季節はあっと言う間に過ぎ10月を迎え、ハロウィーンの日がやって来た。
周囲の生徒は大量のお菓子を手に持っていたり、料理にかぼちゃを使うメニューが多くなるなど季節感が顕著に表れ始めた。
「ベヨネッタ、良かったら今日、絶命日パーティに行かないか?」
開口一番にハリーが訳の解らないことを口に出した。
「絶命日?そんな縁起でもないパーティー行きたくないわ、貴方達3人で行けばいいじゃない」
「そんなこと言わずにさ、『ニック』に誘われたんだよ」
『ニック』とは、ホグワーツで生活している?ゴーストの事だ。
別名を『殆ど首なしニック』と呼ばれている。理由は、その名の通り首が無いらしい。
新入生に自らの首が外れるのを見せるのが趣味と聞く。
「誰に誘われたかなんて興味ないわよ、それに今年はハロウィーンパーティーを楽しみたいのよ」
「うーん…それならしょうがないね。じゃあ僕達だけで楽しんでくるよ」
ハリー達はそう言うと大広間から出ていった。
ハリー達を見送り大広間の席に座り、パーティーが始まるのを待っていると、背後から何者かが声を掛けてきた。
「や、やぁ、セレッサ、今日は一人なのかい?」
振り返ると、どこか緊張した表情のマルフォイが上擦った声で話しかけてきた。
「えぇそうよ、貴方の方こそ今日は一人なのね」
「あぁ、アイツ等はハロウィーンのお菓子を貪りに行ったよ」
「らしいわね、ハリー達は絶命日パーティーとかいうのに行ったわ」
「絶命日パーティー…フッ、悪趣味な連中だな」
「本当ね、それより何か用?もうじきディナーの時間よ」
「あぁ…そうだね…隣、座ってもいいかい?」
マルフォイがそう言うと私の隣にあった椅子に手を掛ける。
「やめた方がいいわよ」
私がそう言うと、マルフォイは少し残念そうな顔をするので、周囲を指差し、一言添える。
「ここはグリフィンドールの場所よ」
私がそう言うと、マルフォイは、ハッ、とした表情を浮かべ周囲を見回していた。
多くのグリフィンドール生徒の鋭い視線がマルフォイに突き刺さっており、それに気が付いたのか少し苦笑いを浮かべていた。
「話が有るなら場所を変えましょう。こっちよ」
席を立ち、大広間の端まで移動すると、マルフォイも私の後に続いた。
「ここなら大丈夫よ」
「あぁ、感謝するよ」
「それで、何の話かしら?つまらない話だったら承知しないわよ」
「あっ…あぁ」
一呼吸置き、マルフォイはゆっくりと口を開いた。
「あの時の事…闘技場での事をずっと考えていたんだ。あの『穢れた血』が金の力だというものだったから…」
マルフォイが再び『穢れた血』という言葉を口にしてしまった。
マルフォイからすれば、この言葉によって、ハーマイオニーが傷付いたとは思ってい
ないような口ぶりだ。
これは少し、お仕置きが必要かもしれない。
私はマルフォイを壁際に追い込むと手を顔の真横の壁に押し付け顔を近付ける。
確か壁ドンとか呼ばれていたような気がする。
「え?どうしたんだい…」
そこまで言うとマルフォイは黙り込んでしまい、顔を下に向けていた。
「私、言ったはずよ。次、女の子を泣かせるようなことを言ったらお仕置きだって」
「あっ…あぁ…あ」
マルフォイは青ざめた顔で、上擦った声を上げた。
「忘れてたのかしら?それとも、お仕置きされたいのかしら?」
「い…いや、そういう訳では…」
マルフォイは首を小刻みに振り、体を震わせながら答えた。
どうやら、今回のは完全に不注意だったらしい。
「まぁいいわ。今回は大目に見てあげる」
「あ…ありがとう…」
「フッ、次から気を付けなさい」
マルフォイから離れ、眼鏡を直してからウィンクをするとマルフォイはその場で動かなくなってしまった。
そんな彼を気にも留めず、席へと戻りパーティーを楽しむことにした。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
パーティーも終わりの時間を迎えたが、結局ハリー達は大広間に現れる事は無かった。
大広間を抜け少し歩くと、人だかりができているのが目に入った。
何が有ったのか…近くに行く円の中心には、絶命日パーティーに行ったはずのハリー達が居り、その前には1匹の猫が横たわっていた。
確かこの猫は…管理人のペットだったか…
壁の方を指差す生徒も複数居り、その先を見てみると、壁には血文字を彷彿とさせる紅い色のペンキで『秘密の部屋は開かれた 継承者の敵よ 気を付けよ』と大々的に書かれている。
「なにかしら?ハロウィーンの飾り付けにしては悪趣味ね」
「ベヨネッタ!」
ハリーが私に気が付いたのか、声を掛け近付いて来る。ハリーが歩くと周囲の生徒が道を譲るように左右に分かれた。
「何かあったのかしら?ハロウィーンパーティーは終わったばかりよ」
「僕もよくわからないんだ、声のする方へ歩いて行ったら、ミセス・ノリスが…」
ハリーが混乱しながら話しだしていると、後ろから怒声が響いた。
「お前が!お前が私の猫を!」
声の主はホグワーツの管理人だ。飼い猫を殺したのがハリーだと思っているようで、ハリーに掴みかかろうとしている。
「違うんです!僕が来た時には…もう」
「騙されんぞ!貴様!」
管理人はさらに声を荒げると、後ろの方から別の声が響いた。
「待つのじゃ」
声の主はダンブルドアだった。
その後の事態の収束はスピーディーだった。
結果としては、ダンブルドアが現場に居たハリー達をロックハートの部屋へ連れていき状況を聞くという事で収束が付いた。
ダンブルドアがその場を去った後、どこからともなくやって来たマルフォイが口を開いた。
「『秘密の部屋は開かれた 継承者の敵よ 気を付けよ』か…それはつまりこれからもっと被害者が増えるという事だな。特に『けが…」
そこまで言うとマルフォイ口を閉じてしまった。どうやら私が視線を送っているのに気が付いたようだ。
「うっ…ん『マグル生まれ』が襲われるという事だろうな!」
少し咳払いをすると、そう言い換え、その場から立ち去って行った。
多少は考えたようだ。
数日が経ったが、校内は未だに秘密の部屋についての話題で持ちきりだった。
『秘密の部屋』
聞いた話だが、秘密の部屋というのは、ホグワーツ創設者の一人『サラザール・スリザリン』がホグワーツを去る際に残した隠し部屋の事だという。
彼の継承者たる人物が秘密の部屋から、隠されている恐怖を解き放つという話だ。
管理人に至っては現場に戻っては犯人探しに躍起になっている。
そしてここにも、秘密の部屋について躍起になって調べている生徒が居た。
「ダメだわ、ホグワーツの歴史書を読んでみたけど、秘密の部屋については書かれているけど、どこにあるとかそういった事は書かれていないわ」
「はぁ…だめだ…弱ったな…」
「本当よ、秘密の部屋の恐怖についても明確には書かれていないのよ」
ハーマイオニーは本に顔を埋めながら、呻き声を上げており、ロンとハリーに至っては飽きてしまったのか、折れた杖を弄っている。
「ベヨネッタ、そういえばあの後、あの場で何かあった?僕等はダンブルドアに呼ばれて話をしてたからよく分からないんだ」
「別に、それより貴方達の方は何か具体的な話は聞かなかったのかしら?」
ハリーは首を横に振り、ため息を吐いた。
「僕等もよく理解できていないんだよ、ただフィルチの猫は死んでいるんじゃなくて、石になっただけらしい」
「そうなの、猫を石にするなんて、相当変な趣味の持ち主ね」
「趣味で済めばまだいいわよ、何にしろ、ダンブルドア先生でも治せない状況なのよ、マンドレイクを使った薬じゃないと治らないらしいの」
「それだけじゃないぜ、ハリーを犯人だと思い込んでいる奴らがいるんだ、まったくハリーを疑うなんてどうかしてるよ」
ロンはテープで無理やり修復した杖を振り回しながら憤怒している。
まぁ、状況から考えれば第一発見者のハリーが疑われるのは仕方ない事だろう。
「はぁ…ダメだわ…この本にも載っていないわ…どうすればいいのかしら…」
図書館の一角に本の山を作り上げたハーマイオニーの嘆きは、虚しくも虚空に消えていった。