これを励みに頑張りたいと思います!
「はぁ~」
「めでたい日にため息つかないでよガヴ」
今日は大晦日でもうすぐ新年を迎えようとしており空は真っ暗に染まっている。現在ガヴリールとヴィーネさん、僕の三人でサターニャさんとラフィエルさんを待っている。
「こんな寒い中初詣とかなればしょうがないじゃん。家でゆっくりしていたいのに」
「新年を気持ち良く迎えるにはこういうのはしっかりしていたほうがいいでしょ」
そう言いながらヴィーネさんはガヴリールのマフラーを整えてあげている、もう友達というより親子に見えてしまうのは僕だけなんだろうか。
「そもそもここにリアル天界人がいるってのに」
「たしかにね」
全く天使には見えないけど
「人間どもはお賽銭を持って私の事崇め奉れよ」
「ガヴリールみたいな天使に祈ったら、なにか不幸が訪れそうで怖いよ」
そんな人が出てきたらガヴ課金のためにお金を貰いに行きそうだ。いやさすがのガヴリールでも一応天使だししないよね・・・しないよね?
そんな会話をしていると長く白い髪を揺らしながらラフィエルさんがこちらに走ってきた。あとはサターニャさんだけか。
「みなさーん、お待たせしました」
「ううん大丈夫よラフィ、私達も今来た所だから」
ラフィエルさんは少し乱れた息を整えると嬉しそうな顔をしながら話し始める
「それにしても初詣はドキドキしますね」
「そうね私もどんな感じなのか楽しみだわ」
「あ、いえそれもあるのですが・・・」
ラフィエルさんはモジモジしながら何かを言い淀んでいる、だが意を決したのかうんと頷いた。
「違う神様の所に行くという行為がなんか背徳的で」
「な、なんでラフィエルさんそんなに嬉しそうなの?」
なんかラフィエルさん震えてるし、今のラフィエルさんを見て僕の方が恐怖で震えてしまいそうだ。
そんな時ヴィーネさんがこの場にいないあと一人に意識を移してくれた。
「そ、それにしてもサターニャは遅いわね・・・」
「こんな寒空の下待たせるなんていい度胸だな」
ラフィエルさんと言い、ガヴリールと言い天使は何でそんなに恐ろしい人が多いんだろうか。
よし決めた、僕は死んだら地獄に行こう。
だって悪魔の方が優しいし・・・ヴィーネさんとか月乃瀬さんとかヴィネットさんとか。
「待たせたわねっ!!」
丁度いいタイミングでサターニャさんの声が聞こえ僕たちはその声の方を振り向く。
「もう何していたのよサター・・・ニャっ!?」
するとそこには冬には絶対着ない寒そうな格好をしてる。その格好を心配したヴィーネさんが慌てて駆け寄ると、案の定サターニャさんは寒そうに震えている。
「ちょっと、どうしたのよアンタ!?」
「ちょー寒いんだけど・・・」
「いやサターニャさん何でそんな寒そうな格好をしてるの?」
「なんでって・・・調べたら初詣って着物って物を着ていくんでしょ?」
うん、確かにそうなんで間違ってはいないんだけど、それって――――
―――着物だけど浴衣だよね?しかも丈が短いミニスカートみたいな奴だし・・・
「それは夏にお祭りに行く時に着て行くやつよ」
「えっ、それホント!?騙されたんだけど!」
「それ、どこでかったの?返品できるならした方がいいよ・・・」
「許すまじ・・・魔界通販っ!」
やっぱり魔界通販だった・・・サターニャさん魔界通販で失敗しかしてないような気がする。僕も一回そこで買い物して届いたけどまだ一回も使ったことが無い。もしかするとあれが一番勿体無い買い物だったのかもしれない・・・
さすがに寒そうな姿をしているサターニャさんを放っておけないヴィーネさんは、一度戻って着替えなおしてくると言って二人で一旦帰った。
「年末まで騒がしい奴」
「にぎやかで良いと思いますよ?」
それから二人は10分ほどで帰ってきて、やっと神社に向かうのだった。
「すごい人ですねー」
「ホントにはぐれないようにしないと・・・」
僕たちが神社に着く頃には既に沢山の人が初詣に来ており、前が見えない状態だった。これはボーっとしていたらみんなとはぐれるかもしれないし、気を付けないと。
皆の様子をみるためかヴィーネさんは後ろを振り返り、人数を確認する。
「あれ?ガヴはついてきてる・・・って既に人混みのなかにっ!」
ヴィーネさんが慌てて指を指し、僕がヴィーネさんの指先の先を見るとガヴの手らしきものが人混みの波に連れて行かれている。
「僕が行ってくるっ!」
そう言い僕は彼女が流されている人混みに入り込んだ。だが想像以上に窮屈で手を伸ばすので精いっぱいだった。自分もこのままでは流されそうだと僕は思い、ガヴに声が届くように必死に叫んだ。
「ガヴっ!手を出して」
そうすると僕より一回り小さい手が僕の大きな手を握った。僕もその小さな手を離すまいと少し強めに掴む。そして全力で引っ張ると人混みの中からガヴリールが出てきた。
僕は勢いに任せて引っ張ったのでガヴが僕の胸に飛び込んできても受け止めきれず体制を崩してしまった。
ドンッ
――――という大きな音と共に倒れこんだ僕は、傍から見たらガヴリールに押し倒されるような体制となっていた。
「だ、大丈夫だった?」
「い、いや死にそうだった・・・」
「じゃあ、良かったよ間に合って」
ヘナヘナとそのまま僕の胸に倒れこむガヴリール。よっぽど息苦しかったのだろう倒れこんできてから動こうとしないので、そんなガヴリールの頭を僕は撫でてみる。
朝陽も昔はよく頭を撫でてあげていたけど最近は朝陽の方がしっかりしているので、撫でることもなくなったな。
ガヴリールは何故か頬を紅くさせて、僕の撫でている手を除ける。
すると僕は僕の手を除けた、ガヴリールの手が何か持っている事に気が付いた。
「それってラッパ?」
「これ?・・・あぁ世界の終わりを告げるラッパ。あと3秒遅れてたらこれ吹いてた」
ほんとに間に合って良かった・・・ってか忘れていたけどそういえば出会った時も吹こうとしてたよね、それ。
「とういうか、そんな物騒な物出さないでよ・・・」
そうこうしてると、ヴィーネさん達もやってきて再びお参りをする場所を目指す。参拝場所が近づくとサターニャさんが好奇心いっぱいの目をしてピョンピョンと飛び跳ねている。
「ねぇ!あそこの大きいあるんだけど!」
「あれは、お参りする時に鳴らすのよ」
「あれは私が鳴らすわ!」
「はいはい・・・」
そんな会話をしてるヴィーネさんとサターニャさんはまるで親子のように見える。初めて初詣にきた娘が色んなものに興味を惹かれお母さん的な感じで。
そうこうしているうちに、あっという間に僕達の番が回ってくる。
サターニャさんは全力で鈴を鳴らし、満足したのか腰に手を当てドヤ顔をしている。ヴィーネさんはしっかり手を合わせてお願いしている。
本当はヴィーネさんの方が正しいんだけど、悪魔としては正しくない気がする・・・
「次はガヴとラフィ、夕陽くんね」
「はい」
ラフィエルさんの返事で僕たちは三歩ほど前に出る。そしてサターニャさんとは対極的にめんどくさそうに鈴を鳴らす。僕はこの時のために前日にインターネットで調べて勉強してきたので知っている、二拝二拍手し手を合わせる。
―――皆とこうしてまた来年もこうしていられますように。
あれ・・・なんか眩しい気がする・・・
僕はゆっくり目を開けるとその眩しい原因である、その場で膝をつきお祈りをしているラフィさんとガヴリールに視線を送る。
お祈りをしている彼女らの姿はとても神々しく見える。この時僕は初めて心の底から彼女らが天使だって理解した。だって二人とも、ものすごい光を全身から放ってるし、それにお迎えに来たかの様に小さな天使が降りてき始めてるし。
そんな二人の様子を見ていたのは、ヴィーネさんとサターニャさんも同じでヴィーネさんは慌てて二人を止めに入る。
「ちょっ、二人とも大変なことになってるから!」
その声でラフィエルさんは顔を上げ突然お祈りを中断し、ガヴリールもラフィエルさんが止めたのを見て中断した。
ガヴ、絶対ワザとしてたでしょ・・・
「もう少しで大騒ぎになるとこだったじゃないっ!」
「あやうく大勢の天使を降臨させるところだったな」
「そんな事したら、ここがわけの分からない場所になっちゃうよ・・・」
僕たちはさっきのせいでざわつき始めているこの場を急いで離れるのだった。そして屋台などがたくさん並ぶ所にやってくると、突然女性に話しかけられた。
「よろしかったら一杯どうですか~」
そういって僕達全員に飲み物の入った紙コップを渡してくる。僕たちは素直に受け取ると、中身の液体をまじまじと見つめる。
「これってなんですか?」
「甘酒ですよ~」
「これが甘酒なんだ・・・」
よく話では聞いたことはあったが実際に見たのは初めてだった。初めてでどんな味がするのか緊張したけど僕は一気に飲み干した、すると柔らかい甘さが口いっぱいに広がっていった。
「・・・おいしい」
「うん、変わっているけど美味しいわね」
「結構美味しいわね、もう一杯頂戴!」
「私、この味好きです」
みんな僕と同じく甘酒を気に入ったらしく顔を綻ばせながら喜んでる、サターニャさんに関してはおかわりを貰ってるし。
だがこの中でたった一人黙っていたガヴリールだけは違った。俯いて何も言わず固まっている。そんな様子のガヴを心配になったヴィーネさんがガヴの顔を覗き込む。
「大丈夫?あんまり好きじゃなかった?」
「・・・・フフッ」
するとガヴリールは突然不気味な笑みをこぼした――――
「はっぴーにゅーいやー!」
「えっ?」
突然飛び上がり叫んだガヴリールにこの場にいるガヴリールを除いた全員が固まってしまった。だが様子のおかしいガヴリールは気にした様子を見せず、ヴィーネさんに詰め寄る。
「ついに来たね新年っ!あっでも年が明けるまであと10分ほどあるね!フライングハッピーニューイヤーってことで!」
ガヴリールのテンションがよく分からない方向へ行ってるし、少し心配になってくる。するとガヴリールが突然僕の手を握り、その手を自分の頬まで持ち上げ頬ずりし始める。
「ちょっ、ガヴ!?アンタ何してんの!?」
「えへへ~夕陽の手温かい~」
「あらあら、今のガヴちゃん積極的ですね♪」
何だろう・・・今日のガヴはいつもと違って、容姿だけでなく仕草も可愛い。いつもの不機嫌なガヴとは違い、ついついまたガヴの頭を撫でてしまった。
「あっ・・・ごめん・・・」
僕は先ほど嫌がられてしまったのを思い出し、慌てて撫でていた手を引っ込める。
「イヤ・・・止めないで・・・もっと撫でて・・・」
「えっ?・・・あの、その・・・」
するとガヴリールは急に綺麗な瞳に涙を浮かべ、引っ込めた手の裾をギュっと握った。僕はそんないつもと違うガヴリールに戸惑いいつものように話せなくなってしまう。
するとその様子を見ていたヴィーネさんとラフィエルさんがなにか話していた。
「ガヴちゃん顔も赤いですし、少しフラフラもしてますね・・・」
「これってあれよね、ラフィ・・・」
「はい・・・あれですね」
二人は顔を見合わせると同時に大きく頭を縦に振った。
「「甘酒で酔ってる!」ますね」
なんで甘酒で酔っちゃうんだよ・・・確かに甘酒はお酒だけど、神社で配っているのはアルコールは入っていないはずなんだけどな。
「うーヴィーネ達の方ばかり見てる・・・ずるいよ」
「あ、いや・・・ズルいって?」
僕がヴィーネさん達の方を見ていると、ガヴリールが拗ねたようにポンポンと太鼓のように僕の胸を叩いて来る。
・・・なんかすごくやりにくいな。上手く言葉が出て来なくなってしまう。
助けてとヴィーネさんとラフィエルさん、サターニャさんに視線を送るがそれがいけなかった。
「また夕陽は私を見てくれない。こうなったら・・・」
そういって一瞬にして天使の格好に変わると、つい何分か前に見たことのあるラッパを手に取っている。
「見ててね夕陽!・・・私がこの場を盛上げてくるから!」
「ちょっ、ガヴリールばっかりズルいわよ!」
「待って、止めてガヴ!」
飛んでいくガヴリールにそれを羨ましそうに追いかけるサターニャさん。ガヴ・・・そんなことしても盛り上がるのは死体の山だけだよ!?
っていうかラフィエルさん面白そうに見てないで助けてよ・・・
この後、どうにかヴィーネさんが止めてくれてガヴリールが世界の終わりを告げるラッパを吹かず済んだ。
目を覚ましたガヴはお酒を飲む前の記憶しかなかった。ガヴは僕やヴィーネさんにどうなったのか尋ねてきたが、僕は答えなかった。
だって教えたら死んでしまうかもしれないから・・・僕が。
次の話は少しシリアス入ります!
よろしくお願いします!