そのせいか、かなり空気になっている様な気が…
僕は、教室から出て行くセレッサの後姿を見送った後、ポッターに目をやる。
奴は、先程セレッサから譲り受けたと言っても過言ではない、フェリックス・フェリシスの小瓶を片手に、楽しそうに話している。
何とも腹が立つ。
あまりにもイライラするので、急ぐ様に教室を出ることにした。
さて…
「ふぅ…」
ある程度教室とポッターから離れた後、僕は溜息を吐き、落ち着きを取り戻した。
何としても、必要の部屋にある『姿をくらますキャビネット』を修復させなくては…
どうやら、必要の部屋にある『姿をくらますキャビネット』は
これを修理し、死喰い人をホグワーツに連れ込み、ダンブルドアを暗殺するのが僕の任務だ。
「はぁ…」
再び僕は溜息を吐く。
聞いた話だが、闇の帝王の側近である、ロプトとセレッサには何か因縁があるらしい。
まぁ、奴が天使に指示を出しているのを何度か見たことがあるから、天使がらみの関係なのだろう。
そうなると、やはりセレッサに相談した方が良いだろうか…
いや、それは駄目だろう。
只でさえ、彼女を暗殺しようとした事を口にしてしまった上、彼女と敵対している人物とまで関りを持っていると知れたら…
想像するだけでも恐ろしい…
その上、ボージン・アンド・バークスで毎日の様に、死喰い人達によって、修理状況の報告の様に、物を入れては無事届くのかどうかチェックされている。
ワザと遅らせれば、恐らくバレるだろう…
「はぁ…」
今学期が始まってから、何度押しつぶされそうになっただろうか…
「そうだ…」
ここで、妙案を思いついた。
もともと、死喰い人がホグワーツに来る理由は、ダンブルドアの暗殺の手助けの為だ。
つまり、『姿をくらますキャビネット』を修理せずとも、ダンブルドアを暗殺すれば事が済むということだ。
「それしかない…」
しかし…どうやってだ…
「はぁ…」
頭が痛くなってきた。
このままでは埒が明かないと考えた僕は、いったん思考を停止させる。
「あとで、甘い物でも食べるか…」
糖分を補給するべく、僕は移動を開始した。
数週間後、大広間に居るロンは死んだような表情をしている。
「どうしよう…」
どうやら、クィディッチ関連で不安要素があるようだ。
ロンはキーパー志望のようだが、まぁ、クィディッチに興味のない私からすれば、どうでもいい事だ。
だが、結果としてはロンは無事キーパーに選ばれた様だ。
安心しきっているのか、談話室でふんぞり返りながら、ハリー達に自慢している姿を見せている。
まったく、今朝の惨状とはえらい違いだ。
「ねぇ、ハーマイオニー。この呪文聞いたことある?『セクタムセンプラ』」
「聞いた事ないわ。ハリーその本まだ持っていたの? 早く返すべきよ」
数年前と同じように、ハリーは最近ある本を常に持ち歩いている。
どうやら、最初の『魔法薬学』の授業で手にした教科書らしいが、所々加筆がされており、『半純潔のプリンス』の蔵書らしい。
「ちょっと見せなさいよ!」
「駄目だよ! 本が傷んでいるから…人には見せたくないんだ!」
余程この本が気になるのか、ハーマイオニーはハリーから本を奪い取ろうとしている。微笑ましい光景だ。
数日後、ハリー達はホグズミード村へ行くらしい。
私も誘われたが、あの村に特に思い入れはないので、断った。
正直、あのバタービールという飲み物はどうも苦手だ。
ハリー達がホグズミードから帰る時、事件が起こったようだ。
グリフィンドール生の一人が、呪いのかかったネックレスに触れ、死ぬところだったそうだ。
幸いにも、手袋をしていたおかげか、一命は取り留めたが、病院送りになったそうだ。
しかし、このネックレスは本来、ダンブルドアに届けられる予定だった物のようだ。
そうなると、今回狙われたのは、ダンブルドアということだ。
あの老人のことだ、いろいろと恨みを買っているだろう。
「くそっ!」
僕は一人必要の部屋で悪態をついている。
マダム・ロスメルタに『服従の呪文』をかけて、ケイティ・ベルを使い、ダンブルドアに渡すように頼んだが…結果的に彼女が触れて呪いが発動してしまったようだ。
予想外の行動に、計画が狂ってしまった…
「ふぅ…」
一度、深呼吸をして。落ち着きを取り戻す。
今は、与えられた任務をこなすことが最優先だ。
「……」
僕はゆっくりと、『姿をくらますキャビネット』を見上げる。
まだ、修理は4割ほどしか完了していないが、それよりも前にダンブルドアを暗殺すれば何の問題もない。
「よし…」
次の手は考えてある。
後はそれを実行に移すだけだ…
ここ数日、ハリーはダンブルドアにちょくちょく呼び出されている。
どうやら、『個人授業』を受けているようだ。
それに伴ってか、ハリーはスラグホーンの授業に積極的に参加するようになり、かなり媚を売っているように見える。どうやら、これもダンブルドアが仕向けた事のようだ。
まったく、あの老害は何を考えているのやら…
「やぁ、ベヨネッタ」
そんな事を考えていると、私の背後からハリーが声を掛けてきた。
「かなり上機嫌ね、何かあったの?」
「いや、大した事じゃないんだけど、今度スラグホーン先生のディナーパーティーに参加することになったんだよ」
「それも、ダンブルドアの指示かしら?」
「まぁ…そんなところ」
ハリーは苦笑いをしながら、周囲を見回している。
「それで…良かったら君も――」
「他を当たって頂戴。ハーマイオニー辺りが良いんじゃないかしら? 喜んで行くと思うわよ」
ハリーが言い終えるより前に、遮る様に私が言うと、数回頷いている。
「ハーマイオニーも誘われているんだ。ロンは誘われなかったけどね」
ハリーは少し苦笑いをしている。
「ところで、ベヨネッタ。一つ聞きたいんだけど」
「他に何の用かしら?」
ハリーは先程とは違い、神妙な面持ちになる。
「数日前、ヴォルデモートに関するダンブルドアの記憶を見せてもらったんだ。そこで、子供の頃のヴォルデモートが言っていたんだ…」
「何を?」
「『僕には神様が付いている。神様は将来、天使を僕に遣わせてくれる』って」
「神…天使…」
「そう、その時、ダンブルドアは何の事かは分からなかったらしいんだけど、もしかしてそれって…」
恐らくハリーが考えている通り、天使達はヴォルデモートが幼少の頃から接触していたようだ。だがなぜ…
「ダンブルドアもこれ以上は思い出せないって言っていた。君は何か心当たりはない?」
「そうね…無いこともないけど、あまり碌なものじゃないことは確かよ」
「そうか、何かの手掛かりになれば良いんだけどね…」
ハリーは先程の表情からは考えられないように落ち込んだ表情をしている。
その時、時間を告げる鐘が校内に響いた。
「もうこんな時間だ。じゃあ僕は次の授業があるから」
「えぇ、私もそうするわ」
私は、ハリーとは別れ、先程の事に付いて考える。
恐らく、ヴォルデモートが言っている、神はロプトで間違いないだろう。
だが、混沌の神の力を欲し、私達に打倒された後、『
だが、現に奴は魔法界に存在しており、何度か対峙している。一体これはどういう事なのだろう…
「厄介な事になりそうね」
私は、小さく舌打ちをすると、その場を後にする。
翌朝、ロンは再び死んだような顔をしている。
どうやら、今日のクィディッチの試合でキーパーをやるのが不安なようだ。
「とりあえず、これでも飲めよ」
「うん…」
ハリーはロンにグラスに入った飲み物を差し出している。
一瞬だが、そこに何か混ぜたようにも見えた。
「朝から酷い顔ね、だからドリンクに何か混ぜたのかしら?」
私がワザとらしく聞くと、ハリーもワザとらしくフェリックス・フェリシスの小瓶をポケットへと仕舞い込んだ。
「フェリックス・フェリシス…ロン、飲んじゃダメ…よ…」
ハーマイオニーが言い終えるより前に、ロンはグラスの中身を飲み干した。
「行くぜ! ハリー!」
「あぁ!」
ハイテンションな2人は大広間から出て行った。
その後のクィディッチの試合ではロンは大活躍だった。
ロンのおかげでこちらからの失点はなった。
まったく調子のいい男だ。
試合が終わった後、談話室でパーティーが行われた。
皆がロンを褒めたたえており、当人はとてもうれしそうだ。
「貴方のせいよ、ハリー。後、止めなかったベヨネッタもね」
「何の事かしら?」
「さぁ?」
ハリーはワザとらしく、未開封のフェリックス・フェリシスの小瓶をハーマイオニーに見せつけている。
「栄養剤くらいは問題ないはずよ」
「貴方たち…騙したのね」
「さぁ?」
私とハリーはワザとらしく首をかしげる。
その時、談話室から歓声が上がった。
そこでは、ロンが不細工なグリフィンドール生とキスをしている最中だった。
「やるわね」
私が軽く口笛を吹くと、ハリーも大はしゃぎしている。
「ロン…」
それを見たハーマイオニーは会場から抜け出していった。
「あれ…ハーマイオニー?」
ハリーが振り返り追いかけようとするが、私がそれを制止する。
「一人にさせておきなさい。女にはそういう時もあるのよ」
「そうかな…」
ハリーは複雑そうな表情で、周囲を見ていた。
ここ数週間、ハリー達の関係はギクシャクしている。何とも微笑ましい。
「あー…ベヨネッタ…」
複雑そうな表情のハリーがぎこちなさそうに声を掛けてきた。
「フッ、かなり疲れたような顔しているわね」
「まぁ…いろいろあるんだよ」
「そのようね、ところで要件は?」
「あぁ、実はね、クリスマスにスラグホーン先生がまたパーティーを開くことになったんだ。そこで、君も良かったらどうかなって」
「パーティーね…ああいうタイプが開くパーティーなんて碌なものじゃないわ」
私が言い捨てると、ハリーは必死に食らいついて来る。
「頼むよ。他に当てがなくてね」
「残念ね、他を当たって頂戴」
「はぁ…仕方ない…ルーナでも誘うよ」
肩を落としたハリーはその場をゆっくりと後にした。
クリスマス休暇中、私はジャンヌと共にたまった仕事を片付け、バーで乾杯している。
「それにしても、こちらは平和だな」
「まったくね、向こうじゃ大騒ぎみたいよ」
私はテーブルの上に置かれている、日刊予言者新聞を指差す。
「『魔法省で行方不明者が続出』か。物騒なものだな」
「そうみたいね。これもヴォルデモートの仕業のようね」
「何を企んでいるのやら…」
「さぁ? ダンスパーティーの招待じゃないことは確かね」
私は、飲みかけのカクテルを飲み干し、もう1杯要求する。
休暇明け、ハリー達は騒いでいる。
どうやら、ロンの家が死喰い人に襲撃されたようだ。
よく生きていたものだ。
「危ない所だったぜ」
ロンは自分が生き残っている事を自慢げに語っている。
そんなロンを見てハーマイオニーは溜息を吐いている。
だが、この1件でハーマイオニーとロンの関係は進展したようだ。
吊り橋効果というやつか。
そして、数日後。再び事件が起きた。
惚れ薬を盛られたロンが、治療のためにスラグホーンの元を訪れた際、勧められた蜂蜜酒に毒が混ぜられていたようで、死にかけたらしい。
幸いにも、近くにあった『べゾアール石』を飲み込み、大事には至らなかったようだ。だが、『べゾアール石』が無ければ、死んでいたかもしれない。
その事を聞いたロンは、「女のせいで死にかけるなんて」と間抜けな事を言っている。
まぁ、良い薬になるだろう。
だが、ここまで立て続けに事件が起こると、周囲も騒ぎだす。
最初は、スラグホーンが疑われたが、ロンに渡した酒は、元々ダンブルドアに渡す予定だった物らしく。
結果的に、ダンブルドアを暗殺しようとしている者が居るという事しか分からなかった。