ハリー・ポッターとアンブラの魔女   作:サーフ

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今回から『謎のプリンス』が始まります。
といっても、かなり短いんですよね。

それに、しばらくはベヨネッタは傍観者ポジですね。

その辺はご了承ください。


謎のプリンス
任務


   私は、普段通り、バーでカクテルを飲みながら、ロダンが定期購読している日刊予言者新聞に目を通す。

 

 どうやら、ヴォルデモートが復活して以来、向こうの世界で大暴れしている様だ。

 

 死喰い人によってオリバンダーの店が襲撃された他、向こうの世界のマグル界にまで被害が出ているという話だ。

 

「奴等、どうやら派手にやっている様だな」

 

 私の隣にやって来たジャンヌは呆れた様に呟いている。

 

「そうみたいね」

 

「ここを見てみろ」

 

 ジャンヌが、日刊予言者新聞の一面を飾っている写真の一部を指差した。

 

「これは…」

 

 写真の端には黒い影が宙を羽ばたいている様に見える。

 

「天使共だろうな」

 

「その様ね」

 

 どうやら、天使達は向こうの世界で、本格的にヴォルデモートと共に行動している様だ。

 

 だが一体何のために…

 

 

「何やらきな臭いな…こちらもいろいろと調べてみたが、あまり収穫は無かった」

 

「こっちもよ。菱形の変態が騒ぎまくって居る事くらいしか分からないわ」

 

 私は、グラスに残っていたカクテルを一気に飲み干し、入り口へと向かう。

 

「もう出るのか?」

 

「えぇ、そろそろ汽車の発車時刻なの」

 

「フッ、汽車とはまた古風な…気を付けろよ」

 

「分かっているわよ」

 

 私は、ジャンヌに軽く手を振ると、店を出た。

 

 

 

  ホグワーツ特急に乗り込んだ私は、普段とは少し違う空気を感じている。

 

 それもそうだろう。現状、この世界は混沌の真っ只中だ。

 そんな状況だからこそ、子供達は皆ホグワーツへと行くのだろう。

 

 恐らくそこが、一番安全なのだと信じて…

 

 さて、適当に空いているコンパートメントでも探さなくては。

 

 

 

 

 

  僕は今、ホグワーツ特急に乗り込もうと、ゆっくりと足を踏み出している。

 

 この1歩はとても重い。しかし周囲にそれを悟られる訳にもいかず、無理やりその足を動かし、汽車へと乗り込む。

 

 僕の後ろには、いつも通り、何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか、良くわからない表情のクラッブとゴイルが同じ歩幅で歩いている。

 

「この荷物をコンパートメントへ運んでおいてくれ、僕は後から向かう」

 

 2人にそう言うと、彼等は文句も言わず、荷物を手に持つと、コンパートメントを探しに向かった。

 まぁ、彼等がここまで言う事を聞くのも、昔は光栄だと思って居た、マルフォイ家の名のおかげだろう。

 

「はぁ…」

 

 

 だが今は、その名が足枷となり、僕を悩ませている。

 

 2人が見つけたコンパートメントに入り込むと、腰を掛け、考えを巡らせた。

 

 それは、数週間ほど前の出来事だ。

 

 

   僕と、父上は、死喰い人の集会に参加した。

 

 父上は、生粋の死喰い人であるのか、そこまで緊張しているようには見えなかったが、僕は初めての事に、とてつもなく緊張していた。

 

 集会には、ベラトリックス・レストレンジやピーター・ペティグリュー。そして、ホグワーツの教員でもあるセブルス・スネイプなど怱怱(そうそう)たるメンバーが集結していた。

 

 ベラトリックス・レストレンジはとても上機嫌な顔をしている。大方シリウス・ブラックが死んだのが相当嬉しいのだろう。

 

 そして、周囲には僕達を守っているのか、数体の天使が様々な武器を片手に佇んでいた。

 

「皆、良く集まってくれた」

 

 心に入り込む様な声が周囲に響き、僕はゆっくりと顔を上げるとそこには、『闇の帝王』が座っており、その隣には青白い人間ではない別のモノが側近の様に立っていた。

 

「さて、貴様達は俺様に忠誠を誓って居るのだろう?」

 

 急に何を言い出すかと思えば…

 

 周囲を見回すと、皆一様に頷いている。

 

「はい、我が君」

 

 隣で父上がそう言うと、例の闇の帝王はとても嬉しそうに微笑み、こちらに近付いて来た。

 

「そうか、そうか…報告は聞いているぞ、ルシウス。なんでも予言の奪還に失敗したそうじゃないか」

 

「そ…それは…面目ありません」

 

 父上は冷や汗を掻きながら、俯いている。

 

「フッ…フフッ…まぁ良い…」

 

 例のあの人はそれだけ言うと、自分の席に座り、ゆっくりと口を開いた。

 

「俺様の杖では、兄弟杖を持つハリー・ポッターを殺す事は出来ん様だ」

 

 その言葉を聞いたメンバーはどよめき始めた。

 

「そこでだ…誰か俺様に杖をよこせ」

 

 その一言で、周囲は一瞬にして凍ったように静かになった。

 

「なんだ? 誰も居ないのか」

 

 例のあの人はゆっくりとこちらに近寄ると、父上の後ろで歩みを止めた。

 

「ルシウス。貴様の杖を寄越せ」

 

「は…はっ」

 

 冷や汗まみれになった父上は、ステッキに仕込まれていた杖を取り出した。

 

「どうぞ」

 

 例のあの人は杖を手に取ると、上部に付いていた蛇の装飾品をへし折った。

 

「……フッ」

 

 例のあの人は鼻で笑った後、自分の席に着いた。

 

「さて…ドラコ」

 

「はっ…はい!」

 

 急に名前を呼ばれた僕は、上ずった声で返事をする。

 

「貴様にはいくつか任務をやろう」

 

 張り付いた笑みを浮かべた例のあの人は、ゆっくりと僕に命を下した。

 

「ダンブルドアを殺すのだ。手段は問わない」

 

 ダンブルドアの暗殺。それが僕に与えられた使命だ。

 しかし、いったいどうやって…

 

「お言葉ですが我が君…息子にはいささか荷が重い任務かと…」

 

 父上が助け船を出すが、例のあの人は、表情を変えずに続ける。

 

「ではセブルスを補佐に付けよう。ロプトも手を貸してやれ、それなら問題あるまい」

 

「しかし――」

 

「「かしこまりました」」

 

 父上を遮る様にスネイプ先生とロプトが声を上げた。

 

「では頼むぞ。それともう一つだ」

 

 僕はその命令を聞き、膝から崩れ落ちる様な感覚に陥った。

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 与えられた任務を思い起こし、僕は溜息を吐いた。

 

「外の空気を吸ってくる」

 

 2人にそう告げると、僕はコンパートメントの扉を開け外へと出た。

 

「あら? ドラコじゃない」

 

「あっ…」

 

 僕は目の前の彼女を見て全身の血液が抜けるような感覚に陥った。

 

 僕が果たすべき任務の対象である彼女の姿は、今日も変わらず美しかった。

 

 

 

 

 「どうしたのよ?」

 

 私の顔を見るなり、ドラコは青ざめた様な表情で立ち尽くしている。

 

 そして、若干だがローズマリーの香りがする。

 

「いっ…いや、何でもないんだ。それより元気そうだね、セレッサ」

 

「おかげさまでね」

 

 ドラコはいつもの口調に戻った。

 

「そんな事より、何処かに空いているコンパートメントは無いかしら?」

 

「そうだね、僕のコンパートメントはどうだろう?」

 

「良いじゃない。案内して頂戴」

 

「あぁ、こっちだ」

 

 ドラコの案内に従って、私はコンパートメントの中へと入って行った。

 

 中には、いつも通りに、ドラコの取り巻きが座っていた。

 

「クラッブ、ゴイル、席を外してくれ」

 

「「…………」」

 

 取り巻きの2人はすっと立ち上がるとコンパートメントを後にした。

 

「さぁ、座ってくれ」

 

「気が利くじゃない」

 

 私が席に着くと、ドラコは対面の席に座り込む。その表情はどこと無く曇っていた。

 

「暗い顔してるわね。どうかしたのかしら?」

 

「え? そうかな?」

 

「そうよ。相席が私じゃ不満だったかしら?」

 

「いや! そんなんじゃ…」

 

「フッ、冗談よ」

 

「あまりからかわないでくれ」

 

「それにしても、ドラコ…アンタ少し匂うわね」

 

「え?」

 

 ドラコは驚いたように、自分の服を嗅いで居る。

 

「抜けるような清涼感と、若干の甘い香り…ローズマリーの香りね」

 

「あ…あぁ、そうかな?」

 

「えぇ、そうよ。奴等と同じ香りだわ」

 

「え?」

 

 間抜けな声を上げているドラコの眼前に銃を突き付ける。

 

「説明してくれないかしら?」

 

「いや…その…これは…」

 

 ドラコは恐怖に歪んだ表情で、目を見開いている。

 

「この前も言ったけど。奴等と関りを持つようなら、容赦はしないわよ」

 

 私がワザとらしく撃鉄を起こすと、ドラコの表情はさらに歪んでいく。

 

「じ…実は…」

 

 蚊の鳴く様なか細い声でドラコはゆっくりと語りだした。

 

 

 

 

「そう」

 

 私は銃口を突き付けながら、ドラコを一瞥する。

 

 どうやら、ドラコは死喰い人の集会に参加し、そこで天使達に近付いたらしい。

 

「天使共の匂いが分かるなんて、すごい匂いのセンスだね」

 

「奴等を狩って居れば嫌でも覚えるわよ。他に何か隠し事は?」

 

「いや…それは…」

 

 この反応かしらして、何かあるだろう。

 

「ヴォルデモートに関してかしら?」

 

「ま…まぁそんな所だね…」

 

「そう、なら私には関係ないわね」

 

 私が銃を納めようとすると、ドラコが自嘲気味に呟いた。

 

「それが…君の暗殺だとしてもかい?」

 

「あら。そうなの」

 

「え?」

 

 驚くドラコを尻目に私はゆっくりと、銃を納め、両手を広げる。

 

「やってみなさい。今なら簡単でしょ」

 

「君…正気か…」

 

 ドラコはゆっくりと杖を構えると、私に付きつける。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 ドラコは息を荒げ、冷や汗を流している。

 

「どうしたのよ、早くしなさい」

 

「はぁ…あぁ…」

 

 ドラコは深い溜息を吐くと膝から崩れ落ちる。

 

「出来る訳ないだろ…」

 

 ドラコの手から離れた杖はコロコロと音を立て私の足元に転がる。

 

「まったく、慣れない事はするものじゃないわよ」

 

 私は、杖を拾うと、ドラコに手渡す。

 

「その通りだね…」

 

 疲れ果てたのか杖を受け取ったドラコはコンパートメントの中で仰向けに倒れ込む。

 

「なんで暗殺なんて引き受けたのよ」

 

 私が聞くと、ドラコは諦めた様に口を開いた。

 

「闇の帝王の命令さ。逆らえる訳がない…」

 

 ゆっくりと起き上がったドラコは、溜息交じりに椅子に座り込む。

 

「君を殺せなんて…無茶を言うよ…ホント…」

 

 ドラコは少し笑うと、再び口を開いた。

 

「まぁ…こうして失敗してしまった今はどうする事も出来ないけどね」

 

「で? アンタは今後どうするのよ?」

 

「そうだな…もう一つの任務を全うするさ」

 

「そう、それは私に関係ある事かしら?」

 

「さぁ…どうだろう。でも、直接的な関係は無いかもね」

 

「なら良いわ。精々頑張りなさい」

 

 私がそう言うと、ちょうど駅に着いた様で、私達はコンパートメントを後にした。

 

 




はい、マルフォイの任務は早くも失敗しました。

当初の予定では最後まで隠し通すつもりだったのですが、どう考えても、ベヨネッタに隠し事なんてできないと思ってこんな結果になりました。
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