果たしてホグワーツはどれだけ原形を保てるのでしょうか?
ハイウェイを抜け、側道を進むと大きな原っぱへと出た。
「あそこだ! あの家だよ!」
「よっしゃ! ぶっ飛ばすぞ!」
ルカは、アクセルを全開にし、速度を最大にまで振り上げた。
「もうすぐだぜ! 坊主!」
「よかったぁ…」
ハリーの安堵の声がスピーカー越しに聞こえる。
「あれ…え? ちょっと?」
「え? どうしたの?」
スピーカーから聞こえる声が、何やら不穏な事を伝えて来る。
「おかしい…ブレーキが効かない!」
「ちょっと! やばいって!」
ルカの必死な声が響き渡るが、無情にも装甲車と家との距離はどんどんと近寄って行く。
「うわぁぁあああああっぁぁ! 止まらねぇぇえぇえ!」
「あぁぁぁぁあぁぁぁぁあああぁああ!!」
2人の声をスピーカーから響かせながら、装甲車は、原っぱの真ん中に立っている隠れ家に突っ込んだ。
「えぇ!! なに! なんなの!」
車が突っ込んだところと反対側の扉が開かれ、中から杖を構えたロンの母親が姿を現した。
「いてて…まったく…災難だぜ…」
「貴方誰なの!」
「えぇ! ちょっと待てよ奥さん! 俺は怪しい者じゃ!――」
「黙りなさい!
「うぉお! あぶっね!」
放たれた魔法は、ルカに直撃する寸前で、霧散し消え去った。
どうやら、ロダンから何かアイテムでも貰っているのだろう。
「どういうこと?」
魔法の効果が無く、焦っているロンの母親に、装甲車から這い出して来た、ハリーが駆け寄った。
「落ち着いてよおばさん! この人は敵じゃない!」
「えぇ?!」
ハリーの言葉を聞いて、さらに混乱したようだ。
「おいおい…頼むぜ…」
ルカは呆れた様に首を左右に振っていた。
私はバイクを降りると、スタンドを立て、隠れ家へと入って行った。
数十分後、隠れ家に先程のメンバーが姿を現した。
姿を現す度に、壁に激突している装甲車を見て唖然とした表情をしていた。
次の日、ダンブルドアが魔法で穴を塞いだ様で、その場所は綺麗になっていた。
「さて…皆集まってくれ」
不死鳥の騎士団のメンバーと、ハーマイオニー達がその場に集まった。
ルカには、これ以上の深入りは危険だという事で退避して貰った。
「今後の予定じゃが、まずは分かる限りの、分霊箱の破壊に努めたいと思う」
「でも先生。その分霊箱はどこにあるんですか?」
「おおよその見当は付いておる」
ダンブルドアがそう言うと前回、回収した、スリザリンのロケットを取り出した。
「これは、スリザリンのロケットじゃ。じゃがこれは本物ではない」
「えぇ!」
ハリーが大声を上げた。
それもそうだろう。苦労して、死にかけてまで手に入れた物が偽物なら、そんな反応にもなるだろう。
「これは、『R.A.B』という人物が、我々より先に、ヴォルデモートから分霊箱を奪い取り、偽物として置いたものじゃ」
「R…A…B…」
その名前を聞いて、シリウスが悲しそうに呟いた。
「R.A.B…レギュラス・アークタルス・ブラック…」
「なんじゃと?」
シリウスは更に言葉を紡いだ。
「私の弟だ…」
「シリウスの…弟?」
ハリーは驚いたように、シリウスに聞いている。
「そうだ。アイツは死喰い人に入って…そして死んだ…」
「じゃが、このロケットを置いたのは、君の弟なのじゃろ?」
ダンブルドアがキツイ口調で、シリウスを問い詰めている。
「少し…待ってくれ…『クリーチャー』!」
シリウスが大声を上げると、その場に1体の屋敷しもべが姿を現した。
「何の御用ですかな?」
「弟から…何か預かっていないか…ロケットの様な物だ」
「はい、預かっております」
「なに! すぐに持って来い!」
「かしこまりました」
屋敷しもべは軽く指を鳴らすと、その場から消え去り、数分後にまた姿を現した。
「こちらがそうでございます」
その手には、スリザリンのロケットがしっかりと握られていた。
「これを…弟が…」
「弟君はとても勇敢な方でいらっしゃりました。このロケットを私めに託されると、すぐに破壊しろとお命じになられたのですが、どのような手を使っても破壊できませんでした」
「そうか…ご苦労だった…下がっていいぞ」
シリウスがそう一言呟くと、屋敷しもべは何処かへと消えていった。
「これで…3つ目じゃな…」
ダンブルドアはロケットを受け取ると、ポケットへ仕舞い込んだ。
「破壊しないんですか?」
ハリーが、ダンブルドアの行動を疑問に思い、口を開いた。
「破壊するにも、方法が分からん。だが手はある」
「それは?」
ハリーが疑問の声を上げると、ダンブルドアはゆっくりとハリーを見つめた。
「ハリーよ。君は透明マントを持っておるな?」
「透明マント? はい。持っていますが」
「それをワシに譲って欲しい」
「え?」
ダンブルドアのいきなりの要求に、ハリーは戸惑いを隠せていない。
「どうして、透明マントが必要なんですか?」
「取引じゃよ。分霊箱の破壊方法を知って居る男とのな」
ダンブルドアはそう言うと、私を睨み付けている。
「フン」
私は軽く首を振り、その視線を避ける。
「……分かり…ました」
「すまないの…」
ダンブルドアはただ一言、そう呟いた。
数日後、ダンブルドアは片手に金貨の詰まった袋、もう片方の手に、透明マントを持って、バーに現れた。
「よぉ、来たか。で? 要件は何だ?」
「先に蜂蜜酒を1杯貰おうかの」
ロダンは鼻で笑うと、ダンブルドアの前に、蜂蜜酒の入ったゴブレットを置いた。
「リコリスの香りがするのぉ。いい香りじゃ」
ダンブルドアはゴブレットを傾け、蜂蜜酒を半分ほど飲み干した。
「さて、本題に入ろうかの」
ダンブルドアはゆっくりと、テーブルの上にスリザリンのロケットを置き、ロダンを見据えた。
「これの破壊方法を教えて欲しい」
「別に構わないぜ。取引の材料は有るんだろうな」
「ここにあるぞ」
ダンブルドアはそう言うと、テーブルの上に透明マントを置き、両手を組んだ。
「これで文句は無かろう」
「どうやら本物の様だな」
ロダンは透明マントを手に持つと、ニヤニヤと笑いながら、眺めている。
「その薄汚い布切れが、死の秘宝なのか?」
ジャンヌが詰まらなそうに呟くと、ロダンは笑い声を上げた。
「そうだぜ、これで全部が揃った」
ロダンはそう言うと、テーブルの上に『ニワトコの杖』『蘇りの石』『透明マント』を置き、眺めている。
「まるで悪趣味なコレクションだな」
「そうね、あまりいい趣味とは言えないわね」
「見た目はあれだが、マニアからすればかなりの宝だぜ。それに人が持つには荷が重すぎる」
ロダンは笑いながら、透明マントで残りの秘宝を包み、店の奥に仕舞い込んだ。
「さて…こちらは約束を果たしだぞ。次はそちらの番じゃ」
「そうだったな。ちょっと待ってな」
葉巻に火をつけたロダンは、ゆっくりと煙を吐き出す。
「まぁ、見てな」
その瞬間、ロダンの口から蛇の鳴き声の様な声が漏れると、スリザリンのロケットが蓋を開いた。
「さて、仕上げだ」
ロダンは1度葉巻を大きく吸い込むと、その火をスリザリンのロケットに押し付けた。
「ヴァアダダダダダアアアアア!!」
その瞬間、スリザリンのロケットから、黒い煙があふれ出し、断末魔を上げながら、何処かへと消えていった。
「ふぅ…これが方法さ」
「どういう事じゃ…」
ダンブルドアは唖然とした表情で、壊れたスリザリンのロケットを見つめていた。
ロダンは親指に紫色の炎を灯すと、ゆっくりと口を開いた。
「『悪魔の炎』だ。これならお前達でも使えるんじゃないか?」
「『悪霊の火』なら使えるがの…」
「まぁ、似たようなもんさ」
フッ、っと炎を消して、ロダンはにんまりと笑って居る。
「これで…道が開けた」
ダンブルドアはゆっくりと立ち上がると、テーブルに置かれていたゴブレットの中身を飲み干した。
「ぷはぁ! さて、ワシはこれで失礼しようかの」
ダンブルドアはそう言うと、店を後にした。
数日後、私のホグワーツ生活最後の年が始まろうとした。
「今年で終わりか、案外呆気なかったな」
「そうね、まぁ…良い暇潰しにはなったわ」
私は、ジャンヌからポーチを受け取ると、小脇に抱えた。
「今年は刺激的になるだろうな」
「何でそう言えるのかしら?」
「フッ、お楽しみさ」
ジャンヌは意味深な笑みを浮かべると、グラスを傾けている。
数分後、私がキングスクロス駅に到着すると、闇の帝王が復活したにもかかわらず、普段と変わらぬ人混みだった。
いや、むしろ復活したからこその混雑なのかもしれない。皆『
「相変わらず混んでいるわね」
軽く呟き、ホグワーツ特急に乗り込むと、背後から声を掛けられた。
「やぁ、セレッサ。久しぶり」
「ドラコじゃない、久しぶりね。調子どう?」
「フッ、まぁまぁさ。僕の席が空いているんだ。来ないか?」
「良いじゃない。そうするわ」
私はドラコの後を追う様に、コンパートメントに入って行った。
「少し痩せたんじゃない?」
「ハハッ…そうかもね。なんせ闇の帝王を欺かなきゃいけないからね」
ドラコは乾いた笑みを浮かべながら、コンパートメントの椅子に腰を掛けた。
「父上も上手い事立ち回っているみたいさ。闇の帝王は死喰い人にすら心を開かないからね」
「そうなのね。やっぱり小さな男ね」
「そんな事言えるのは君だけさ。皆が帝王を恐れているからね。そのおかげで、巨人族や狼男たちとの仲はあまり良くないようだ」
「そうなのね」
「あぁ、まぁ、天使達が居るから、あまり痛手では無い様だけどね。それより…」
「なによ?」
「どうやら、魔法省の半数が死喰い人に加担している様だ、どうも『ラグナ信仰』と呼ばれる宗教を根付かそうともしている様だ」
「まさか…」
「そのまさか…さ。父上の話では、
「そう…」
まさか、魔法省が『ラグナ信仰』を根付かせようとして居るとは思わなかった。
『ラグナ』とは光の世界、天界を意味している。
つまり、天使を始めとした、天界の連中を信仰するという事だ。
そんな吐き気がする世界にさせる訳にはいかない。
「まぁ…大臣は反対している様だけどね」
ヴォルデモートの下で情報収集を行っているのは、かなり精神を使う様で、ドラコは疲れた様に溜息を吐いている。
「そういえば、今年も闇の魔術に対する防衛術の教員が変わるみたいだ」
「そうなの? 毎年変わっているわね」
「そうだね。スネイプ先生は魔法薬学に逆戻りしたみたいさ」
「案外あっちの方があっているかもしれないわね」
「そうだね」
それにしても、毎年教員が入れ替わるのは異常だろう。それこそ呪われているのではないだろうか…
スネイプは魔法薬学に逆戻りです。
一体誰が、闇の魔術に対する防衛術の先生になるんでしょうね?