自室に戻った私は、同室の全員が寝静まったのを確認した後、杖を取り出し、BARへと移動した。
聞き慣れたBGMを聞き、ゆっくりと目を開く。
いつもの様に天使の脳天に1発お見舞した後、バーカウンターへと腰かける。
「よぉ、いつものだな」
ロダンはそう言うと、予め用意していたカクテルを手渡し、私はそれを一気に飲み干し、お代わりを要求した。
「ほらよ…それにしても、今日はよく飲むな」
「そうかしら?」
「あぁ、何かあったのか」
「大した事じゃないわ、ただ知人が一人石にされただけよ」
その後、私は今回起こったスリザリンの後継者による事件を説明した。
「なるほどなぁ、それで、お前のクラスメイトが石にされちまった訳か」
「えぇ、何か心当たりないかしら?」
ある程度酔った為か、ロダンにそんな事を愚痴ってしまう。
ロダンから回答が来るとは思っていなかったが、その期待は大きく裏切られた。
「状況にもよるが、それはバジリスクかもな」
「バジリスク…」
確か、蛇の王だったか…
しかしバシリスクの目には相手を殺す力はあるが、石にする力が有る等聞いた事が無かった。
「バジリスクの目ってのはちょっと特殊でな、直視すれば死んじまうが、直視さえしなければ死ぬ事は無いって聞くぜ」
「じゃあ、今までの犠牲者は、直接は見なかったって事?」
「恐らくそうだろうな、それに、サラザール・スリザリンはバジリスクを使役していたという噂だ」
「そう…」
新しく出されたカクテルを受け取ると、ゆっくりと一口飲み込む。
「で?どうするんだ」
ロダンは何やら鼻に付く言い方で聞いて来る。
「何の事かしら?」
「とぼけるんじゃねぇぜ、お前が相当、頭に来ている事くらいお見通しだ」
「そうね…それで?それがどうしたって言うのよ」
「おいおい、そう熱くなるなよ、まぁバケモノを相手にするんだ…少し遅めのクリスマスプレゼントだ」
テーブルの下から、キレイにラッピングされた細長い箱が取り出される。
「開けてみろ」
ロダンに言われるがままに、包みを開いていく。
包みの中からは、どこか懐かしい魔力が漏れ出て来るのを感じた。これは…
一気に箱を開くと、中から、まがまがしい色をした日本刀が姿を現した。
「どうだ?懐かしいだろう?」
「えぇ、この子は私のお気に入りのひとつね」
右手に柄を持ち、左出て鞘を支え、一気に刀身を引き抜く。
刀身は、禍々しく、怪しげな雰囲気を放ち、未だに血を求めているようだ。
「妖刀 修羅刃をベースにちょっとばかし手を加えたんだ。気にいると思うぜ」
「へぇ…どんなアレンジをしたのかしら?」
抜き身の刀を数回、回転させた後、その切っ先をロダンに突き付ける。
ロダンは右手の中指と人差し指で刀身を挟むと、軽く横へとずらした。
「少し、ホグワーツの歴史を調べてな…その一節にあった、小鬼が作った剣を少し参考にしただけさ」
「アンタも案外、マニアックな事するわね。それで?その効果って何なのかしら?」
「あいつ等も案外、味な真似するもんだぜ。自らを強化する力を吸収する特性を持たせたんだ」
自らを強化する力を吸収?
一体どういうことだろう?
そう思っていると、バーカウンターの向こうのロダンは、葉巻に火を付け、煙を吐き出した。
「使ってみれば分かると思うが、自らを鍛える剣だと思ってくれればそれでいい」
「そうするわ、あまり難しいのは好きじゃないのよ」
修羅刃を受け取り、ポーチへと仕舞い込む。
その後、残りの酒を飲み干し、一つ溜息をついてから、バシリスクにどんなお仕置きをしてやろうかと、考えを巡らせるのであった。
しばらくすると、ダンブルドアが校長としての職務を全うしてないと言う理由で更迭された。
まぁ、今回の事件を何の対策もせず、野放しにしていたのだ…仕方あるまい。
それと同時に、ハグリッドも50年前…スリザリンの後継者の容疑でアズカバンと言う監獄へ収監されたらしい…
それからあまり日が経たずに、再び犠牲者が出た。
しかし、今回は石にされた訳では無い様だ。
「ジニー…」
グリフィンドールの談話室で、ロンが地面に両足を付け嘆いている。
その周囲には、他のウィーズリー家の生徒もおり、互いに慰めあっていた。
周囲に居る生徒たちに話を聞くと、ロンの妹のジニーがスリザリンの後継者によって連れ去られたという話だ。
そして、壁には、『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』と書かれて居たそうだ。
しばらく時間が経ち、落ち着きを取り戻したロンが、図書館へ行こうと提案して来たので、私達はついて行くことにした。
私は図書館に入り、ハーマイオニーが借りていた本を取り出すと、バシリスクが描かれたページを開きハリー達にバジリスクが原因であるという事を説明した。
バジリスク、蛇の王であるという事を知った2人は、とても驚いた顔で、本を眺めていた。
「バジリスクだったんだ!だから僕にしか聞こえない声がしたんだ!」
「蛇語だったって訳ね」
「そうだよ、でも…どうやって移動してたんだろう…」
ハリー達は本に描かれているバジリスクの絵を見ながら考えている。
10mを超える巨体が廊下を這っていれば、余程の事が無い限り多くの生徒が目撃するだろう。
しかし、その方法は既にハーマイオニーが解き明かしている。
私は、彼等が本の栞代わりに使っているハーマイオニーが残したメモを取り出し、突き付けた。
「答えはこれね」
「パイプ…そうか!バジリスクはパイプの中を移動していたんだ!」
「その様ね…それで?どうするのかしら?」
私の言葉に2人の動きが止まった。
「どうするって…秘密の部屋の場所も分からないのに…僕達に何ができるって言うんだ!」
ロンは、ヒステリックな声を上げ、図書館に響かせる。
「ひとつ…思い当たる事が有るんだ…」
ハリーはその場で立ち上がると、付いて来るように言った。
しばらく廊下を歩き、ハリーが向かった先は、誰も寄り付かないであろう『女子トイレ』だった
「ハリー…気が動転したのかしら?こんなところに来たって何も無いわよ」
「ベヨネッタの言う通りさ、ここに居るのは『嘆きのマートル』だけじゃないか」
「誰よそれ」
その直後、耳障りな金切り声がトイレに響いた。
『私の事よ!何か文句あるの!』
トイレの一室から、水が逆流すると共に眼鏡を掛けた少女のゴーストが飛び出てきた。
「あらぁハリー…今日は何の用かしら?」
ハリーを見た途端、猫撫で声を出し、肩に寄り添っている。
ハリーは少し引き攣った表情で会話をしている。
会話の内容は、このゴーストが死んだ時の状況だった。
しばらく、耳障りな声で話をしていたゴーストも、全てを話し終わった後、ハリーとの別れを惜しみながらトイレの個室へと戻って行った。
「どうやら、ここみたいだ…見てよこれ」
ハリーが手洗い場の一部を指差すと、そこには蛇の紋章が刻まれていた。
「ここが、秘密の部屋の入り口なのね。それにしても、女子トイレに入り口を作るなんて、危ない性癖してるわね」
「スリザリンなんて、そんなもんさ。それより早く行こうぜ!ジニーが心配だ」
「そうだね、でも少し待ってくれ、ちょっと先生を呼んでくるよ、その方が安全さ」
そう言うと、ハリーは女子トイレから小走りで出ていった。
10分ほどが経った頃、ロンはイライラし始め、私もこれ以上待つのかと思うと、入り口を蹴破ろうかと考えていた。
「お待たせ!連れてきたよ!」
ニコニコと笑みを浮かべたハリーはもっとも役に立たないであろう男…ロックハートを連れてきた。
「ハリー!なんでそいつを連れて来たんだ」
「一番近くにいたんだ」
「ハリー…先程も言ったが、私はこれから用事があるから、部屋に戻らなくては…」
「なんだって…逃げるのかよ!」
「いやぁ…逃げるなんてとんでもない」
ロックハートはニコニコと笑いながら、ロンを諭していたが、ロンはそれが気に入らなかったのか、ロックハートに折れた杖を突き付けた。
「ちょ!何をするんです!」
「これから僕達は、秘密の部屋へ行く…お前にも付いて来てもらうぞ。杖をよこせ」
折れた杖を力強く、押し付けられたのか、ロックハートは少し間抜けな声を上げ、渋々杖をハリーに手渡した。
「じゃあ、開けるよ…」
ハリーが何やら、蛇語を話すと、大きな音を立て、水飲み場が動き、入り口が現れた。
「さぁ…行け」
ロンがロックハートに先行するように杖を押し付ける。
嫌々そうに、穴の中へ飛び降りた直後、かなりの深さだったのか、反響音と化したロックハートの叫び声が聞こえてきた。
「じゃあ…僕たちも行こうか…」
「えぇ、行くわよ」
ハリー、ロンの順番で飛び降りた後。私は穴へと降りていく。
落ちていく道中、背中の羽を羽ばたかせ、ゆっくりと落下し、地面へ軟着地した。
降り立った場所は、地下数キロ程の場所で、洞窟の様な作りになっていた。
「いてて…皆!大丈夫?」
「うん、みんな平気だ!」
2人は、座り込んでいるロックハートを叩き起こすと、先へ行くように指示した。
ある程度進んでいくと、巨大な蛇の抜け殻の様なものが目に入った。
「これは…」
「多分、バジリスクの抜け殻だと思う」
「バジリスク!」
その名を聞いて、ロックハートは大袈裟に驚き、その場を離れようとした。
「待てよ!」
ロンが飛び掛かるが、ロックハートはそれを跳ね除け、杖を奪い取った。
「ハハハッ!これで形勢逆転ですね!」
折れた杖を掲げ、大声を上げながら、こちらに杖を突き付けてくる。
「残念ですが、ここまでです!貴方達には、この一件は忘れてもらいましょう!」
それから先は、ロックハートの講演会と化した。
自らが行ってきた事は、総てが他人の活躍を横取りし、加筆修正を施した夢物語に過ぎないと。
ここまで見事に語れるとは…いっその事ファンタジー作家にでもなれば良いものを…
「それでは、いきますよ!オブリビエイト!」
ロックハートは大振りに杖を振るったが、放たれた魔法は私たちに直撃することはなかった。
「うわぁああ!」
魔法を放ったはずのロックハートが、後ろへ吹き飛ばされたのだ。
折れているロンの杖を使った為、魔法が逆流したのだろう。
目を覚ましたロックハートは「ここはどこだ」等と、訳の分からない事を口にしていた。
「まぁ、自業自得ね」
ロンは、ロックハートから杖を取り戻すとこちらへ向かって、歩き出そうとした。
その時だった。
大きな地鳴りと共に、地面が大きく揺れ、岩盤が崩れ落ちた。
「ロン!」
私達の目の前…ロンの付近に岩盤が落ちてきた。
「ロン!大丈夫か?」
「あぁ!なんとかな」
降り注いだ岩盤の向こうから、ロンの声が聞こえてきた。
どうやら無事なようだ。
「僕等は先へ進むよ!ロンはその場でロックハートを見ていてくれ!」
「あ…あぁ!わかったよ」
嫌そうなロンの返事が聞こえてきたが、恐らく大丈夫だろう。
こうして私達は先へと進む事にした。
ようやく、秘密の部屋に突入しました。
次回は戦闘シーンに入れればいいなと思っています。