ここら辺から、少しずつ原作とかけ離れていくと思います。
談話室に入ると、ハリーが黒い表紙の本を片手にハーマイオニーと話をしている所だった。
「ハリー、その黒い本はどうした?」
「うん、トム・リドルと言う人の持ち物だと思うんだけど、君達知らないかな?」
「トム・リドル…聞いたことないわね、ベヨネッタは?」
「ありふれた名前だけど、私も聞いたことないわよ」
「そうなんだ、一体誰のだろう…」
そう言いながら、ペラペラとページを捲っている。
「おかしいな」
「ハリー、どうしたの?」
「この本、何も書かれていないんだ。ほら」
そう言うと私達に本を開いて見せつけてくる。
「本当だわ、でも新品と言う訳ではなさそうね」
私はハリーから本を受け取ってページを捲ってみる。
確かに何も書かれてはいないようだ。しかしこの本自体からは、かなりの魔力を感じる。この本は一体…
「私も見たいわ」
ハーマイオニーに本を手渡すとペラペラとページを捲って中を確認している。
その時、ちょうど談話室の扉が開かれた。
「やぁ、君達何してるの?」
疲れた表情のロンが大げさに体を伸ばしながら近寄ってきた。
「お帰り、罰則終わったのかい?」
「あぁ、ハリー、君もやったんじゃないのか?」
「この前、終わらせたよ」
「そうか、所でさっきから何をしているんだ?」
「うん、変な本を拾ったから皆で見ていたんだ」
ハリーはハーマイオニーの手元にある黒い本を指差した。
「へぇー、僕にも見せてよ」
ロンは半ば引っ手繰る様にハーマイオニーから本を取り上げる。その為、ハーマイオニー声を荒げてロンを怒鳴りつける。
「ちょっと!何するのよ」
「良いだろちょっとくらい…なんだこれ、白紙じゃないか」
「そうなんだよ、だから変に思っちゃって」
「そうなのか…ん?トム・リドル?」
トム・リドルの名前を見てロンの動きが止まった。
「トム・リドルの名前に思い当たる節があるようね。貴方の親戚かしら?」
私がそう言うと、ロンは本を左右に振りながら否定した。
「違うよ、確かトロフィー室で見かけたんだ。なんせ罰則で嫌と言う程トム・リドルの名前が入ったトロフィーを磨いていたからね」
ロンは嫌そうに、本をハリーへと返した。
「そうなんだ。何をやってトロフィーを貰ったか覚えてる?」
「確か、50年ほど前スリザリンの後継者を捕まえた事で特別賞を貰ったって書いてあったよ」
「「スリザリンの後継者!」」
2人は声を揃えて驚愕する。
なんせ現状最も知りたい情報がスリザリンの後継者に関する事なのだから。
「良かったじゃない、これで手掛かりになったわね」
私がそう言うと、ハーマイオニーは顎に手を置きながら少し残念そうな声を上げる。
「でも、50年も前の事よ?どんな人物か分からないわ」
確かにそうだ。
「私、図書館でトム・リドルについて調べてみるわ」
「僕も協力するよ。でもその間、この本どうしようか?」
本をペラペラと捲りながらハリーは物思いに耽っている。
「そうね…ハリー、貴方が拾ったのだから、貴方が使ったらいいんじゃないかしら?日記でも付けたらどう?」
「ベヨネッタの言うとおりね、日記をつけることは良い事よ」
「そうだね。今夜書いてみるよ」
ハリーは嬉しそうな顔で、マントの下に黒い本を仕舞い込んだ。
ハリーが本を手に入れてから数日が経った。
この前までは普通に扱っていた本を、今ではとても大事そうに抱え、時折、何やら書き込んでいるように見える。
しかし、さらに数日が経ったある日、ハリーは神妙な面持ちでロンと話している。
「ハグリッドだったんだ…」
ハリーの口から突然にハグリッドの名前が出る。一体何の事を言っているのだろう?
しばらくすると、私の存在に気が付いたのか、ハリーが軽く手を振ってくる。
「やぁ…ベヨネッタじゃないか」
「どうしたのよ、この世の終わりみたいな顔してるわよ」
「そうかもね…」
ハリーは乾いた笑いをしながら、黒い本をテーブルの上に置いた。
「この本が…トム・リドルが教えてくれたんだ…50年前に現れたスリザリンの後継者がハグリッドだって…」
あのハグリッドが後継者?
お世辞にも、後継者の器とは思えないのだが…ハリーは信じているようだ。
「それで…本が教えてくれたって言うのはどういう事かしら?」
ハリーは少し考えた後、ペンを取り出し、ページを開くと何やら書き始める。
『50年前の後継者は、ハグリッドで間違いないのですね?』
本に書かれた文字は、大地に落ちた雨の様に吸収されると、同じページに文字が浮かび上がる。
『間違いないよ。僕はその場に居て、ハグリッドを捕まえたのだから』
その光景を見たロンは驚いた表情を浮かべていた。
それにしても、『僕が捕まえた』という事は、この本自体がトム・リドルなのだろうか?
もしくは、トム・リドルが本に自らの記憶を残しているという事なのだろうか?
「だから…僕は今夜…ハグリッドに聞きに行くんだ。50年前の後継者が誰なのか…」
「僕も行くよ」
ハリーとロンは互いに頷いた後、私の方を見てきた。
私にも付いて来いと言うのだろう。
「悪いけど、私は行くつもりないわよ。それに女の子を夜に連れ出そうなんて、10年早いわよ」
私が少し冗談っぽく言うと、2人は唖然としていた。
「ま…まぁ、そうだとは思ったよ。今夜は2人だけで行こうぜ」
「そ、そうだね」
結局、2人で行くようだ。
それからしばらくは、平穏無事な日々が続いた。
私は、来年から行われる選択科目をどれにしようかと考えていた。
3年生になると『古代ルーン文字』『数占い』『魔法生物飼育学』『占い学』『マグル学』などが選択可能になる。
ハーマイオニーは全ての項目にチェックを入れて、提出したと言っていた。
一体どうやって全ての授業を受けるつもりなのだろうか?
とりあえず、魔法生物飼育学を選ぶことにしよう。
特に理由は無いが、しいて言うなら一番楽そうだからだ。
後は適当に、占い学にでもするか…
ハリー達もそうするという話だ。
それから、数日が過ぎた頃、ハリーとロンが血相を変えて周囲を探し回っていた。
話を聞くと、あの黒い本が無くなってしまったという。
「どこかに置いてきたんじゃないの?」
「ハーマイオニー、そんな事は無いんだ。だって僕のトランクのがひっくり返されて漁られていたんだ!」
そう言うと、ハリーは自室に私達を通した。
部屋の中は見るも無残な状態で、まるで空き巣にでも入られたような感じだった。
「無くなったのは本だけ?ほかに取られたものがあるんじゃないの?」
「いや、そこはちゃんと見たよ。無くなったのは本だけだった…どうしようか…」
「ハリー、取り敢えず片付けよう。こんなところ、誰かに見られたらまずいよ」
「そうだね、僕たちは部屋の片付けをするよ」
ハリーがそう言うので、私達は部屋から出ていくことにした。
「それにしても、物騒ね。一体誰の仕業かしら?」
「さぁ?でも、寮の中に入れるって事は、グリフィンドール生じゃないかしら?」
現状から考えて、その可能性が一番高いだろう。
だとしても、一体だれが何の為に、あんな本を盗んだのだろうか?
私達は、煮え切らないと言った表情で、互いに考えを巡らせていた。
今日はクィディッチの試合の日だ。
対戦カードはグリフィンドール対ハッフルパフだ。
生憎の天気だが選手及び、観客は皆一様に興奮している。
最近のスリザリンの後継者による事件を忘れたいのだろう。
選手の入場と共に、会場の盛り上がりは最高潮に達した。
私とロンは、観客席に座り試合が始まるのを待っている。
いつもなら、必要以上に誘ってくるハーマイオニーだったが、今回は何やら調べ物が有るという事だ。恐らく、図書館に籠っているのだろう。
両チームの選手が競技場に整列し、ホイッスルが鳴り響く。
試合が始まってから5分程が経った頃だろうか、競技場に血相を変えたマクゴナガルが入ってくると、杖を掲げ試合を中止させた。
あのクィディッチ狂いが試合を中止させる等一体何事だろう?
しばらく観客席で待機させられると、全員が談話室へと戻るように指示された。
ハリーと合流し、談話室へ戻ろうとしている私達を慌てた様子のマクゴナガルが引き留め、付いて来るように言った。
マクゴナガルの後に続き医務室の扉を開けると、中には真新しいベッドが2つ用意されており、その一つの前で私達は立ち止まった。
「辛いかもしれませんが…」
カーテンが開かれた先には、文字通り、石の様に動かなくなってしまったハーマイオニーの姿が有った。
「まさか…ハーマイオニーが…」
ロンは狼狽えたようにハーマイオニーの体を揺らした。しかしハーマイオニーはピクリとも動かなかった。
「死んではいません…石になっただけの様です。今までの被害者と同じように…」
「先生…ハーマイオニーは…どうなるんですか…」
「もうしばらくすればマンドレイク薬が完成します。それを使えば石になった者を元に戻せるはずです」
「そう。で?犯人の目星は付いているのかしら?」
「いえ…それがまだ…」
私は、小さく舌打ちをした。
流石にここまで犠牲者が出て何も対策せず、犯人の目星すら付いていないとは…
「分かったわ。少し彼女の持っていた物を確認してもいいかしら?」
「構いませんよ」
マクゴナガルから許可を取り、ハーマイオニーが持っていたという物を確認した。
持ち物は、手鏡のみと少し異様な感じだ。せめてメイク道具でも有れば不自然ではないのだが…
そう思っているとロンが何かを発見したようだ。
「ちょっと見てよ」
そう言って私達に1枚の小さなメモを手渡した。
メモには『パイプ』と書かれているだけだった。
「パイプ?何の事か分かるかい?」
「さぁ?僕にはさっぱり…ベヨネッタは?」
「残念、見当も無いわ」
ハーマイオニーが残した謎のメモ。そして、再び出てしまった犠牲者…
私は嫌な胸騒ぎを感じながら、少し広くなった自室へと戻って行った。