ホグワーツに入った後はいつも通りの新学期パーティーが始まった。
またしても、帽子が警告じみた歌を歌って居る。
大広間には、トレローニーが嬉しそうな顔で座っている。
アンブリッジに解雇された後に再雇用でもされたのだろう。
「皆! 今日は良い夜じゃな!」
しばらくすると、ダンブルドアが大声を上げ、会場が静まり返る。
「新入生の諸君、歓迎いたしますぞ。そして上級生にはお帰りなさいじゃ。今年もまた、魔法教育がびっしりと待ち受けておる。まず初めに禁じられた森には生徒立ち入り禁止じゃ。そしてホグズミード村には3年生から行くことが許可される。それと、管理人のフィルチさんから皆に伝えるようにと言われたのじゃが、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズとかいう店で購入した悪戯用具は全て校内持ち込み禁止じゃ」
ダンブルドアは笑いながら、心にもない事を言って居る。
まぁ、こんな規則守る奴なんていないだろう。
「各寮のクィディッチチームに入団したいものは寮監に名前を提出すること。今年度は試合の解説も同時に募集しておるので、興味のあるものは同じく応募するとよい」
生徒達は、ダンブルドアの話を聞きながら、教職員の席に目をやっている。
そこには、新顔の老人が座り込んでいる。
「さて、今年からは居る新しい先生がおる。早速紹介しよう。ホラス・スラグホーン先生じゃ。スラグホーン先生はかつてホグワーツで魔法薬学を担当しておられた。今回はホグワーツの魔法薬学の先生として復職していただく」
スラグホーンはゆっくりと立ち上がると、簡単な挨拶を済ませた。
「さて、それにともなってじゃが、スネイプ先生には闇の魔術に対する防衛術の担当になっていただく」
「え?」
それを聞いたハリーは間の抜けた声を上げている。
他の生徒、主にグリフィンドール生からは不満の声が上がっている。
当のスネイプはと言うと、念願の闇の魔術に対する防衛術の担当になれたことが嬉しいのか、珍しく笑みを浮かべている。
それ以外は、ダンブルドアがいつもと変わらない挨拶をして、幕を閉じた。
新学期が始まると、去年のテストの結果によって受ける授業が限られている様だ。
私は、総ての教科で最高ランクを叩きだしていたので特に問題は無い。
しばらくすると闇の魔術に対する防衛術の授業。つまりスネイプの授業の時間がやって来た。
今回もスリザリンとの合同だったようで、グリフィンドール生は嫌そうな顔をしているが、対するスリザリン生は満面の笑みを浮かべている。まったく正反対だ。
「やぁ、セレッサ」
普段と何も変わらぬ表情でドラコが声を掛けてきた。
「アンタもこの授業なのね」
「まぁね、これでもスリザリンだからね」
答えになっていない気もするが、ドラコはそう言うと笑って居る。
「ところで、任務の方は順調かしら?」
私が、皮肉を込めて任務の事を言うと、ドラコは痛いところを突かれたといった表情をしている。
「その様子だと、あまり上手くいってないようね」
「まぁ、君にバレた時点で任務は失敗したような物さ」
「自分からバラしたんじゃなかったかしら?」
「隠しきれるとは思えなかったからね…まぁ、おかげで気は楽になったよ」
「意外ね、てっきり落ち込むかと思っていたわ」
「最初は落ち込んださ。失敗したら、天使達に殺されるかも知れないからね」
乾いた笑みを浮かべたドラコは、羽ペンを取り出しながら、笑っている。
「でも、その場合…君が助けてくれるだろ?」
「はぁ…お気楽ねアンタは」
にこやかに笑っているドラコを見て、溜息を吐きながら首を左右に振る。
「まぁ、私の前で襲われていたなら考えてあげるわ、確約はできないわよ」
「助かるよ」
ドラコは、準備を終えたのか、席に座り込む。
「皆席に着け。早くしろ」
スネイプが教室に入るなりそう言うと、多くの生徒が席へと付いた。
念願の防衛術を教える事になったスネイプは上機嫌で生徒達へと語る。
「闇の魔術は多種多様、千遍万化、流動的にして永遠なる物だ。それと戦うという事は多くの頭を持つ怪物と戦うに等しい。首を切り落としても別の首が、しかも前より獰猛で賢い首が生えてくる。まるで、どこぞの誰かのペットの様にな…諸君の戦いの相手は固定できず変化し、破壊不能なものだ」
長いポエムを聞き終えた所で、スリザリンの方から拍手が上がる。気を良くしたスネイプはスリザリンに5点を与え、拍手をしなかったグリフィンドールには10点の減点を与えた。
今回は、『無言呪文』についての内容だった。
どうやら、多くの魔法使いは呪文を詠唱する事で使えるようになるそうだが、熟練者ともなると、文字通り無言で使えるようになるようだ。
結局、この授業で成功したのは、私とハーマイオニーだけだった。
スネイプは不機嫌そうにこちらを見ると、なぜかスリザリンに10点加点させた。
数日後
スラグホーンによる初の魔法薬学の授業の時間がやって来た。
教室に入ると、上機嫌そうに微笑んでいる老人が居た。これがスラグホーンだろう。
スラグホーンはハリーを見ると、上機嫌になり熱烈に迎え入れた。
「さて、さて…みんな秤をだして。それに魔法薬キットもだよ。後は教科書を…」
「先生。僕とロンは本も天秤も持っていません。僕達、N・E・W・Tが取れるとは思わなかったものですから……」
「ああ、そうそう。マクゴナガル先生が確かにそうおっしゃっていた。心配には及ばんよハリー、全く心配ない」
どうやら、ハリー達は何も用意せずに来たらしい。あの感じだと、マクゴナガルに無理やり行くように言われたのだろう。
スラグホーンは嫌な顔一つせずにハリー達に道具と教科書を用意した。
教科書を2冊受け取ったハリーとロンは、どちらが新品を取るかで争っていたが、今回はロンに軍配が上がったようだ。
「さーてと、皆に見せようと思っていくつか魔法薬を煎じておいた。N・E・W・Tが終わった頃にはこういうのを煎じる事が出来るようになっているはずだ。これが何だか分かる者はいるかね?」
「はい!」
いつもの様に何の迷いも無くハーマイオニーは真っ直ぐ手を上げた。
「言ってごらんなさい」
許可を得たハーマイオニーは薬の前で手を仰ぎ臭いを確かめた後、口を開いた。
「右から、飲んだものに真実を話させる真実薬。他人に化けられるポリジュース薬、そして愛の妙薬と言われるアモルテンシアです。一番奥のは…ちょっとわかりません…」
「おぉ、良く分かったね、素晴らしい。グリフィンドールに20点あげよう」
ハーマイオニーは完璧に説明できなかったのが少し悔しいのか、少し不満そうな顔をしている。
その答えられなかった薬は、黒い鍋に入っている黄金色の薬だ。
スラグホーンは自慢げにその鍋を指差すと、説明を始めた。
「さて。これね。さてこれこそは紳士淑女諸君、最も興味深い一癖ある魔法薬で名をフェリックス・フェリシスという。ここまで説明すれば、これが何かわかるかな? ミス・グレンジャー」
フェリックス・フェリシスの名を聞いただけでアッと声をあげたハーマイオニーにスラグホーンが問いかける。
それに対しハーマイオニーは興奮気味に答えた。
「幸運の液体です! 人に幸運をもたらします!」
それを聞いて教室の中に居る生徒達が一斉にざわめきだした。それにして、『幸運』をもたらす液体とは、少々胡散臭い。
「その通り、グリフィンドールにもう5点あげよう。そう、この魔法薬は面白い。調合が恐ろしく面倒で間違えると酷い事になる。しかし成功すれば全ての企てが成功に傾いていくのが分かるだろう」
なんとも都合のいい薬だ。
「先生。ならどうしてそれを皆飲まないんですか?」
ロンがもっともな疑問をぶつける。
確かにそうだ。そんな都合のいい薬があるなら量産すればいい。そうすればヴォルデモートだろうと怖くは無いだろうに。
「それはね、飲みすぎると有頂天になったり、自己過信、無謀になったりと危ないからだよ。まぁ後は飲みすぎれば毒にもなるからね」
なるほど、こちらの世界にもよく似た薬が出回っている。
「そしてこれを今日の授業の褒美として提供する。フェリックス・フェリシスの小瓶一本。12時間分の幸運に十分な量だ。明け方から夕方まで何をやってもラッキーになる」
スラグホーンがそう言うと、クラスから歓声が上がった。
この男は案外人の心を掴むのがうまいのかも知れない。
「注意しておくがフェリックス・フェリシスは組織的な競技や競争事に使う事は禁止されている。これを獲得した生徒は通常の日だけ使用する事。そして通常の日がどんなに素晴らしくなるかを知るだろう」
どうやら、この薬はドーピングの様な物らしい。
確かにこの薬を全員が使えば、競技などはすべて上手くいくだろうな。
「さて、この素晴らしい賞をどうやって獲得するか? さあ『上級魔法薬』の10ページを開いて頂こう。後1時間と少し残っているが、その時間内に『生ける屍の水薬』に取り組んで頂く。そして最もよく出来た者にこの愛すべきフェリックスを与える。さあ始め!」
なるほど、この薬によって全体の集中力を高めようと考えているのか。どうやら、アンブリッジなどに比べれば幾分かマシなようだ。
普段ならあまり真剣に聞いてないドラコやロン達も作り方を必死になって聞いている。
一通りの作り方を聞いた後、私達は一斉に鍋に向かった。
教室では私を除く全員が必死になって鍋とにらめっこしている。
それもそうだろう。12時間だけとはいえ、幸運が約束された薬だ。必死になるのも無理はない。
さて、私も適当に作業を進めるとしよう。
途中、こっそりとだが、手持ちの、マンドラゴラの根と一角獣の角、イモリの黒焼きをこっそりと加えてみた。
その結果、どうやら私の作った『生ける屍の水薬』とハリーが作った『生ける屍の水薬』が選ばれたようだ。
2つも優秀な『生ける屍の水薬』が出来るとは予想していなかったのか、スラグホーンは頭を抱えている。
「ハリー、アンタにあげるわよ」
「え? 良いのかい!」
「私はそんな薬に頼る程、落ちぶれて無いわ」
私がそう言うと、教室全体が静まり返った。
「じゃ…じゃあ、遠慮なく」
少し複雑そうな表情のハリーは不機嫌そうな表情のスラグホーンから、フェリックス・フェリシスの小瓶を受け取っている。
それにしても、ハリーが選ばれるのは予想外だった。
あまりこの手の授業は得意ではないと思っていたが…
「どうやったんだよ?」
「秘密さ。ラッキーだったんだよ」
ロンがハリーに問い詰めているが、どうやら、はぐらかされた様だ。
フェリックス・フェリシスてベヨネッタが飲んでも効果が出なそうですよね。