多くの生徒が休み時間を謳歌している頃、必要の部屋に私はマルフォイを呼び出した。
「今日からここで特訓するぞ」
「はい! お願いします!」
マルフォイは勢い良く返事をすると、手慣れた手付きで杖を構えた。
「杖なんぞ仕舞え、奴等には何の意味も無い」
「え…ですが…」
まさに、鳩が豆鉄砲を食ったような表情とはこの事だろう。
今まで信頼していた杖に対して、無意味だと言われれば、そんな顔にもなるか。
「良いから私の言う通りにしろ」
「…はい…」
マルフォイは少し不満そうに杖を仕舞い込んだ。
「奴等とやり合うのなら『コイツ』を使え」
私は持って来た鞄から護身用のハンドガンを1丁取り出した。
もちろん、弾倉から弾は抜いてある。
「これは…」
「銃だ。その中でもハンドガンと呼ばれ、携行に便利だ。まぁ使いやすい形だからな。貴様も見た事くらいはあるだろう」
「えっ…えぇ…スネイプ先生がマグルの武器だと言っていました」
「ほぉ…あの不気味な男が…まぁ、その通りだ。使い方は聞いているか?」
マルフォイは怯えた様に銃を手に取ると、まじまじと眺めている。
「いいえ…わかりません」
「そうか、なら1から教えてやろう」
私は、もう1丁のハンドガンを取り出すと、それを見本にしながら、狙いを付ける、引き金を引くと言った基本的な使い方を教えると、銃弾を装填したマガジンを手に取った。
「コイツが弾だ。気を付けろ。こいつは強力だ。簡単に人を殺せる。使い方は間違えるなよ」
言い終えると同時に、マルフォイから銃を取り上げると、マガジンを装填し。スライドを引きドラコの目の前に置いた。
「は…はい…」
マルフォイは震える手で銃を持ち上げると、引鉄に指を掛けない様にしながら、銃身を眺めている。
「さて、ある程度の使い方が分かった所で、試してみよう」
私は軽く杖を振ると、5mほど離れた先のテーブルの上に空き瓶を置いた。
「あの瓶を撃ってみろ」
「え…」
「怯える必要はない。初めてだ。どうせ当たらん」
「えぇ…」
マルフォイは躊躇いがちに震えた手で、不格好に銃を構えると、引き金を引いた。
「どわぁ!」
その瞬間、マルフォイの腕が大きく跳ね上がり、手からハンドガンが飛び出してしまう。
「いってぇ…」
マルフォイは大袈裟な態度で腕を押さえている。
もちろん、空き瓶は無傷だ。
「何だこれ…凄い衝撃だ…」
「情けない。この程度抑えられずにどうする」
「くっ…すいません…」
「まぁいい、肉体強化の呪文でも何でもいい。体力は付けておけ」
私はマルフォイが手放した銃を拾い上げると、床で腕を押さえている姿を見据えつつ、瓶を撃ち抜いた。
「お…おぉ…」
「フン。これくらいはできる様にな」
私は再び杖を振るうと、大小さまざまな的を部屋中に用意した。
「弾と銃は腐るほどある。好きなだけ練習しろ」
マルフォイの目の前にロダンが拡張魔法を施した鞄を置いてやる。
中身を確認したマルフォイは、疲れ切った顔で溜息を吐いていた。
マルフォイに銃の使い方を教えてしばらくの間は、的を掠めるどころか、銃の反動にすら耐えられない始末だった。
しかし、どうやらスネイプあたりに相談したようで、自身の魔力で肉体を強化する方法を編み出したようで、銃の反動には耐えられる様にはなった。
「ふぅ…」
1マガジンを撃ち切り、弾倉を抜いたマルフォイは溜息を吐いている。
「まぁ、少しは上達したんじゃないか?」
「ありがとうございます」
喜んだ表情を浮かべたマルフォイだったが、綺麗な状態の的を見ると、深い溜息を吐いた。
「継続は力なりだ。とにかく続けろ」
「わかりました」
マガジンを再装填したマルフォイは慣れた手付きでリロードすると、片眼を瞑り、的を見据える。
「あまり力むな。肩の力を抜け。そんなにしっかり目標を狙うんじゃない」
「え? じゃあどうやって狙うんですか?」
マルフォイは不思議そうな表情をしている。
普通の人間は、銃で目標を狙う際、照準を覗き、的の中心を捉えようとする。
しかし、マルフォイはそれに集中しているだけで、引き金を引く瞬間、力んでしまい、銃口がずれているのだ。
「貴様は狙う事ばかりに集中しすぎだ。目標に銃口を向けたら、ずらさない事を意識して撃て」
「えっとぉ…」
マルフォイは躊躇いがちに、一瞬だけ狙いを定めると、顔を正面に向け引き金を引いた。
「フッ」
放たれた弾丸は、的の端を掠めると、奥の壁に当たり砕け散る。
「あっ…当たった!」
「あぁ、当たったな。だがカス当たりだ」
「え?」
私はマルフォイの後方で銃を片手で構えると、連続で引き金を引く。
「うぉ…」
けたたましい音と共に放たれた弾丸は、的に一つの穴を作りだした。
「まぁ…こんな感じだ。慣れろ」
「えぇ…」
「カス当たりとは言え当たったのだ。精進するんだな」
「わかりました」
マルフォイは気を取り直すと、再びハンドガンを構えた。
ダンブルドアが分霊箱を破壊してから2週間ほどが過ぎた。
その間、ヴォルデモートの動きはあまり聞かないが、魔法省の大臣など、主要な役職が連続して行方不明になっている様だ。
「ふん…相変わらず物騒だな」
ロダンは詰まらなそうに日刊予言者新聞を投げ捨てると、葉巻を吸っている。
「本当よね。このままだったらショッピングも楽しめないわ」
「まぁ、まともな店があまりないという問題もあるがな」
「そうね」
ジャンヌは詰まらなそうに、銃の手入れをしている。
「そう言えば、最近ドラコと楽しい事しているそうじゃない」
「あぁ、楽しんでいるぞ。なんだ? 妬いたか?」
「そうねぇ、アンタを独り占めするなんて妬けちゃうわぁ」
「フン、毛ほども思ってない事を」
「まぁそうね」
私も、たまには銃の整備をした方が良いのだろうか。
いや、やはり面倒だ。ロダンに任せれば、やってくれるだろう。
「それで…ドラコはどんな調子?」
「気になるのか? まぁある程度は使える様にはなったんじゃないか?」
「あら? そうなの?」
「あぁ、少なくともダンブルドアよりは使えるだろうな。天使を相手にした場合でのみの話だがな」
「アンタ…何を教えてるのよ?」
「ちょっと過激な、護身術さ」
まぁ、本人が楽しんでいるなら、それで良いだろう。
私は何かを飲み込むように、カクテルを流し込んだ。
マルフォイの特訓を始めてから3週間ほどが経っただろうか。
「はっ!」
マルフォイの成長は凄まじく。今では動く目標にも当てられるようになっている。
「そこ!」
その上、スネイプと共同で開発した肉体強化魔法も、かなり実践的なレベルにまで到達し、激しい戦闘にも耐えられるようになった。ここまでくれば十分か。
「やぁ!」
マルフォイは声を上げながら、銃を真上に掲げると、天井の的を射抜いている。
「上出来だ」
「はい! ありがとうございます!」
両手に構えた銃を、台座に置いた後、額の汗を拭いながら、マルフォイは、良い笑顔でこちらに近寄って来た。
「ここまで出来れば十分だろう」
「ありがとうございます!」
ここまで成長するとは、教師として嬉しい限りだ。
そんな時、部屋の扉が勢い良く開かれた。
「ジャンヌ先生! ここに居ましたか!」
そこには、マクゴナガルが血相を変えて現れた。
「どうした? 騒々しいぞ」
「お話があります…至急校長室へ。ドラコ・マルフォイ。貴方もです」
マクゴナガルはそう言い切ると、踵を返した。
「まったく呼び出しとは良いご身分だ」
「そうですね」
マルフォイは溜息を吐きながら、鞄を持ち上げた。
「さて…それでは行きましょう」
「あぁ」
私達は呆れた様に校長室へと向かった。
『マルフォイは銃の使い方を覚えた!』
これで、少しは使えるようになるでしょうね。
天使相手には魔法は効かない設定なので、実質倒せる方法は物理攻撃となります。
魔法を使って、岩をぶつけたりしたら倒せるとは思うんですが、明らかに銃の方がコスパ良いですからね。
私用で、少し更新が乱れるかもしれません。
ご了承ください。