車に乗ります。
今日から新学期が始まる。
私はキングス・クロス駅に到着したばかりだ。
時計を見ると発車まであと15分以上ある。
さて、そろそろ9と3/4番線に向かうとしよう。
去年と同じように柱があるホームへ向かうと、そこには、柱の前でカートを盛大に横転させているハリーと一緒になって荷物を拾っているロンの姿が見えた。
私の足元にまで教科書が飛んでくる程の勢いでぶつかった様だ。
教科書を拾い上げると、表紙に描かれているロックハートが気持の悪いウィンクをしていた。
「落とし物よ、盛大にやらかしたわね」
「ベヨネッタ!どうして君がここに…」
「私だって汽車に乗るのよ。それより、何があったのかしら?」
「よくわからないんだ。ハリーが入ろうとしたら急に入れなくなったんだ!」
ロンは少しパニックを起こしているのか、大声を上げている。
「そうなのね、とりあえず場所を移しましょう。ここじゃ人目に付くわよ」
周囲に居る人々は私達を好奇な目で見ていた。
それもその筈だ。柱にぶつかって大声を上げていれば誰だって見てくる。奥に居た駅員に至ってはこちらをチラチラと目配せしていた。
「そうだね、とりあえず移動しよう。ロンこっちだよ」
私達はハリーに連れられホームの端まで移動した。
「どうしよう!あと少しで発車時間だよ!」
ロンの言う通り発車の3分前となっていた。
私達は何度か試したが一向に通れる気配はなかった。
「もう間に合わないよ…」
ハリーがそう言うと同時に時計の針は無情にも発車時刻を指した。
「行ったわね。さてどうするのかしら?」
「どうするも何も…パパもママも帰っちゃったと思うし…」
「大変ね、タクシーでも呼ぼうかしら?」
「タクシーじゃホグワーツまで行けないよ…」
ハリー達の表情はどんどんと暗いものになっていった。
私は、一度店へと戻り、そのままホグワーツへ向かっても良いのだが、それだと彼らをここへ置いて行ってしまう事になる。
かと言って、店に彼らを連れていくのは流石に刺激が強すぎるかもしれない。これは最後の手段にしておこう。
「そうだ!車だよ!」
ロンの表情が一気に明るい物へと変わり大声を上げた。
「どうしたんだよ?」
「車だよ!パパの車でホグワーツまで向かうんだ!」
今一話が理解できなかったので詳しく聞くと
どうやら、ロンの父親の空飛ぶ車でホグワーツに乗り入れるという事だった。
先程まで暗い顔だったハリーはその話を聞いて目を輝かせていた。
私自身も、退屈な汽車での移動よりは刺激的だと思いその意見に賛同した。
「いいじゃない。私も乗せてって貰えないかしら?」
「もちのロンさ!運転は任せろ!」
「君は凄いよ!ところでカギは君のパパが持っているんじゃないの?」
「ヘヘッ」
ロンは不敵な笑みを浮かべるとポケットから一つのカギを取り出した。
「こっそり持ち出したんだよ!」
「ロン…君ってやつは…最高だ!」
2人はすっかりハイテンションになっていた。
やっぱり男の子だけあって冒険染みたことが好きなのだろう。
「さぁ!行こうぜ!」
ロンは意気揚々と車へ向かい、その後をハリーは荷物の乗ったカートを押しながら追いかけていった。
「これがそうさ!どうだ凄いだろ!」
ロンが自慢げに指差す先には、お世辞にも奇麗とは言えないボロボロの旧車がパーキングエリアでは無い場所に駐車されていた。
運の良い事にまだ違反切符は切られていないようだ。
そもそも、こちらの世界に違反切符があるのかさえ分からない。
2人は車のトランクに荷物を無理やり詰め込むと、ロンは運転席、ハリーは助手席に、私は後部座席へ腰かけた。
「ロン、今更だけど運転できるの?」
「任せろって」
ロンがそう言うと鍵を差し込み、エンジンを起動させた。
不安を煽る様な、弱々しいエンジンを始動させた後、緑色のボタンを押すと車体が透明になった。
これも一種の魔法なのだろう。
「出発だ!」
かなりハイテンションのロンがそう言うと車は中々の速度でロンドンの上空へと飛び上がった。
しかし、そこで目くらましの魔法が切れたのか、宙に浮いた車体が姿を現した。
「ヤバイ!」
慌てたロンは先程押したボタンを何度も連打するが、再び透明になる事は無かった。
「どうしよう。このままじゃマグルに見られる!」
軽度のパニックになったロンは更に連打の速度を上げていった。
「はぁ…埒が明かないわね」
私は助手席の扉を開けると車の屋根へと移動した。
上空に居るためか、感じる風が思いのほか冷たかった。
「ベヨネッタ!何をするんだ!」
パニック状態にある彼等を無視し、杖を取り出し車体に押し付け魔力を込める。
すると車体が一瞬で透明になった。
「これでいいわよ、さぁ行きましょう」
「助かったよ!さぁ行くぞ!掴まってろよ!」
私が車外に居るにも関わらず、ロンは全速力で車を発進させた。
しばらくすると、ロンが窓から頭だけを出しながら、必死で何か言っているようだったが、風の音がうるさく、聞き取る事が出来なかった。
まぁ、表情から察するに謝っているのだろう。
私が、軽く手を振り返すと、何事もなかったかのように、首を引っ込めた。
しばらく風を感じていると見覚えのある風景が見えてきた。
「見えてきたぞ!ホグワーツ特急だ!」
助手席のハリーが窓から顔を出しながらはしゃいで居る。
「本当ね、少し挨拶でもしましょうか」
私は杖を車体に押し込むと、車の操作を奪い取った。
「あれ?運転が…あれ?」
「悪いわね、ちょっと運転させてもらうわ」
「おい!何を言って…うわっぁ!」
ロンが言うよりも早く、私は限界速度を振り切り、ホグワーツ特急の近くまで詰め寄った。
「あら?あそこにハーマイオニーが居るわよ?手でも振ってみるかしら?」
「そんな余裕ないよ!ママぁ!」
ロンはハンドルにしがみ付き絶叫を上げていた。
「やぁ!ハーマイオニー!僕たち先行ってるよ!」
クィディッチの試合で高速に慣れているのかハリーはこの状況を楽しんでいるようだ。
汽車の中のハーマイオニーは驚愕したような表情をしながら何かを叫んでいた。
彼女の隣には見覚えのある少女…たしか、ロンの妹のジニーが黒い本を片手にこちらを見ていた。
ホグワーツ特急を追い越しホグワーツの古城が見えてきた。
そろそろ慎重に移動しようと考え運転をロンへと返した。
「ここから先の運転は任せるわね」
「無茶苦茶だ!」
ロンは不満を零していたが慎重にホグワーツの敷地内へと車を進めていった。
「ベヨネッタ!さっきのは最高にcoolだ!」
「どうも、あなた案外スピード狂なのね」
「シーカーだから」
ハリーはただ一言そう答えた。
「くそっ!今度はなんだよ!」
ホグワーツ敷地内に入ってからしばらくすると、車の動きがどんどんと鈍くなり、高度も下がってきている。
「ベヨネッタ!さっき壊したんじゃないか?」
「そんな筈ないでしょ。さっきまで壊れてなかったのよ。整備不良じゃないかしら」
「古い車だったし、しょうがないかもね」
「ハリー!今はそんな事を言っている場合じゃ…どうしよう、どんどん落ちてるよ!」
エンジンの音が途切れ途切れになり、最終的には落下し始めた。
車が落ちるであろう場所には1本の巨木が生えていた。
「うわぁ!このままじゃあの木にぶつかるよ!」
「うわああああ」
車は完全にコントロールを失い木に向かって突っ込んでいった。
木にぶつかる手前で木が突然に動き出し、車を私達ごと絡め取った。
「なんだ?」
「暴れ柳だぁああ!」
「暴れ柳?知らないわねそんなの」
私達を絡め取った木は異物を排除しようとしているのか車を振り回している。
「ヴォエ!このままじゃ僕達バターになっちゃうよ!」
「私はバターよりジャムの方が好きだわ」
「うわぁあ!」
叫び声を上げている2人の首元を掴むと車の屋根を蹴破り車外へと出た。
車外へ出ると木の枝が私達を絡め取ろうと蔦のようなものを伸ばしてくる。
蔦を避け、枝を折りながら脱出した後、彼ら二人を地面に横たえる。
先程から静かだと思っていたが気を失ってしまったようだ。
「ヴぉぉおおぉお!」
振り返ると暴れ柳が枝を伸ばし私達を再び絡め取ろうとしてくる。
「しつこいわね!触手は趣味じゃないのよ」
私は両手の銃を乱射し迫りくる枝に弾丸を撃ち込みバラバラに粉砕させていく。
その後、上空高く跳躍した後、暴れ柳目掛け両手両足の4丁一斉射撃による銃弾の雨を浴びせる。
弾丸を喰らい一部がバラバラになり、先程まで囚われていた車が解放され、ロン達の近くにキレイに着地した。
私も空中で体制を整え着地体制を取り、ロン達の近くへ落下した。
「ガシャン!!」
着地と同時に何かが、砕け散るような音が響いた。
足元を見ると、そこにはロンの車が大破した状態で私の足の下に存在した。
「ふぅ……………私は血も涙もないのよ」
私がそう言うと、何かを察したのか暴れ柳の動きが納まった。
それを見届けてから、車から降り、二人を起こした。
先に目を覚ましたのはハリーだった。
「あれ…ここは…」
「おはよう、良い目覚めね」
「おはよう…僕達確か…暴れ柳に捕まって」
「気絶していたのよ」
「そうだったのか…ありがとう、助かったよ」
「貸しにしておくわね」
「あぁぁぁあぁあ!どうなっているんだよ!!」
私達の後ろの方でロンが絶叫していた。
彼の目線の先には、暴れ柳によって壊滅的なダメージを受けた車が映し出されていた。
「どうしよう…パパに殺されるよ…」
覚束ない足取りでロンが車に近付き、エンジンキーを差し込みエンジンを始動させた。
その直後、力強いエンジン音が周囲に響いた。
最初の時よりも良いエンジン音だ。
「ラッキー、エンジンはまだ生きているわ」
「よくないよ!これじゃ…どうしよう…」
ロンが絶望したような表情で車を見ていると、その車が急発進し、どこかへ消えていった。
「あぁ…僕…もうだめだ…」
完全に両膝を地面に付け、天を仰ぎ始めた。
「ロン…元気出せって…ここに居たら危ないから、学校へ行こう」
「うん…あっ…」
「どうしたんだい?」
「僕の杖…折れてる…最悪だよ…ハハハ…」
ハリーは、最早抜け殻のようになったロンに肩を貸しホグワーツの入り口に向け歩いて行った。
ベヨネッタ関連で、車が現れると、大半大破すると思うんですよね。