ハリー・ポッターとアンブラの魔女   作:サーフ

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最近、バーチャルユーチューバーと言うのを見始めました。

結構面白いですね。


禁じられた魔法

  数日後、私は昼食を済ませ、次の授業…闇の魔術に対する防衛術の教室へと向かった。

 

 授業が始まるにはまだ時間があると言うのに、すでに多くの生徒が着席し、授業が始まるのを今か今かと待ち侘びている。

 

 私達は適当に空いている席へと腰かける。

 しばらくすると、授業開始寸前にハーマイオニーが教室に駆け込んで来た。

 

 そして私達を見つけると、私の隣の席に腰かけた。

 

「遅くなっちゃったわ。私実はさっきまで…」

 

「図書館に居たんでしょ? 事前に調べるのも良いけど、遅れたら元も子もないわよ」

 

「わかっているわよ…」

 

 ハーマイオニーは何処か不機嫌そうになるが、足を引きずる様な独特な足音が聞こえて来ると、多くの生徒に緊張が走った。

 

 

 すると扉が開かれ、ムーディが現れた。

 

 ムーディが黒板にチョークで自分の名前を書きながら、その義眼をギョロギョロと動かした。

 

「アラスター・ムーディだ! 貴様らに闇の魔術に対する防衛術を教えてやる男だ! なんでそんな物を机の上に置いている! そんな物は片付けろ!」

 

 教卓に付いた途端にムーディが大声を上げた。

 その声に多くの生徒が驚き、動きが止まっている。

 

「教科書だ! そんな物は必要ない!」

 

「でも! 先生…教科書は…」

 

 いつもの様にハーマイオニーが出しゃばると、ムーディがその言葉を遮る様に口を開いた。

 

「なんだ貴様は! 貴様は敵が魔法を放つ時に悠長に教科書を読んでいるつもりか! あぁ? それで対抗出来ると言うのか! そいつは凄いな! 是非とも闇祓いに欲しいな! 野垂れ死ななければな!」

 

 ムーディの気迫に圧倒されたのか、ハーマイオニーが黙り込んでしまう。

 

 それを見た生徒たちは、教科書を鞄に仕舞い込んだ。

 

「良し! それではさっそく始めるぞ! ワシがまず貴様らに教えるのは、魔法使いの戦い方だ! 何も知らずに戦うのは無謀だが、知識だけあっても戦い方を知らなければ意味が無い! だからワシが教えてやる! 闇の魔術とは一体何なのかを!」

 

 頭のネジがぶっ飛んでいるかの様な喋り方で、ムーディは授業を進めていく。

 

「まずは手始めだ…この魔法界には禁じられている魔法が存在する。それを知っている者は居るか!」

 

 すると、ハーマイオニー真っ直ぐ手を上げる、相変わらずだ。

 

「そうか貴様は分かるか小娘よ! では答えてみろ!」

 

「はい…まずは服従の呪文です」

 

 ハーマイオニーが少し怯えながら答えると、ムーディは満足気な笑みを浮かべた。

 

「その通りだ! この呪文で闇の帝王は多くの魔法使いを服従させたと聞く!」

 

 ムーディはそう言うと、杖を引き抜く。それを見た生徒達が息を呑んだ。

 そんな事は御構い無しに、机から1匹の蜘蛛が入った瓶を取り出した。

 

「今回はこの蜘蛛に対して呪文をかけよう! だが人には使うなよ! 使えばそれだけでアズカバン行きだ! そんな風にはなるなよ!」

 

 ムーディは瓶の蓋を取り、蜘蛛を手の平に乗せると、さっそく魔法をかけた。

 

「インペリオ!」

 

 魔法を受けた蜘蛛はムーディの手の平の上で踊り始めた。

 

 時には大ジャンプし、ロンの頭に飛び乗ると、タップダンスを始めた。

 

「どぉだ! 芸達者なもんだろう! 次は何をさせようか!」

 

 ロンの頭から蜘蛛を手元に戻すと、ムーディは楽しそうに口を開いた。

 

「どうだ? 面白いと思うか?」

 

 生徒たちは先程のロンの喚きっぷりを見て、未だに笑っている生徒もいる。

 

「だが、ワシが貴様らに同じ事をしても、面白いと思うか?」

 

 ムーディが声のトーンを下げ、そう一言、口にすると、生徒達の顔から笑顔が消えた。

 

「今コイツはワシの完全な支配下に居る。ワシはコイツを思いのままに出来る。窓から飛べと命じれば飛ぶだろう。水で溺れ死ねと命じればそうするだろう…そこの小僧…貴様を襲えと命じればそうするだろう」

 

 ムーディがロンを指差すと、ロンはあまりの恐怖からか怯えて声も出ない状況だった。

 

「先程も話したが、この服従の呪文で支配され、誰かの意思で動かされているのか、それとも自分の意志で動いているのか、区別するのは魔法省でも一苦労だった」

 

 蜘蛛は、ムーディの手の平で丸くなると、そのまま動かなくなった。

 

「服従の呪文は抗う事が出来る。この先の授業ではそれを教えてやろう。しかしこれには莫大な精神力が必要になる。誰でも出来るというものでは無かろう」

 

 そう言うと、ムーディがハーマイオニーを指差した。

 

「小娘、次の呪文を答えてみろ」

 

「つ…次は磔の呪文です…」

 

「そうだ、次は磔の呪文だ。こいつがどんな物か分かり易くするため、少しコイツをデカくしてやろう」

 

 ムーディが杖を振ると、その手の平の上で蜘蛛が膨れ上がる。

 

「では行くぞ…クルーシオ!」

 

 ムーディが呪文を唱えると同時に、蜘蛛が身を(よじ)り、もがき苦しみ始めた。

 時には、蜘蛛とは思えない様な金切り声を上げている。

 

「もうやめて! ネビルが苦しんでいるわ!」

 

 ハーマイオニーが叫び、多くの生徒がネビルの方に目を向けた。

 

 ネビルは拳を強く握り、恐怖と怒りに満ちた目を大きく見開いている。

 

 ムーディは蜘蛛を元の大きさに戻すと、瓶の中へと仕舞い込んだ。

 

「磔の呪文…それは相手に想像を絶する苦痛を与えるものだ。この魔法があれば、拷問の際、歯を抜く事も、目をくり抜く事も無い。かつて多く使われた魔法だ。さて…次で最後だ…小娘答えろ」

 

「次は………」

 

 ハーマイオニーは答えたくないのか、口ごもってしまった。

 

「答えられぬか…まぁよい。最後は死の呪文だ。コイツは最低最悪な魔法だ」

 

 ムーディは瓶の中の蜘蛛に向けて杖を構えた。

 

「アバダケダブラ!」

 

 ムーディの杖の先から緑の閃光が走り、蜘蛛に直撃すると、蜘蛛はピクリとも動かなくなってしまった。

 

「あまり見ていて気持ちの良いものではないな。だがそれほどコイツは危険な魔法だ。反対呪文が存在しないのだ。それはつまり防ぐ方法が無いという事だ。この魔法を受けて生き残った者はただ1人…その者は…」

 

 

 その場の全員の視線がハリーに刺さる。

 ハリーは俯き、その視線に答えようとはしなかった。

 

 

「いいか! 以上が闇の呪文だ! 相手を惑わし、苦しめ、死を与える! 身を守る為にはこれがどれほど恐ろしい呪文なのか、理解しなければならない! 油断大敵だ!」

 

 すると、ムーディが闇の呪文の詳細を黒板に書くと、書き写すように指示を出した。

 

 その場で生徒達が、恐怖に震えながら書き写していった。

 

 

 

 その夜、ハーマイオニーがまた何か厄介事を起こしたようだ。

 

 ハリーとロンはそんなハーマイオニーを横目に見ながら頭を抱えていた。

 

 渦中のハーマイオニーはさっそく私に標的を定めたのか、変な箱と、羊皮紙を片手に満面の笑みでこちらに近付いて来た。

 

「ベヨネッタ。貴女もこの活動に参加しない?」

 

 そう言うと、箱から『S・P・E・W』と書かれたピンバッジを1つ取り出した。

 

「スピュー…まさに反吐が出るってわけね」

 

「失礼な事言うわね。S・P・E・W。『Society for Promotion of Elfish Welfare』、つまり屋敷しもべ妖精福祉振興協会よ」

 

 そう言うと、羊皮紙を広げ、ペンを取り出した。

 

「ここにサインしてね」

 

「はぁ…何かの新興宗教かしら? 初耳よ」

 

「そんなものじゃないわよ! これは私が今始めた、立派な行動よ!」

 

 そう言うハーマイオニーは、無い胸を張り、ドヤ顔を決めている。

 

「ところで、メンバーは誰が居るんだい?」

 

「そうね、この場の全員が入れば会員数は4人になるわね」

 

「つまりは0かよ…」

 

「0じゃないわよ! 私が居るから1人は確定よ!」

 

「いっその事555番くらいから始めたらどうかな? その方が大人数に見えるよ」

 

 ハリーのブラックジョークが炸裂するがハーマイオニーはそれには気付いていないようだ。

 

「私…図書館で調べて気が付いたの…屋敷しもべの奴隷制度は何世紀も前から続いているのよ。これを当たり前だと思い込んで今まで誰も行動を起さなかったのが不思議だわ!」

 

 ハーマイオニーは最初はゆっくり確実に、後半に行くに連れ声の抑揚をつけ声高らかな名演説を行った。

 

 そんな中、ロンが異論を唱えた。

 

「良いかい…ハーマイオニー…あいつらは自分から好き好んで奴隷をやっているんだよ。奴隷で居ることが幸せなんだよ!」

 

「それはそういう風に洗脳がされているからよ! だから私達が行動を起こさなくてはならないのよ!」

 

 ハーマイオニーは声高らかに宣言する。それにしても、流石にここまで思い込みが激しいと感心してしまう。

 

「最初の目標は、屋敷しもべの正当な報酬と労働条件の確保ね。そして最終的には屋敷しもべの権利を獲得するのよ! そうすればこの悪しき歴史にも終止符が打てるはずよ!」

 

「立派な試みね。それで?」

 

「そうね、まずはメンバーを集めましょう。そして入会費として2シックルでこのバッジを買ってもらうのよ。そしてその売上金を活動費にするのよ」

 

「それは良かったわね」

 

「そうでしょ! じゃあさっそく!」

 

 そう言うとハーマイオニーは私の眼前に手を差し出した。

 

「………何かしらこの手は?」

 

「入会費の2シックルよ。バッジは後で渡すわ」

 

「あんな悪趣味なバッジ欲しくないわ」

 

 私はそう言うと、その場から立ち上がり、談話室の扉に手をかけた。

 

「ちょ…ちょっと待ちなさいよ! 入会費を払わないの?」

 

「払う必要があるのかしら?」

 

「大有りよ! 貴女はこのまま屋敷しもべを見捨てるつもり?」

 

 ハーマイオニーは自分の発言こそが正しいと信じ切っているのか、大声を上げる。

 

「見捨てるも何も、好き好んでやっている奴らじゃない。私には無関係よ」

 

 

「だからそれは洗脳されているのよ! それにこの学校の食事は総て屋敷しもべが作ってくれているのよ! 私達だって無関係じゃないのよ!」

 

 ハーマイオニーは怒りの籠った怒声を上げ、ハリー達は驚いた表情をしている。

 

「ハーマイオニー…アンタこそ洗脳されているんじゃないの?」

 

「なんですって!」

 

 ハーマイオニーが大声を上げると、ハリーがなだめる様に口を開いた。

 

「まぁ落ち着いてよ。そしてよく考えてみてよ。もし僕たちが君が勉強ばっかりしているから、それは不当だと言ってやめさせたらどうする?」

 

「不当なんかじゃないわ! 私は勉強が好きだから、勉強しているだけよ」

 

「そうかもしれないわね。私からすれば、洗脳されているんじゃないかって思うわよ」

 

「そんな…私…」

 

 ハーマイオニーはすっかり意気消沈してしまったようで、椅子に座り込み、俯いている。

 まぁ、少しは考えを改めるだろう。




いかかだったでしょうか。

今回はあまりベヨネッタが表に出てませんね。

まぁ、日常回という事で…

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