ハリー・ポッターとアンブラの魔女   作:サーフ

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ボガード

 

次の日の朝、腕に包帯を巻いたマルフォイがやって来た。その姿は何処か得意げで、ふんぞり返っていた。

 

「腕の調子はどうかしら?」

 

「大丈夫とは、言えないかな」

 

少し痛がる芝居を打っているが、実際は殆ど完治しているのだろう。

 

「まぁ、お大事にといったところね」

 

「あぁ、少しすれば、治ると思うよ………昨日は惨めなところを見せてしまったね…」

 

顔を真っ赤にさせたマルフォイは、俯きながら、蚊の鳴くような小さな声で囁いた。

 

「あんな状況だもの、仕方ないわよ」

 

私は、その場を離れ、次の授業の教室へと足を向けた。

 

 

「でも僕…僕は…」

 

マルフォイの悲痛な呟きは、誰の耳にも入ることは無かった。

 

 

 

 次の授業は、闇の魔術に対する防衛術の授業だ。

 

担当は、ホグワーツ特急で一緒になった、ルーピンだという話だ。

 

去年はとんでもないのが担当だったが…今年は一体どんな授業を行うのか…、まぁ、期待と不安が入り混じっている。

 

教室に入ると、ルーピンの姿はまだ無く、多くの生徒が、適当に席に着き、教科書とペンを取り出し、準備をしている。

 

私も、ハリー達がいる場所へと腰を掛ける。

 

しばらくすると、いつも通りの、アンティーク感のある服を着たルーピンが教室に入って来た。

 

コンパートメントで見た時よりも、若干顔色が良かった。

 

「やあ、みんな。おはよう。さっそくだけど教科書は鞄にしまってくれるかな? 今日はさっそくだが実習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」

 

グリフィンドールの生徒達はルーピンの言葉に従い、教科書を広げていた生徒は、鞄へと仕舞い込み、杖を取り出した。

 

「よし、じゃあ皆、私に付いて来てくれ」

 

ルーピンは杖を構えて、一振りすると、教室内の机が片付き、広いスペースを確保した。

そして、教室の奥から、ガタガタと震えている、古ぼけた箪笥を持ってきた。

 

「この中には『ボガート』が入っている、君達にはこれからこいつと戦ってもらう」

 

その言葉に、どよめきが起きる。訳の分からない者といきなり戦えと言われれば誰だってそのような反応を示すだろう。

そんな状況を理解したのか、ルーピンはそんな不安を和らげるように、やさしい口調で話し始めた。

 

「さて、ボガートがどんな奴か分かるかな?」

 

その言葉に、ハーマイオニーが真っ直ぐ手を上げた。

 

「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うものに姿を変えることが出来ます」

 

 

「その通りだ。完璧な説明だったね」

 

ルーピンの言葉に、ハーマイオニーが少し恥ずかしそうに、微笑んだ。

 

「だから、ボガートの本当の姿を見たものが居ないんだ。そして、姿を変えるのはいつも一人で居る時だけだ。それは何でかわかるかかな?」

 

すると、再びハーマイオニーが手を上げた。

 

「複数人で居ると、誰の怖い物に化ければいいかわからなくなるからです」

 

「正解だ、よく勉強しているね。グリフィンドールに5点あげよう」

 

褒められた上、点数まで貰えたのが嬉しいのか、ハーマイオニーが嬉しそうに、ガッツポーズをした。

 

「さて、ボガートを退治させる呪文は簡単だ。こいつらを退治するのに必要なのは、笑いなんだ。そして、強い精神力も必要になってくる。君達は、見ていて滑稽だと思える姿をボガートに取らせる必要がある。そしてその呪文が『リディクラス』ばかばかしいだ。じゃあ一緒にやってみようか」

 

ルーピンの声に続き、多くの生徒が声を上げた。

 

それにしても、大人数でリディクラスと声を上げるのは、それ自体がばかばかしいな。

 

「よし、これで大丈夫そうだね。じゃあ実際にやってみようか」

 

ルーピンは楽しそうに言うと、近くに居たネビルを指名した。

 

「よーし、ネビル。君の一番怖いものは何だい?」

 

「……プ……い…」

 

ネビルは、蚊の鳴くような、小さな声で、ボソボソと呟いた。

 

「ん?もう一度言ってくれないか?」

 

「スネイプ先生」

 

ネビルが少し恥ずかしそうに言うと、その場に居る生徒が大笑いした。

思いのほかうけたのが嬉しかったのか、ネビルがニヤリと笑った。

そんな中、ルーピンだけは少し気不味そうな表情を浮かべていた。

 

「スネイプ先生か…悪い人じゃないんだけどね。ちょっと怖いかもしれないね…ところで君は、おばあさんと暮らしているよね」

 

「はい…」

 

「じゃあ、スネイプ先生がおばあさんと同じ格好をしているところを想像してみよう。おばあさんの格好はすぐに想像できるだろ?」

 

まじめな表情でとてつもないことを言うので、クラス全体におかしな空気が流れた。

 

「ネビル、心配する事は無いよ。ただ、スネイプ先生が出てきたら、おばあさんの格好を想像するんだ。いいね。じゃあ行くよ…1!2!3!」

 

ルーピンが杖を振ると、箪笥の扉が勢い良く開かれ、中から漆黒のローブを着込み、不機嫌そうなスネイプがネビルの元へと歩み寄っていく。

 

そんな状況に、ネビルは口をパクパクとさせながら、後ずさった。

 

「ネビル!落ち着くんだ!そしておばあさんの姿を想像してリディクラスと言うんだ!」

 

「りっ…り…リディクラス!」

 

次の瞬間、バチンと音を立て、スネイプが躓いた。

そして、みるみるうちに漆黒のローブが緑色のドレスへと変わり、大きな羽根つきの帽子をかぶり、ご丁寧に手には真っ赤なバッグを携えたスネイプが、おろおろと周囲を見回している。

 

その光景に、日頃スネイプに目の敵にされているグリフィンドール生全員が何かが弾ける様に大笑いした。

 

「ネビル、よくやったね。さて次は君たちの番だ。今のうちに考えておいた方がいい。自分が何が怖くて、どんな姿に変えるのかを」

 

ルーピンが楽しそうに笑いながら、レコードで曲を流すと、その場に居た生徒たちのテンションも最高潮へと達した。

 

「皆、準備はいいかい!次は君だ!」

 

ルーピンに指名された生徒が少しビビりながらボガートの前へ進んだ。

 

すると、今までスネイプだったのだが、一瞬で姿を変え、血塗れのミイラが現れた。

 

「リディクラス!!」

 

魔法を放った途端に、ミイラの包帯が剥がれ、その包帯に躓き、盛大にこけた。

その姿に、再び教室が笑いに包まれた。

 

それ以降は皆楽しそうに、自分の番を今か今かと待ち侘びているようだった。

 

しかしそれに連れて、私は少し考えるようになった。

果たして私が恐れている物は一体何なのだろう?

 

そんな事を考えている間にも多くの生徒がボガートを楽しんでいる。

 

次の生徒は、昨年バシリスクの被害にあった少女だった。

 

少女が目の前に現れると、ボガートはバチンと音を立て、その場で赤黒い大蛇、バシリスクへと姿を変えた。

 

「リディクラス!」

 

少女が魔法を放つと、先程までバシリスクだった物が、音を立て、巨大なピエロが飛び出たびっくり箱に姿を変えた。

 

「素晴らしい!」

 

ルーピンは楽しそうに称賛を送ると、次は私を指差した。

 

「さて!次は君だ!セレッサ!」

 

ついに私の番が来たようだ。先程まで大騒ぎしていたのが嘘の様に、静まり、教室中の視線が私に集中した。

どうやら、皆私が何を恐れているのか気になっている様だ。

 

ゆっくりと、ボガートの前に身を晒すと、バチンと音を立て、ボガートの姿が変わった。

 

その場の全員が、興味津々にボガートの姿を眺めている。

今も尚、ボガートは体をグネグネと動かしながら、何か躊躇う様に動いている。

 

そして、ついに姿を現した。

 

目の前に現れたのは、半透明で薄紫色の体のジャンヌがその肢体を赤黒い腕で掴まれ、恐怖の籠った表情で私を見据えている。

 

なるほど…そういう事か。

どうやら、ボガートはジャンヌが瀕死の状態になった時を再現したようだ。確かにあの時は大変だった。

 

ボガートの姿を見て、多くの生徒が息をのんだ。

それもそうだろう。恐らくこの場に居る全員が、この状況に、精神的嫌悪感や恐怖を味わっているだろう。

 

恐怖に歪んだ顔のジャンヌは声にならない悲鳴を上げている。

その悲鳴に、多くの生徒が恐怖し、ネビルに至っては気絶している。

 

「フッ…リディクラス」

 

次の瞬間、バチンと音を立てると、目の前には赤い服を着込み、赤い眼鏡を頭に掛け、赤い靴を履き、手には赤い猫のぬいぐるみを持っている幼いジャンヌの姿が現れた。

 

 

私は、軽く指を弾くと、黄色のロリポップを取り出し、幼いジャンヌに手渡した。

 

「どうぞ、チビ助」

 

幼いジャンヌは嬉しそうに、ロリポップを受け取ると、躊躇う事無く咥え、美味しそうに舐めている。

 

そんな状況に、先程まで恐怖に包まれていた教室に、和やかな空気が流れた。

 

「さて…セレッサ、よくやったよ。見事な手際だ。まさかボガートを手懐けるとはね…次はハリーだ」

 

ルーピンの言葉に、多くの生徒の視線がハリーに集まる。

 

ハリーは緊張した面持ちで、ボガートの前にその身を晒した。

 

次の瞬間。バチンと音を立て、ボガートの姿が変わり、ボロボロの黒いマントを頭から被ったディメンターが姿を現した。

 

てっきりヴォルデモートが出て来るものかと思ったが…見当違いだったか。

 

ディメンターへと姿を変えたボガートが、ハリーに襲い掛かろうとする。

 

「こっちだ!」

ハリーとディメンターの間に割って入る様に、慌てた様子のルーピンが身を乗り出した。

 

ハリーから、ルーピンへと標的が変わったのか、ボガートがバチンと音を立て、姿を変えた。

 

ルーピンの前に現れたのは、小さな満月だった。

 

だが、多くの生徒は月という事が分からないのか、不思議そうな表情で眺めている。

そんな中、ルーピンは面倒くさそうに呪文を唱えた。

 

「リディクラス」

 

すると、月は風船へと姿を変え、萎みながら箪笥の中へと戻っていった。

 

「よーし…皆良くやった。ハリーも上手だったよ。君たちの年齢で、コイツと向き合うのはとても勇気が必要だっただろう。よって、ボガートと対面した子には5点ずつあげよう」

 

突然の事に、多くの生徒が状況を理解していないといった表情だった。

ルーピンは少し咳払いをすると、困ったように続けた。

 

「今日はここまでにしよう。宿題は、ボガートに関するレポートの提出だ。ハリー、君には少し聞きたい事がある。少し残ってくれ」

 

 

終業を告げる鐘がなると、生徒達が一斉に教室を後にした。

そんな中、ハリーだけがルーピンと一緒に、奥の部屋へと消えていった。

 




ベヨネッタの怖い物が思い浮かばなかったので、ジャンヌに出てきてもらいました。

明日は所用で更新はできないです。
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