ここら辺から、魔法界に被害が出始めますね
トロールを吹き飛ばした後、しばらく道なりに進むと、巨大な扉が数多く並んでいる場所に着いた。
「ここが地下金庫だ」
シリウスはそう言うと、ある金庫の前で立ち止まった。
「これが、ベラトリックス家の金庫だな」
「ならさっそく入ろうよ!」
「待て!」
金庫の扉を開こうとするハリーをシリウスが制した。
「仮にもここはグリンゴッツだ。恐らく扉にも何か仕掛けがあるはずだ」
「そんな…」
ハリー達は、金庫を目の前にして、動けなくなっている。
「まったく…邪魔な扉だ」
「そうね。なら、やる事は一つね」
私達は、拳を構えると、背後にマダム達の拳が現れる。
そのまま、2人同時にストレートを放ち、金庫の扉をぶち破る。
「さぁ、空いたわよ」
「あ…あぁ」
ハリーはゆっくりと扉を潜り抜けていった。
「他の金庫には何が有るんだ?」
「そうだな。ここら辺一帯はどうやら、死喰い人のメインバンクのようだ」
「ほぉ…そうなのか」
何を思ったのか、キューティー・Jは隣の金庫の扉をぶち破った。
「おい! 何をやっているんだ!」
「どうせ、しょうもない連中の金だ。この私が有益に使ってやるさ」
そう言うと、キューティー・Jは手当たり次第に金庫を漁り始めた。
数十分後、キューティー・Jは周辺にある死喰い人の金庫を全て荒らし終わった頃、ハリーの悲鳴が響いた。
「うわぁぁあああああっぁぁ!」
「どうしたんだ! ハリー!」
ハリーは片手に、小奇麗なカップを持ちながら、大量のカップの波を掻き分けながら出てきた。
「カップに触ったら、増えはじめたんだ!」
「くそっ! これも恐らく罠だろう…逃げるぞ!」
「でも! 逃げるってどこへ!」
ハリーが叫んでいると、入り口の方からグリンゴッツの職員が大量に迫って来た。
「追いつめたぞ! 盗人め!」
「挟まれた!」
「まったく騒がしいな」
「本当にね。さて、用も済んだ事だし、帰りましょ」
その場で軽く指を鳴らすと、召喚用のゲートが開き、巨大な蝙蝠、『ミクトランテクートリ』が現れ、周囲に怪音波を発している。
ミクトランテクートリ
魔界にある無数の洞窟の中でも特に暗い場所に棲んでいる巨大な蝙蝠。飛び去った後、疫病が蔓延するともいわれている。
目の様な感覚器官で霊波を照射し、その反射から目で見るよりも細やかな情報を得る事が出来る。
「なんだこれは!!」
シリウスを始めとした、その場の全員が驚いている中、ハリーが呟いた。
「僕、もう…驚かないさ」
「さて、行くわよ」
私達はミクトランテクートリの背に乗ると、羽ばたき始めた。
「逃さん!」
「うぉ!」
グリンゴッツの職員が魔法を放つと、シリウスを掠める。
シリウスは体を捻り、何とか回避したが、その際に付けていた仮面が外れ、素顔を晒してしまった。
「貴様は! シリウス・ブラックか!」
「まずい!」
「急ぐわよ!」
シリウスは急ぎ、ミクトランテクートリに飛び乗ると、急上昇を始めた。
「待て!」
グリンゴッツの職員が次々と杖を構える。
「邪魔な連中だ」
キューティー・Jは銃を構えると、グリンゴッツの職員目掛けて、引き金を引いた。
「うぉお!!」
杖を構えていた、面々はその場にしゃがみ、頭を低くした。
放たれた弾丸は、彼等の真上で軌道を変えると、ベラトリックス家の金庫の中へと吸い込まれていった。
「さて、行くとするぞ」
急上昇をした、ミクトランテクートリは、次々と隔壁を打ち破り、グリンゴッツの天井をぶち破り、外へと脱出した。
グリンゴッツから脱出した、私達は隠れ家から『姿をくらますキャビネット』を使い、ホグワーツへと戻った。
「戻ったぞ」
「おぉ、帰ったか」
私の隣に立ったジャンヌは普段の姿に戻っている。一体いつの間に…
「それで、首尾はどうじゃ?」
「無事手に入れました!」
ハリーは嬉しそうに、ダンブルドアに小奇麗なカップを手渡した。
「そうか…よくやったぞ」
「そちらはどうでした?」
「無事確保できたぞ。ドラコよ」
「ここにある」
入り口で、背後に取り巻きの2人を連れたドラコは懐から、髪飾りを取り出すと、ダンブルドアに投げ渡した。
「やるじゃない。どこにあったのよ?」
「必要の部屋さ。皆で手分けして探したよ」
ドラコに賛同するように、背後の2人が頷いている。
「へぇ…大変だったんじゃない?」
「大変だったさ…」
ドラコは疲れた表情で口を開いた。
セレッサ達がダンブルドアによって特別休暇を与えらえた日、ダンブルドアの指示で僕達は特別授業という事で必要の部屋の前に集められた。
ちなみにクラッブとゴイルの家庭も死喰い人だが、現状に不満があるようで、こちら側に参加する事を表明した。
「さて、皆集まっておるな」
振りかえると、ダンブルドアとマクゴナガルがこちらに歩み寄ってくる。
「必要の部屋の中に。『ロウェナ・レイブンクローの髪飾り』が隠されているようじゃ」
ダンブルドアはそう言うと、必要の部屋の扉を開けた。
中に入ると、瓦礫の山が広がっていた。
『姿をくらますキャビネット』の修理をしていたのを思い出す。
「この瓦礫の中を探すのですか?」
「左様じゃ」
ダンブルドアは動じることなく、瓦礫の山へと立ち向かっていった。
数時間後
「見つからんのじゃああああああ!!」
瓦礫の山から、ダンブルドアの喚き声が響き渡る。
「どうなっておるのじゃ! 強力な魔法は痕跡を残すはずじゃぞ!!」
やかましい老害は放っておいて、僕も捜索を再開するとしよう。
手元に目を落とすと、巨大なレンチとドリルが瓦礫に埋もれている。
その傍らには、潜水服まで転がっている。
「恐縮じゃが――」
ダンブルドアはうわ言の様に何かを呟いている。
まぁ、気にする事では無いだろう。
様々な瓦礫を掻き分けて、探し続けたが、一向に見つかる気配はない。
2体の筋骨隆々で頭部に穴が開いた石像がマッスルポーズを取りながらプロテインを崇めている物まである。まるで今にも動き出しそうなほどリアルだ。
なぜこのようなものが…
「こうなったら…もう自棄じゃ…」
ダンブルドアは震える手で杖を取り出すと周囲を見回している。
「どうなさるおつもりです?」
「この部屋にあるのは分かっておるんじゃ…ならばすべて焼き払うだけじゃよ」
「ですがそれは!」
「それしかないのじゃ!」
極限までに錯乱したダンブルドアはいつ火を放ってもおかしくない状況だ。
そんな時、クラッブが手を真っ直ぐ付き上げた。
そこには、『ロウェナ・レイブンクローの髪飾り』がしっかりと握られていた。
これで、ダンブルドアが強硬に出る事は無いだろう…
「ふぅ…」
僕は思わず溜息をついてしまう。
「と言う訳さ」
ドラコは先程の状況を語ると、疲れた様に首を横に振っている。
「そう。大変だったわね」
私は、横目でダンブルドアを見ると、目線を逸らしている。
「これで、現状分かる限りの分霊箱はこちらの手に入った…」
ダンブルドアは分霊箱を引き出しにしまうと、溜息を吐いた。
「皆、ご苦労じゃった。しばらく休むが良い」
ダンブルドアは疲れた表情でそう呟いた。
次の日、僕が、死喰い人の会合を前に、日刊予言者新聞に目を通していると、気になる見出しが目に入った。
日刊予言者新聞は大々的な見出しとなっていた。
『グリンゴッツ壊滅! 主犯者はシリウス・ブラックか!」
何とも大々的な一面だ。
しかし。一面は別の記事が飾っていた。
『謎の義賊現る! その名もキューティー・J!』
どうやら、襲撃にあったベラトリックス家の金庫の壁に、キューティー・Jのサインが弾痕で彫られていた様だ。
そして、キューティー・J名義で、死喰い人の被害者家族や、支援団体に大量の寄付金が寄せられたようだ。恐らく死喰い人の金庫から盗んだ金を寄付している様だ。
記事によると、グリンゴッツの建物自体のダメージが激しく、ほぼ壊滅状況だったようだ。
それにしても…キューティー・J…一体何者なんだ…
「どうなっている!!」
闇の帝王が会合に現れるなり、声を荒げている。
「申し訳ございません!!」
ベラトリックス・レストレンジは必死に闇の帝王に許しを懇願している。
「貴様に預けた大切な品も奪われた! それも、シリウス・ブラックにな!! 貴様が殺したのではなかったのか!!」
「確かに、アーチの向こうに吸い込まれるのをこの目で見ました!!」
「だが現に奴は生きている!! ダンブルドアも蘇った! これは一体どうなっている!!」
闇の帝王は一通り喚き散らした後、息を整えている。
「まぁ…良い…まだ全てが奴らに取られた訳ではない…」
そう言うと、ペットのナギニを腕に絡めて、
それにしても、ここ最近、妙にあの蛇を気にかけている…何かあるのだろうか…
「そんなに悠長に考えていて良いのですかねぇ」
ロプトの煽る様な声により、周囲に緊張が走る。
「どういう事だ…ロプト…」
「私はただ、心配しているだけですよ。早い事手を打たなければ、貴方が負ける…とね」
「貴様…」
あまりにも無礼な発言に、周囲の空気が一気に凍った。
「手を打つにも、何か策はあるのだろう? 無策でそのような無礼はするまい」
闇の帝王の冷ややかな声に、ロプトは無関心に微笑むと、口を開いた。
「こちらから打って出ればよいのですよ」
「それは…つまり…」
「えぇ、ホグワーツに攻め込むのです」
「なんだと!」
ロプトの発言に、周囲の面々がざわめきだした。
「貴様、何を言って居るのか理解しているのか?」
「えぇ、百も承知です。ですがこのまま、座して死を待つのもどうかと思いますがねぇ」
ロプトは皮肉っぽく笑うと、指を鳴らした。
すると、背後に大量の天使が現れた。
この天使達は、拉致してきたマグルなのだろうか…
「それに、こちらには十分な戦力があります。何時でも攻め込めるかと」
「フハハハハハ! そうだな!」
それを見た闇の帝王は、嬉しそうに高笑いしている。
「よろしい! ならば貴様の言う通り、近日中にホグワーツに攻め込もう! だがその前にやる事がある!」
「なんです?」
「魔法省を俺様の手中に完全に納めるのだ! そうすればホグワーツの連中も孤立無援だ!」
「素晴らしいお考えです。それがよろしいかと」
ロプトはニヤリと笑うと、何処かへと消えていった。
「フッ…ベラトリックス! 貴様には最前線での指揮を命じる!」
「ありがたきお言葉!」
その言葉に、その場から歓声が上がる。
僕と父上はその空気の中、必死に周囲と合わせ、目立たない様に冷や汗を流すしかなかった。
ワシの目の前には『ロウェナ・レイブンクローの髪飾り』と『ヘルガ・ハッフルパフの金のカップ』が並んで置かれている。
これら2つは、ヴォルデモートの分霊箱だ。
「さて…始めるかの…」
周囲に誰も居ないことを確認し、2つの分霊箱を安全な場所に置くと、杖を振る。
その瞬間、杖の先から強烈な炎『悪霊の火』が吐き出され、分霊箱に襲い掛かった。
炎の中で分霊箱にヒビが入り、砕け散った。
「ヴァアダダダダダアアアアア!!」
それと同時に黒い煙が立ち込め、ヴォルデモートの断末魔が響いた。
「ざまぁみろじゃ…」
ワシは憎しみを籠め、炎の火力を最大にし、塵の一片も残らぬように、丁寧に分霊箱を焼き払う。
「終わったか…」
再び杖を振り、『悪霊の火』を止める。
すると、先程までの熱量が嘘の様に消え去り、寒気すら感じた。
「残るは…」
ワシが知っている分霊箱は後1つじゃ…
それも破壊しなくては…
しかし、ワシの中で躊躇いが生じる…
ワシとしたことが…情でも湧いたか…
「破壊するのじゃ…大勢を救うためには、少数の犠牲は仕方ない…」
ワシは、ワシ自身に言い聞かせる様に言葉を紡ぐ。
そう…致し方ない犠牲…想定範囲内の犠牲…大事の前の小事…コラテラルダメージというやつじゃ…
「あぁ…」
最早、溜息を通り越し、嘆きを溢しつつ、ワシは天を仰いだ。
天使や神なんぞに祈る訳ではないが、今は仰ぐしか逃げ道が無かった。
分霊箱の破壊状況。
トム・リドルの日記
グリフィンドールの剣と同士討ち
マールヴォロ・ゴーントの指輪
ロダンによって破壊される。
サラザール・スリザリンのロケット
ロダンによって破壊される。
ヘルガ・ハッフルパフの金のカップ
ダンブルドアによって破壊される。
ロウェナ・レイブンクローの髪飾り
ダンブルドアによって破壊される。
お辞儀さんのライフも残りわずかですね。