別ルートの橋を破壊された死喰い人は正面の大橋から進行を開始するつもりのようだ。
しかし、大橋に配置された石像部隊によって、死喰い人は思った以上に苦戦を強いられている様だ。
ホグワーツへは姿現しをする事が出来ず、箒で侵入しようと試みた死喰い人は弓を装備した石像にことごとく撃ち落とされている。
遠距離からの魔法による砲撃も、盾を装備した石像によって防がれている。
この大橋は現在、強固な防御ラインを形成している。
そのおかげか、未だにホグワーツ内に死喰い人が侵入してきた様子はない。
「このまま、向こうが消耗しきってくれればいいんだけど…」
「どうかしらね…」
だが、まだ天使達が動き出していないのが不気味だ。一体ロプトの奴は何を考えているのだろうか…
死喰い人の大半が防御ラインを突破できず退却を強いられた中で、最前線に立っていたベラトリックスは焦っていた。
「何故、突破できないんだ!」
「それが…石像による防御があまりにも強固で…このままではこちらが無駄に消耗しきってしまいます!」
「くそがぁ!」
ベラトリックスは悪態を付きながら地団駄を踏んでいる。
「まったく…騒々しいですねぇ」
その時、まるでベラトリックスを小馬鹿にしたような声で、ロプトが死喰い人の目の前に現れた。
「何だい! お前みたいな胡散臭い奴が! 出しゃばるんじゃないよ!」
怒り狂ったベラトリックスは杖を構えると、ロプトに突き付けている。
「そんなに気を荒立てずに。私はただお手伝いに来ただけですよ」
「手伝いだと?」
「えぇ、そうです」
ニタニタと笑うロプトが指を鳴らすと、その瞬間、暗雲が搔き消え、禍々しくも神々しい光を放ちながら、天界から天使達が降臨した。
橋の対岸の雲から奴等が放つ独特な光が漏れ出している。
「あれは何だよ!」
ロンが雲の切れ目を指差し、大声を上げている。
そこには、多数の下級天使を引き連れた、箱舟のような形の天使、キンシップ。
そして、それらを指揮するように巨大な戦艦の様な天使、ウォーシップが姿を現した。
キンシップ
魔の物を討ち滅ぼすことを使命とした能天使において、天使の一軍を戦場に運ぶ役目を持つとされる存在。無数の天使を率いて飛ぶ姿は雄大で、それを幸せの到来と捉えるものもいた。イザヴェル聖典の一つである「創世記」にある、愚かなる人類を滅ぼす洪水から逃れるために遣わされた箱舟は、このキンシップが顕現したものだったのではないかと言われる。悪しきものが近づくと、光の飛魚を放って神に従う無垢な人を守ったという。
ウォーシップ
天使のヒエラルキーでは中級三隊に属する能天使で、巨大な軍船の様な容姿をしている。
天使の軍勢を運ぶ役割を持つキンシップに対し、ウォーシップは神の力を用いて敵を殲滅する戦艦の役割を持たされている。
このの天使が姿を現す時は、戦争がすでに武力戦のクライマックスを迎えつつあると言えるだろう。
古来よりラグナ神を崇める者たちの間では、信心によって魂を捧げ、ウォーシップの神力の一部となる事は至上の喜びとされていた。
「まったく…厄介なものを持ち込んだものだ」
隣に居たジャンヌは嫌々そうに首を振っている。
そんな中、先鋒を切った
「バカが」
「悪い子ね」
私とジャンヌは多少の身長差があるが、互いに正面から来る天使の脳天目掛け、引き金を引いた。
「「ギャッ!」」
それぞれの銃口から放たれた弾丸は、天使の脳天を見事に打ち抜いた。
撃ち墜とされた天使は、地面を滑りながら、瓦礫の山へと突っ込んでいった。
「セレッサ! ジャンヌ先生!」
そんな時、1丁の銃を両手で構えたドラコがこちらに走り寄って来た。
「マルフォイ! どうしてお前が!」
ロンが、ドラコの姿を見て、驚いた表情をしている。恐らく死喰い人側に居ると思っていたのだろうか?
「話は後だウィーズリー! 天使達が動き出した以上、こちらの魔法では歯が立たない! お前達は下がっていろ!」
「その通りだ」
ジャンヌは大きく頷くと、ドラコを見据えた。
「そして、マルフォイ。貴様も下がるのだ」
「ですが先生!」
ジャンヌの提案に、ドラコは不服なのか、必死に抗議している。
「私達は、これから奴等を片付けて来る。その間、貴様には
「
「そうだ。私達が
「……分かりました…」
ドラコは何度か頷くと、納得したようだ。
ジャンヌはドラコを一瞥した後、小さな箱を取り出す。
「これを渡しておこう」
「これは?」
「奴等との戦闘で役立つはずだ。それと…」
ジャンヌはもう一つの箱を取り出す。
「ここにアンブラの秘薬。もとい、4色のロリポップが入っている。緑が回復。赤が肉体強化。紫が魔力回復。黄色が身を護る結界を発生させる。状況に応じて使え」
「わかりました」
ドラコはそれらを鞄に仕舞い込む。
そんな時、天使が急降下しながら、突っ込んで来た。
「フン」
私達は、その場で背中合わせになり、四方から迫り来る天使達を撃ち墜とす。
「さて、そろそろ行くか」
「そうね、派手なパーティーになりそうね」
「そうだな、ならパーティー用にコイツを渡しておこう」
ジャンヌはそう言うと、小さな小箱を取り出した。
一体いくつの箱を持っているのだろう…
「これは?」
私は、箱を受け取ると、中身を確認する。
「あら…素敵じゃない」
箱の中には、三日月の形を模した、金色の耳飾りが入っていた。
破滅の耳飾り。
大戦時最前線の防衛に立ち魔女に族長が託したと言われる三日月の耳飾り。
これを受け取った魔女は自分専用の魔導兵器『アンブランアーマー』を持つことが許された。
アンブランアーマー
アンブラの魔女が作り上げた究極の魔導機。
その外見は、SF映画などに出て来る、人型のロボットにも見える。
自らの髪を魔導機に張り巡らせて、自分の手足のように操る事が出来る。
両手用足に装備された火砲は強力で、この鉄の馬にまたがった魔女が一騎で数千の敵を蹴散らす、まさに一騎当千の活躍を見せたという。
だが一部の人間からは、やはり魔女は箒に乗るべきだと言われている。
耳飾りを付け終わった所で、ジャンヌが急に口を開いた。
「ところで…セレッサ」
私が振り返ると、隣に居たジャンヌが、急に真剣な表情になる。
「なによ? 私の顔に何かついている?」
「いや…別に構わないが、いつまでその姿でいるつもりだ? 奴等が攻めてきた以上、その格好でいる意味は意味はなかろう」
ジャンヌに指摘され、私は今の自分の姿を思い出した。
確かに子供の姿のままだ。
「そうね、少しお色直ししようかしら」
私は、髪を掻き上げると、一息つく。
「さて、スポットライトの準備はできているわね!」
私はその場で飛び上がると同時に、ホグワーツの制服を脱ぎ捨てた。
「うぉおぉ!!」
「セレッサ!!」
その瞬間、その場に居た男性陣から歓声が上がった。
裸同然の私が、空中で態勢を整えると、どこからともなくスポットライトが現れ、私の体は光に照らされ、シルエットだけとなる。
そのまま、私の体を這わせるように自分の髪で作り上げた戦闘装束を装着し、普段の大人の姿で着地する。
「あ………」
「え?」
着地した私の姿を見た生徒達が呆気に取られている。
「セレッサ……君なのか…」
「そうよ、美人過ぎて声も出ない?」
「あ…あぁ…」
ドラコは壊れた玩具の様に、視線を上下させている。
「子供の姿の方が良かったかしら?」
「いや…そう言う事じゃ…」
「無駄話はその辺にしろ」
ジャンヌがそう言うと同時に、天使の軍勢が突っ込んで来た。
「フン」
私達はその場で背中合わせとなり、迫り来る天使の脳天を撃ち抜く。
撃ち抜かれた天使は、バランスを失い、地面に体を擦り付けながら、足元にまでやってくる。
「フンッ!」
足元の天使の頭を右足で踏みつぶし、手元の銃へと目線を落とす。
「やっぱり小さすぎるわね」
子供用のサイズに調整されたスカボロウフェアでは、今の姿では若干扱いにくい。
「そうだろうと思って、持って来たぞ」
ジャンヌがそう言うと、再び小箱を取り出した。
特殊なポケットでも持っているのだろうか?
小箱を受け取り、中身を確認すると、そこには『ノクターン』『トッカータ』『メヌエット』『プレリュード』の4丁からなるライブイズブルーが入っていた。
ラブイズブルー
来るべき日のため名工・ロダンが制作していた秘蔵の拳銃。「ノクターン」「トッカータ」「メヌエット」「プレリュード」の4丁からなる。射撃精度、強度ともに、「スカボロウ フェア」に勝るとも劣らない作りになっている。それは武器による打撃のみならず、悪魔を宿す攻撃「ウィケッドウィーブ」、蓄えた魔力を解き放つ究極奥義「アンブラン・クライマックス」を全力で放つことを可能にする。
ラブイズブルーを受け取ると、小型のスカボロウフェアはポーチへと仕舞い、ライブイズブルーへと換装する。
「さて…」
「そうね」
私とジャンヌは『破滅の耳飾り』に魔力を送り、アンブランアーマーを召喚する。
「なんだ?」
ロンが天を仰ぎながら間抜けな声を上げる。
その瞬間、暗雲を切り裂きながら2つの
「うわあぁ! 避けろぉおおぉ!!」
生徒の一人が叫ぶと、その場に居た生徒が蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出した。
尚も高速で落下をしているアンブランアーマーは、地面に激突する寸前に、姿勢制御を行い、金属質な着地音を響かせ、激しい地響きと共に両足と片手の三点で着地し、周囲に衝撃波によるクレーターを形成した。
土煙が晴れると、そこには傷一つない、完璧なアンブランアーマーが威圧感を放ちながら、私達が搭乗するのを待っている。
「まったく…派手な演出だな」
「スーパーヒーロー着地ね。あれ膝に悪いのよ。でも皆やるわ」
「見栄えが良いからな」
ジャンヌは呆れた様に答えながら、クレーターの中心へと向かう。
アンブランアーマーに飛び乗った私は、髪の毛を機械の隙間に張り巡らせて、操縦を開始する。
「派手に行くわよ」
重々しい機械音と紫色の光を放ちながら、アンブランアーマーは起動した。
アンブランアーマーが1歩踏み出すたびに、床にヒビを作りながら、重々しい音を立てつつ、歩み始めた。
「あれ…なんなんだよ…」
「さ…さぁ? 私も見た事は無いわ…」
「と…とりあえず、中へ退避しよう」
「もう何でもありだな…」
地面を踏みしめるアンブランアーマーの背中を見ながら、ハリー達が呟いている。
やってきました『アンブランアーマー』
ここから、大暴れです。
次回作を少し書きましたが、絶対にありえない組み合わせになりました。
まぁ、大暴れするんだからいいか。