優勝杯に手にかけた瞬間、私は何かに引き寄せられる感覚に陥った。
周囲を見回すと、あたりの風景が様変わりしている。
優勝杯に掴まっている、ハリーとセドリックは大声を上げている。
次の瞬間、私は地面の上に立っていた。
周囲は墓場の様で、禍々しい雰囲気が漂っている。
私の足元には、倒れ込んだハリーとセドリックが呻き声を上げている。
「いて…ここは?」
「墓場か?」
ハリーとセドリックは警戒したように、杖を取り出し、周囲を警戒している。
「久しぶりですねぇ、ベヨネッタ」
周囲に聞き覚えのある、耳にこびりつく声が木霊し、墓標の陰から、青白く輝く、天使とも悪魔とも区別の付かない男が姿を現した。
「アンタ…」
その姿を見た私は目を見開き驚愕した。なぜ奴がこの世界に、数年前に消滅させたはず…
「不思議ですか? 私がこの場所に居て。そうでしょう、貴女にとっては私は消えたはずですからねぇ」
その男はニヤニヤと、不敵な笑みを浮かべる。
そして、その男の後方から、鼠の様な小汚い男が、布に赤子の様なモノを包んでやって来た。
ピーター・ペティグリューか、脱獄したとあったが、まさかコイツが手を引いていたとは
『何を無駄話している! ロプト!』
「これは失礼を、ヴォルデモート卿」
不気味な声が墓場全体に木霊し、それに応える様に、ロプトの鼻に付く声が響く。
私はロプトに、ハリーとセドリックはピーターと声の主に警戒している様だ。
『邪魔者は消せ!』
「かしこまりました、ヴォルデモート卿」
ロプトは、何処からか杖を取り出すと、私達に構えた。
「アバダケダブラ」
ロプトの滑らかな詠唱が終わると同時に、杖の先から緑色の閃光が飛び出し、一直線にセドリックに襲い掛かる。
「セドリック!!」
ハリーが叫び声を上げるが、セドリックは動けないでいる。
「どいてなさい!」
私は、緑色の閃光と、セドリックの間に立ちふさがる。
「ベヨネッタ!!」
「セレッサ!」
ハリーとセドリックの絶叫が響く。
緑色の閃光が私の眼前まで迫り来る。
ゆっくりと、手に構えたマハーカーラの月を突き出す。
緑色の閃光はマハーカーラの月に直撃すると、進路を反転させ、魔法を放ったロプトへと吸い込まれた。
「おや?」
緑色の閃光が直撃し、ロプトがその動きを止めた。
「まぁ、こんな物でしょうね、人が考えた魔法など」
ロプトはやれやれと言う様に、首を横に振っている。
次の瞬間、ロプトが再び杖を振るうと、ハリーが後ろにあった墓標に縛り付けられた。
「ハリー!」
セドリックがハリーに向かって走り出したが、ロプトが再び杖を振るうと、気を失う様にその場に倒れ込んだ。
「安心してください、死んではいませんよ」
ロプトはニヤニヤと笑いながら、杖を手で遊んでいる。
『急げ! 儀式を始めるぞ!』
ヴォルデモートの不気味な声が響き、ピーターは忙しそうに走り出した。
「一体何をしようって言うのかしら?」
「なぁに、闇の帝王に復活していただく。それだけですよ」
「そんな事して、アンタに何のメリットが有るのよ?」
「フフッ、それはまた、別の機会にでも。今は邪魔しないでいただきますか?」
「お断りよ、アンタの頼みなんて聞くわけないじゃない」
両手に銃を構え、一斉にロプトに向け発射する。
「おやおや、今は戦いたくないのですがねぇ」
ロプトは両手を前に出すと、見えない壁の様な物により、銃弾が止まってしまう。
「うわぁああああ!」
その時、ハリーの苦しそうな悲鳴が上がり、ピーターに腕をナイフで刺されている。
「闇の帝王の復活ですね」
ロプトはその場から離れると、墓地には不釣り合いな大鍋の前に移動した。
大鍋から出る大量の湯気を掻き分け、1つの影が蠢いている。
「ローブを着せろ」
「はい、ただいま」
ロプトは手に持っていたローブを丁寧に鍋から出てきた男に着せていく。
その男は、白骨のように白く、細長い体をし、不気味な真っ赤な目をし、切り取られたような鼻に、唇の無い口。これがヴォルデモートなのだろう。
「とんでもないブサイクが復活したわけね、それがアンタの目的?」
「小娘が! 調子付くなよ!」
「病み上がりですから、節制なさった方がよろしいですよ」
怒声を上げるヴォルデモートを諭す様に、ロプトが宥めている。
「フッ…まぁ良い。ワームテール、腕を出せ。ロプト、俺様の杖をよこせ」
「ただいま」
「ああぁ…ご主人様…」
ロプトは先程まで使って居た杖をヴォルデモートに差し出した。
倒れていたピーターは苦しそうに切り取られた腕を出す。
「反対だ」
「あ…あぁああ…」
ピーターは震える様に、もう片方の手を差し出した。
ヴォルデモートはその腕に書かれている刺青に杖を深く差し込んだ。
「あぁあああぁああがぁあ!!」
ピーターは激痛が走ったのか、悲鳴を上げている。
ヴォルデモートはそれを楽しんでいるのか、杖を捩じる様に押し込んでいる。
男のサディストは気色が悪い。
「これで…これで皆が気が付くはずだ。さて…何人が戻るか…」
ヴォルデモートは一人そう呟くと、私の方に視線を向けた。
「貴様がロプトから聞いていた小娘か、想像以上に幼いな」
「若いって言ってくれないかしら? そんなんじゃ、レディに失礼よ」
「フン、減らず口を……来たようだな」
次の瞬間、墓地には次々と黒いフードを被り、顔を仮面で覆っている魔法使いが現れあ
「ご主人様…」
現れた魔法使い達は、怯えながらもヴォルデモートに近付くと、跪きローブの端にキスをしている。
ヴォルデモートは顔を歪ませながら、その場に居る全員を見回した。
「よく戻った、死喰い人よ…お前たち全員が無傷で、魔力も失われていない。なぜお前たちは俺様を助けに来なかった?」
ヴォルデモートは見せつける様に杖を構えると、死喰い人達がビクリと肩を竦めた。
「お前たちには失望した…クルーシオ」
「がうあああああ! もうじわけ! ございまぜん!!」
ヴォルデモートは死喰い人の一人に磔の呪文を掛けると、その人物はのた打ち回り悲鳴を上げている。
「フッ…まぁ良い…お前達はこれからも俺様に忠誠を誓うのだ。良いな」
ヴォルデモートは呪文を解いたのか、のたうち回っていた死喰い人は、その動きを止めた。
「さて…貴様は良く尽くしてくれたな、ワームテール…褒美をやろう」
ヴォルデモートは、ピーターの腕を掴み、軽く杖を振るうと、失った手を補う様に銀で出来た義手が現れた。
「あ…ありがとうございます!」
「その忠誠心に期待するぞ…さて、面白い奴が戻って来たな」
「お久しぶりでございます我が君…肉体を無事取り戻されたようで…」
「フン! 相変わらずだなルシウスよ」
ヴォルデモートはルシウスの仮面を外すと、それを放り投げた。
ルシウス…たしか、ドラコの父親だったか…
「申し訳ありません…すぐに駆け付けようとしたのですが…」
「白々しいな、ルシウス」
ヴォルデモートが杖を構えると、ルシウスの体が一瞬にして硬直する。それを見てヴォルデモートは満足気に笑う。
「まぁ良い…今後の働きに期待しようではないか」
「あ…ありがたきお言葉…」
ルシウスはその場で深々と頭を下げる。
その時一瞬だが私と視線が合ったような気がする。
「あぁ…そうだったな…」
ヴォルデモートはその場で高笑いすると、杖を振りぬき、ハリーに魔法を放った。
「クルーシオ」
ハリーは絶叫を上げる。それを見ているヴォルデモートは高笑いをしている。
「見ろ! この小僧は何も出来んぞ! コイツは俺様から幸運にも生き延びたと囃し立てられているが…その実はどうだ!」
ヴォルデモートは杖を振り、ハリーを吹き飛ばすと、再び高笑いをする。
「杖を抜け! ハリー・ポッター! 決闘のやり方は知っているだろう!」
ヴォルデモートが杖を振るうと、ハリーの体が無理やりに引き起こされる。
「さあ! 決闘とは儀式だ! 礼儀を欠くわけにはいかん! 頭を下げろ! 体を折れ!」
感極まったヴォルデモートはハイテンションで叫び声を上げる。
「お辞儀をするのだ! ポッター!」
突如として、周囲から死喰い人の拍手が響き渡る。
「さぁ! 背筋を伸ばせ! 決闘だ! 杖を構えろ!」
ヴォルデモートは嬉しそうに杖を構え、それに対してハリーは苦しそうに杖を構えた。
「アバダケダブラ!」
「エクスペリアームス!」
2人が魔法を放つと、空中で緑と赤の閃光がぶつかり合う。
「ぐぉおお!」
ヴォルデモートはこの状況が理解できていないのか、困惑した表情を浮かべている。
だが、このままではまずい。
私は、銃を取り出しヴォルデモートの眉間目掛け1発の銃弾を放つ。
放たれた銃弾は真直ぐに飛翔し、ヴォルデモートに迫りよる。
が、直撃する寸前に銃弾は空中で静止する。
「人の決闘を邪魔するとは、なってませんね」
ロプトが構えていた手を下にやると、それに従う様に、銃弾がポトリと落下する。
「小娘! 邪魔をするな!」
怒りを孕んだ怒声を上げながら、ヴォルデモートはこちらに杖を向けて来る。
墓地の奥では、ハリーが肩で息をしながら、杖を握りしめている。
「ハリー、今のうちに」
「でも…」
「良いから行きなさい」
私の声に従う様に、ハリーはその場から走り出した。
「逃すか!」
周囲の死喰い人が杖を抜き、ハリーに魔法を放とうとするが、その杖を右手の銃で撃ち抜く。
「くぉ!」
杖を破壊された死喰い人は、その場に座り込んだ。
ハリーの方はと言うと、倒れていたセドリックに駆け寄ると、杖を取り出し、優勝杯を引き寄せて、2人でその場から消え去った。
「さて、これで存分に遊べるわね」
「そうですね、ですが先程も言ったように、私は今戦うつもりは無いのですよ」
ロプトが微笑み、軽く指を鳴らす。
すると、地響きと共に、周囲に嵐が起こり、その中から、脚の無い、まるで城壁をイメージするような巨大な天使、テンパランチアが悠然とその姿を現した。
テンパランチア
「節制」の意志は一際巨大な姿で描かれる。城のように思える胴体に、巨木のような二本の腕。その泰然とした姿に、人々が如何にこのラグナを畏怖していたかが表れていると言えよう。怒りか、喜びか、天の意志を推し量る事など人間に出来るはずもなく、竜巻に見舞われた人々は、それが治まるのをひたすら祈り続け、己の節制を天に誓ったという話だ。
「なんだあれは!」
死喰い人から、恐怖にも似た声が上がるが、ヴォルデモートはそんな中、高笑いをしている。
「素晴らしいぞ!」
「喜んでいただけたようですね、彼女の相手はこちらに任せ、我々は先に退散いたしましょう」
「フッ…小娘よ! 精々生き延びる事だな!」
ヴォルデモートを始めとする、死喰い人達、そして、ロプトがその場から姿を消す。
『ベヨネッタよ、これで我が悲願成就に1歩近付いた。礼を言うぞ』
「アンタ達に感謝される覚えなんて無いわね。それにしても、あのブサイクの復活が目的だったなんて、アンタ達も落ちたものね」
『ハハハ、それが目的だと? それは通過点に過ぎん』
「じゃあ何が目的よ?」
『それを貴様が知る必要などない』
次の瞬間、巨大な大木のような腕が私に振り下ろされる。
『貴様はここで死ぬのだからな』
「そう、ならいいわ、遊んだ後でゆっくりと聞かせてもらおうかしら」
テンパランチアの1撃を避けた私は、『Tom Riddle』と書かれた墓標の上に着地する。
そして、魔力を開放しマダムの全身が現れる。
マタムとテンパランチアは互いに睨みあい、ファイティングポーズを取っている。
マダムが一気に近寄り、テンパランチアのボディに1発喰らわせる。
『ぐぉ!』
マダムの一撃で、体を前のめりにさせているテンパランチアの顔面を、マダムは数発、ジャブやアッパーカットを喰らわせる。その度に天使の装甲が剥がれ、醜悪な姿を晒していく。
『ぐぉおぉお!』
テンパランチアも負けじとマダムに殴りかかるが、それは虚しくも華麗に回避され、ウィッチタイムの中、一方的に顔面を殴られる。
「うごぉおぉおお!」
ラッシュを喰らったテンパランチアは一回下がり、右手に力を溜め、マダムに殴りかかる。
マダムも右手を振りぬき、両者の拳がぶつかり合う!
1発、2発と拳がぶつかり合う度に、衝撃により、周囲の墓標が破壊されていく。
テンパランチアが力を振り絞り、ストレートを放ってくる。
マダムも渾身の力を籠め、ストレートを放つ。
両者の拳がぶつかり、強大な衝撃波が発生し、墓地が荒地へと変わった。
その時、テンパランチアの拳にヒビが入り、そのヒビはどんどんと腕を駆け上り、右腕が完全に崩壊する。
『ぐぉおそお!』
マダムは残った左腕の付け根に抜き手を突き刺し、左腕を完全に切断した。
『ぐおぉお…フフフ…』
悲鳴と笑い声を放ちつつ、テンパランチアの巨体が荒地へと墜落する。
マダムは墜ちたテンパランチアの顔面を踏みつけると、力を籠め始める。
『フフフ…素晴らしいぞ…これほどとは…やはり素晴らしいな!』
瀕死の状態のテンパランチアが笑い声を上げながら呟き始める。
『これもすべて…』
何かを言いかけた瞬間、マダムの力が最大にまで入ったのか、テンパランチアの顔面が踏み潰される。
その直後、巨体を取り囲むように魔法陣が現れ、無数の手により、テンパランチアの体が引きずり込まれていった。
「バカね、大切な話を聞きそびれちゃったじゃない」
私がそう言うと、マダムは大笑いを上げたまま、元の場所へと帰って行った。
「まぁいいわ、さて戻りましょうか」
私は、杖を取り出すとバーへと移動した。
三大魔法学校対抗試合ではなく、四元徳復活祭を送りしました。
まぁ、復活した端から片付けられましたが。
節制さんはどこで出そうか迷ったのですが、墓地で出てもらうのが一番かと思いました。
次回で炎のゴブレット編は終了ですね。