まぁ、その方が平和なんですけどね。
数日後
アンブリッジは事あるごとに、喚き散らしていたが、私とハリーは無視することを決め、2人とも闇の魔術に対する防衛術の授業には参加していない。
数日が経った頃、私達はマクゴナガルから自室に呼び出された。
「来ましたか…」
マクゴナガルは私達を見ると、自室の扉を開け、中へと招いた。
部屋の中に入ると、簡素なソファーがあり、私達はそこに腰かける。
「最近、貴方たちが、闇の魔術に対する防衛術の授業に出席していないという報告を受けましたが本当ですか?」
「本当です」
ハリーははっきりと答え、マクゴナガルは溜息をついた。
「理由は…まぁ…おおよその見当は付きますが…」
「あの女よ、私の一番嫌いなタイプだわ」
「はぁ…やはりそうですか」
マクゴナガルは呆れた様に頭を抱え込んだ。
「理由は分かりました。ですが授業には参加しなさい。ふくろう試験も控えているのですよ」
「でも、先生」
「大丈夫ですよ、ポッター。後ほど私の方から彼女に説明しておきます。まだ何かあるようならその時はまた」
マクゴナガルはそう言うと、私達に紅茶を差し出した。
なかなか上手に淹れられている。
数日後、大広間でハリー達が予言者新聞を片手に騒いでいた。
「どうしたのよ大騒ぎなんてして」
「あぁ、ベヨネッタか、これ見てくれよ」
ロンから手渡された新聞には、アンブリッジが高等尋問官になると言った内容が書かれていた。
「高等尋問官? なによこれ?」
私は思わず顔をしかめてしまった。
それを見たハーマイオニーが、記事を朗読し始めた。
「『高等尋問官は同僚の教育者を査察する権利を持ち、教師たちが然るべき基準を満たしているのかどうか確認します』つまりは、アンブリッジがホグワーツの教員を管理する立場になったって事ね」
「はぁ…」
私は思わず溜息を吐き、呆れた様に頭を左右に振っていた。
「こうなると、一部の先生は危険ね。アンブリッジの事だからきっとトレローニー先生辺りに目を付けるはずよ」
「ハグリッドが帰ってきたら危ないね…それまでにあんな奴、辞めちゃえばいいんだけど」
ハリーが付け加える様にハグリッドの名前を出した。
あの二人は確かに、なぜ教師をやっているのかいまいちよく分からない。
ダンブルドアの趣味だろうか?
私達はその後、スネイプが担当している魔法薬の授業を受けるべく教室へ向かった。
授業中、スネイプは相変わらずグリフィンドールに加点するという事は無かった。
授業も中盤に差し掛かったであろう頃、教室の扉が開かれ、アンブリッジが姿を現した。
私とハリーは明らかに嫌そうな態度を取っているが、アンブリッジはそんな事は気にも留めず、スネイプの元へと近付いて行った。
「エッヘン、いくつか質問よろしいでしょうか?」
「………良いでしょう、授業中ですので手短に頼みますぞ」
スネイプの低いテンションがさらに一段階低くなっている。
「えぇ、貴方は闇の魔術に対する防衛術の担当を希望してらっしゃったとかで」
「左様」
「ですが今は、魔法薬の担当でらっしゃる」
「左様…」
「今まで数名もの闇の魔術に対する防衛術の担当が替わりましたが…一度も担当になってらっしゃらない」
「…左様…」
「ふぅん…」
アンブリッジは鼻で息をすると、手に持っていたメモ帳の様な物に何かを書き込んでいる。
「では失礼しますね、これらからも
アンブリッジが去り際にそう言い放ち、教室を後にした。
そんな2人のやり取りを見ていたロンは必死に笑いを堪えていた様だが、堪え切れず噴き出している。
「フンっ!」
「いてぇ!」
そんなロンの後頭部を、スネイプは手に持っていた教科書で力の限り殴りつけていた。
数日後の、占い学の授業中にアンブリッジが張り付いたような笑みを浮かべながら教室に姿を現した。
アンブリッジの姿を見た生徒達は、先程までの楽しそうな顔を一変させている。
「こんにちは、トレローニー先生。先日お知らせした通り、査察を行わせてもらいますね」
「え…えぇ、どうぞ」
トレローニーは嫌そうな顔をしながら、授業を続けていった。
「少しよろしいですか?」
授業が終盤に差し掛かった頃、アンブリッジが手を上げ口を開いた。
「え…えぇ、なんでしょうか?」
「貴女はこの職に就いてからどれくらいが経ちますか?」
「そうですわね…かれこれ16年くらいでしょうか」
「長いですわね」
アンブリッジがメモ帳に何かを書き取ると、再び顔を上げた。
「貴女を雇ったのはダンブルドア先生ですね」
「その通りですわ」
「へぇ…」
アンブリッジは何かを企んだような笑みを浮かべる。
「噂にお聞きしたのですが、貴女はかの有名な予言者である、カッサンドラ・トレローニーの曾々孫だとか?」
「えぇ」
「素晴らしいですねぇ、では私の為に何か予言をしていただけませんか?」
「予言…でしょうか?」
トレローニーは瞬きをしながらアンブリッジに聞き返した。
「その通りです、私の為に1つで良いので、予言を頂きたいの」
「そのような事、急におっしゃられても…」
「そう…まぁ…出来ないならいいですよ、無理なさらないで」
アンブリッジは嫌味ったらしくそう言うと、メモ帳に再び何かを書き込んでいる。
「わかりました…」
トレローニーはアンブリッジを睨み付けながら、手を前に差し出している。
「ああぁ…お気の毒に、貴方は恐ろしい危機が迫っていますわ! とても恐ろしいものが!」
「そう…」
アンブリッジは詰まらなそうにそう言うと、教室から悠々と退室した。
その後も、アンブリッジの暴走は止まらず、事あるごとに、教師に難癖をつけては採点を繰り返しているようだった。
月日は過ぎ、10月に入り、ホグズミード村へ行くことが許可された。
その事に皆は喜び、こぞってホグズミード村へと遊びに行っている様だ。
まぁ、アンブリッジが居るホグワーツになど居たくないと言うのが総意だろうが。
そんなある日、私が談話室のソファーに腰かけていると、ハーマイオニーが声を掛けてきた。
「ベヨネッタ、ちょっといいかしら?」
「えぇ、何の用かしら?」
振り返るとそこには、ハーマイオニーの他にハリーとロンの姿もあり、その表情は真剣そのものだった。
「あのね、私達考えたの…」
ハーマイオニーの言葉を継ぐ様に頷いたハリーが口を開いた。
「闇の魔術に対する防衛術の自習をしようって、このままじゃ僕達は魔法省の思惑通り無能の集団になっちゃう。自分たちの身を守る力を付けなきゃって」
「そう、良い心がけね」
「ありがとう、そこで折り入って君にお願いがあるんだ」
「お願い?」
私は、眼鏡を直しながら、足を組み直し、3人に向き合った。
「君も参加して欲しいんだ?」
「何の話よ」
「さっきも言ったけど、僕等は闇の魔術に対する防衛術の自習をしたいんだ。それで、メンバーを今集めていてね。そこで君にも参加して欲しいと思って…それに君はいろいろと戦いについては詳しそうだし教えて欲しいなと思って」
「私は教えるなんて柄じゃないわ、それに、私は呪文なんかより――」
私は両手に銃を持ち、彼等の前に見せつける。
「この子達の方が使い慣れているわ。それもいいのかしら?」
「あぁ…君が居るだけで心強いよ」
ハリーは少し躊躇いながらも、そう口にした。
「そう、ならいいわ。参加してあげる」
「本当に!」
「そんな事じゃ嘘なんて言わないわよ」
「ありがとう! さっそくメンバーを集めるわ!」
ハーマイオニー達はそう言うと、走る様にして談話室から出ていった。
数日後、今日はホグズミード村へ行くことが許可されている日だ。
私はハリー達に連れられ、ホグズミード村にあるホッグズ・ヘッドと言う寂れたバーに連れてこられた。
どうやらここで、決起集会を行うようだ。
しばらくすると、次々と人が集まり始め、ネビルや、セドリック、ウィーズリー家の双子など総勢で25人ほどのメンバーが集まった。
多くのメンバーは狭く埃っぽいバーの中で椅子に座りながら、ハーマイオニー達の演説にも似た説明を聞いている。
ハーマイオニーは演説が終わると、皆のサインを集め始めた。
その場に居た、私を除く全員が快くサインしている様だ。
ある程度の方向性が決まった所で、一つの問題が浮上した。
「所で…何処で練習する?ここじゃできないよ」
ハリーがそう言うとハーマイオニーは唖然とした表情を浮かべている。
まさか、場所まで頭が回らなかったのだろうか。
「そうね…皆は何か、都合の良い場所知らないかしら?」
ハーマイオニーがそう言うが、誰一人として手を上げる物は居ない。
そんな都合のいい場所がすぐに出て来るなら苦労はしないだろう。
そう思っていると、ネビルがおずおずと手を上げた。
「その…必要の部屋なんてどうかな?」
「必要の部屋って?」
ハーマイオニーの疑問にネビルが自信なさそうに答えた。
どうやら、その名の通り、ホグワーツの8階にある、欲するものが現れる部屋らしい。なんとも都合のいい物だ。
「そうね、そこにしましょう。じゃあ最初の集合の日は日時が決まったら報告するわね」
ハーマイオニーがそう言い、皆が頷いている。
こうして、決起集会は無事に幕を閉じた。
数日後
談話室の掲示板に不可解な張り紙が張り出されていた。
そこには、ホグワーツ内での学生によって作られた組織は1度総て解散となるという内容が書かれていた。
そして、再び組織したい場合は、高等審問官であるアンブリッジに届け出する必要があるようだ。なお、未登録の活動が発覚した場合は退学処分にされるようだ。
「もしかして、誰かが告げ口したのかしら!」
「そんな事無いと思うよ」
「どうする? 届け出るの?」
「そんな必要ないわよ。バレなきゃいいだけよ」
「でも退学処分って書いてあるわ」
ハーマイオニーは何処か不安そうに私の方を見ている。
「ならやめるの? 私はどっちでもいいわよ」
「いや…そんな事…」
「多少のリスクはしょうがないよ。バレないように上手くやる方法を考えなきゃ」
ハリーは何か決意したように、頷いている。
原作道理、アンブリッジが暴走を始めました。
一体どんな結末になるんでしょうね(すっとぼけ)