グリフィンドール対ハッフルパフの試合当日。
外は嵐と言っても過言ではない程の暴風雨だった。
私が会場に着く頃には雷鳴まで轟いている。
しかし、そんな事は御構い無しに、多くの生徒が熱狂の渦に包まれている。
そんな中、会場をふと周囲を見回すと、柱の奥に黒い犬…シリウスが隠れる様に試合を観戦している。
警戒しているのに、簡単に侵入されるとは…シリウスの腕が凄いのか、ホグワーツの警備がザルなのか…
そんな事を思っていると、選手たちが入場してきた。
すると、会場のテンションも一気に跳ね上がり、割れんばかりの拍手が爆音の様になる。
そんな中、選手は皆一様に、緊張しているようで、険しい表情だ。
両選手が揃った事により、試合開始のホイッスルが雨音に混じりながら会場に響いた。
雨の中の試合は混迷を極めており、視界が悪い事もあり、現状はグリフィンドールが50点だけリードしている状況だ。
その中、試合の要であるシーカーのハリーは上空に飛び上がり、視界が悪い中、必死にスニッチを探している。
しばらく試合を眺めていると、シリウスが犬の状態で、私の近くに寄ってくる。
どうやら、ハリーの活躍を観戦したいようだ。
試合も前半戦が終わり、後半戦が始まった。
後半戦のハリーの動きはとても機敏だった。どうやら、ハーマイオニー辺りにでも防水魔法をかけてもらったのだろう。
しかし、そんな状況は一変してしまった。
1匹のディメンターが会場に侵入したのだ。
「なに!」
ダンブルドアの驚く声が周囲に響く。
その後も1匹、また1匹とディメンターが会場へと侵入してくる。
「あれは!」
その声に釣られ、試合会場を見ると、1匹のディメンターにハリーが襲われており、気を失ってしまったのか、真っ直ぐに落下している。
「まずいわね」
落下を続けているハリーに対して、ディメンターは尚も追撃している。
「グルゥウゥゥウウ!」
隣に居るシリウスは殺意を孕んだ唸り声を上げている。
これ以上は、人に戻ってでも攻撃しかねない。
「少しここで待ってなさい」
シリウスは私を睨み付けるが、そんな事は関係ない。
その場で飛び上がると同時に、ウィッチタイムを発動させ、世界の流れを止める。
一気にハリーに駆け寄り、受け止める。
それと同時に、ウィッチタイムを解除する。
腕の中のハリーは未だに気を失っている。
獲物を取られたディメンターは、標的を私に変えた様で、一斉に集まってくる。
「邪魔よ!」
落下する中、両足の銃から弾丸を放ち、襲い掛かるディメンターを迎撃する。
放たれた弾丸は、確実にディメンターの脳天を貫く。貫かれたディメンターは苦悶の声を上げ、地面に落ちると、ピクピクと体を震わせた後、動かなくなった。
地面に着地すると、ハリーを下し、念のため結界を張る。
「さて、これでいいわね」
周囲を見回すと、ディメンターは上空を円を描くように飛び回って、襲い掛かるタイミングを窺っている。
職員席では、マクゴナガルを始めとする多くの教師が杖を構えて、守護霊を呼び出そうとしているが、ダンブルドアがそれを止めている様だ。
その為、マクゴナガルが抗議している姿が見える。
しかし、ダンブルドアはマクゴナガルを無視し、私に目線を向けている。
その瞳は何かを企んでいる様だ。
あの男の事だ、恐らく、私の力量を見たいのだろう。
「いいわよ、責任はアンタ持ちよ」
私はダンブルドアと目線を合わせながら、口にする。
声自体は雨音にかき消されるが。ダンブルドアは理解したようで頷いた。
さて、どう掃除しようか。
1匹のディメンターが勢いを付けて突進を仕掛けて来る。
突進をサイドステップでかわし、頭を掴むと、そのまま背中にサーフボードの様に乗り、ディメンターの群れへと突っ込んでいく。
ディメンター達も、私に気が付き、一気に距離を詰めて来る。
「遅いわよ!」
正面に銃を構え、銃弾を乱射する。
放たれた銃弾により、ディメンターの群れの中心に空洞が出来上がる。
その空洞に突っ込むと、周囲に銃弾を乱射する。
銃弾により、消滅させられたディメンターが、一斉に地面に落ちる。
最後に、足場にしていたディメンターに、労をねぎらう様に、右足の銃で脳天をぶち抜き、地面へと着地する。
多少のディメンターを葬ったが、まだ数は多く、これでは手間取ってしまう。少し手法を変えてみるか…
私はポーチから杖を取り出すと、魔力を最大まで込める。
すると、私の周囲に紫色の魔力を帯びたオーラで覆われる。
杖を天高く構えると、私は呪文を口にした。
「エクスペクト!パトローナム!」
私は呪文を放つと同時に、髪の魔力を開放し、ゲートを開放する。
すると、上空から、全身に青白いオーラを纏ったマダム・バタフライが姿を現した。
マダムの登場に、周囲の観客は驚愕しており、現状起きているのが、夢なのではないかと頬を抓っているものまでいる。
「へぇ、私の守護霊はアンタって訳ね」
私が手を差し出すと、マダムも理解したのか手を差し出し、互いに拳を合わせる。
「フッ、息ピッタリね」
私はそのまま、マダムの拳に飛び乗ると、意図を汲み取ったようで、拳を引き絞り、力を溜めている。
「さぁ!パーティーの時間よ!!行くわよ!相棒!」
マダムは拳を力の限り振りぬいた。
私は、その拳をカタパルトの様に使い、超高速で、ディメンター達に突っ込んでいく。
「喰らえ!」
ウィッチタイムの中、ポーチから修羅刃を取り出すと、擦れ違い様に、ウィケットウィーブを発動させ、ディメンター達を切り払っていく。
「ぼぉぅぅううぅ」
声にもならない断末魔を上げ、ディメンターは消滅する。
「まだまだね」
周囲を浮遊しているディメンターが私目掛けて一斉に襲い掛かってくる。
私は、ディメンターをギリギリまで引き寄せた後、その場から一気に飛び上がり姿を消す。
私の姿を見失ったディメンターの一団は、周囲を見回している。
「任せるわよ!」
すると、ディメンターの一団の後方にマダムが満面の笑みを浮かべながら現れた。
ディメンターは突然の事に驚いているのか、その場で固まって動けなくなっている。
「フッ」
私が指を鳴らすと同時に、マダムが、まるで飛んでいる羽虫を潰すかのように、無慈悲にも両掌を合わせ、ディメンターの一団を潰した。
「今度は私ね」
上空へ飛び上がり、浮遊しているディメンターを足場にし、さらに高い場所へと飛び上がる。
「プレゼントよ」
魔力を開放し、上空を滞空しながら、ウィッチタイムを発動させる。
世界の流れが止まった中、私はディメンターの脳天に向け魔力を込めた弾丸を1発放つ。
放たれた弾丸は、ディメンターの眼前でその動きを止めてしまう。
その場で回転するように続け様に弾丸を放つと、止まっている弾丸の真上に同じ様に弾丸が重なる。
弾丸による塔が5段程になり、ウィンクと同時にウィッチタイムを解除させる。
5段重ねの弾丸は、杭の様にディメンターを貫き、地面へ叩きつける。
「ぶおぉお」
残り僅かとなったディメンターが、なりふり構わず一斉に襲い掛かって来た。
「邪魔よ!」
襲い掛かって来るディメンターの胴体に回し蹴りをお見舞いする。
回し蹴りを喰らい、吹き飛ばされたディメンターは弧を描きながら他のディメンターを巻き込みながら、1つの塊となって地面を転がる。
「ふっ!」
ボール状となったディメンターを蹴り飛ばし、ゴールポストへとシュートする。
ディメンターボールは吸い込まれるようにゴールポストに命中すると、ゴールポストを破壊しながら、ディメンターごと、爆発四散した。
これでは得点にはならないな。
周囲を見回すと、上空を漂っているディメンターの姿はなかった。恐らく全て撃退したのだろう。
そう思っていると、側面から瀕死のディメンターが襲い掛かってくる。
地面に落ちている死体の中に紛れていたのか…
私が体を少し捻り、ディメンターを正面に捉えると同時に、眼前がマダムのヒールで覆われる。
マダムに踏み潰され、最後の1匹はその場で消え去った。
「なかなかやるわね、流石は私の守護霊だわ」
私がウィンクをすると、マダムは大きな高笑いを響かせ、その場から消えていった。
周囲には、弾痕や、マダムの足跡とディメンターの死体で使い物にならない競技場が残されている。
私は、ダンブルドアに目線を送ると、ダンブルドアは深い溜息を吐き、頭を抱えながら観客席に着座した。
その後、怯えながらやって来た生徒にハリーを任せ、担架で城へと運ばれていった。
ちなみに試合の行方だが、どういう訳かハッフルパフの勝利と言う形で幕を閉じたという。まぁ、私にとってはどうでもいい話だ。
私は競技場を出た後、シリウスの姿を探した。
てっきりハリーの近くに居るものかと思ったが、意外にも暴れ柳の近くで犬の状態で座っていた。
私が近付くと、シリウスは悲しそうな声を上げ、近くにあった、残骸を咥えてきた。
これは確か、ハリーが愛用している箒だ。
シリウスの話では、運悪く箒が暴れ柳に突っ込んでしまったようだ。
「壊れたのはしょうがないわよ。私が明日ハリーに渡しておいてあげるわ」
「クゥーン…」
シリウスはただ、悲しげな声を上げるだけだった。
クリスマス休暇が始まり、多くの生徒は自宅へと帰って行った。
そんな中、私はバーへと戻ると、サンタの姿をしたロダンがバーカウンターの向こうで呑気にグラスを磨いている。
「よぉ、戻って来たか」
「えぇ、相変わらず様になっているじゃない」
バーカウンターへ近付き、いつものを注文する。
「そっちは今どんなだ」
「別に、至って平和よ。シリウスが変な事をしない限りね」
「ほぉ」
カウンターを滑りカクテルが私の前にやってくる。
「セレッサか、戻ってきていたのだな」
「あら、ジャンヌ、アンタも来たのね」
「他に行く当てがなくてな」
ジャンヌは私の横に座ると、同じようにカクテルを注文している。
「それにしても、シリウス・ブラックが無罪だったとはな」
ジャンヌが少し驚いたように呟いた。
「おかげで今じゃ、黒い犬の姿で震えているはずよ」
「お似合いだな」
ジャンヌは笑い飛ばしながら、カクテルを煽っている。
「そうそう、これは、お土産よ」
ポーチから袋を取り出し、カウンターへ置くと、2人が興味深く覗き込んだ。
「なんだこれは?カエルか?」
「カエルチョコレートよ、飛び跳ねるから早く食べた方がいいわよ」
「………私はいらんな」
ジャンヌは、箱を開けることなく、テーブルの上へと置いた。
「なら貰うぜ」
ロダンは何の躊躇いも無く、箱を開けると、勢いよく飛び跳ねるカエルを掴み、表情を変えることなく、口へと放り込んだ。
「う…旨いのかそれ?」
「さぁ?食べた事ないわ」
「悪くないぜ」
ロダンは、そういうとおまけのカードをまじまじと見ている。
「それで…こっちのはなんだ…ジェリービーンズか?」
ジャンヌは袋の中から、百味ビーンズを取り出した。
「百味ビーンズね」
「百味…名前からして碌なものじゃないな」
ジャンヌは躊躇いがちに1粒取り出し、口に放り込んだ。
「これは…パイナップルだな」
「当たりね、よかったじゃない」
「ほぉ、俺も貰うか」
ロダンも一粒取り出すと、口へ放り込んだ。
ロダンは表情を変えることなく、ビーンズを噛んでいく。当たりだったようだ。
そんな時、店の扉が開かれた。
「お、ベヨネッタじゃねぇか。戻っているならそういえよ。お前さんに頼みたい仕事は山程あるんだ」
エンツォは大袈裟に体を振りながら、私達の元へとやって来た。
「おっ!なんだこれは。旨そうだな」
「向こうのお菓子よ、どぉ?」
「くれるってのか。ほじゃ遠慮なく…」
エンツォは一粒掴むと、口へと放り込んだ。
その直後、エンツォの咆哮が響いた。
「あぁぁああぁぁああっぁ!なんだこりゃ!クッソ不味いじゃねぇか!」
顔色を悪くさせたエンツォはその場でビーンズを吐き出した。
「不味いし、臭いし最悪だぜ!ロダン!とりあえず水くれ!」
「ほらよ」
ロダンはペットボトルをエンツォに向けて投げ渡すと、エンツォは落ちて来るペットボトルを両手でキャッチし、ふたを開けると、中身を一気に飲み干した。
「はぁ…生き返ったぜ。まったく最悪だぜついてねぇ」
エンツォは不貞腐れた様に、ソファーに座り込んだ。
「ロダン、ところでアンタ、何味だったの?」
「聞かない方が身のためだぜ」
そう答えたロダンも、エンツォ同様一気に水を飲み干している。
どうやら、二人共、ハズレだったようだ。
ディメンターさんが大打撃を受けておりますが、ホグワーツは平和です。