ちょっとの間、更新が不定期になるかも知れません。
第1課題からしばらくの時間が経ち、12月に入った。
周りの生徒達は皆、クリスマスが訪れるのを心待ちにしている。
しかし、代表選手に選ばれた面々はそうは言って居られない。
なぜなら、未だに金の卵の謎を解明した者がいないからだ。
第1課題終了後、ハリーは卵片手に談話室で祝賀会を開いており、私もそれに参加していた。
ある生徒が、卵を開ける様に急かし、ハリーもそれに応え卵を開ける。
しかし、卵を開けた瞬間、耳を劈く悲鳴の様な、ノイズに似た音が周囲に木霊した。
その悲鳴のおかげで、祝賀ムードは一変し、そのままお開きとなった。
それ以来、私は卵を開けてはいない。
まぁ、どのような内容であろうと、大した問題では無いだろう。
しかし、やはり用意された課題の内容は多少なりとも気にかかる。
私は金の卵を片手に、バーに戻り、カウンターでカクテルを呑みながら、手持ち無沙汰を紛らわすように卵を転がしている。
「なんだ、案外面白い物、持ってきたじゃねぇか」
カウンター越しにロダンは物珍しそうに金の卵を覗き込んでいる。
「気になるの?開けない方が良いわよ」
「ほぉ…」
ロダンは卵を片手に取ると、何の躊躇いも無く蝶番を解き、卵を開いた。
その直後、耳を劈く悲鳴が店内のBGMをかき消した。
私は、この悲鳴の五月蠅さに内心イラつきながら、溜息を吐いた。
しかし、ロダンは顔色を一切変えずに、卵をテーブルに置いた。
「うるさいぞ!!」
しばらくすると、店の奥に居たジャンヌが声を荒げながら卵を閉じた。
すると、先程までの悲鳴が嘘の様にピタリと止んだ。
「まったく…なんだこれは? また向こうのグッズか?」
「そんな所よ、次の課題のヒントが入っているらしいわ」
「ほぉ…まったく、向こうの連中の考える事は分からん」
ジャンヌは少しイラつきながら、テーブルに腰かけた。
「コイツは歌だな」
「これが歌だと? 素人のデスメタルより酷いぞ」
ジャンヌは呆れた様に、首を横に振りながら、足を組み直した。
「コイツはマーミッシュ語だな。水中人の言葉だ」
「へぇ、悲鳴のような言葉を使うのね。水中人って」
「地上で聞けば悲鳴に聞こえるだろうが、水中で聞けばいい歌になるぜ」
「そうなの、なら聞いてみようかしら、バスルーム借りるわよ」
私は卵を手に持ち立ち上がろうとすると、ロダンが口を挟んだ。
「わりぃな、今バスルームは改装中だ、近々暖炉でも作ろうかと思ってな」
「困ったわね」
「向こうにもバスルームくらいあるだろ」
「シャワールームしかないのよ」
私は手元のカクテルを一気に煽り、金の卵をポーチに仕舞い込んだ。
とりあえず、向こうに戻ったらバスルームを探すとしよう。
ホグワーツに戻り数日が経つと、代表選手であっても普通に授業が行われる。
今日はマクゴナガルの変身術の授業だった。
普段通りに授業が終わる頃、マクゴナガルが咳払いをした後、口を開いた。
「さて、皆さんにお話があります」
普段と変わらない口調だが、その表情は真剣そうだ。
どうやら授業とは関係ない別の内容だろう。
「クリスマスパーティーが近付いてきました。三大魔法学校対抗試合の伝統で、クリスマスパーティーではダンスパーティーを行います。国外からのお客様と知り合ういい機会でしょう。ダンスパーティーは大広間で行われます。このクリスマス・ダンスパーティーでは羽目を外したくなるかもしれませんが、ホグワーツの生徒としての気品を損なわない様に、心がけてくださいね」
なるほど、ドレスが必要だったのはこの為か。
折角のダンスパーティーだ。楽しむとしよう。
マクゴナガルの説明も終わり、教室の生徒達は退室していく。
私も荷物をまとめ、退室しようとすると、マクゴナガルが口を開いた。
「ポッターとセレッサは残りなさい。お話があります」
何事だろう?
代表選手に選ばれた2人を呼び止めたと言う事は、それなりの理由が有るのだろう。
ハリーは少し不安そうにマクゴナガルに視線を向けた。
「代表選手とそのパートナーはダンスパーティーの最初に踊ります。これは古くからの伝統です。学校の代表として踊るのですから、それ相応の相手を見つけるようにしてくださいね。」
「え? パートナー? 一番最初に?」
ハリーが間の抜けた疑問の声を上げる。
「ハリー、ダンスパーティーなんだから、パートナーが居ても可笑しくないでしょ。まぁ、私は一人で踊りたい時もあるけど」
「そうなの? 絶対躍らなきゃダメ?」
「駄目です」
ハリーの疑問はマクゴナガルにきっぱりと言い切られた。
「本当ですか…僕なんかと…」
「良いですね、ポッター、セレッサ」
マクゴナガルはキツイ態度でそう言うと教室を出ようとする。
「一つ良いかしら?」
「なんですか?」
マクゴナガルは鋭い視線でこちらを振り返った。
「大した事じゃないわ。この城ってバスルームは無いのかしら?」
「バスルームですか? シャワールームがあるではないですか」
「ゆっくり温まりたいのよ」
マクゴナガルは顎に手を当てながら少し考えた後、口を開いた。
「6階に監督生用の浴場があります。ですが使用できるのは監督生のみです」
「私は使えないのかしら」
「駄目ですね」
マクゴナガルはそう言うと、踵を返し退室していった。
「まぁ、仕方ないわね…それより…」
私はハリーの方へと振り返ると、そこには唖然とした表情で呆然と立ち尽くしているハリーの姿があった。
「パートナー…か…」
ハリーがゆっくりとこちらに顔を向けた。
「ベヨネッタ…良かったら僕と…」
「お断りよ」
「まだ何も言ってないじゃないか!」
ハリーは少し怒りながら大声を上げた。
「どうせ、私をパートナーにしたいって事でしょ。お断りね、アンタがまともにリード出来るとは思わないし」
私がそう言うと、ハリーは項垂れながら溜息を吐いた。
「はぁ…僕ダンスなんて躍ったことないよ…君はダンス得意そうだけど」
私はその場で軽くターンし、両手を頭上で組みポーズを決める。
「ダンスは大好きよ、まぁ、ソロで踊る方も好きだけど」
「まぁ…君のダンスをリードできる奴なんていないと思うけど」
「そうかもね、パートナーが決まらないならロンでも誘えばいいじゃない。お似合いよ」
「ロンか…」
ハリーは乾いた笑みを浮かべ、頭を抱えていた。
数日後、今日はホグズミード村へ行ける日だ。
だが、多くの生徒はパートナー探しに忙しいのか、ホグズミード村に居る生徒は疎らだった。
しかし、私には未だに誘いに来る生徒が居なかった。
いや、一番最初にハリーから誘いがあったか。
ハーマイオニー曰く
「ベヨネッタは高嶺の花すぎて誰も誘えないんじゃないかしら? まぁ、貴女程ならしょうがないじゃない」
そう言って居るハーマイオニーは、どこか悲し気な表情だった。
しばらく歩き続けると、ホグズミード村に到着した。
私は周囲を見回し1件の宿の前で足を止めた。
この宿ならバスルームくらいあるかもしれない。
私は、宿の入り口をくぐり中へと入って行った。
内部は寂れた民宿の様になっており、フロントに1人の老人が座っている。
「バスルームはあるかしら?」
「あるぞ、10ガリオンだ」
ポケットからガリオン金貨を取り出しフロントの老人に支払う。
代金を受け取った老人は、部屋の鍵を取り出すと、私へと手渡した。
「ごゆっくり」
老人は私の背中に声を掛けると、椅子に深く座り込んだ。
老人から受け取った鍵に書かれた番号の部屋に入る。
室内は掃除は行き届いているが、装飾品などは質素なもので、寝具は薄いシングルベッドと簡素で安宿といった印象だった。
まぁ、今回必要としているのはバスルームだけだ。
部屋の奥のにあるバスルームの扉を開けると、清潔感のあるバスタブが目に入った。
この大きさなら問題ないだろう。
蛇口を捻ると、勢い良くお湯が出る。
しばらくすれば浴槽にお湯が溜まるだろう。
私は、部屋に戻りバルコニーの扉を開ける。
バルコニーから見える景色は普段見ているホグズミード村とは別の様に見える、しかし遠くにホグワーツ城が見えるのは、やはりここがホグズミード村なのだと実感させられる。
しばらく風を感じながら、風景を見ている。
ブローチを開け時計に目を落とすと、10分ほど時間が経っている。
そろそろお湯が溜まっただろう。
私は脱衣所で服を脱ぎ、その上に畳んだバスローブを置く。
扉を開けて浴場に入るとすでに十分に湯が張られている。
湯気によって、少しメガネが曇るが、そんなことは気にしない。
私は金の卵を手に持ち、足先からゆっくりと湯につかっていく。
「ふぅ…やっぱりいいわね」
お湯の温かさに、体の疲れが取れていくのを実感する。
多少、入浴を楽しんだ後、金の卵をお湯に沈め、ゆっくりとお湯に潜る。
水中で、金の卵の蝶番を外す。
すると、耳を劈く悲鳴のような物は聞こえず、美し歌声へと変わった。
『探しにおいで、声を頼りに。
地上じゃ歌は、歌えない。
探しながらも、考えよう。
われらが捕らえし、大切なもの。
探す時間は、1時間。
取り返すべし、大切なもの。
1時間のその後は………もはや望みはありえない。
遅すぎたなら、そのものは、もはや、二度とは戻らない』
「へぇ…」
私はお湯から顔を上げ、顔に付いている水滴を払う。
「つまり、制限時間は1時間って事ね。大したヒントじゃ無かったわね」
私は、金の卵を閉じると、湯船から出し、浴室の隅に置いた。
「ふぅ…」
私は、杖を手に取り、軽く振ると、湯船の上に泡が発生し、泡風呂状態になった。
私は、その泡を手に取ると、軽く息を吹きかける。
手から離れた泡は、宙に浮き、ゆっくりと落下している。
そう言えば、ヨーロッパの辺境にある『ヴィグリッド』に行った時も宿で泡風呂を堪能したのを思い出す。
あの時は『チビ助』と一緒に入っていたな…
その後、部屋にヤンチャな『チェシャ猫』が入り込んで…
「なんだお前は!」
そう、ちょうどこの様に喧しい声が響いたものだ。
「それはこっちのセリフだ! マグルのくせに!」
どうやら今回は、別の侵入者もいる様だ。
「マグルって言うなよ! 第一お前みたいなガキが…」
「アンタ達なにやってるの?」
私はバスローブを羽織り、部屋へと戻ると、そこには言い争いをしている2人の侵入者がこちらを見て漠然としている。
「セレッサ…いや…これは…」
侵入者の内の1人、ドラコは顔を真っ赤にし、目線を逸らすように天井を見ている。
「いや…その…これはだな」
もう一人の侵入者、ルカは慌てた様子で、取り繕うとしている。
「コイツが! このマグルがバルコニーから入り込むのが見えたから止めに来たんだ!」
「マグルって言うな! 俺はただ、ベヨネッタに用事が…」
「はぁ…アンタ達、いつまでここに居るつもり? そろそろ着替えたいのだけど?」
私がそう言うと、2人は慌てた様子で部屋の外へと出ていった。
着替え終わり、部屋の扉を開けると、2人は何やら話し合って居る様だった。
「なるほどな、つまり次のダンスパーティーで女の子を誘いたいって訳か」
「勘違いするなよ、僕はマグル流のやり方に少し興味があるだけで…」
「わかったって。この百戦錬磨のルカ様に任せておけ」
ルカは自信気に胸を叩いている。
「まぁ、単純な話、タイミングが重要だ。後はストレートに当たれって感じだ、それと、レディは誰であっても丁重に扱え、いつ何処で誰が見ているかなんて分からないからな」
「そ…それだけか?」
「あぁ、出合頭に花をプレゼントするなんてのも手だな」
「そ…そうか…」
ドラコは、少し考えた様に顎に手を置いている。
「お話は終わったかしら?」
「あっ! あぁ! 終わった! 今終わったよ!」
ドラコは何かを紛らわす様に大声を上げる。その様子をルカが何か意味深な表情で見ている。
「そう、なら入りなさい」
私が扉を開けると、2人は少し急ぎながら部屋へと入った。
「で? 何の用かしら?」
すると、ルカは胸ポケットから手帳をとりだした。
「この前、デカい奴が現れただろ。不審に思って少し調べてみたんだ」
「それで?」
「あぁ、詳しい事までは分からなかったが、この周辺では数百年以上前、ラグナ信仰の宣教者が訪れたという話だ」
「それって…」
「あぁ、それに、魔法省の一部の人間はイザヴェルグループからの融資を受けているという話もある。恐らくヴィグリッドに居たのと同じ連中が関係しているだろう」
ルカはそう言うと、手帳を再び胸ポケットに仕舞い込んだ。
「これが、今回のアレと関係あるかどうかは分からないが…」
「まぁ、何かありそうな予感はするわね」
ルカは部屋の中を歩き、バルコニーへと移動した。
「まぁ、俺も詳しく探ってみるが、今回の大会…結構大荒れになりそうだな」
「そっちの方が楽しいわよ」
「そうだな、その方がお前らしい」
ルカはバルコニーから外へと手を振ると、アンカーの付いたワイヤーを射出し隣の家の壁に食い込ませた。
そのワイヤーに全体重を預け、バルコニーから飛び降り何処かへと消えて行った。
「で? アンタは何の用?」
「いや…僕は君がホグズミードの宿に入るのが見えて…それで、あの男が忍び込んで行くのが見えたものだから…」
「それで、アンタまで入って来たってわけね」
「その…面目ない…」
「まぁ良いわよ」
ドラコは、少し考えた後、口を開いた。
「その…あの男は一体何なんだ? 君とどういう…」
「ルカね…いろんな事に首を突っ込んで来る、お節介焼きよ」
「そうなのかい?」
少し落ち着き、安心したように、ドラコは胸を撫で下ろしている。
「さて、私はそろそろ城へ戻るわ」
「僕も付いて行くよ」
私達は、フロントの老人の視線を受けながら、チェックアウトを済ませ、城へと戻って行った。
城の正面玄関が目の前に広がった頃、おもむろにドラコが口を開いた。
「その、ダンスパーティーのパートナーってもう決まったかい?」
「まだよ」
「そうか…その、なら僕と踊ってくれないか?」
ドラコはそう言うと、その場で片膝立ちになり、私に手を差し出して来た。
「アンタが…そうね…構わないわよ」
私はその手を取り、ゆっくりと立ち上がらせる。
「本当かい!」
「本当よ、まさか自信も無いのに私を誘った訳?」
「いや…そんなわけじゃ…」
「冗談よ。ならダンスパーティーを楽しみましょう」
私はそのままドラコを残して城の中へと戻って行った。
ドラコはその場で喜んでいるのか、ガッツポーズをした後、私の背を見送っていた。
マルフォイ、今までいろいろ弄って来たから、今回はご褒美だ。
ホグズミード村に宿があるという設定は無いようですが、そこはご都合主義という事で…
ルカがホグズミード村に入れたのも、ロダンのサポートがあったからです。
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