どうなる事でしょう…
アンブリッジの処理も済み、廊下を歩いていると、向こうの方から、ハリー達が手を振りながらこちらに走り寄って来た。
「ベヨネッタ! アンブリッジが吹き飛んで行ったように見えたけど…」
「えぇ、その通りよ。見てたのね」
「窓からね」
「覗きが趣味なのね」
「そ…そんな風に言うなよ!」
「冗談よ。それよりアンタ達はどうやって抜けだしたのよ?」
「あぁ、なんかマルフォイの奴が、アンブリッジが居ないなら僕等を拘束する意味が無いとか言い出して縄を解いたんだ」
「なんか最近アイツ変だよな」
ロンが冗談っぽくそう言うと、ハリーは苦笑いをしている。その背後から、普段より何倍も高いテンションのネビルが話に割り込んで来た。
「カエル! ベヨネッタ! さっきのカエルは? 君のペットかい?」
「え、えぇそうよ」
「そうなんだ! すごく良いカエルだね! すごい美人さんだ! トレバーに紹介したいくらいだよ!!」
ハイテンションのネビルはそう言いながら、目を輝かせている。
「そんな事より、この後どうするのよ!」
話を聞いていたハーマイオニーが声を荒げている。
「そうだね…暖炉が使えないとなると…」
「何かいい案は無い?」
「そうね…」
私は顎に手をやり、少し考えると、暖炉に見覚えのある所を1か所思い出した。
「暖炉ならあるわよ」
「本当かい! それはどこ?」
ハリーがテンションを上げながら、聞いて来たので、私はゆっくりと杖を取り出いた。
「行くわよ」
「行くって…まさか…」
ハリーは何かに気が付いた様で、嫌そうな顔をしている。
「えぇ、そのまさかよ」
疑問が確信へと変わったハリーは、さらに嫌そうな顔をして、溜息を吐いている。
「それってどこだよ?」
しびれを切らしたロンが私達に疑問を投げかける。
「行ってからのお楽しみよ、さぁ、掴まりなさい」
ハリーは嫌そうに、私の肩に手を置き、他の面々も、互いの肩に手を置き、円陣を組んでいるようになった。
「さて行くわよ。全員、目を閉じてなさい」
「こう?」
全員が目を閉じたのを確認した後、私は杖に魔力を籠め、バーへと移動した。
数瞬の後、レトロなレコード特有の、モダンなBGMが聞こえてきた。
私が目を開けると、ハリーは暗い顔をしており、他の面々は店内を興味深そうに見回していた。
私は、バーカウンターへと目をやると、そこにはロダンの姿はなく、奥の方から何やら作業をしているのか、金属音が響いている。
「あぁ、来たのか。少し待ってろ、後はここをこうして…よぉし!」
店の奥から、ロダンが声を上げながら、バーカウンターに現れた。
「なんだ、今回は団体で来たんだな」
ロダンは私の後ろに居るハリー達をサングラス越しに見据えている。
「えぇ、そうよ。この店、いつも私達以外居ないじゃない」
私は、冗談を言いながら、カウンターに付くと、ロダンは多少怒ったような表情で、私の前にカクテルを差し出して来た。
「フッ、うちは常連には優しいからな」
「そぉ」
「あぁ、それよりお前達もそんなところに突っ立って無いで、何か注文しな」
ロダンがハリー達にそう言うと、彼等は目を白黒させながら私を見ている。
私は、ハリー達に軽くグラスを掲げた後、ゆっくりとグラスの中のカクテルを半分ほど飲み込む。
「えっ…じゃ…じゃあ、僕等はベヨネッタと同じ物を――」
「ミルクを! 人数分!」
ロンの言葉を遮る様に、ハリーがそう叫ぶと、ロダンは全員分のミルクが入ったグラスをカウンターに置いた。
「お前もミルクでも飲むか?」
「私はこっちの方が良いわよ」
私は空になったグラスを、ロダンに差し出すと、シェイカーから再びカクテルが注がれる。
注がれたカクテルをゆっくりと楽しんでいると、ミルクを半分程飲んだハリーが声を上げた。
「ベヨネッタ! いつまでこうして居るんだよ! 僕等は早く神秘部へ行かなきゃいけないのに!」
「そうだったわね、ロダン、後で暖炉を使わせてもらうわよ」
「煙突飛行ってやつか、生憎だがうちにあるのは普通の暖炉だぞ」
それを聞いたハリーは驚いたような表情を浮かべている。
「どうするんだよ! 早く戻って別の方法で神秘部へ行かなきゃ!」
ハリーがそう叫ぶと、ロダンはサングラスを直しながら口を開いた。
「なんだ、お前達神秘部へ行きたいのか?」
「そっ…そうだけど」
「そうか…」
ロダンはテーブルの上にあるベルを1回軽く鳴らすと、店内にある扉を指差した。
「あそこから行けるぜ」
「気が利くじゃない」
「うちの店はサービス精神が良いからな」
鼻で笑ったロダンは、いつもの様にグラスを磨き始めた。
「さて、じゃあそろそろ行くわよ」
グラスの残りを飲み干し、私が立ち上がると、それを見たほかの面々もミルクを一気に飲み席を立ち上がた
先頭のハリーが扉に手を掛けた時、ロダンが声を上げた。
「ちょっと待てよ。まだ代金を貰ってないぞ」
「え?」
出鼻を挫かれたハリーが間抜けな声を上げた。
「そうですね。いくらです?」
ハーマイオニーが律義に聞き返すと、ロダンは少し笑ったように答えた。
「10ガリオンだ、一人な」
「え?」
ロダンの提示した値段に、ハリー達は驚愕している。
「ちょっとまって…え? 『10ガリオン』って言った?」
「あぁ、これでもかなり良心的だぜ」
ロダンは、さも当然だと言わんばかりな態度で葉巻をふかしている。
「ミルク1杯が、10ガリオンなんてぼったくりだ! それにそんな大金持ってないよ!」
ロンが異論を唱えるが、ロダンはそれを鼻で笑って居る。
「そう言われてもな、もう飲んじまっただろ」
ロダンはそう言って笑いながら、口から煙を吐いている。
そんなロダンを、まじまじと眺めている少女がゆっくりと口を開いた。
「アンタ、悪魔でしょ。私、悪魔って初めて見た」
「よせよ、ルーナ。まぁ、本当に悪魔みたいなやつさ」
ロンは、嫌味ったらしく言うと、ロダンは笑いながら、煙を吐き出す。
「そうさ、俺は悪魔だからな。そんな奴との取引だ。高く付くぜ」
「アンタも相変わらずあくどい商売しているわね、いつもの様にエンツォにつけておいて。全員分よ」
「お前も相当、あくどい女だぜ」
「これくらいして貰っても、良いはずよ」
ロダンは笑いながら、グラスを棚に仕舞い込んだ。
「それに、私は血も涙もないのよ。じゃあそろそろ行くわね」
「大忙しだな、コイツを持っていきな」
扉の前まで移動したとき、ロダンが片手に収まるサイズの物を投げて寄越した。
ハリー達が興味深そうに私が片手で受け取った物を、まじまじと見据えている。
これは…
「アルーナだ。調整したてだぜ。上手く使ってくれよ」
アルーナ
魔界に咲く花アルラウネの名を持つ魔人を封じた魔導器。生きたように動き相手を捕えるイバラの鞭。この鞭で打たれたものの耳には、封じられたアルラウネの呪いの囁きが聞こえるという。
「素敵じゃない。ありがたく使わせてもらうわ」
私は、アルーナをポーチに仕舞い込むと、ゆっくりと扉を開け、神秘部へと向かった。
扉をくくった先は、見覚えのない、厳かな雰囲気の場所だった。
「この扉だ! この先にシリウスが!」
ハリーが目の前の扉を指差しながら、ロン達に語り掛けている。
「おい! さっきの扉が無いぞ!」
後ろを振り返った、ロンが大騒ぎしている。
確かにそこには、先程くぐった扉は無く、不気味な扉があるだけだった。
「不思議だね…でも今はそんな事より…」
ハリーはゆっくりと、目の前の扉を開け中へと入って行った。
扉の向こうには、巨大な空間に巨大な棚が陳列されており、そこには様々なガラス玉が置かれている。
「こっちだ」
ハリーは何かに導かれるかのように奥へと進んでいき、ある棚の前で歩みを止めた。
「これだ…」
ハリーは何の躊躇いも無く、棚に置かれているガラス玉を一つ手に取ると、奥の方から声が響いて来た。
「これは、これは、ハリー・ポッターではありませんか」
「誰だ!」
ハリーが声の方を見ると同時に、私は声の主目掛け弾丸を放った。
「おやおや、相変わらず手厚い歓迎ですねぇ…ベヨネッタ」
そこには、弾丸を人差し指と中指で挟み、額に当たる寸前で止めながら、悠然と歩いているロプトが姿を現した。
「あまり先行するな!」
そんな、ロプトを制止するように、背後から2人の死喰い人が姿を現した。
2人はフードを深くかぶっているが片方は…
「ルシウス・マルフォイ…」
ハリーが恨みを込めた声でその名を呼ぶと、ルシウスは嘲笑いながらハリーに話しかけ始めた。
「さあハリー・ポッター……その予言を私達に渡せ。そうすれば誰も傷つかぬ」
ルシウスはハリーが手に持っているガラス玉…予言を要求し始めた。
「これをお前達に渡せば、僕等を見逃すのか?」
ハリーはルシウスを小馬鹿にするように尋ねる。
「良いからそれを渡せ」
「シリウスはどこだ?」
ハリーが問いただすと、ルシウスの隣に居た死喰い人がフードの向こうでケラケラと笑い始めた。
「ヤンチャなポッターちゃんは、シリウスが余程、恋しい様だねぇ」
鳥肌が立つような、耳に残る女の声が周囲に響き渡る。
「あまり子供をからかうモノではありませんよ。ベラトリックス・レストレンジ」
ロプトはフードを深くかぶった女、ベラトリックスを制止するように、鼻に付く声を上げている。
「貴様は! ベラトリックス・レストレンジ!」
突如、私達の後ろに居たネビルがベラトリックスの名前を叫びながら杖を構えた。
「アンタは? ネビル・ロングボトムかい? あぁーご両親元気?」
「貴様!」
ネビルが杖を振ろうとした瞬間、周囲から大勢の死喰い人が私達を囲むように現れ杖を構えている。
「人数はこちらが上だぞ、さぁ、大人しく予言を渡せ」
「くっ…」
私は、素早くポーチからアルーナを取り出すと、ハリーに小声で話しかける。
「早く行きなさい」
「え? でも…」
「私が合図したら、伏せなさい」
私は、ゆっくりと、ルシウス達に歩み寄る。
「動くな!」
歩み寄る私を制止するように、ルシウスが杖を構える。
それに従い、周りの死喰い人もこちらに杖を構えている。
「甘いわね」
手に構えたアルーナを頭上で一度円を描くように横に振る。
すると、ウィケットウィーブを絡めたアルーナは巨大な鞭となり、周囲の死喰い人を吹き飛ばす。
「うぉお!」
「うわ!」
ハリー達とルシウスとベラトリックスはその場に伏せる事でアルーナの攻撃を避けた。
ロプトは鞭が直撃していたが、何食わぬ顔でその場に立っている。
「こっちだ!」
ハリーが大声を上げると、それに付いて行くかのように、全員が走り出した。
「逃すか!」
無傷のルシウスとベラトリックスは立ち上がると、ハリー達を追いかけ始める。
私は、両手に銃を構え、2人に狙いを付けようとするが、それを遮るかの様に、ロプトが眼前に現れた。
「邪魔よ、退きなさい」
「そう言われましてもねぇ…あの予言をヴォルデモート卿が欲しているのですよ」
「私には関係ないわ」
両手の銃を一斉にロプト目掛け発射する。
「おぅ…とぉ」
ロプトはワザとらしい声を上げながら、銃弾を避ける様に飛び上がると、少し離れた位置に宙返りをしながら着地した。
「貴方の相手は、これに頼みましょう」
ロプトが指を鳴らすと床から巨大なオレンジ色の球体が現れ、それを守るかの様に、青白い菱形の装甲が覆い、ゴーレムが姿を現した。
ゴーレム
混沌の神が造り出した、都市警護用の生態兵器。
体を構成する特殊な金属に、あらゆる生命の記録が登録されており、瞬時に読み取った侵入者の情報を解析し、その攻撃力に合わせて、自らの形態を瞬時に切り替え、最適な攻撃形態で応戦する事が出来る。
「では私はこれで失礼しますよ」
ロプトはそう言い残すと、何処かへと消えていった。
私がゴーレムと向かい合うと同時に、入り口の方からハリー達の叫び声が響いた。
「どういう事だ! なんで開かないんだ!」
声の方のした方を振り向くと、入り口を覆う様に結解が張られている。
ロプトが余計な事をしてくれたようだ。
『ガギンッ!』
気配を感じ、私はその場から飛び退くと、その場所を叩き潰すかのように、ゴーレムが拳に姿を変え、殴りかかっていた。
「遊びたいのね、いいわ。相手してあげる」
私は、ゆっくりと振り返ると、ゴーレムは、その姿を蜘蛛の様な形状に変え、突進してきた。
「惜しいわね」
突進してくるゴーレムの顔面に両手の銃を放ちながら、飛び上がる。
放たれた弾丸は、ゴーレムの顔面に直撃すると、その装甲にダメージを与えていく。
ゴーレムの背後に着地すると同時に、銃を仕舞い込み、チェルノボーグとアルーナを取り出す。
『ガギンッ!!』
ゴーレムが再び姿を変えた。
ドラゴンの頭部に姿を変えたゴーレムは私を噛み砕こうと、大口を開け迫り来る。
「どこを見ているのかしら」
アルーナを空中に放り投げ、数瞬置いた後に飛び上がり、ゴーレムの噛みつきを避ける。
上空で態勢を整えると、落下を始めているアルーナを足に装着させる。
着地すると同時に、ゴーレムが形態を変えようとしている。
「今度はこっちの番よ」
足を振り抜き、アルーナを伸ばし、ゴーレムのオレンジ色のコアに絡ませる。
変形を始めていた、周囲の装甲がコアを死守しようと集まり始める。
「無駄よ!」
私は、足に力を籠めると、アルーナを引っ張り、コアをこちらに引き寄せる。
「月まで…………吹っ飛べ!」
コアを引き寄せると同時に、足を踏ん張り、勢いを付けて頭突きを喰らわせる。
頭突きを受けたコアは吹き飛び、周囲にあったガラス玉が置かれている棚をいくつか薙ぎ倒し、周囲に埃が舞い上がる。
埃が落ち着くとそこには、受けたダメージにより動けなくなったのか、ゴーレムのコアが火花を散らしながらヒビの入った装甲を無理やり装着している。
「次で決めるわよ」
私は髪の魔力を開放し、ゲートを開く。
『APACHANA NAPTA!』
召喚ゲートから6本の腕の魔獣。ヘカトンケイルが現れた。
それに伴い、周囲にある棚が崩落し、ドミノ倒しの様に次々に倒れ、置かれているガラス玉が大量に落下する。
「フッ」
私が指を軽く鳴らすと、ヘカトンケイルが合体途中のゴーレムを殴り始めた。
ヘカトンケイルが1撃加える事に、ゴーレムの装甲は砕け散り、最終的にはコアだけになっても、まだ殴り続けている。
コアを殴り飽きたのかヘカトンケイルの4本の腕が同時に殴りかかると、その反動でコアが宙に浮く。
浮かび上がったコアをヘカトンケイルの2本の腕がレシーブし高く打ち上げる。
ある程度の高さまで打ち上ったコアはゆっくりと自然落下を始める。
コアの落下位置にヘカトンケイルの2本の腕が現れ、安定させるようにトスをする。
安定したコアの前にヘカトンケイルの2本の腕が現れ、右手の方に力を溜めている。
そして、その右手は綺麗にコアの中心を捉え、去年の失敗を帳消しにするかのような、完璧なアタックを決めた。
吹き飛んだコアは、ハリー達が手こずっている入り口を覆う封印の方へと飛んで行った。
「危ないわよ」
聞こえるかどうかわからないが、私がそう言うと、入り口の方から叫び声が聞こえてきた。
「なんか飛んで来るぞ!!」
「避けろ!」
「今日は厄日だわ!」
叫び声が聞こえた後、爆破音が部屋の中に響き渡った。
「扉が開いている! こっちだ!」
私はハリー達の方に駆け付けると、入り口に張られた結解は砕け散り、開かれた扉に走り込んでいく姿が見えた。
「「「うわぁあぁぁぁ!」」」
ハリー達が扉を抜けた途端、彼等の叫び声が響いた。
覗き込むと、そこには床は無く、暗闇が広がっていた。
「ここを落ちていったのね」
私は1歩足を踏み出すと、ゆっくりと暗闇を下りていった。
ミルク1杯10ガリオンは高く感じるかもしれませんが、神秘部までの移動費も込みです。
手にチェルノボーグ、足にアルーナで広範囲殲滅によく使いました。
ゴーレムが出たなら、やる事は一つですね。