数日後、ハリー達は談話室で話し合いをしている。
どうやら、ハリーはダンブルドアに与えられていた任務で、スラグホーンから何かを聞きだす必要があるようだ。
「まったく…運が無いみたいだぜ」
ロンがそう呟くと、ハーマイオニーも頷いている。
確かに、ハリーに運がある方とは言えない。あったとしても、悪運だろう。
「運…そうだよ! 運だよ!」
急に騒ぎ出したハリーは、ポケットから、フェリックス・フェリシスの小瓶を取り出す。
「これで、幸運を呼び寄せる!」
ハリーは言い切ると同時に、フェリックス・フェリシスの小瓶の栓を開け、中身を一気に飲み干した。
「どう?」
ハーマイオニーがおもむろに聞くと、ハリーは立ち上がり、ハイテンションで答えた。
「最高! 最高にハイって奴だ!!」
「まったく、楽しそうね」
「うん!」
私が呆れながら、口を開くと、ハリーはとてもいい返事で答えた。
「スラグホーンは、いつも早めに食事を済ませて、散歩をした後、それから自分の部屋に戻るわ」
ハーマイオニーがスラグホーンの行動を口にする。しかし、いったいどうやって調べ上げたのだろうか?
「わかった…ハグリッドに会いに行ってくる!!」
テンションの高いハリーは全く見当違いな事を口走る。
「え? 駄目よ! スラグホーンと話をするんでしょ!」
ハーマイオニーが扉に向かうハリーに声を掛ける。
しかし、ハリーは振り返ると、テンションが高いまま、口を開く。
「分かっているさ! でもね、今はどうしてもハグリッドの所へ行きたいんだ!」
言い終えると、テンションが高いまま、ハリーは扉の向こうへと消えていった。
「あれ…どう思う?」
「さぁ? 放っておく方が良いわよ」
ハーマイオニーの問いに、私は呆れた様に答えた。
どうやら、フェリックス・フェリシスの効果はあったようで、ハリーは無事、スラグホーンと接触し、任務を果たしたようだ。
そんなある日、私はダンブルドアに時計塔の最上階へと呼び出された。
時計塔の階段を上ると、そこにはダンブルドアとスネイプが何やら話し込んでいる。
「吾輩に多くを求めすぎではありませんか? あまりにも…その聡明な頭脳でお分かりになりませぬか? 吾輩がそれを望んでいないことを」
「思い至ろうが、至らまいが、関係あるまい。もう決まった事じゃよ、セブルス。それに、君は同意した。これ以上話す事も無いじゃろう」
「フン!」
スネイプは、踵を返すと、階段を急ぎ足で降りる。
「お取込み中だったかしら?」
「黙っていろ…」
スネイプは、不機嫌そうに、私の横を通り抜けると、何処かへと消えていった。
「あまり和やかでは無いわね」
「おや…セレッサかの。すまぬの、こんな所に呼び出して」
ダンブルドアは謝罪の心を感じられない、表面的な謝罪を済ませている。
「別にいいわよ。で? 要件は何かしら?」
「少し待つのじゃ」
しばらくすると、ハリーが階段を上り、こちらに近付いて来た。
「おぉ、ハリー。髭が伸びておるぞ」
ダンブルドアは、ハリーの顔を見るなり、いきなりそう指摘した。
「今朝、剃れなくて」
「成長したという事じゃ…じゃが、ワシは未だに君が、あの物置に居た小さな子供に見える。年寄りの感傷じゃよ」
「先生もお変わりないですね」
「君は母親に似て優しいの。皆それに甘えて――」
「長くなるかしら?」
私は、壁に背を持たれながら、ワザとらしく、口に手をやり、欠伸をする。
「すまぬの、年を取ると、すぐこれじゃ…」
ダンブルドアは苦笑いをすると、私達を見据える。
「今回、君達を呼び出したのは、ワシがこれから向かう旅に同行して欲しいのじゃ」
「アンタがツアーガイドって訳?」
「まぁ、そんな所じゃ。スリル満点の危険な旅じゃよ」
ダンブルドアは冗談ぽく笑っているが、その目は真剣だ。
「故に、ワシの言う事には従ってもらいたい…ワシが、逃げろと言えば逃げ、隠れろと言えば隠れるのじゃ。分かったの、ハリー」
ハリーはダンブルドアの目を見ながら、数回頷いた。
「まぁ、セレッサ。君に関しては、自分が思う最良の行動をしてくれれば良いぞ」
「そうさせてもらうわ」
ダンブルドアはゆっくりと腕を差し出す。
「掴まるのじゃ」
「でも先生。学校で姿現しは出来ない筈じゃ…」
「まぁ、ワシは特別じゃよ………例外も居るようじゃがな」
ダンブルドアは私を睨み付けるが、気にする事無く、その腕を取る。
「では行くぞ」
次の瞬間、私達は何かに引っ張られる様に、別の場所へと消えた。
「ここは?」
ハリーが周囲を見回して、混乱している。
それもそうだろう。私達が現れた場所は、荒海の中に佇む、小さな岩場の上だ。
「分霊箱はどこに?」
「分霊箱?」
「今回の探しものじゃよ、詳しくは移動しながら話そう。向かうのはあそこじゃ」
ダンブルドアは近くにある、洞窟を指差した。
「つまりは、ヴォルデモートは分霊箱を何個も作ったって訳ね」
「その通りじゃ」
「道理であんな、ブサイクになるはずだわ」
私のジョークにハリーは苦笑いしている。
「ここがそうじゃ…やはり、この場所には魔法の痕跡がある」
ダンブルドアは巨大な岩盤の前で足を止めると、小さなナイフを取り出した。
「通る為には通行料が必要じゃ…」
そう言うと、ダンブルドアは自らの手にナイフを突き立てた。
「先生!」
「これは、通行料じゃ。通るものを弱らせるのが狙いじゃよ」
「それなら僕が――」
「ならぬ…」
ダンブルドアは落ち付いた口調で、ハリーの言葉を遮る。
「君たちの血は、ワシの血よりも貴重じゃ」
ダンブルドアが壁に血を塗り付けると、仕掛けが作動したのか、洞窟が開けた。
「行くぞ」
私達は、暗い洞窟をゆっくりと進んでいく。
それにしても、足場が悪すぎる。ヒールで来るべきでは無かったか…
「ヴォルデモートは簡単に見つかるような場所に隠したりはしない筈じゃ…恐らく、防御の仕掛けがあるはずじゃ」
しばらく歩くと、そこは巨大な地底湖の様になっており、湖の中心に、台座の様な物が鎮座している。
その周囲には、様々な石像が鎮座している。
「あれじゃ」
ダンブルドアは、その台座を指差しながら、考えを巡らせている。
「さて…問題はどうやって渡るかじゃ…」
ダンブルドアは杖を軽く振ると、鎖の付いた船が手元にやって来た。
「これを使おう…じゃがこれは二人乗りじゃ」
「めんどくさいわね」
私は、軽く指を鳴らすと、ウィッチタイムを発動させる。
ウィッチタイムの中、私は水面を悠々と歩き、台座の場所まで移動する。
到着と同時に、ウィッチタイムを解除し、ハリー達に声を掛ける。
「早くいらっしゃい」
「あれって…」
「ワシにもわからん…」
二人は、疲れた様に船に乗り込み、こちら側にわたって来た。
「分霊箱はこの中に…」
「あぁ、間違いないじゃろう」
疲れ果てた2人は台座の中を覗き込んでいる。
「それがそうなら、早くしなさい。私も暇じゃないのだけど」
「そうじゃの…」
私も、台座の中を覗き込むと、そこには黒い水が張られており、その中にネックレスの様な物が沈んでいる。
ダンブルドアは黒い水を見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「これを取り出すには…総て飲まねばならぬ…」
「あまり、体に良さそうには見えないわね」
「恐らく毒液じゃよ…じゃが…それしか方法は無い…」
ダンブルドアは震える手で、近くにあったゴブレットに手を掛けようとする。
その時、周囲を神々しく、忌々しい光が包み込んだ。
その光を浴び、周囲の石像にヒビが入り、中から、巨大な爪を持つ4対の天使、グレイス&グローリー、そして、グラシアス&グロリアスが姿を現した。
グレイス&グローリー
紅い装甲を身に纏い、炎を纏うグレイスと蒼い装甲を身に纏い、雷を操るグローリーは双子の天使で、常に二体一組で神を護衛している。この天使は共に気性が荒く、天使の兵卒を率いる軍神として描かれることも多い。その腕に携えた巨大な爪の如き神具が、彼らのその荒々しさを象徴していると言えよう。人間たちの間で、双子がほかの人間よりも霊力が強いと信じられているのは、この天使たちの祝福があるためと信じられている。
グラシアス&グロリアス
天使の九階級における最上位の天使「熾天使」で、神への愛と情熱を司る、純白の鎧を纏ったグラシアスと、漆黒の鎧のグロリアスは、二体一組でいることが多いとされるが、その存在自体が伝説的であり、実在するかどうかも含めて諸説ある。強大な神力を持つはずの彼らが、魔の軍勢との戦の場に現れた記録がないのは、彼らが力を振るえば世界が崩壊するからとも、誰も生き残らず伝える者がいないからとも言われる。
「これは…」
「こんなに警備が厳重なんて、当たりみたいね」
私は、4対の天使に向かい合い、銃を構える。
「下がってなさい」
私が、背中越しに、指示を出すと、2人は大きく頷き、安全な所へ避難した。
「さて、これで遊べるわね。誰から相手してくれるのかしら?」
台座に腕を置き、片手で銃を軽く煽り、挑発すると、4対の内の2体。グレイス&グローリーが、炎と雷を纏った爪を構え、私を引き裂こうと、飛び掛かって来た。
「惜しいわね」
爪が私の体を切り裂く寸前、後方に飛び退き、ウィッチタイムを発動させる。
両手の銃で、グレイスの胴体を撃ち抜くと同時に、グローリーにウィケットウィーブによる、ストレートをお見舞いする。
「「ぎゃ!」」
ウィッチタイムが解除されると同時に、グレイスは地面に膝を付き、グローリーは後方へ吹き飛ばされる。
「良い物をあげるわ」
膝を付いたグレイスの頭を掴むと、そのまま、毒液の満ちた台座の中に突っ込む。
「んぐぐぐう!!」
「遠慮はいらないわ、いっぱい飲みなさい」
毒液を無理やり飲まされているグレイスはその体を、ジタバタさせている。
数回同じ行動を繰り返すころには、グレイスの抵抗も弱まって来た。
「ご苦労様」
ある程度、毒液の量が減ったのを確認し、グレイスの後頭部を銃で撃ち抜く。
それと同時に、グローリーが雷を纏った爪を、私目掛け飛ばしてくる。
「無駄よ!」
飛んできた、爪をマハーカーラの月で弾き返すと同時に、足に装備したアルーナをグローリーに絡ませる。
「アンタには水底がお似合いよ」
足を思い切り引き、グローリー水面に叩きつけ、勢いそのまま、水底に沈める。
「さて、次はアンタ達かしら?」
「「グラァアァアアア!」」
グラシアス&グロリアスが同時に咆哮を上げると、同時に飛び上がる。
グラシアスは力を溜めた、爪を地面に叩きつけると、稲妻が周囲に飛び散り、私に襲い掛かる。
「フッ」
迫り来る稲妻をバク転で回避するが、そこを狙ったかのようにグロリアスが炎を纏った爪を回転させながら、迫り来る。
「邪魔よ!」
グロリアスに向け、銃を乱射する。
「グラァ!」
グロリアスはその場で回転を止めると、腕に装備した分厚い爪を体の前に構え、迫り来る銃弾を受け流した。
「やるじゃない」
ゆっくりと、銃を仕舞い込み、ポーチから、チェルノボーグを取り出し、眼前に構える。
「さぁ、来なさい」
私の挑発に乗ったグラシアスが周囲の壁を飛び回りながら、素早く近寄ってくる。
「そこね」
迫り来るグラシアスにチェルノボーグの鎌を突き付け、手元のレバーを引く。
「ギャぁ!」
チェルノボーグから放たれた3枚の刃は、至近距離まで迫り来ていたグラシアスに3枚ともすべて突き刺さり、その胴体を切り裂いた。
「何時までそこで見ているの? かかってらっしゃい」
チェルノボーグを仕舞い込み、銃を左右に振り、グロリアスを挑発する。
「グアァァアァアアア!!」
怒り狂ったグロリアスが両爪から炎を撒き散らしながら、突進してくる。
私は、両手の銃を眼前に構え、一斉に発射する。
「グアァァアァアアア!」
グロリアスは迫り来る弾丸を避けようとはせず、総てその身で受け止め、仮面が破壊されながらも、突っ込んで来る。
「なかなかやるじゃない」
眼前まで迫り来るグロリアスに対し、私はヒールストンプをお見舞いし、ウィケットウィーブによるマダムの足で踏み付ける。
「ぐがぁ…」
マダムに踏み付けられたグロリアスは苦しそうな声を上げながら、恨めしそうにこちらを睨み付けている。
「惜しかったわね、じゃあ、ご褒美をあげるわ」
私は、台座に置かれているゴブレットを手に取り、中の毒液を掬う。
「さぁ、口を開けなさい」
中腰になり、グロリアスの頭部を掴み、無理やり顔を上げさせ、口を開かせる。
「こぼしちゃダメよ」
「んぐぐぐ!! う!」
口に無理やり毒液を流し込まれたグロリアスは苦しそうにその身を震わせている。
「まだまだあるから、たくさん飲みなさい」
再び台座から毒液を掬い取り、同じように口に流し込む。
「ンぐぐ!!」
グロリアスはゴブレットの中身を飲み干し、先程よりも力無く、項垂れている。
私は、再びゴブレットの中に台座の毒液を掬いとる。どうやらこの1杯で綺麗に中身が終わる。
「これで終わりね」
私は、ゴブレットをゆっくりと持ち上げ、グロリアスに見せつける。
「あら…そうだわ」
ゆっくりと振り返り、ダンブルドアにゴブレットを軽く掲げる。
「アンタも飲むかしら?」
「いいや…ワシは遠慮しよう」
「僕もいいや…」
「そう、良かったわね。全部アンタの物よ」
私は、最後の1杯をグロリアスの口に流し込む。
「ごっ…っぐぐ…」
「はぁい、おしまい。じゃあ…さようなら」
先程までのご褒美にグロリアスの脳天に銃を押し付け、弾丸を放つ。
「ギャッ!」
脳天を撃ち抜かれたグロリアスは、小さく悲鳴を上げると、その場に倒れ込んだ。
「さて…これがお目当ての物ね」
私は、台座からネックレスを取り出すと、ダンブルドアに投げ渡す。
「悪趣味なネックレスね」
「まぁ…趣味はともかく、これが目的の品じゃ…感謝するぞセレッサ」
「僕…何の為に連れて来られたんだろう…」
ハリーの疑問をダンブルドアは軽く流し、ホグワーツへと、姿現しをする事にした。
グラシアス&グロリアスにはどれ程苦しめられたか…
初見で何度痛い目を見た事か…