12月に入ると、会合にも余裕が出てきたのか、全体的なレベルが上がっているのが見てわかる。
体を捩じる様にしながら、魔法を避けるものや、魔法を避けると同時にカウンター気味に魔法を放つものなど、最初に比べれば大違いだ。
ここまで成長できたのが、嬉しいのか、ハーマイオニーは嬉しそうに、メンバーと話しながら魔法の練習に打ち込んでいる。
数日後の夜。
私がバーで日課を終わらせ部屋に戻ってから数分が経った頃、マクゴナガルが部屋の扉をゆっくりと開けた。
「良い夜ね。何の用かしら?」
ベッドに腰かけながら、窓から外の月を見ながら私はマクゴナガルに問いかける。
「起きていたのですね、夜更かしは感心しませんね、美容の天敵ですよ」
「これでも、スキンケアには気を使っているのよ」
「そうですか」
マクゴナガルは少し溜息をしながら、私を見据える。
「それに…アンタだって、起こしに来たクセに良く言うわ。で? 何かあったの?」
マクゴナガルは周囲を見回し、私以外の全員が寝静まっているのを確認した後、小声で答えた。
「アーサー・ウィーズリーが何者かによって襲われたようです。詳細は校長室で話します。付いてきなさい」
私は、ベッドから立ち上がると、軽く体を伸ばし、マクゴナガルの後に続いた。
校長室に入ると、そこには疲れ切った表情のハリーとロンの姿があった。
「ベヨネッタ、君も来たのか?」
「えぇ、呼び出されたのよ」
私がそう言うと、マクゴナガルは軽く咳払いをした。
「先程、神秘部で任務に当たっていたアーサーが、何者かに襲われたようじゃ。今、エバラードとディリスが確認に向かっておる所じゃ」
「ダンブルドア!! ダンブルドア!!」
突如、校長室に飾られている肖像画の一つから声が響いた。
「誰かが駆けつけてくるまで叫び続けましたよ。みんな半信半疑で、確かめるように降りてきましたよ。下の階に私の肖像画はないので、確認には行けなかったのですが……ともかく、みんながその男を運び出してきましたね。症状は良くない。血だらけだった」
「ご苦労じゃった。おそらく、ディリスがその男の到着を見届けるじゃろう」
報告を聞いたダンブルドアは静かにそう言うと、別の肖像画から声が聞こえてきた。
「えぇ、先程の男ですが、皆に連れられて聖マンゴに運び込まれました…が…酷い状況の様です」
「そうか…ご苦労」
ダンブルドアは溜息を吐いた後、マクゴナガルの方を見た。
「ミネルバ、他のウィーズリー家の子供たちを起してやってくれ」
「かしこまりました…」
マクゴナガルは一礼すると、そのまま校長室から出ていった。
部屋の隅に居るロンの顔色はとても悪い状況だった。肉親の危機とあっては仕方も無いだろう。
ダンブルドアは棚から古めかしいポットを取り出した。
「ポータス」
ダンブルドアが杖を振ると、ポットから青白い光があふれ出した。
「ポートキーじゃ。まぁ、無許可で作るのは違法じゃが…今回は仕方あるまい。これはシリウスの元まで繋がっておる」
「わかりました」
ハリーはダンブルドアの目を見ながら、数回頷いた。だが、ダンブルドアは目を逸らそうとしているように見えた。
ダンブルドアは壁に掛かっている肖像画に歩み寄ると、声をかけ始めた。
「フィニアス。フィニアス! 起きておるじゃろ」
「ん…何の用かね?」
肖像画の中の人物は、嫌そうに眼を擦りながら、ダンブルドアの方を見えてる。
「別の肖像画に行って、伝言を頼まれて欲しいのじゃ」
「なるほど…分かりましたよ。向こうにあればの話ですがね。なんせあの家族は…」
「シリウスはそこまで愚かではない。では伝言じゃ『アーサーが重傷で、妻、子供たち、ハリー、が間もなくそちらに到着する』とな。セレッサ、お主も行ってはくれぬか?」
「私が?何の為に?」
「死喰い人が現れるかもしれぬ。護衛を頼みたいのじゃ。」
「そういう事なら、構わないわよ」
「では追伸じゃ。セレッサも同行すると伝えてくれ」
「わかった。伝えよう」
肖像画の人物はそう言うと、肖像画の奥へと消えていった。
しばらくすると、校長室の扉がノックされ、ウィーズリー家の面々がパジャマ姿で入ってくる
その後ろにはマクゴナガルの姿があった。
「君等のお父上は不死鳥の騎士団の任務中に怪我をなさった。お父上は聖マンゴ魔法疾患傷害病院に運び込まれておる。今から君達をシリウスの家に送ることにした。病院へはその方が隠れ穴よりも便利じゃからの。お母上とは向こうで会えるじゃろう」
「どうやって行くんですか? 煙突飛行?」
「いや、煙突飛行は監視されておる。ポートキーで行くのじゃ」
ダンブルドアは机の上にあるポットに指を差した。
「早くした方が良いじゃろう」
ダンブルドアがそう言うと同時に、私達はポットに手を掛けた
「では行くのじゃ」
ダンブルドアが杖を振ると同時に、ポートキーが発動し、私達の体はブラック邸へと飛ばされた。
ブラック邸に到着すると同時に、シリウスがハリーに駆け寄った。
「ハリー! 何があったんだ!」
ハリーはその場で、少しずつ話し始めた。
ハリーの話では、夢の中でロンの父親が、蛇に襲われているところを見たという事だ。
なんとも都合が良い事だ。
「ママはもう来てるの?」
ロンがシリウスに聞く。
「まだだ。恐らく何が起こったかさえ知らないだろう。今頃ダンブルドアから連絡を受けている筈さ」
「聖マンゴへ行かなきゃ…」
ロンがそう呟いたが、シリウスは首を横に振った。
「待つんだ、今日の所は大人しくしておいた方が良い。また後日向かおう」
「でも…」
「駄目だ。今は我慢するんだ」
シリウスの言葉に、彼等は納得したのか。諦めた様に俯いている。
「とりあえず今日は休むんだ。いいね」
シリウスがそう言うと、ハリー達は寝室へと移動していった。
「君は寝ないのかい?」
「こんないい夜に寝るつもりなんて無いわ」
「そうか、なら1杯付き合ってくれ」
シリウスが厨房の奥からジンのボトルを取り出した。
「良いわね、素敵じゃない」
「フッ、君は未成年の筈だが、やっぱりいける口か」
「誘ったのはそっちよ」
「そうだったな」
シリウスはショットグラスを2つ取り出すと、テーブルの上に置き、零れる寸前まで、ジンを注いだ。
「たまにはこういうのも良いわね。無骨で素敵よ」
「いつもはもっと洒落てるのか?」
「行きつけのバーがあるのよ」
「それはそれは、やっぱり君も相当不良な生徒だな」
「学生の頃のアンタよりも?」
「さぁね?」
シリウスは笑いながら、ショットグラスを一気に煽る。
私もそれに続くように、グラスの中身を空にする。
「お見事」
シリウスはそう言うと、にこやかに笑っている。
結局のところ、シリウスとは朝方になるまで飲み続け、潰れる様にテーブルに突っ伏している。
「しょうがないわね」
私はグラスを厨房の流し台へと持っていくと、急にドアが開かれた。
急な来訪者に、私は銃を突き付けると、小さな悲鳴が上がった。
「アンタは…」
「お…おはよう。セレッサ」
そこにはロンの母親が引きつった表情で立っていた。
私が銃を下すと、彼女は胸を撫で下ろしながら息を吐いた。
「悪かったわね」
「仕方ないわよ。死喰い人の可能性だってあったわ。貴女の行動は正しいわよ」
気を取り直したのか、彼女は厨房の奥へと歩いて行った。
「朝食はまだでしょ。これから作るわ」
「そう、ならお願いね」
グラスをシンクへと置き、私はその場を後にした。
数十分後、家の中を料理の香りが満たす。
その香りに釣られる様に、ハリー達が目を覚ましたようで、ぞろぞろと階段を下りてきた。
「ママ!」
ロンが声を上げると、ジニーは母親に抱き着いている。
「パパは?」
「大丈夫よ。今は眠っているわ。後で面会に行きましょう」
「よかった…」
ロンは胸を撫で下ろしている。
穏やかな空気が流れているが、それを壊す様に、シリウスの唸り声が響いた。
「うぅ…飲みすぎたな…気持ちが悪い…あぁ、モリーか…どうだ、アーサーの様子は?」
「えぇ、一命は取り留めたみたい。それにしても、シリウス、貴方飲みすぎよ」
皆が呆れたような表情でシリウスを見ている。
そんな中、シリウスは尚も唸り声を上げている。
「う~…君は何で平気なんだ」
シリウスはコチラを恨めしそうに睨んで来るが、私は肩を竦めるだけにした。
「さぁ、朝食が冷めちゃうわ」
「そうだね、僕お腹すいちゃったよ!」
ロンはテーブルに付くと、朝食にがっついている。
「シリウス、昨日はありがとう。子供たちの面倒を見てくれたようね」
「大した事じゃない。現にこうやって酔い潰れていただけさ。アーサーが入院している間はここを使うと良い」
「えぇ、助かるわ。もしかしたら、クリスマスもここで過ごすかもしれないわ」
「そりゃ大歓迎さ」
シリウスは嬉しそうに答えると。ハリー達はにこやかに微笑んでいる。
その後、ダンブルドアから着替えが入ったトランクが届けられ。皆服を着替えた。
アーサーの見舞いに行くという話になったが、家族水入らずを邪魔するのも野暮だろうという事で私は遠慮した。
丁度クリスマス休暇も始まるという事なので、私は彼等を見送った後、ホグワーツ特急には乗らず、そのままバーへと移動した。
休暇が始まって数日後。
私はエンツォから依頼された仕事を片付け、いつもと同じようにバーで1杯やっている。
「そっちの調子はどうだ?」
いつもと変わらぬ口調のジャンヌがグラスを傾けながら、私の隣に腰かけた。
「変わりないわよ。死喰い人が脱獄したくらいしかイベントなんて無かったわ」
「ほぉ…それはまた退屈だな」
ジャンヌは皮肉交じりに笑うと、グラスを傾けている。
「まぁ、恐らくあのヴォルデモートとか言う男と、ロプトの仕業だろうな」
詰まらなそうに呟いたジャンヌは溜息を吐いている。
「ところで、あの不死鳥の騎士団とか言うのはどうなったんだ?」
「順調なんじゃないかしら。あまり期待はしてないけど」
「そうだな、所詮はレジスタンスだろう」
再びジャンヌは皮肉交じりに笑い。私はそれに微笑み、互いにグラスを軽く合わせた。