これから、アズカバン編が始まります。
アズカバンは比較的平和に進んでいきます。
3年目
いつもの様に、「The Gates of Hell」の扉を開け、中へ入る。
「よぉ、やっと来たか、ほれ、お前さんに手紙だ」
バーカウンターの奥では、ロダンがいつもの様に葉巻をふかしていた。
「えぇ、ありがとう」
手紙を受け取り、封を開く。
ホグワーツからの手紙の様だ。
内容は、去年と変わらず、必要な教科書のリストだ。
それと、もう一つ書類が入っていた。
『ホグズミード村へ行く為には、保護者のサインが必要です。こちらの書類にサインし、提出してください』
なるほど、ホグズミードへ行くためには、許可証が必要と言う訳だ。後で、エンツォかジャンヌにサインさせよう。
そう思っていると、店の奥から、奇妙な新聞を持ったジャンヌが現れた。
「セレッサも来ていたのか」
「えぇ、後で、ここにサイン頂戴ね。ホグワーツからの書類よ」
ジャンヌは、書類を受け取ると、軽く目を通してから、ペンを取り出すと、簡単にサインをした。
「これでいいだろう」
「えぇ、ありがとう」
書類を受け取り、折れないように気を付けながら、ポーチへと仕舞い込んだ。
「それにしても、向こうの世界では、物騒な事が起きたようだな」
ジャンヌは、テーブルの上に置かれた新聞を指差した。
新聞に目を落とすと、一面を飾っている写真が、動き何か叫んでいる様だった。
「日刊預言者新聞ね。こんなのどうしたのよ」
「ロダンの奴が定期購読しているようでな。向こうの情報を知るには便利らしいな」
「確かにそうね」
私は、新聞の手に取り、一面を飾っている記事を読みだした。
『シリウス・ブラック、アズカバンを脱獄』
「どうやら、極悪人が脱獄したようだな。人相からして凶悪そうだ」
ジャンヌは、新聞の中で叫び声をあげているシリウス・ブラックの写真を見て、腕を組んでいる。
「それにしても、アズカバンを脱獄するとは、人間にしては大した奴だぜ」
「あら?知っているの」
「あぁ、魔法界じゃ有名な監獄だからな。難攻不落だなんて言われてやがる」
「ならこれで、難攻不落じゃなくなったわね」
「だから、魔法界も騒いでいるんだろうよ」
ロダンは葉巻をもみ消すと、また新しいのを吸い始めた。
どうやら、今年も退屈しないで済むかもしれない。
私はそんな事を考えながら、手元の酒を、飲み干した。
「そういえばお前に渡した、修羅刃の使い心地はどうだ?」
「えぇ、調子いいわよ」
ポーチから、鞘の付いた状態で修羅刃を取り出し、テーブルの上へと置いた。
「ちょっと借りるぜ」
ロダンは鞘から修羅刃を抜き出すと、刀身をじっくりと眺めている。
「なるほどな…」
少し嬉しそうにそう呟く。
「どうかしたのかしら?」
「予想以上に上手くいったもんでな」
「へぇ、説明したいって顔してるわよ」
「フッ、わかるか?」
「えぇ、それじゃあ説明してもらうかしら」
「あぁ、だがその前に確認だが、お前コイツでバシリスクを切っただろ」
確かに、この刀を使って、バシリスクの下顎を切り払ったが…それがどうしたのだろう
「えぇ、相変わらずいい切れ味だったわ」
「なるほどな…どうやらコイツはバシリスクの毒を吸収したようだ」
「バシリスクの毒?」
それを吸収したとはいったいどういう事だろうか…
「コイツには、自身を鍛える力を与えてあるんだが、どうやら、バシリスクを切った際にその毒を吸収したようだな」
「そう、それで?」
「簡単な話が、コイツはバシリスクの毒を含んだ刀になったって訳だ」
ロダンはそういうと、奥から天使を1匹連れてきた。
「コイツで試し切りしてみろ」
そういって、抜き身の刀を私へと投げつけて来る。
空中でゆっくりと回転している刀を右手で受け取ると、上段から一気に袈裟斬りを食らわせる。
「ギャア!」
切り付けられた天使は、苦しそうな声を上げ、その場でのた打ち回っている。
「切った相手に毒を与える事が出来る様になったみたいだな」
「そのようね、でも…」
軽く手首を回し、苦しんでいる天使の首を撥ね、楽にさせてやる。
「こっちの方が楽ね」
「そりゃそうだ」
刀に着いた血を振り飛ばすと、ゆっくりと鞘に納め、ポーチへと仕舞い込んだ。
とりあえず、新学期の準備を済ませ、店を出ることにした。
今期で必要な教科書類は、いつもの様にダイアゴン横丁でエンツォの金を使い買い揃えたので、準備は万端だ。
いつもの様に店に訪れ、扉を開ける。
「よぉ、これから行くのか?少し早いんじゃねぇか」
「去年の様な失敗はしたくないのよ」
「あぁ、車に乗っていったという話か、アレは滑稽だった」
ジャンヌが笑いながら、テーブルの上で何やら書類を書いている。本職の方で使うのだろうか。
「店を使えばあっという間だったのによ」
「それも考えたわ、この店が一見さんお断りじゃなければ、連れて来たわよ」
「うちは何時でも、どんな客でもウェルカムだ。金さえ払うならな」
ロダンは、不敵な笑みを浮かべながら、グラスを磨いている。
「今度はそうするわ、そろそろ行くわね」
「あぁ」
二人に軽く別れを告げ、杖を取り出し、いつもの様にキングズ・クロス駅へとやって来た。
「相変わらず、人が多いわね」
いつもの様に、人が行きかっている中、私は9と4分の3番線に向かう。
「今年はどうかしらね」
入り口に向かい、歩いていく。
すると、今回はすんなりと通り抜ける事が出来た。
目の前に広がる1年ぶりの光景を見ながら、ホグワーツ特急へと乗り込む。
少し早く来た事もあってか、殆どのコンパートメントは無人で選び放題だった。
最後尾のコンパートメントを選び、中へ入り、今年使う教科書に目を通す。
当たり前だが去年よりは難しい様だ。
しかし、この『怪物的な怪物の本』はどこからどう見ても、教科書には思えなかった。
それに、購入した直後は、暴れまわっていた。
私が軽く銃を押し付けてやるとすぐに大人しくなったので問題はないが。
しばらくするとコンパートメントの扉を一人の人物が叩いた。
「ここいいかい?」
「えぇ、好きに座ったら」
「そりゃどうも」
少し古ぼけた服を着ている男は、私の対面の窓際に座ると、すぐに目を閉じ、眠りについた。
少しすると、再び、コンパートメントの扉が叩かれ、扉の奥からは、ハリーとロン、そして不細工な猫が入った籠を持ったハーマイオニーが注意深く入って来た。
「久しぶりだね」
ハリーが声を潜めて言うので、私は声を出さないように軽く手を上げた。
その後、彼等は空いている席にゆっくりと座った。
「ねぇ、この人だれ?」
「さぁ?」
ロンが聞いてくるが、分からないので適当に答える。
すると、対面に座っていたハーマイオニーが男を指差し答えた。
「ルーピン先生よ」
「どうして分かるんだい?」
「ここに書いてあるわ」
ハーマイオニーが荷物棚を指差すと、荷物の一部に『R・J・ルーピン教授』と書かれていた。
そんな所まで見ているとは、ハーマイオニーの観察力に感心する。
「この人は何を教えるんだろう?」
ロンがそういうと、再びハーマイオニーが答えた。
「そんなの決まっているわ、空いている席は一つしかないもの」
「それって何だっけ?」
「闇の魔術に対する防衛術よ。去年の先生が居なくなったからきっと代わりの先生よ」
「あぁ、ロックハート様の代わりね」
「………」
ハーマイオニーは無言でロンを睨んでいる。
その表情は何とも言えないが、下手に触れようものなら、大惨事になることは間違いないだろう…
「と…ところでハリー!何か話したいことがあるって言ってなかった?」
ロンは無理やり話題を変え、ハリーを巻き込んだ。
巻き込まれたハリーは、少し驚いている様だったが、すぐに話を始めた。
「僕…シリウス・ブラックに狙われて居るみたいなんだ」
ハリーがそういうと先程までの空気が一変し、重苦しい空気が流れた。
シリウス・ブラック…確かこの前の新聞に出ていた脱獄囚か。
更に詳しい話を聞いていくと、ハリーはある人物から、シリウス・ブラックを探すなと釘を刺されているらしい。
まぁ、好き好んで脱獄囚を探すのはどうかと思うが、ハリーならやりかねないのかも知れない。
シリウス・ブラックの名前を聞いてから、3人の表情は険しいものになっていた。
どうやら、それだけこの人物は危険で凶悪なようだ。
「シリウス・ブラックが脱獄したのは貴方を狙うためね…ハリー、気を付けてね、自分から探そうとはしないでね」
ハーマイオニーにまで釘を刺されたハリーだったが、何処か納得していない様子だった。
「ハリーを殺そうとしている奴だぜ、わざわざ自分から会いに行くやつがいるか?」
ロンは、そういうと、少し深呼吸をし続けた。
「シリウス・ブラックがどうやってアズカバンから逃げたのか、誰にも分からないらしい。これまでアズカバンを脱獄した者は誰もいないんだぜ…しかもブラックは一番厳しい監視を受けていたらしい…」
「きっとすぐに捕まるわよ、マグルまで総動員して追跡をしているって話だわ」
どうやら、魔法界は、マグルにもシリウス・ブラックの情報を流し、捜索させている様だ。
魔法界がそこまで追いつめられるとは…シリウス・ブラックはいったいどれ程の凶悪犯なのか。
しばらくそんな話を続けていたが、暗い話題にも嫌気が差したのか、ロンがカバンから一枚の紙を取り出した。
「そういえば、皆はホグズミードへの許可書は書いてもらった?」
「えぇ」
ハーマイオニーも同じ様な紙を取り出し、ロンに見せる。
2人はそのまま、ホグズミードの話題で話を続けた。
そんな中、ハリーだけが暗い顔をしていた。
「ハリー、浮かない顔知れてるわね。どうしたのよ」
「僕、サイン貰えなかったんだ。だから、見てきたら後で教えてよ」
「どういう事だよ?」
ロンが食い掛かるようにハリーを問いただした。
「ダーズリーおじさんが許可証にサインしなかったし、ファッジ大臣もサインしてくれないんだ。保護者のサインじゃないとダメだって……」
私の許可証には一応、ジャンヌの名前が書かれている。
だが、ハリーにはサインをしてくれる保護者が居ないようだ。
ハリーは溜息を吐き、他の2人は少し気不味そうな表情で、ハリーを見ていた。
しばらくすると、車内販売のカートを押した老婆がやって来た。
私達は適当に買い物を済ませたが、その間もルーピンは眠ったままだった。
しばらく談笑していると、いきなりコンパートメントの扉が開け放たれた。
扉の奥には、マルフォイとその取り巻き達が居た。
ハリー達は突然現れた、招かれざる客に不快さを示すように、睨みつけている。
その表情に、気付いているのか、マルフォイ達も睨み返している。
まさに一触即発といった空気の中、私は足を組み直した。
「おやおや、誰かと思えば……ポッター、ポッティーのいかれポンチと、ウィーズリー、ウィーゼルのコソコソ君じゃあないか」
厭味ったらしく告げた後、私に気付いたのか、一歩引き、胸元に右手を置き、恭しく頭を下げ、ゆっくりと顔を上げた。
その光景に周囲の生徒達は呆気に取られている。
「久しぶりだねセレッサ、休暇は楽しめたかい?」
最大限の背伸び…紳士的な態度で私を見詰める。
「おかげ様でね」
「フッ…それは良かった。ところでウィーズリー、君の父親がこの夏やっと小銭を手に入れたと聞いたよ。母親がショックで死ななかったかい?」
「なんだと!」
「ちょっと!ロン!」
ハーマイオニーが止めようとするが、挑発されたロンは、それに乗りマルフォイに殴りかかろうとする。
その瞬間、コンパートメントで寝ているルーピンが大きなイビキをかき、全員の視線が集まる。
「誰だこの薄汚い服の男は?」
「新しい教師らしいわ。去年のよりまともだと良いけど」
「フッ!アレより下はいないだろうな」
マルフォイが笑い飛ばすように言う中、ハーマイオニーの表情は少し曇っていた。
それほどあの男に惚れこんで居たのだろうか…悪趣味だな…
そう思っていると、急に窓を叩く雨足が強くなり、空の色はどんよりと黒くなり、車内の明かりのみが周囲を照らしている。
「なんだよ…」
そんな状況に、マルフォイは不気味さを覚えたのか、不愉快そうに呟いた。
「イヤな予感ね…」
私がそういうと同時に、汽車は速度を落とした。
ルーピンと私を除く、その場の全員がコンパートメント越しに通路を覗いている。
「なんだ!アレは!」
ロンが叫ぶと同時に、汽車はガタンと音を立て急停車し、車内の明かりがすべて消えた。
「どうなっているんだよ!」
「わからないわ!」
「何とかしろよ!」
私は、喚いている彼等を避けながら、コンパートメントの扉を開け、通路へと出る。
通路に出ると、ボロボロのマントの様な物を頭から被り、全身を覆い隠している、謎の侵入者が、コンパートメントの中にいる生徒たちを襲っていた。
とりあえず、ディメンターさん登場です。
まだ平和ですね。