救われた男と堕ちた天使   作:チムチムブッチャー

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17話 ご飯をくれたら友情は芽生える

放課後、僕は日直の仕事である放課後の教室掃除をしている。もうすでに皆帰っており教室には僕と机に突っ伏しているガヴリールだけだった。

ガヴリールは寝ているわけではなくただ動かずに黒板の上にある時計を見る。

 

「どうしたの?ガヴ」

「腹ペコで動けん・・・」

 

いやちゃんと食べようよ。聞けばガヴは昨日の夜から何も食べずに学校に来て授業を受けていたようだ。

 

「僕の所に来ればちゃんとご飯ぐらい用意したのに。もう二人分作るにも慣れてるし」

「いや~昨日ネトゲのイベントで忙しくて気づいたら朝でさ、しかも課金しすぎたからお昼を食べるお金もなくて」

「・・・しょうがないな、夕飯何がいい?」

「その前におぶって」

「今のガヴリール子供みたいだよ。とりあえず掃除終わらせるからそれまで待ってね」

「いや、おぶってはくれるのかよ。」

 

だってそのままじゃ帰れそうにないじゃんガヴリール、僕も早く帰りたいのでガヴリールが歩き出すのを待つのもいやだ。

僕が急いでゴミを塵取りに入れゴミ箱にゴミを捨てる、そして片づけていると閉まっていた教室の扉が開かれる。

 

「いいんちょ」

「よかった、天真さんまだ帰ってなかったのね」

 

扉を開けて入ってきたのは僕たちのクラスの委員長、名前は確かまち子さん。ちゃんと自己紹介をしたことがないので皆の呼び名でそう判断しただけなんだけど。

 

「天真さん今日提出するプリント出してないでしょ?」

「あ~ごめんごめん完全に忘れていたわ」

「少しは覚えとこうよガヴ・・・」

 

ガヴは引出しに手を入れると何も見ずに提出するプリントを引っ張り出した。そう言えば委員長いつも仕事で残ってるのかな。

 

「委員長の仕事も大変だね」

「大丈夫紅君、私は部活に行くついでに先生に頼まれたから」

「若者は頑張るね~」

 

いやガヴリールはもっと頑張るべきだと思うけど、部屋の掃除とか料理とかせめて自分の事だけは頑張ってほしいんだけどな。

 

「そういえば、天真さんと紅君は部活とか興味ないの?」

「まったくない」

「う~ん僕もあんまりかな、バイトも忙しいし」

「あーそっかぁ」

 

まぁそうだよねと納得してくれる委員長、委員長ってどんな部活に入ってるんだろう美術部かな?この間の美術の時間のサターニャさんの似顔絵すごい上手かったしな。逆にサターニャさんの絵はかなりひどかったけど。

僕と同じ疑問を持っていたのか僕の代わりにガヴが尋ねる。

 

「いんちょってなに部なの?」

「私?私は調理部よ?」

「やっぱめっちゃ興味あったわ!」

 

委員長の部活を聞いた途端ガヴリールはさっきと言っていた事と全く反対の気持ちを物凄い勢いで答えた。さっきお腹空いて動けないって言ってたのにいざ近くに食べれる場所があると元気になってるし。

 

「天真さん料理に興味があるんだ」

「実はそうなんだよ。だからもし良かったらし試食・・・じゃない見学させてくれない?」

 

途中本音が出ちゃってたけど運良く委員長には聞こえておらず何も言わずに少し考え始めた。だが本当に少しですぐに考えるのを止め答えた。

 

「うんっ大丈夫だと思うわ」

「よしっ食料ゲット」

「ガヴ。声がもれてるもれてる」

「いいから行こう、聞こえてないだろうし」

 

いや良くない、委員長も苦笑いだし。さっきは聞こえなかったからセーフだけど今回はがっつり聞こえてるし、ガヴはそれでも聞こえてないと思っている。

これはある意味すごい。

どれぐらいすごいかと言えば耳の聞こえない作曲家の時ぐらいすごい、あれ結局どうなんだろう。

 

「紅君も見学する?」

「うん、一応家で作るレシピの参考にしてみたいからついて行くよ」

「分かったわ」

 

僕とガヴリールは委員長の後について行き調理室まで案内される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

委員長に案内されて調理室にたどり着き早速入ると、二人の女子生徒が調理具の準備をしていた。彼女達はこちらに気づくと手を止めもうダッシュで僕たちの距離を一気に詰めてきた。驚いた僕とガヴは二歩ほど後ずさりしたが手を握られ後退することが出来なくなった。

 

「やっほー天真さんと紅君っ!」

「調理部にようこそ」

 

そう言うと握っていた手をブンブンと振ってくる。なんか物凄いテンションの高い人だな、ちょっとサターニャさんと仲良くなれるんじゃないかな。

 

「・・・誰?」

「ひどいっ!」

「同じクラスなのにー」

 

ガヴはすぐに失礼なことをするんだから、クラスの名前ぐらい覚えてあげないと友達が出来ないよ?たしかこの二人の名前は・・・や、山本さんだっけ

 

「田中だよ!」

「上野だよーよろしくね」

 

そうそう思い出した、短めの髪の茶髪の子が田中さんで眼鏡をかけてる方が上野さんだ。僕の場合は覚えてないんじゃなくて忘れちゃってただけだから、ガヴよりはいいと思うよね(※余計に失礼です)

 

「今日は二人だけなんだね」

「そだよー」

「そう言えば二人は今日何で調理部に?」

「僕は何か新しいレシピを教えてもらおうかなって思って」

「何なら一緒に作る?」

「いいの?」

「もっちろん!」

 

朝陽の作ってもらったレシピはもうだいぶ出来るようになり新しい料理を挑戦してみたい。だから田中さんと上野さんの誘いは素直に嬉しい、僕は田中さんたちの誘いを遠慮なく受けることにした。

 

「天真さんは何しに見学に?」

「美味しいものが食べさせて貰えると思って」

「さっきと言ってること変わった!?」

 

ついに本音をこぼした、というか叫んださすがに委員長もツッコんでいる。だが田中さんと上野さんはやる気が出たのか二人拳を上に突き上げ気合を入れている。

エプロンを二人が着けだすと隣の委員長もエプロンを着けだす。委員長も調理部だし手伝ってくれるんだお礼を言わないとな。

 

「よしそれじゃあ私も手伝おうかな」

「いや、まち子はちょっと・・・」

「大人しく座ってて・・・ね?」

「ひどいっ!?」

 

田中さんと上野さんの目はワガママを言う子供を優しく諭すように言う。な、何だろう逆に委員長の作る料理が気になってしまう。

そんな不安半分好奇心半分の気持ちで委員長見ていたのに気付いたのか、彼女は慌てて僕に誤解しないでと説明してきた。

 

「いやっ紅君聞いて、料理が下手って訳じゃないのよ?この二人が上手すぎるだけで・・・」

「そ、そうなんだ」

「そういえばいいんちょってまち子って言うんだね」

「いや、そっち天真さんっ!?」

 

やっぱりガヴリールは委員長の名前を覚えてないのか、まぁ確かにさっきから名前呼んでなかったもんね。僕もだけど

 

「みんな委員長って呼ぶから委員長って生き物なのかと思った」

「何その勘違い!?」

 

ガヴ・・・

僕は最初、『いいんちょ』って呼び方ガヴなりのあだ名だと思っていた、本当は生き物に名前着けてあげただけって感じだったんだね。

 

「確かにまち子ずっと委員長してるもんね」

「小3からだっけ?」

「そうよ」

 

委員長ってそんな小っちゃいころから委員長だったんだ、じゃあ委員長は僕達のクラスの委員長になるべくして委員長になったんだ。ってもう何を言ってるのか分かんなくなってきた。

田中さんと上野さんとガヴリールの三人はそんな委員長を悪乗りでイジり始めた。

 

「よっ!まさに委員長の鑑!!」

「これからも頼りにしてます!」

「委員長オブ委員長!!」

「どう反応すればいいのか分からないんど!?」

 

うんガヴ達に乗るわけではないけど委員長はすごいと思う、ちゃんと僕みたいな浮いている子でも話しかけてくれてくれる。だからそんな優しい所は誇っていいと思う、現にそれで助かっている僕がいるわけだし。

委員長は三人の悪乗りにため息を吐いている、さすがに委員長が可哀そうなので僕は作業をするようにうながした。

 

「時間も時間だし作業始めようか」

「「アイアーイ」」

 

田中さんと上野さんは額に手を当て敬礼のポーズをとる、そしてそのまま僕は二人に調理場へ案内される。

 

「とりあえず時間がないしさっと作れるものがいいね」

「すごいね、ちゃんと考えてるんだ」

「まぁ調理部ですから~」

 

しばし田中さんは手を顎にあて考える、そして一回頷くと材料を調理室の冷蔵庫から材料を取りだした。

僕は何を作るのか気になり材料を取り出した田中さんに聞いてみた。

 

「何を作るの?」

「やっぱり他人丼かな」

「他人丼って?」

「鶏肉と卵を使ったのが親子丼でしょ?でも今回鶏肉がなかったから鶏肉以外の豚肉と卵で他人丼をね」

「なるほど」

 

なるほど・・・頭発想がすごいなそれを作った人って、僕も田中さんみたいに料理の知識をもっと欲しいなそしたら田中さんみたいに料理に関する知識も取り入れないと。勉強になります。

 

「じゃあ私は簡単なパフェでも作ろうかな」

「デザートも作るんですか?」

「もちろんっ!みんなデザートは天真さんも好きだろうしね!」

 

なるほどと思いながら僕は持ってきてくれたノートに急いでメモを取る。するとパフェを作っていた上野さんが僕のノートをのぞいて来る。

 

「紅君はメモをするんだねえらいっ!」

「うん、勉強になること多いからね」

「でも調理実習の時の紅君の手つきを見てたけど普通に上手だったよ?」

「ありがとう、でもこの間ガヴに料理がワンパターンって言われちゃって」

 

僕がそう言った瞬間突然二人の手が止まった。そしていい獲物を見つけたかのように目を光らせ物凄い勢いで近づいて来る。

 

「なになにっ?天真さんに手料理食べさせてるの?」

「う、うんまぁほとんど毎日」

「毎日!?もしかして二人付き合ってるの?」

「突き合ってるって確かにそうだけど・・・」

 

格闘ゲームでは戦ってる。ガヴが負けたら不機嫌になって、格闘ゲームの技である正拳突きを食らってしまうが。でもその表現の仕方何かおかしくないかな?

だが二人はちゃんと理解してるのか分からない反応で、キャーキャー言いながら二人でピョンピョン飛び跳ねている。どこかのカフェに行った方がピョンピョン出来るよ?

 

「でも私、胡桃沢さんと手を繋いでいた事も見たことあるからもしかして二股!?」

 

どうしよう・・・田中さんと上野さんの言ってる事が良く分からなくなってきた。

僕が困ってると、その様子を見ていたガヴがため息を吐きながら田中さんと上野さんに説明してくれる。

 

「こいつ、誰とも付き合ってないよ」

「えっ?でもさっき紅君が認めたけど・・・」

「いや夕陽はある方面だけサターニャ並みいやそれ以上にバカだから、格闘ゲームかなんかと勘違いしただけだよ」

「えっ?格闘ゲームの話じゃないの?」

「ほらな?」

 

じゃあさっきから何の話をしてたんだろう。っていうか何かガヴリール言い方ひどくない?まぁさっきの話も全く理解出来てなかったから、事実なんだろうけど。

 

「なら勉強させていかないとね!」

「まち子、何か二人で映画か何か一緒見に行ってみれば?」

「な、なんで急にでてくるの!?」

「だってまち子も結構そういうの疎いし、委員長の責任みたいなのでさ!」

「そういうのは大丈夫、自然にいつか治ると思うし」

 

 

なんでガヴが断ってるだろう、そこは委員長か僕が断ることなんだろうけど。僕としては委員長と映画を見てる事で分からないことが分かるならいいんだけど。

でもそんなことをガヴリールに言ったりしないきっとこれは余計な一言だと本能が言っている、僕もガヴと最初に出会った時に余計な一言は言わないっということを学んでいる。教えられれば僕は出来る子なんだ。

 

「あ~なるほどそっか・・・それじゃしょうがない、こちらは天真さんに任せることにしようかな!」

「ささっ続き続き♪」

 

田中さんと上野さんは何かを悟ったような顔をして嬉しそうに料理を進めていく、ガヴもお腹をさすりながら良い匂いによだれが出るのを我慢している。

いや何の事だか分からずに三人は話を進めていくので分からない僕はどんどん分からなくなっていく。

どうやらそう思っていたのは僕だけじゃないらしく僕の呟きがもう一人の声と重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なにが分かったの?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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