ハリー・ポッターとアンブラの魔女   作:サーフ

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最近リアルが忙しくなってきました。

ちょっとの間、更新が不定期になるかも知れません。


バスルーム

 

  第1課題からしばらくの時間が経ち、12月に入った。

 

 周りの生徒達は皆、クリスマスが訪れるのを心待ちにしている。

 

 しかし、代表選手に選ばれた面々はそうは言って居られない。

 なぜなら、未だに金の卵の謎を解明した者がいないからだ。

 

 第1課題終了後、ハリーは卵片手に談話室で祝賀会を開いており、私もそれに参加していた。

 

 ある生徒が、卵を開ける様に急かし、ハリーもそれに応え卵を開ける。

 

 しかし、卵を開けた瞬間、耳を劈く悲鳴の様な、ノイズに似た音が周囲に木霊した。

 

 その悲鳴のおかげで、祝賀ムードは一変し、そのままお開きとなった。

 

 それ以来、私は卵を開けてはいない。

 

 まぁ、どのような内容であろうと、大した問題では無いだろう。

 

 しかし、やはり用意された課題の内容は多少なりとも気にかかる。

 

  

  私は金の卵を片手に、バーに戻り、カウンターでカクテルを呑みながら、手持ち無沙汰を紛らわすように卵を転がしている。

 

「なんだ、案外面白い物、持ってきたじゃねぇか」

 

 

 カウンター越しにロダンは物珍しそうに金の卵を覗き込んでいる。

 

「気になるの?開けない方が良いわよ」

 

「ほぉ…」

 

 

 ロダンは卵を片手に取ると、何の躊躇いも無く蝶番を解き、卵を開いた。

 

 その直後、耳を劈く悲鳴が店内のBGMをかき消した。

 

 私は、この悲鳴の五月蠅さに内心イラつきながら、溜息を吐いた。

 しかし、ロダンは顔色を一切変えずに、卵をテーブルに置いた。

 

 

「うるさいぞ!!」

 

 しばらくすると、店の奥に居たジャンヌが声を荒げながら卵を閉じた。

 すると、先程までの悲鳴が嘘の様にピタリと止んだ。

 

「まったく…なんだこれは? また向こうのグッズか?」

 

「そんな所よ、次の課題のヒントが入っているらしいわ」

 

「ほぉ…まったく、向こうの連中の考える事は分からん」

 

 ジャンヌは少しイラつきながら、テーブルに腰かけた。

 

「コイツは歌だな」

 

「これが歌だと? 素人のデスメタルより酷いぞ」

 

 ジャンヌは呆れた様に、首を横に振りながら、足を組み直した。

 

「コイツはマーミッシュ語だな。水中人の言葉だ」

 

「へぇ、悲鳴のような言葉を使うのね。水中人って」

 

「地上で聞けば悲鳴に聞こえるだろうが、水中で聞けばいい歌になるぜ」

 

「そうなの、なら聞いてみようかしら、バスルーム借りるわよ」

 

 私は卵を手に持ち立ち上がろうとすると、ロダンが口を挟んだ。

 

「わりぃな、今バスルームは改装中だ、近々暖炉でも作ろうかと思ってな」

 

「困ったわね」

 

「向こうにもバスルームくらいあるだろ」

 

「シャワールームしかないのよ」

 

 私は手元のカクテルを一気に煽り、金の卵をポーチに仕舞い込んだ。

 

 とりあえず、向こうに戻ったらバスルームを探すとしよう。

 

 

 

 

  ホグワーツに戻り数日が経つと、代表選手であっても普通に授業が行われる。

 

 

 今日はマクゴナガルの変身術の授業だった。

 

 普段通りに授業が終わる頃、マクゴナガルが咳払いをした後、口を開いた。

 

「さて、皆さんにお話があります」

 

 普段と変わらない口調だが、その表情は真剣そうだ。

 どうやら授業とは関係ない別の内容だろう。

 

 

「クリスマスパーティーが近付いてきました。三大魔法学校対抗試合の伝統で、クリスマスパーティーではダンスパーティーを行います。国外からのお客様と知り合ういい機会でしょう。ダンスパーティーは大広間で行われます。このクリスマス・ダンスパーティーでは羽目を外したくなるかもしれませんが、ホグワーツの生徒としての気品を損なわない様に、心がけてくださいね」

 

 なるほど、ドレスが必要だったのはこの為か。

 

 折角のダンスパーティーだ。楽しむとしよう。

 

 

 マクゴナガルの説明も終わり、教室の生徒達は退室していく。

 私も荷物をまとめ、退室しようとすると、マクゴナガルが口を開いた。

 

「ポッターとセレッサは残りなさい。お話があります」

 

 何事だろう?

 代表選手に選ばれた2人を呼び止めたと言う事は、それなりの理由が有るのだろう。

 

 ハリーは少し不安そうにマクゴナガルに視線を向けた。

 

 

「代表選手とそのパートナーはダンスパーティーの最初に踊ります。これは古くからの伝統です。学校の代表として踊るのですから、それ相応の相手を見つけるようにしてくださいね。」

 

「え? パートナー? 一番最初に?」

 

 ハリーが間の抜けた疑問の声を上げる。

 

「ハリー、ダンスパーティーなんだから、パートナーが居ても可笑しくないでしょ。まぁ、私は一人で踊りたい時もあるけど」

 

「そうなの? 絶対躍らなきゃダメ?」

 

「駄目です」

 

 ハリーの疑問はマクゴナガルにきっぱりと言い切られた。

 

「本当ですか…僕なんかと…」

 

「良いですね、ポッター、セレッサ」

 

 マクゴナガルはキツイ態度でそう言うと教室を出ようとする。

 

「一つ良いかしら?」

 

「なんですか?」

 

 マクゴナガルは鋭い視線でこちらを振り返った。

 

「大した事じゃないわ。この城ってバスルームは無いのかしら?」

 

「バスルームですか? シャワールームがあるではないですか」

 

「ゆっくり温まりたいのよ」

 

 マクゴナガルは顎に手を当てながら少し考えた後、口を開いた。

 

「6階に監督生用の浴場があります。ですが使用できるのは監督生のみです」

 

「私は使えないのかしら」

 

「駄目ですね」

 

 マクゴナガルはそう言うと、踵を返し退室していった。

 

「まぁ、仕方ないわね…それより…」

 

 私はハリーの方へと振り返ると、そこには唖然とした表情で呆然と立ち尽くしているハリーの姿があった。

 

「パートナー…か…」

 

 ハリーがゆっくりとこちらに顔を向けた。

 

「ベヨネッタ…良かったら僕と…」

 

「お断りよ」

 

「まだ何も言ってないじゃないか!」

 

 ハリーは少し怒りながら大声を上げた。

 

「どうせ、私をパートナーにしたいって事でしょ。お断りね、アンタがまともにリード出来るとは思わないし」

 

 私がそう言うと、ハリーは項垂れながら溜息を吐いた。

 

「はぁ…僕ダンスなんて躍ったことないよ…君はダンス得意そうだけど」

 

 私はその場で軽くターンし、両手を頭上で組みポーズを決める。

 

「ダンスは大好きよ、まぁ、ソロで踊る方も好きだけど」

 

「まぁ…君のダンスをリードできる奴なんていないと思うけど」

 

「そうかもね、パートナーが決まらないならロンでも誘えばいいじゃない。お似合いよ」

 

「ロンか…」

 

 ハリーは乾いた笑みを浮かべ、頭を抱えていた。

 

 

 

  数日後、今日はホグズミード村へ行ける日だ。

 だが、多くの生徒はパートナー探しに忙しいのか、ホグズミード村に居る生徒は疎らだった。

 

 しかし、私には未だに誘いに来る生徒が居なかった。

 いや、一番最初にハリーから誘いがあったか。

 

 ハーマイオニー曰く

「ベヨネッタは高嶺の花すぎて誰も誘えないんじゃないかしら? まぁ、貴女程ならしょうがないじゃない」

 

 そう言って居るハーマイオニーは、どこか悲し気な表情だった。

 

 しばらく歩き続けると、ホグズミード村に到着した。

 

 私は周囲を見回し1件の宿の前で足を止めた。

 

 この宿ならバスルームくらいあるかもしれない。

 

 私は、宿の入り口をくぐり中へと入って行った。

 

 内部は寂れた民宿の様になっており、フロントに1人の老人が座っている。

 

「バスルームはあるかしら?」

 

「あるぞ、10ガリオンだ」

 

 ポケットからガリオン金貨を取り出しフロントの老人に支払う。

 代金を受け取った老人は、部屋の鍵を取り出すと、私へと手渡した。

 

「ごゆっくり」

 

 老人は私の背中に声を掛けると、椅子に深く座り込んだ。

 

 

 老人から受け取った鍵に書かれた番号の部屋に入る。

 

 室内は掃除は行き届いているが、装飾品などは質素なもので、寝具は薄いシングルベッドと簡素で安宿といった印象だった。

 まぁ、今回必要としているのはバスルームだけだ。

 

 部屋の奥のにあるバスルームの扉を開けると、清潔感のあるバスタブが目に入った。

 

 この大きさなら問題ないだろう。

 

 蛇口を捻ると、勢い良くお湯が出る。

 しばらくすれば浴槽にお湯が溜まるだろう。

 

 私は、部屋に戻りバルコニーの扉を開ける。

 

 バルコニーから見える景色は普段見ているホグズミード村とは別の様に見える、しかし遠くにホグワーツ城が見えるのは、やはりここがホグズミード村なのだと実感させられる。

 

 しばらく風を感じながら、風景を見ている。

 

 ブローチを開け時計に目を落とすと、10分ほど時間が経っている。

 そろそろお湯が溜まっただろう。

 

 私は脱衣所で服を脱ぎ、その上に畳んだバスローブを置く。

 

 扉を開けて浴場に入るとすでに十分に湯が張られている。

 

 湯気によって、少しメガネが曇るが、そんなことは気にしない。

 

 私は金の卵を手に持ち、足先からゆっくりと湯につかっていく。

 

「ふぅ…やっぱりいいわね」

 

 お湯の温かさに、体の疲れが取れていくのを実感する。

 

 多少、入浴を楽しんだ後、金の卵をお湯に沈め、ゆっくりとお湯に潜る。

 

 水中で、金の卵の蝶番を外す。

 すると、耳を劈く悲鳴のような物は聞こえず、美し歌声へと変わった。

 

 

 『探しにおいで、声を頼りに。

 地上じゃ歌は、歌えない。

 探しながらも、考えよう。

 われらが捕らえし、大切なもの。

 探す時間は、1時間。

 取り返すべし、大切なもの。

 1時間のその後は………もはや望みはありえない。

 遅すぎたなら、そのものは、もはや、二度とは戻らない』

 

 

「へぇ…」

 

 私はお湯から顔を上げ、顔に付いている水滴を払う。

 

「つまり、制限時間は1時間って事ね。大したヒントじゃ無かったわね」

 

 私は、金の卵を閉じると、湯船から出し、浴室の隅に置いた。

 

「ふぅ…」

 

 私は、杖を手に取り、軽く振ると、湯船の上に泡が発生し、泡風呂状態になった。

 

 私は、その泡を手に取ると、軽く息を吹きかける。

 

 手から離れた泡は、宙に浮き、ゆっくりと落下している。

 

 そう言えば、ヨーロッパの辺境にある『ヴィグリッド』に行った時も宿で泡風呂を堪能したのを思い出す。

 

 あの時は『チビ助』と一緒に入っていたな…

 

 その後、部屋にヤンチャな『チェシャ猫』が入り込んで…

 

「なんだお前は!」

 

 そう、ちょうどこの様に喧しい声が響いたものだ。

 

「それはこっちのセリフだ! マグルのくせに!」

 

 どうやら今回は、別の侵入者もいる様だ。

 

 

「マグルって言うなよ! 第一お前みたいなガキが…」

 

「アンタ達なにやってるの?」

 

 私はバスローブを羽織り、部屋へと戻ると、そこには言い争いをしている2人の侵入者がこちらを見て漠然としている。

 

「セレッサ…いや…これは…」

 

 侵入者の内の1人、ドラコは顔を真っ赤にし、目線を逸らすように天井を見ている。

 

「いや…その…これはだな」

 

 もう一人の侵入者、ルカは慌てた様子で、取り繕うとしている。

 

「コイツが! このマグルがバルコニーから入り込むのが見えたから止めに来たんだ!」

 

「マグルって言うな! 俺はただ、ベヨネッタに用事が…」

 

 

「はぁ…アンタ達、いつまでここに居るつもり? そろそろ着替えたいのだけど?」

 

 

 私がそう言うと、2人は慌てた様子で部屋の外へと出ていった。

 

 

 着替え終わり、部屋の扉を開けると、2人は何やら話し合って居る様だった。

 

「なるほどな、つまり次のダンスパーティーで女の子を誘いたいって訳か」

 

「勘違いするなよ、僕はマグル流のやり方に少し興味があるだけで…」

 

「わかったって。この百戦錬磨のルカ様に任せておけ」

 

 ルカは自信気に胸を叩いている。

 

「まぁ、単純な話、タイミングが重要だ。後はストレートに当たれって感じだ、それと、レディは誰であっても丁重に扱え、いつ何処で誰が見ているかなんて分からないからな」

 

「そ…それだけか?」

 

「あぁ、出合頭に花をプレゼントするなんてのも手だな」

 

「そ…そうか…」

 

 

 ドラコは、少し考えた様に顎に手を置いている。

 

 

「お話は終わったかしら?」

 

「あっ! あぁ! 終わった! 今終わったよ!」

 

 

 ドラコは何かを紛らわす様に大声を上げる。その様子をルカが何か意味深な表情で見ている。

 

「そう、なら入りなさい」

 

 私が扉を開けると、2人は少し急ぎながら部屋へと入った。

 

 

「で? 何の用かしら?」

 

 すると、ルカは胸ポケットから手帳をとりだした。

 

「この前、デカい奴が現れただろ。不審に思って少し調べてみたんだ」

 

「それで?」

 

「あぁ、詳しい事までは分からなかったが、この周辺では数百年以上前、ラグナ信仰の宣教者が訪れたという話だ」

 

「それって…」

 

「あぁ、それに、魔法省の一部の人間はイザヴェルグループからの融資を受けているという話もある。恐らくヴィグリッドに居たのと同じ連中が関係しているだろう」

 

 ルカはそう言うと、手帳を再び胸ポケットに仕舞い込んだ。

 

「これが、今回のアレと関係あるかどうかは分からないが…」

 

「まぁ、何かありそうな予感はするわね」

 

 

 ルカは部屋の中を歩き、バルコニーへと移動した。

 

「まぁ、俺も詳しく探ってみるが、今回の大会…結構大荒れになりそうだな」

 

「そっちの方が楽しいわよ」

 

「そうだな、その方がお前らしい」

 

 ルカはバルコニーから外へと手を振ると、アンカーの付いたワイヤーを射出し隣の家の壁に食い込ませた。

 そのワイヤーに全体重を預け、バルコニーから飛び降り何処かへと消えて行った。

 

「で? アンタは何の用?」

 

 

「いや…僕は君がホグズミードの宿に入るのが見えて…それで、あの男が忍び込んで行くのが見えたものだから…」

 

「それで、アンタまで入って来たってわけね」

 

「その…面目ない…」

 

「まぁ良いわよ」

 

 ドラコは、少し考えた後、口を開いた。

 

「その…あの男は一体何なんだ? 君とどういう…」

 

「ルカね…いろんな事に首を突っ込んで来る、お節介焼きよ」

 

「そうなのかい?」

 

 少し落ち着き、安心したように、ドラコは胸を撫で下ろしている。

 

「さて、私はそろそろ城へ戻るわ」

 

「僕も付いて行くよ」

 

 私達は、フロントの老人の視線を受けながら、チェックアウトを済ませ、城へと戻って行った。

 

 城の正面玄関が目の前に広がった頃、おもむろにドラコが口を開いた。

 

「その、ダンスパーティーのパートナーってもう決まったかい?」

 

「まだよ」

 

「そうか…その、なら僕と踊ってくれないか?」

 

 ドラコはそう言うと、その場で片膝立ちになり、私に手を差し出して来た。

 

「アンタが…そうね…構わないわよ」

 

 私はその手を取り、ゆっくりと立ち上がらせる。

 

「本当かい!」

 

「本当よ、まさか自信も無いのに私を誘った訳?」

 

「いや…そんなわけじゃ…」

 

「冗談よ。ならダンスパーティーを楽しみましょう」

 

 私はそのままドラコを残して城の中へと戻って行った。

 

 ドラコはその場で喜んでいるのか、ガッツポーズをした後、私の背を見送っていた。

 

 




マルフォイ、今までいろいろ弄って来たから、今回はご褒美だ。

ホグズミード村に宿があるという設定は無いようですが、そこはご都合主義という事で…

ルカがホグズミード村に入れたのも、ロダンのサポートがあったからです。


ベヨネッタの入浴シーンが見たい方は、アニメ版を見ましょう。

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