救われた男と堕ちた天使   作:チムチムブッチャー

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OVAの話です。
時期は違いますが一年生編の締めとしてこの話を書きました。


20話 天使の贈り物 前編

もうすぐ春になる。

 

 

春になったら僕たちも一つ学年が上がって後輩が入ってくる。つい先日聞いた話だが、どうやら朝陽は僕と同じ学校である舞天高校に入学することが決まったそうだ。

別にこの学校が悪いというわけでは全くないが、朝陽はすごく頭がいい。もっと上の高校を狙えたと思う。

僕は一度その事についてその日に電話で聞いてみたのだが―――

 

【うーん。楽しそうってのもあるけど、やっぱりお兄ちゃんが心配だし】

 

どこか呆れているような声音で朝陽はそう言われてしまった。・・・嬉しいんだけど、そんなに僕って頼りないかな?

その事を帰り道、ガヴリール、ヴィーネさん、サターニャさん、ラフィエルさんの四人に伝えてみた。

 

「朝陽ちゃんはお兄ちゃんが大好きなんですね?」

「ホントね~私も朝陽ちゃんみたいな妹欲しいわ」

「夕陽がしっかりしてないからじゃないかしら。このサタニキア様みたいに堂々としてないなさい!」

「いや、お前はもう少し考えて動けよ・・・」

 

ガヴリールは胸を張っているサターニャさんに呆れたように言う。

確かにサターニャさんに言われたくはない。サターニャさんのようにしていたら絶対に先生に怒られちゃうよ。今日だってサターニャさん宿題をやってこなくて先生に怒られて泣いてたし。

 

そんなどうでもいいような話をしながら僕たちは帰る、これが僕達の日常だった。

だが今日はいつもと違い何となくもう少し話していきたいと僕も、皆もそう思ったのか足がいつの間にか公園へと向かっていた。

僕達は公園にたどり着くとさっそく近くのベンチに腰を下ろす。

 

「私、何か飲み物買ってくるわね!」

 

そういいヴィーネさんが飲み物を買いに行こうともう一度腰を上げたその時――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天使さん・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちはその声に振り向くとそこには、()()()()()()()()()がそこに立っていた。

少女は驚いた様子をみせて僕達を見ている。だが僕もみんなも少女の様子がどこかおかしい事に気づいた。

 

―――そう少女は目が見えなかったのだ。

 

 

僕は座ろうとしていたベンチを開け、彼女の元に駆け寄った。

 

「ごめんね。手を握るね?」

「あ、はい!」

 

少女が肯定すると僕は手を握り、先ほど僕が開けたベンチに座らせようと誘導する。すると先に座っていたサターニャさんとガヴリールも自然と立ち上がり席を開け、少女が座りやすいようにしてくれた。

 

「ありがとうございます!」

「ううん、大丈夫だよ」

 

少女のお礼に僕は気にしないでと首を振った。こんなことにお礼なんていらない、するのが当たり前なのだから。きっとお父さんもこうすると思うし。

するとヴィーネさんが何となく分かっていてもどうしても気になるのか、申し訳なさそうに少女に尋ねる。

 

「失礼を承知でお聞きしますが、その杖はやっぱり・・・」

「はい!見えないって訳じゃないんですけど、少しだけみんなと違って不自由なんです」

 

その声音は明るいもので、あまり気にしていないようだ。

むしろ少女が慌てだしたのはその後で、彼女は恥ずかしそうにはにかみながら突然頭を下げた。

 

「あっ、さっきは天使さんなんて言っちゃってごめんなさい・・・でもいつもはあまり見えないのに、お兄さん達の姿は他の人達よりハッキリと見えちゃって・・・」

 

そういってそのまま俯きながら恥ずかしそうに顔を紅くしている。でもやっぱりガヴ達にはオーラがあるのかな、それに感じる事の出来た彼女はもしかしたら、本当は僕なんかよりずっと目がいいのかもしれない。

するとサターニャさんは得意げに手を腰に当て語りだす。

 

「つまりはこういうことね。封印されし第三の目が反応したという事ね。」

「いや、そんなマンガみたいなこと出来ないよ・・・」

 

まぁ、僕もサターニャさんの言うようなそんな人にも確かに会いたいと思っていた時期もあったので、あまりサターニャさんを止めることが出来ない。でも、僕の場合はそんな人いたらいいなぁ~って程度だったけど。

―――そういえば彼女、『お兄さん達』ってことは僕の姿もハッキリ見えたのかな?

 

「ははは・・・」

「バカかよ・・・お前」

 

サターニャさんの言葉に少し困ったような笑いをする少女。ガヴリールは呆れたようにツッコむ。

すると、顔を真っ赤にしながら怒り始めるサターニャさん。

 

「ば、バカって何よ!」

「お前の思考がどうかしてるから、バカだと言ったんだ」

「バカっていうなっ!」

「バーカ」

「だからバカって言うな!」

「はいはい。ガヴもサターニャさんも仲よくね」

「子供扱いするなよ・・・」

 

こんなケンカを始めるので僕がケンカの仲裁に入るが、お互い本気で嫌がっているわけではない。そんな事はここにいるみんなは何となく分かっていた。

少女もそんな僕たちの様子を見てクスクスと笑っている。

 

「フフッ・・・でも本当見えたんですよ?温かくて優しい天使さんみたいに!」

 

そんな風に嬉しそうに僕たちに話す少女。案外見えないからこそ、何か感じるのかもしれない。

 

「特に一番左のお姉さん!」

「えっ!?」

 

そういって少女はヴィーネさんを指さす。

うん、そうだね。確かにヴィーネさんは天使だ、悪魔だけど。この中で一番やさしいし、困っている人がいたら放っておけないし。もう一度言うと悪魔だけど。

 

「もうヴィーネ悪魔止めたら?」

 

こら、ガヴリールそんな悪魔みたいねセリフでヴィーネさんに囁かないでよ・・・ガヴって天使でしょ?ほら見てよヴィーネさん明らかに落ち込んでるじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕たちはそれからいろんな話をした、彼女の学校の話や友達の話。そんな他愛もない話を続け時間はあっという間に過ぎていき、辺りは暗くなってきた事をきっかけに僕達は帰ることにした。彼女は皆に手を振ると笑顔で別れを告げた。

 

「私、良くここに来てるんで良かったらまたお話ししてくださいね?」

 

みんな同時に頷くと彼女はもう一度みんなに手を振ると、僕達に背を向け去っていく。別にこのまま帰っても問題はないのだが、何となくみんな彼女が見えなくなるまでみんな動こうとせずじっと少女の背中を見守っていた。時折電柱にぶつかりそうになりなったりして、心配そうに声を漏らしたりしてながら。

そして少女の姿が見えなくなると、ラフィエルさんが安心したようにホッと肩を撫で下ろす。

 

「ちょっとビックリしちゃいましたね」

「そうね、危うく正体がばれると思っちゃったわ・・・」

「まぁ、ヴィーネの場合は天使に間違われたけど」

 

えっ・・・?

普通に正体を教えられた僕は何なんだろう。

 

「余りばらさないってだけですから、教えるだけなら大丈夫ですよ」

「ぼ、僕の声漏れてました・・・?」

「いいえ♪」

 

な、なんなんだろう。心を読まれてるんだけど・・・

僕は、僕の中で下がりかかっていたラフィエルさんの警戒度をもう一度上げることにした。

 

「でも教えるだけです。まだ私達は研修中の身ですし、天使の力でその人を救っちゃうと罰がありますから。」

 

だから、あえて彼女には隠していたのかもしれない。彼女は目が少し不自由だしもしかしたら天使だと教えたらしがみ付いてしまうかもしれないから。

少し冷たいように思えるけど、きっとガヴもラフィエルさんも正しい行動したと思う。

 

「もしかして目が不自由だからこそ、皆が天使に見えたのかもしれないね」

「でもあの子、アンタも天使に見えたみたいな話をしていたわよ?」

 

確かに・・・なんで彼女は僕も天使に見えたんだろう。まぁ、サターニャさんも天使に見えた感じだっただし多分考えすぎなんだろうけど。

 

「まぁ、どうでもいいけどな・・・」

 

ガヴリールはいつものように、気怠そうな声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――次の日―――

 

珍しく皆、用事があるらしく先に帰った。僕は皆いないので料理の勉強出来るチャンスと思い調理部に足を運んだ。そして委員長と一緒に田中さんと上野さんに、というかほとんど田中さんに料理を教えて貰った。部活が終わると教えて貰った料理を早速実践して誰かに食べて貰いたくなる。

新しい料理を覚えると誰かに食べさせたくなってしまうのは何でだろう。

 

そして僕は一人でまだ少し寒い帰り道を一人歩いている。すると昨日あった少女が気になり、寄り道で昨日の公園に行ってみることにする。

 

公園に着くと彼女は昨日と同じベンチに手を温めながら、温かいココアを飲んでいた。

僕も自販機で温かいコーヒーを買い彼女の元へ近づいて行く。彼女は目が不自由だが僕の気配は分かったようでこちらを振り向き、明るい笑顔で笑ってくれた。

 

「お兄さんも来てくれたんですね?」

「も?」

 

も、という事は僕以外にも彼女に会いに来ている子がいたってことだ。

 

「はい、お兄さんが五人目ですね」

「やっぱり、ガヴ達も来てたんだ」

「ヴィーネお姉さんはカイロを、サターニャお姉さんはメロンパンを、ラフィエルお姉さんはクッションで、ガヴお姉さんは温かい飲み物をくださいました」

「・・・ご、ごめん。なんか僕だけ何も出来なくて・・・」

 

なんだ、皆何か持ってきてたんだ。僕も何か持ってくれば良かったな。

そう思っていると、少女は慌てたように両手を何度も横に振る。

 

「い、いえ。私は皆さんがこうして会いに来てくれるだけで嬉しいですから」

 

そう言ってくれると嬉しいが、やはり申し訳ない気持ちが消えるわけではないので落ち込んでいると。少女から話かけてくれた。

 

「いつも、お姉さんたちと仲がいいんですか?」

「うん。そうだねいつも良くして貰ってる。」

「もしかして、あの中に彼女さんとかいるんですか?」

「ううん。みんな友達だよ?」

 

そう答えると、少女は何故か困ったように笑う。何でだろう・・・もしかして何かマズいこと言ったかな?

 

「でも、どうして?」

「い、いえ!?・・・皆お兄さんの話をするとき嬉しそうに話してくれましたから」

 

なんだろう、それすごい気になる。僕が内容が気になり会話の内容を尋ねると困ったように断られてしまった。少女は悪い事は言ってないので安心してくださいと言うので僕は素直に少女の言葉を信じることにした。

 

僕はふと時間を見ると、それほど話し込んではいないがすでに親が心配するような時間になり始めていた。なぜ彼女はこんな時間までこの公園に座っていたのだろうか。

 

「どうして、こんなに遅くまでここに居たの?」

「・・・・」

 

そういうと少女は俯いてしまう。もしかして・・・またマズい事を聞いてしまったのだろうか。僕が何故そうなった分からず唸っていると、少女は小さくよしっと声をだし、大きく頷き僕の方に振り向いた。

 

「・・・私、近いうちに目の手術を受けるんです」

「じゃあ治るんだ!良かった~」

 

良かった、心の底から僕は安堵する。

そうなるなら僕もすごく嬉しいし、それに彼女自身にとってもそれは幸せの事だと思うし。だが彼女の話はここからが本当の話だった。僕は黙って彼女の話に耳を傾ける。

 

「でもその手術難しいらしくて、失敗したらもう二度と目が見えることはないだろうって」

「そう、なんだ・・・」

 

僕は、彼女の言葉に急に声が出なくなってしまった。

 

「私の両親はあなたが決めなさいって言ってはくれるんです、けど迷ってます。一応見えにくいだけで、今のままでも見えないことはないんです。だから余計手術を受けて失敗したら、今よりもっと見えなくなってしまうのが怖いんです。」

 

ここで僕はどう答えればいいんだろう。『きっと成功するから手術するから受けよう』なのか『リスクが大きいから止めた方がいい』なのか。

いやきっと違う。

これは彼女の問題なのだ。

僕が決めることではない。でも僕にだって出来ることはある――――

 

 

 

「僕はね、あることが切っ掛けで学校に最近までいけなかったんだ」

「えっ?」

 

そう声を漏らした少女だったが、それからは何も言わず黙って僕の昔話を聞いてくれた。

 

「些細な事でね、小学生のころ自分が嫌で逃げたんだ。それから中学校もほとんど行かなかった。行かないととはずっと思ってはいたんだよ。・・・でもなかなか勇気が出なくて。」

「でも、今は普通に過ごせてますね?」

 

彼女の問いかけに僕は少し間を開け肯定した。

 

「うん。僕のお父さんが高校の時の話をしてくれてそれで頑張ってみようかなって思えたから。でもそれでも家を出るのはやっぱり怖くて、玄関の扉が多分あの時が一番重いなって思ったかな。どうにか家を出た後も怖かった、また自分は上手くいかないんじゃないかって気がしたから。でもそれで終わりだった。」

「えっ」

 

再び少女は声を漏らす。だが今度の声は予想外で驚いてしまったような顔をしている。でも僕の気持ちに嘘はなかった。

 

「うん。怖いと思ったのはそれだけ。学校に着いたら気分は悪くなったけど助けてくれる人に出会ってた、そしてオドオドしていた僕に声をかけてくれた。その時声をかけてくれた彼女とはうまく話せなくて逃げちゃったけど、声をかけてくれた子にありがとうって言うために学校に行ったのに、自然と友達が増えていて心地良い場所に変わってた。」

 

上手く話せたのかは分からないけど、彼女はじっと静かに僕の話を聞いてくれた。

 

「一歩目を踏み出すことは物凄く怖い事なんだ。でもね踏み出しちゃえば何とかなって、行きたい場所にいつの間にか着いているものなんだ。でも無理をするのはいけないと思う、逃げたいなら逃げてもいいからね?」

 

散々色んな事を逃げてきた僕だけど、今は幸せになれてるから。

 

「・・・私は手術を受けたいです。でも勇気がないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕もそんな時はたくさんあった。こんな時お父さんはどうしてただろうか、お母さんは――――

 

 

 

 

―――夕陽、ほら泣かないで。

 

―――お母さん・・・でも朝陽が泣いてたのに何も出来なかったんだ

 

―――でもこうして泣いてお母さんに話してくれるって事は、助けたい気持ちはあったんでしょ?それならこれを夕陽に上げるわ。

 

―――これってなあに?

 

―――これはね、勇気をくれる物なの。怖くて一人で動けないと思った時はこれを握っていなさい、お母さんの勇気をあげる

 

―――ほんとに?お母さんの勇気本当にくれる?

 

―――ええ、あげるわ。そのかわり約束して、もしあなたが勇気が出なくて踏み出せない人を見かけたらそれを渡しなさい。今度はあなたの勇気をその人にあげるのよ?

 

―――うん!約束する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだっ!」

 

そう、そういえばお母さんがしてくれた事をしてあげればいかもしれない。あれは気休めかもしれないけど彼女が必要としてる。なら今こそお母さんとの約束を果たす時だ。

 

「ごめん、また明日学校終ったらここで会えるかな?」

「えっ?・・・はい」

 

彼女は突然の行動に驚いてはいたけど、彼女は縦に首を振り了承を得た。すると僕は居ても立ってもいれなくなり彼女を残してその場を走って後にしたのだった。

そして僕は家に帰り大事に取っていた石の入った小さな袋を鞄の中に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガヴリール達は今日の夕陽の落ち着きのなさを不思議に思っていた。今日の夕陽は誰が話しかけてもから返事ばかりでボーっとしている。

そんな彼を不安に思ったヴィーネが世話を焼いている。クラスメイトからすればそれは羨ましい事なのだろうが、今の夕陽には盲目の少女の事で頭がいっぱいで教科書を逆さに持って時間が過ぎるのをずっと待っていた。

 

そして放課後となったその瞬間―――ボーっとしていた少年が突然目覚めたように物凄い勢いで教室を出て行った。

 

「あいつどうしたんだ?」

「そうね・・・怪我とかしなければいいんだけど」

「まぁ大丈夫でしょ」

 

昨日バラバラで行ってしまったのが迷惑かけたかもしれないと思い今回は皆で行く事となっていたのだが、夕陽は教室を駆け出していってしまい声をかけることが出来なかった。

仕方ないと四人で少女に会うために公園に昨日、一昨日同様向かっていた。その途中に少女にケーキでも買って行こうという話になり、少し買い過ぎてしまったケーキを抱えて歩いていると、ガヴリール達は不思議そうに目の前の光景を見るのだった。

公園の近くに着くと妙に騒がしくガヴリールは天使の力なのか見ように嫌な予感が頭の中を駆け巡った。その人だかりにガヴリール達が近づくと、ガヴリール達の耳におばさん二人が何やらコソコソと話す声が入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

―――大丈夫かしらあの子・・・

 

―――急いでいる車に轢かれそうになった女の子を庇って轢かれたものね

 

 

その瞬間、ガヴリールは先ほどの嫌な予感とは比べ物にならないほどに気持ち悪い感覚に襲われた。

それはどうやら他の三人も一緒のようで、目を合わせあうとその人混みの中心に駈け出す――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――するとそこには泣き崩れてしまっている、盲目の少女がそこにいた。

 

「・・・お兄さんが・・・お兄さんが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救急車に運ばれていくつい先ほどまで見ていたはずの少年の姿が、ガヴリール達の目に映った

 

 

 

 




サブタイから、分かるように後編もあるのでよろしくお願いします!
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