!」
ハリーは周囲を見回し狼狽えている。私はそんな彼に魔力の籠った杖を軽く振りドーム型の結界を張る。
「ベヨネッタ!これは…」
「そこから出ちゃダメよ、死にたくないならね」
私が言い終えると空から奴らが現れた。
純白の翼を羽ばたかせ、頭上には黄金に輝く輪…ヘイロウを輝かせ、神秘的な神具をその手に携えて奴らが地上に現界した。
「なんだよ…なんだよアレ!まるで…まるでアレは…天使じゃないか!」
そう…奴らは天使だ。
「フハハハハハ!そうだとも!奴らは天使だ!俺様は神すら配下に加えたのだからな!!」
「そんあ…あんな…あんな闇の化身のような奴に天使が…一体なんで神がお前に着くんだよ!」
「フハハハハハアーハハハ!気になるなら話してやろう!貴様が生きていたらな!」
「そんな…こんな…」
絶望に打ちひしがれているハリーに私は語り掛ける。
「あぁ…我らが主の御使いよ…」
私は両手を広げ奴らに一歩ずつ近付いて行く。
まるで食虫植物に誘われる蝶のように…
「ベヨネッタ!ダメだ!」
「フハハ!小娘が!天使に魅入られたな!さぁ!行け!奴らを撃ち滅ぼせ!」
ヴォルデモートが叫び声をあげると天使たちは私たちに向かって突撃してくる。
私も飛び上がり奴らの元へ身を委ねる。
「うわぁああ!」
ハリーが叫び私に手を伸ばす。
きっと彼は私が天使に魅入られてこのまま無残な最期を迎えると思ったのだろう。
奥で笑っているヴォルデモートも恐らく同じ考えなのだろう。
あと1mほどで奴らっと接触する。
もういいだろう…さぁショータイムだ!
抱き着こうとしてくる天使の顔面を右足で薙ぎ払い、左足を振りぬき別の天使に弾丸を撃ち込む。
「え?」
「なんだと!」
驚愕する二人を尻目に次のターゲットに狙いを定め、空中ですれ違いざまに弾丸を放ち頭をぶち抜く。
「キュガァアア!」
天使とは思えない声を上げ、奴らはボトリと地面に堕ち息絶える。
「なぜだ!!」
「フッ、こんな奴らを呼んだところで良い気にならない事ね。お友達になるならもっと上品な子を選びなさい」
「ふざけるなよ!奴を殺せ!」
さらに大量の天使が降り下りてくる。
しかし、どれだけ来ようと所詮は最下位に位置するアフィニティと呼ばれる天使だけだ。
奴らの中心に入り込むと、奴らは手に持った槍を私目掛けて一斉に突き刺した。
槍の刺突を飛び上がりかわすと、先程まで私が居た場所に数本の槍が突き刺さった。
「ふん!」
槍の上で横になり、四方に居る天使の脳天を狙い弾丸を浴びせかける。
「ギュアイ!」
見事に脳天を撃ちぬかれた天使達は、その場に力なく崩れ落ちる。
周囲を漂っていた天使達も、状況を理解したのか、一斉に襲い掛かってくる。
奴らの動きを見切り、踊るように攻撃を避けながら確実に弾丸をお見舞していく。
弾丸を受けた天使は1匹また1匹と地に堕ち光となって朽ち果てる。
さらに近寄ってくる1匹の天使を殴り飛ばし、両足を持ちジャイアントスイングの要領で振り回し周囲にいた奴らも巻き込む。
次に空中で両足で天使に抱き着くと顔面に銃弾の雨を降らす。
弾丸を受け、息絶えた天使の亡骸を、別の天使目掛け投げつける。
直撃した天使が、立ち上がろうと、もがいている所に一気に詰め寄り、タップダンスを踊るかのように踏みつける。
その後も踊り狂う様に天使を虐殺し続け、結局30匹近くいた奴らは1分もしない内に全て地に堕ち消え去った。
「そん…な…馬鹿な!」
「これじゃ、全然踊り足りないわ。曲もダンスもまだ始まったばっかりよ。カーテンコールには早すぎるわ!」
ヴォルデモートは絶望し、ハリーは茫然としている。
「これで打ち止めかしら?さて、それじゃあ、話して貰おうかしら、アンタが何者と契約したかを」
「ふざけるな…ふざけるなよ!貴様!」
叫び声を上げ天を仰ぎ両足をついた。
「中位三隊の「子」に属する者よ!天に仇なす悪しき者を撃ち滅ぼす者よ!我が声に答えよ!」
床が割れ魔法陣が現れる。
その中心には緑の籠手を着けた腕が現れ、次の瞬間に地響きと共に巨体が現れる。
現れた天使は今までの天使を遥かに上回る巨体で、体の至る所に緑色の甲冑を身に着けていた。
その天使は、ビラブドと呼ばれ、その手に身の丈に合った黄金の斧を持ち、悠然と構えている。
「どうだぁ!行け!我が眷属よ!奴を撃ち滅ぼせ!」
ヴォルデモートが狂気を孕んだ怒声を上げる。ビラブドはその声を聴き声の主をじっと見据えている。
「どうしたのだ!早くしろ!」
次の瞬間、ビラブドはヴォルデモート…クィレルの体を右手で握り付けた。
「あがぁ!貴様!何を!」
ヴォルデモートが呻き声を上げ、もがいているが、ビラブドは何の躊躇いも無く右手に持ったクィレルを地面に叩きつけた。
地面に激突し、クィレルの体は一瞬にして血煙となってしまった。
霧散してしまった体からはヴォルデモートの魂のようなものが煙状になりハリーへ突っ込んでいった。
「あぁあああ!」
ヴォルデモートの直撃を受けハリーは倒れてしまう。しかし結界を張っておいたので気絶だけで済んでいるようだ。
「さて、これで邪魔者は居なくなったわ…さぁ!いらっしゃい!」
「ふんぬ!」
ビラブドが両手に持た斧を力に物を言わせ大振に横薙ぎした。
弧を描くように眼前に刃が迫りくる。
ギリギリでバク転をしウィッチタイムの中を銃弾を放ちながらビラブドの後ろへ回り込む。
そのまま両手で打撃を与えフィニッシュの蹴りにマダムの力を乗せてを放つ。
「ぐあぁ」
世界の流れが通常に戻り、ビラブドが吹き飛び壁に激突する。
土煙の中から膝を付きながら現れたビラブドの姿は、マダムの蹴りが直撃し体の表面がボロボロになりながらも起き上がり再び斧を構えた。
「ふうん!」
渾身の力を籠め斧を振り下ろした。
「はぁああ!」
両手の銃を眼前で交差させ、銃身で斧を受け止める。
銃と斧が擦れ火花が飛び散りギリギリと金属の削れる音が響く。
「ふん!」
両手を上に突き上げるようにして斧を吹き飛ばす。
「遅い!」
斧が吹き飛ばされ無防備になったビラブドの眼前に迫り、そのままの勢いで顎を蹴り上げ、そのまま顔面に弾丸を撃ち込む。
「ぐぁぁ」
蹴りの他に、弾丸の嵐を受け、顔の殻までボロボロになり仰向けに倒れる。
「さぁ!そろそろ終わりにしようかしら。グランドフィナーレよ!」
魔力を髪に集中させ、その髪を媒体にゲートを開く。
「CARR-MMA BOWE-COOW【主よ、来たれ、喰らい、滅ぼせ!】」
ゲートから再びゴモラが姿を現し咆哮を上げ、弱り切ったビラブドを見据え、巨大な口を開けビラブドの体に喰らい付く。
ビラブドはジタバタともがいているが、逃げられるはずも無く、数回咀嚼され、手足が捥がれ、最後には噛み砕かれ息絶えて姿を消した。
「ぐああああああ!」
ゴモラは満足気に咆哮を上げ姿を消した。
天使達が消え去った後はとても静かだった。
部屋の中には結界で守られたハリーと、なぜか無傷で鎮座している巨大な鏡が残っていた。
「これは…」
私は、足元に転がっている紅い石を拾い上げた。
恐らくこれが賢者の石なのだろう…しかしロダンの持っていた石よりも各段に力が弱く感じた。
こんな物に望みを託し、神と契約を結んだのかと考えると、とても不憫に思えてならない。
しかし…奴が契約した神とは一体…
周囲を見渡すと一か所…巨大な鏡が目に留まった。
鏡に近付くと私の姿全体を映し出す。そして気が付いたが、自分で思っている以上に幼い風貌なのだと少し驚いた。
しばらく鏡を見据え少しポーズを決めていると、鏡の中の私が振り向き周囲を見回し始めた。
何が起こっているんだ?
鏡の中の私が再び、正面を向き私と目を合わせる。その瞬間、衝撃が走った。
何故なら、鏡の中の私の隣には、もう居ない筈の両親の姿があったのだ。
「これは…」
鼓動が早くなるが何とか落ち着きを取り戻し、鏡を見据える。
鏡の装飾部には『みぞの鏡』と書かれていた。
どういうネーミングセンスなのかは分からないが、どういう物なのかは推測できた。
望みの物を映し出す鏡なのだろう。
つまり私は、両親との生活を望んでいるという事になる。
確かに、鏡の中の私はとても幸せそうだ。
両親に抱きしめられ。心から笑っている…あぁ…とても幸せそうだ。
「なるほどね…確かに素晴らしいわ…」
思わず声に出してしまう。それだけ私は動揺しているのだろう。
数回深呼吸をして呼吸を整え、再び鏡を見据える。
鏡の中では、私は父親の腕に抱かれ寝息を立てていた。
現実の私は両手にある銃に目を落とした。
そこには傷一つ付いていない、光沢のある銃が握りしめられているのを再確認し、その重さで今、銃を握っている自分が現実なのだという実感を得た。
一息つき右手の銃を鏡に向け構える。
「いい夢だわ、でも私は白昼夢を見ているほど狂っては無いのよ」
人差し指に力を籠め引き金を引く。鏡の中の私は最後までとても幸せそうだった…
銃声が鳴り響き、鏡の中心に銃弾が命中し鏡が砕け散った。その破片の奥には、鋭い目線のダンブルドアが立っていた。
天使達に出てきてもらいました。
両親の死という点でも、ベヨネッタとハリーってどこか似通っている気がするんですよね。
次回で賢者の石編は最後になります。
よろしくお願いします。