皆さんも風邪には気を付けてください。
同室の生徒が深い眠りについた後、私は杖を取り出し、いつもの様にバーへと移動した。
「よぉ、今日は何の用だ?酒か?」
「そうよ、1杯貰おうかしら」
ロダンはいつもの様にシェイカーに酒を入れ、カクテルを作ると、それをテーブルの上を滑らせ私の前にピタリと止めた。
私はカクテルを受け取ると、さっそく一口飲み込んだ。
「そういえば、三大魔法学校対抗試合って知っているかしら?」
「あぁ、知ってるぜ。毎回死者が出てもおかしくない試合だな。今年やるのか?」
「そうなのよ」
「ほぉ…お前は参加するのか?」
「もちろん。いい暇潰しになりそうね」
詰まらなそうに答えると、ロダンは鼻で笑いながら、葉巻の灯を消した。
「そうかい。なら、コイツを持っていきな」
「へぇ、何かしら?気になるわね」
「フッ、気に入ると思うぜ、何と言っても、悪魔も喉から手が出る程の逸品だ」
すると、カウンターの下からラッピングされた箱を取り出し、カウンターの上に置いた。
「開けてみな」
「そうさせて貰うわ」
ラッピングを解き、蓋を開ける。
すると、中には黄金色で、まるで月をイメージさせる腕輪が入っていた。
「マハーカーラの月だ、コイツが無けりゃ始まらんだろ」
「そうね、これはちょうど良いわね」
箱からマハーカーラの月を取り出すと、左腕にはめ、2、3回手を握り付け心地を確認する。
問題は無いようだ。
マハーカーラの月
インドの破壊神シヴァの祝福を受けた魔導器。ヴィジャヤナガル朝に仕えた魔女ヤクシーが作ったと伝えられ、敵の攻撃を弾き返す力を持つ。如何に強力な攻撃であっても無効化するため、これを使いこなしたヤクシーは無敵の魔女と謳われた。
「上手く使えよ」
「当たり前じゃない」
私は、ロダンに軽く手を振り、店を出ようとする。
「ギュアアああ!」
その時、本日の生贄として、壁に磔にされていた天使がその拘束を解き、私に爪を振りかざし襲い掛かって来た。
いくら負傷しているとは言え、天使の爪による攻撃は並大抵の人間ならば、1撃で死を迎えてしまうだろう。
振り下ろされた爪は、私の顔面を捉え、眼前まで迫っている。
「無駄よ!」
爪による攻撃が直撃する寸前、私は左腕のマハーカーラの月を構える。
その瞬間、マハーカーラの月の魔力により障壁が張られ、天使の攻撃を弾き飛ばした。
「ギュア!」
攻撃を弾き飛ばされた天使は、その場で大きく仰け反り、よろめいている。
そんな中、私はウィッチタイムを発動させ、よろめいている天使の後頭部を左手で掴み、首を上に向かせる。
そのまま、無防備に晒されている喉元に右手の銃を突き付け、躊躇い無く引き金を引いた。
放たれた弾丸は、喉元を突き破り、そのまま脳幹を貫き、脳天へと突き抜けた。
「ギュアアア!」
脳天をぶち抜かれた天使は、醜い断末魔を挙げ、その場に崩れ落ちた。
私はその姿を背に店の扉に手をかけた。
天使の消滅を背後で感じながら、扉を開け、外へと出る。
「ビューティフル」
ロダンの賛辞を背中に受けながら、その場を後にした。
新学期が始まると、いつもの様にすぐに授業が始まった。
何と言っても、三大魔法学校対抗試合が行われる中、授業過程をすべてこなさなければならないので、多くの授業が詰め込み教育の様になっている。
そんな中、ハグリッドが行っている魔法生物飼育学は例年と同じペースだった。
内容は尻尾爆発スクリュートと呼ばれる、ハグリッドが創り出した新種の生物の飼育だった。
今年創ったのか、ハグリッドも生態について詳しくは知らないようだ。
私達が大広間を抜け次の授業の教室へと向かおうとすると、ドラコが新聞を片手にこちらに歩み寄って来た。
「ウィーズリー!おい待てって、ウィーズリー!」
半笑いのドラコは必死でロンを引き留めようとしている。
「君の父親が新聞に載っているぞ!見てみろよ!」
そういうと、ドラコは新聞の記事を読み始めた。
内容は、ロンの父親が何かを失敗した事だった。
「写真まで載っているぞ!君の両親が君の家の前で撮ったんだろうな。しかし…これは家と言えるのか?それと君の母親は少しお痩せになったほうがいいんじゃないか?」
ドラコの煽る様な喋り方にロンは怒りに震えている。
「失せろよマルフォイ。ロン行こうぜ」
ハリーはいつもの事なので静かに言うとその場を去ろうとした。
「そうだポッター!君はこの休暇中彼の家に泊ったらしいな?なら教えてくれないか?彼の母親は本当にこれほどの容姿なのか?それとも写真写りが悪いだけなのか?」
「黙れマルフォイ。お前の母親はどうなんだよ」
「なに…」
「君の自慢の母上は、本当に美人なのかと聞いているんだよ。少なくとも僕にはそうとは思えないがね」
ハリーの言葉にドラコは怒りに震えている。
「僕の母上を侮辱するな!ポッター!」
「おやおや、マザコンのドラちゃんはこれだから…」
ハリーは肩を竦め、首を左右に振りながら、ドラコに背を向ける。
ドラコは怒りに任せ杖を引き抜き、魔法を放った。
その魔法はハリーの頬を掠め、奥にあるテーブルに当たった。
次の瞬間、後ろでその光景を見ていたムーディが素早い動作で杖を引き抜き、ドラコに魔法をかけた。
ドラコはその速度に反応できず、魔法を受けてしまい、瞬く間に白いイタチに変化してしまった。
「汚い事をするな!」
ムーディの大声が大広間に響き、イタチに変えられたドラコはプルプルとその身を震わせている。
私はそのイタチを前に手を差し出すと、手の平に飛び乗った。
「攻撃を受けたのか?」
ムーディはハリーに心配そうに声をかけた。
「いいえ、掠っただけです」
「下手に触るな!」
再びムーディの大声が響き、その声にハリーの動きは止まってしまう。
ムーディは私の手の平で怯えているドラコを見つけると足を引きずりながら、こちらに歩み寄って来た。
「そいつを渡せ。後ろから襲い掛かる奴は気に食わん!」
ムーディが私に掴み掛ろうとするので、バックステップでそれを避ける。
「そう言っているけど渡してもいいかしら?」
ドラコはイタチの状態で必死に首を振っている。
「嫌って言ってるわ」
「構うものか!いいからそいつを渡せ」
ムーディは再び私を掴もうと襲い掛かって来たので、その場で飛び上がるとムーディの反対側へと着地する。
「ほぉ…いい度胸だ小娘が!ワシに歯向かうようだな!」
ムーディは私を睨み付ける。
ハリー達は早く渡せと言わんばかりの表情をしている。
「歯向かう?勘違いしないでちょうだい」
私はイタチの首根っこを掴むと、胸元へと仕舞い込んだ。
「ジュジュ!」
仕舞われたイタチは歪な声を上げる。
「少しここで大人しくして居なさい」
「あいつ…」
「羨ましいよな…」
そう言っているハリー達はハーマイオニーを見て2人同時に溜息を吐いた。
「何よ!文句あるの!」
ハーマイオニーは両手で胸元を隠しながら2人を怒鳴りつけている。
そんな3人を見つつ、私はムーディと向かい合った。
「良いわ。少し遊んであげる。掛かってらっしゃい」
私の挑発にムーディは杖を振り魔法を放った。
私に向かって高速で放たれた魔法を、杖で弾く。
「見事だ!だがこれはどうだ!」
ムーディが杖を振ると、周囲の机や椅子が塊となり、私の頭上に現れた。
「潰れろ!」
ムーディの言葉と同時に、椅子の塊が私を潰そうと落下してくる。
「はぁ!」
椅子の塊に対し、右手を振り上げると、足元からマダムの右手が現れ、その拳で椅子の塊を破壊する。
「なかなかやるじゃない」
私はムーディの方を見ると、向こうも楽しそうに笑みを浮かべている。
「ほぉ!何やら妙な技を使うようだな!だがこれはどうだ!」
再びムーディが杖を振ると、一瞬で3発程の魔法が一斉に放たれた。
「くっ」
私はその場で飛び上がり、体を捻りながら3発の魔法を回避する。
それと同時にウィッチタイムを発動させ、右足の銃から銃弾を5発ほど放つ。
「くぉ!プロテゴ・マキシマ!」
ムーディは瞬時に魔法で障壁を張り、私が放った弾丸を防いだ。
しかしそれにより、一瞬とは言えムーディに隙が生じた。
私はその隙を逃すはずも無く、瞬時にムーディとの距離を詰める。
「なにぃ!」
驚きの声を上げるムーディの眼前で、迫った時の勢いそのまま、背を向け体当たり…鉄山靠を喰らわせる。
鉄山靠を喰らい吹き飛ばされたムーディは柱に激突すると、柱にヒビが入った。
「ぐぉ!」
柱に激突したムーディはその場で倒れ込んだ。
私は1歩ずつ、ゆっくりとムーディに歩み寄る。
「10年早いわよ。観念しなさい」
私はそう言うと、肩を竦め、ムーディに背を向ける。
「油断したな!」
倒れていたムーディがそう言うと同時に杖を振り至近距離で私の背後に魔法を放った。
しかし、私はその魔法を体を捻り避けると同時に、右足の銃を眼前に突き付ける。
「んなっ!」
「背後から襲い掛かるのは、気に食わないんじゃなかったの」
「おのれぇ…」
地に倒れたムーディは私に憎悪を込めた視線で睨みつけて来る。
「ムーディ先生!ミス・セレッサ!何をしているのです!」
「なにって…ねぇ」
私がそう言うと、胸元のイタチは小さく鳴いた。
「なんですそのイタチは?」
「ドラコよ」
「まさか…ドラコ・マルフォイですか!なぜそのような姿に…」
「さぁ?こいつに聞いてみたらどう?」
私が銃口を向けると、マクゴナガルもムーディに目をやった。
「まさか…ムーディ、生徒をイタチに変えたのですか!」
「罰則だ…奴は…」
「そんな事は聞いていません!本校での罰則は居残りなどです!ダンブルドア先生はアナタにそう話したのではないのですか!」
「いや…そんな話は…いや…どうだったか…」
「もういいです…セレッサ。貴女も武器をおろしなさい!」
まぁ、この状況で攻撃してくる事は無いだろう。そう思い銃を下す。
それを見てマクゴナガルは何処か安心したような表情を浮かべた。
すると、ムーディは立ち上がり、ドラコを睨みつけた。
「ワシは貴様の親父をよく知っておる!親父に伝えておけ、ムーディが貴様から目を離さないとな!」
ムーディは捨て台詞を吐くと、足を引きずりながらその場から出ていった。
マクゴナガルはその後姿を心配そうに見送った後、こちらに目線を向けた。
「ミス・セレッサ!貴女も何をしているのです!教師にそのような武器を向けるなど…」
「向こうが先に仕掛けたのよ」
「しかし…」
マクゴナガルはそこまで言うと、言葉に詰まってしまう。
「話はもう終わりね。なら失礼するわよ」
マクゴナガルに背を向け数歩程歩き振り返る。
「あぁ、そうそう、これ後は任せたわよ」
私は胸元からドラコを取り出すと、マクゴナガルに投げる。
「ぎゅ!」
ドラコは残念そうな悲鳴を上げると、マクゴナガルの胸に着地した。
「ぎゅううう!」
ドラコは何やら悲鳴のような声を上げ、マクゴナガルから飛び降りる。
そんな光景を見ていたハリー達は…
「あれは流石に…」
「羨ましいとは思わないよ」
「なんですか!貴方達!減点しますよ!」
私はそんな惨状を背後に聞きながら、その場を後にした。
明日の更新は休むかもしれません。
それではまた次回をお楽しみに。