今回は時間軸を戻してオリ主視点からとなります。
話が全然進んでないです。(笑) いや全然笑い事じゃないんですけどね。
本文に伏字を付けてあるんですけど、これって平気なのかな?
それではどうぞ。
「――はぁっ!」
「っ!」
リトルガーデン地下の訓練場――昨日の
彼女達曰く、これからは自分達の行いは自分達なりの責任感を持つという意志の下、俺は昨日の騒動による見返りとして彼女達に鍛練の相手をしてもらえるよう要求した。自分達で責任を持つと言ったのだから、これくらいの事をしても罰は当たらない筈だ。・・・・・・当たらないよね?
二人は快く承諾してくれて、今は槍の特訓をしていると言う"ノアさん"に相手をしてもらっている。放たれる突きを双剣の片割れで弾きながら、反対の剣を振りかぶる。直前で躱され、身を翻したノアさんは一旦距離を離して木製の槍を構え直す。
「存外動くんだな、ノアさんて」
「そ、そうかな? 昨日の"アキラ君"や如月さんと比べたら全然だけどね」
双剣を下ろした俺の言葉を、照れくさそうに笑うノアさん。実戦でもない特訓なのだから、無理に緊張していなくて当然だけど。
さて。この時点で気付いた人もいるだろう。俺は今"ノア"とさん付けだがそう呼んだ。彼女自身も、俺の事を名前で呼んだ。そう呼び合うようになった理由は一つ――鍛練を始める前に発した彼女達の言葉が事の発端だった。
『あ、あのっ! これからは一緒の学科で学ぶわけですし・・・な、名前で呼んでもいいですか!? 是非に!!』
と、彼女に頼まれたからだ。これからは同じ学び舎で時間を共有する事も多くなるだろうからと言うのが理由らしい。そうなったらほぼ『友達』という関係に変わりない。だったら友達らしく名前で呼び合おうという極論に至ったのだという。敬語も無しでというのは後で追加された。
ちょいと無理があり過ぎませんかね? いや、それがこの世界での友達の作り方なのかもしれない。某魔砲少女も言ってたしな。友達になるの、すごく簡単。名前を呼んで?とか名言残してるくらいだし。
それに何よりだ。身長差があるだけに上目遣いのおまけつきで見詰められたら、そら断ろうにも断り辛くなってしまうというものだ。結局そのついでとして俺は彼女の事も名前で呼ぶことに決まってしまっていた。
そこに劉
「そういえばもう昼前か。俺は昼飯食べにここで一旦終わるけど、二人はどうする?」
気が付けば、彼女と鍛練を始めてから1時間が経過していることになる。外は昼も良い頃合いなのでそろそろ食堂に人が集まり始める頃の筈だ。正直に言って今朝のサンドイッチだけじゃ腹は膨れん。昨日晩飯を食わずに朝まで眠ってたから文句を言えないけれど。今から行こうかと、俺は鍛練の中断を提案する。
「あ、それじゃわたしも終わろうかな。雪梅はどうするの?」
「わたしも賛成。アキラ君の動き、もうちょっとだけ見ていたかったけどそろそろお昼だから、今から行かないと混んじゃうかもしれないし・・・そうだ。折角だから、わたし達もお供しようよ!」
「いいね! アキラ君、いいかな?」
「別にかまわないよ」
「「よっしゃ!」」
そんなハイタッチしなくても。それなら早速と言いたいところだが・・・このままジャージで行くというのはいただけないか。せめてシャワー浴びてから行くとするか。
「その前にシャワーだな。さっと自室に戻ってささっと体を洗い流してくるか。俺の制服自室だし」
「そうだね。わたしも汗でびしょびしょだよー」
「わたしはやってないし、制服に着替えたら二人が来るまで食堂で席でも取っておこうかな」
お、それは助かる。シャワー浴びていざ食堂へとなって着いたら座る席が無いなんてことは避けたかったからそれはありがたいな。ここは俺も便乗しておこう。
「ついでで悪いんだけど、俺が座る席も確保しといてくれないかな?」
「ついでと言われなくても最初からそうするつもりだから平気だよ」
「そうなの? ありがとう」
俺は短く礼を言いつつ、そのまま二人と一緒に寮へと戻る。
男女の寮は分けられているが隣接しているので離れてはいないため、汗を洗い流すのは10分ほどで済ませられるだろう。
予定通り10分ほどでシャワーを済ませ、今朝着ていたのとは別の新品のシャツと制服に袖を通した俺は即行で寮の外へ。するとほぼ同じタイミングでノアさんが女子寮から出てきて合流。雪梅さんは既にジャージから制服に着替えて食堂へ向かったのだという。なら俺達も急がねば。
今日は休日。いくら多くの生徒達が繁華街にいるからって、全員が全員出先で外食という事はないだろう。外食にせよ食堂にせよ、良い場所を取って食事を楽しむというのは風情があって良い物だ。去年まで春は数少ない友人達と一緒に花見に行ってた口なので、どうしても外で食べたい時は意地になってでもそうしたい体になってしまっている俺だ。だから俺的には外のテラス席なんかが良いんだけどなー。テラス取っておいてくれないかなー、雪梅さん。
さて。食堂に着いたのは良いものの、思いのほか、中に人は少なかった。時計の針は12時を少し回った程度で、早く来すぎたというのもあるのだろうが、多分ほとんど外食で済ませてるというのが妥当だろうか。
それは当然と言えばいいのか、まぁ何よりも人が少なくてテラス席が空いているのは喜ばしい事だ。朝から汗を掻いた上に折角の良い天気なのだし、外で食わないのは勿体ない。きっといいひと時になる筈だ。
「ノアー、アキラ君! こっちこっちー!」
食堂に入ると、室内の奥――ではなくて、窓ガラスの向こう側から呼びかける声が聞こえた。言わずもがな、武芸科の制服に袖を通した雪梅さんだ。外にいるという事は、どうやらテラス席を取っておいてくれたらしい。ナイスゥッ!
俺達は受付よりまずそちらへ向かう。
「ありがとね、雪梅。先に席を取っておいてくれて」
「いいわよ、礼なんて。元からテラス席を狙ってたし、何より人が少なくて助かったわ。おかげでこうしてのんびり席を確保できたんだから」
どうやら彼女も外で食事をとる事を考えていたらしい。意思疎通とは言えないけれど一緒の考えで嬉しいです。それにしても椅子が三つって事は・・・。
「あれ、これもしかして俺も相席する系?」
「する系だよ。いいでしょ、別に」
まぁ別にかまへんけど。
「さて。それじゃ俺がここに残ってるから、君達二人は先に料理を取ってきなよ」
「いいの?」
俺が頷くと、二人は短く礼を言って早足に受付に向かった。ノアさんが俺の分も注文してこようかと訊ねてきたが、自分の分は自分で注文するので遠慮しておいた。ここはほら、"レディファースト"ってやつです。使い方はだいぶ間違ってるだろうけど気にしない気にしない。
10分もしないうちに彼女達はそれぞれに注文した物をトレイに乗せて戻ってきた。早いなオイ。
「お帰り。随分早かったね。そんなに空いてたのか?」
「うん。と言っても、多分まだお昼を過ぎる手前だからじゃないかな」
ノアさんの言葉に「なるほど」と俺は頷きながら席を立つ。自分の分を注文しに行くためにだ。
注文を取る為の受付に来た俺はまずメニューを見る。ふむふむ・・・どうやら和・洋・中と種類別に分けられているようだ。数えてみるだけでもそれぞれ十種類以上ものレパートリーがある。これってそこら辺のレストランより充実してない?
「注文にあんまり時間を取るのもあれだしな。今日は定食にしとくか」
即決で決めて俺は注文を受付のおばちゃんに口頭で伝えていく。ちなみに注文したのは『鰤の照り焼き定食』だ。わぁいぶり。アキラぶり大好き。
俺が戻ると、二人はまだ料理に手を付けず、談笑していた。
「ただいまぞい」
「あ、お帰りー。アキラ君は・・・なるほど、定食なんだね」
「見事にバラバラになったのね」
ノアさんはパスタを中心としたサラダ付きの洋食、雪梅さんは出身柄か中華系で春雨サラダと回鍋肉か・・・ちょっと待って。それ10分も掛からないで出てくるような料理じゃないよね? どういうこと?
「アキラ君は・・・へぇ。お魚なんだね。男の子にしては珍しいよね」
「だよね。普通はお肉中心とか頼んでそうなのに」
「肉も魚も好きさ。その中でも鰤は特別ってだけ。さ、早くいただこうか」
回鍋肉が何故短時間で出てきたのかは謎だけど、今はとにかく目の前の昼飯に集中するべきだな。気になりすぎてても埒が明かないし、まぁ言うほど重要ではない筈だからスルーでいこう。
俺の一言で二人は「はーい」と短く返事を返しながら目の前の料理に意識を向ける。俺も箸を取る前に「いただきます」と言葉にしてから箸を持つ。
その後はつつがなく昼食は進み、特に何事もなく食事を終えると二人とは別行動になった。食べている間、二人とは雑談などで過ごしていた。主に話題となったのはこの後の事だ。二人は最初
俺はと言えば、そんな二人に代わって「じゃあ俺は繁華街に出るかなー?」と意地の悪いドヤ顔を浮かべながら呟いてみるもんだから、二人からはそりゃもうジト目で睨まれるのなんの。ハハハ、効かぬな。故郷で数少ない友人の親父さんに睨まれるのと比べたら、天と地ほどの差がある。随分と睨みに耐性が付いたからな。その程度の睨みで俺の素早さは下がらんよ。
そんなこんなで、俺は二人と別れて一人繁華街へと向かう。別に訓練場へ行って鍛練しても良かったのだが、それは夕方にでも出来る事なので今はゆっくり時間を潰したい。その代り、ノアさんと雪梅さんの二人が今訓練場へと向かっているそうな。やはり一昨日と昨日の事が堪えたのだろうか、別行動になる直前の二人は努力せねばという気概にあふれていた様子だった。
鍛練に集中するのは良い事だけれど、根を詰めすぎないようにと伝えているから恐らくは大丈夫な筈だ。多分。
さて・・・俺はと言えば、特にあてもなく繁華街を悠々と歩いている。行き交う人の群れを掻い潜りながら、店の外側に展示されている様々な商品を立ち止まっては流し見していく。
繁華街というもんだから、やはりと言うか衣服を取り扱う店が多い。俺は如何せん服に対する拘りなんて無いので無頓着だ。寒ければ暖かそうな物を、暑ければ涼しそうな衣服を着れればいい性質だから、見てても対して面白くもない。
前世含めて見せる相手なんて一人もいなかったしな。一応今生の友人には女の子もいるが、知り合い以上友人未満だからそんな風に意識した事はない。俺ってば転生しても浮いた話が1つもないってのはどうなんだろうな。自虐ネタにもなんねぇな、こりゃ。
「それにしても・・・やっぱり男女の比率が激しいな」
周りに目を向けてみると、一般人の中にはリトルガーデンの生徒が多数いる。俺と同じ新入生もそうだけど、上級生もちらほらと見える。その中でもやはり、男女の頭数が揃っていない。
そもそもだ。ハンドレッドが反応するのは第二次性徴を迎えていない未成年ともう一つ、『女性に反応する事が多い』という事だ。だから年々、男子の数も増えているとはいえ、それでもまだ女性の方が比率が高い。これいつか女性にしか反応しなくなるんじゃないかと思わなくもないが、さすがにそこまではいかないだろうな。別のラノベ作品じゃないんだし。
「もしかしてハンドレッドって中身若い女の子が大好きなおっさんじゃないのか?」
それで男に反応する事も有るって事は、「あぁ、偶には男にも反応してやらねぇとなぁ。まぁ適当な奴に反応しとくかwww」みたいな軽いノリで・・・ヤベ、そんな事を考えたら急にヴァリアブルストーンに触りたくなくなってきた。
駄目だ。変な事を考えたせいで頭の中がメタボ体型で汚い油ぎっしゅなおっさんで占められていく。吐きたくなってきた・・・。何か頭の中をすっきりさせるような清涼剤的な何かがあれば何とかなりそうなんだけど・・・そんなものが都合よくあるわけないんだよな。
「ん?」
ふと視界の隅に映った立て看板に意識が向いた。板状で青を基調とした色合いで彩られた縦長のそれには、『アニ〇イト・リトルガーデン店』と書かれていた。
「え・・・マジ? メ〇トとかあんのここ?」
二度三度目を擦って確認してみる。が、やはりアニ〇イトと書かれていて、それが目の錯覚じゃない事を認識する。ここなら清涼剤どころかおっさんなんか忘れてゆっくりできるんじゃね?
「メ〇トがあるなら行くっきゃねぇよな!」
そうと決まれば即メ〇トへ走る。周りに迷惑が掛からないよう早足且つ人込みを回避しながらだけど。
メ〇トに直行した俺は気が付けば一時間もそこで時間を費やしていたて
店内は思いの外綺麗で掃除も行き届いており、そして規模も大きくて広かった。地元の店舗どころか、都会のものよりももしかしたら広いのかもしれない。行ったことないからわからんけども。
ていうか何でメ〇トがあるんだろうな? まぁこれで繁華街に出向く目的も出来たわけだし、良しとするか。かくいう俺の手元にはリトルガーデンで初めて購入した雑誌の入った青い袋が下げられている。
「あ、アキラだ」
「ん?」
ふと名前を呼ぶ声が聞こえ、そちらへ振り向く。
そこには同じ武芸科の制服を着たエミール、如月がうっすらと驚くような表情を見せながら立っていた。さらに如月の横には、前世で見慣れたような今生では見慣れない幼い女の子がいた。丸みを帯びた白い独特な形をした車椅子らしき物に乗って。
「如月とエミールか。今朝ぶりぞい」
「ぞ、ぞい? 変わった挨拶だね」
お、やっと反応してもらえた。さっきもノアさんと雪梅さんにも言ったんだけど、軽くスルーされて悲しかったんだよね。顔には出さなかったけども。
「んで。そちらの車椅子少女は? 誘拐か? 誘拐なのか? もしそうだったら俺は二人を然るべき場所へ突き出さなきゃならんのだが」
「違う。断じてそんなのじゃないから。俺の妹だから。だからその手に持った端末を仕舞ってくれ! 真顔でやられると冗談に聞こえないから!」
「そうだよ、ハヤトはそんなことしないよ! 彼女は本当にハヤトの妹さんだから!」
と、真顔でそんな事を言い放ちながらリアリティーを出す為にPDAを片手に見せつけたら二人の焦る顔が面白いのなんの。エミールまで焦る必要ないのになwwwとはいえ、さすがにこれ以上は件の車椅子少女が置いてけぼりを食らうのでこれくらいにしておこう。もうちょっと続けていたかったけど。
「冗談さ。ちょっとからかってみただけだ。そんなに焦るなよ。ほら、妹さんとやらが困っているぞ?」
「誰のせいだと思ってる(のさ)・・・」
おお、ハモった。面白いな、この二人。
「えっと、兄さん・・・この人とはいったいどんな関係なんですか?」
置いてけぼりだった少女が隣の兄に訊ねる。その表情は訝しむ様に疑いのこもった表情だ。
「あー・・・どんな関係も何も、こいつは俺達と同じ新入生だ。四宮、こっちは俺の妹の『カレン』だ。一応挨拶をしたらどうだ?」
一応ってなんだ、一応って。まぁ自己紹介は自分からすべきだよな。
「はじめまして。俺は四宮アキラです。如月君と同じ武芸科の新入生です。よろしく」
「あ、はい・・・カレ、"わたし"は『如月カレン』と言います。よろしく・・・です」
慌てて一人称を装った少女の自己紹介が終わる。うん、率直に言って可愛いわ。恐る恐るといった様子で兄の服の裾を掴みながらちゃんと言い切るところは偉いな。中学生の年齢でもそれは変わらないな。さすが二次元。やっぱり黒髪ロング妹は至高だよね。
少女――如月カレンは幼い頃から病弱で車椅子生活を余儀なくされている。そもそも如月ハヤトがこのリトルガーデンへの入学を決意したのも、ワルスラーン社が妹さんの治療と治療費を全て負担してくれるという破格の条件があったからに他ならない。無論、本人にもそれ以外の理由があるのだが、今は語らないでおこう。
リトルガーデンには世界最先端の医療技術が完備されている。ナノマシン治療というのもあるくらいだ。そんなところで治療を受けられるのなら、入学もやぶさかではないのだろう。・・・その入学式当日には面倒事が起きたけれども。
「あの・・・一つお伺いしても、いいですか?」
「ん。なんだい?」
対面する形で車椅子の前に屈んだ俺に、妹さんは訝し気な様子を隠しもせず、さきの自己紹介の時よりもさらに疑いのこもった眼差しで俺を睨み付ける。幼女にガン見・・・それがジト目ならばある種の病気を患った大人ならご褒美なんだろうが、俺からしたら蚊に刺された程度で痛くも痒くもない。つまり俺にそんな性癖は無いわけです。はい。
つまり何が言いたいかと言うと、俺はロリコンじゃありません。(キリッ
「あなたは――
男の人が好きだったりしますか?」
「」
ジト目で目元に影の掛かった顔つきで真面目にそんな事を聞いてきた。当然、俺はその質問に即答する事は出来ず、一瞬だけ硬直した。何を聞いてんだ、この子。
「カレン! 何変な事を聞いてるんだよ!? 四宮にそんな趣味は無いって!」
「だって! とてもじゃないけどエミールさんが男の人に見えないんです! さっきからカレンの前でも構わず兄さんになれなれしいですし! 本当に男の人だったら、その・・・そういう趣味の人だって疑うじゃないですか! それにもしかしたら一人や二人、そういう趣味の人がいるかもしれないし!」
「いや、あれはコイツが勝手にそうしているだけで・・・とにかく、四宮もエミールもそういう趣味は持ってない筈だから!」
「僕は好きでくっついてるけど?」
「エミールは頼むからちょっと黙っててくれ!」
うーん。仲睦まじい様子を見ているのは楽しいんだが、そろそろ移動した方がいいのではないだろうか。ここは往来の中で、しかも繁華街のど真ん中。そりゃ騒げば人は寄ってくるわで周りはガヤで囲まれるようになる。
ま、これでも知り合いなんだから、そろそろ助け船寄こしてやるか。
「あー、妹さん。例えお兄さんにそんな趣味があったとしても、俺にはさすがに無いからね」
「おい、さりげなく俺にはその趣味があるような言い方をするなよ」
「それにエミールもああ言ってることだし、単なるスキンシップとして捉えればある程度は緩和されるんじゃないかな? いくら中性的な顔立ちをしてても、あくまでもお兄さんとは友達同士なんだしさ。そう思えば必要以上に気にならなくなると思うよ」
「うーん・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、そういう捉え方なら・・・まだ、大丈夫だと思います・・・多分」
随分と葛藤があったのか、唸りながらも納得しづらい様子でとりあえず頷いてみせる妹さん。案外物分かりが良いな。原作では兄に関連する事なら結構手厳しい印象だったけど、やはりそこは優しく諭してあげるように言ったからだろうか。抜群とまではいかなかったけど、多少の効果はあったようだ。
顎に手を置いたまま考え込む様にしきりに首を傾げる様子は見ていて飽きないな。そんな妹さんの様子に驚いたような表情を浮かべるのはほかでもない如月兄だ。
「凄いな。あのカレンをうなずかせるなんて」
「要は捉え方の問題だからな。自分の目と考え方に指向性を持たせれば、ある程度の柔軟性は持てるから。少なくとも面倒な事態は避けられるはずだ」
横に付いて妹さんには聞こえない小声で呟かれた言葉に答えると、如月は「なるほど」と感心するように頷いた。顎に手を当てながらの仕草が妹さんとそっくりだ。
まぁ尤もな話。エミールの正体にも関係してくるからな。この時点で変に勘繰られて正体がバレたりでもしたら、今後の展開にどう影響を及ぼすか。昨日の件も含めて解らないから、慎重を期するほかない。
原作の展開を保てないと何が起こるか分かったもんじゃないというのが俺自身の主な理由だ。まだ物語は始まったばかりで、今の時点でエミールの正体がバレるのは駄目だ。確か原作だと、昨日の夜中にエミールが自らの正体を如月に語った筈だ。それと二人の過去の関係性についても。だからここは一応注意を払って、俺自身も正体に関しては知らない体で話を繋げていく。
「ところで、アキラはここで何をしていたの?」
そこで当の本人が話しかけてくる。しきりに俺の手にある青い袋に目を向ける。
「あぁ、メ〇トがあったから寄ったんだ。これはそこで買った戦利品」
「メ〇ト?」
「アニ〇イト。アニメ専門店の略称だ」
エミールがなるほどと呟きながら袋の中身を隙間から覗き見る。あ、ちょっとー!
「・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ、アキラ」
「・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ」
中身を確認したエミールから絞り出したような声で呼ばれる。その声色は何処か暗く、俺から見たそいつは何かを訊ねるのを躊躇っている様子だ。
なんだよ、言えよ。
「えと・・・君が買った物なんだけどね。その・・・・・・暗くて見えづらかったんだけど、僕の目が正常なら・・・・・・"女の子同士が寄り添ってお互いの顔を必要以上に近づけているような構図の表紙"が見えたんだ。これって・・・」
「百合漫画ですが何か?」
「ハッキリ言った!! えっ!? 君ってそういう趣味持ってるの!? こわ!!」
おいおい、こわ!!とはまた随分な言い草だな。百合って尊いんだぞ? 少なくとも腐った女子が妄想を膨らませている男同士の絡み合いなんぞよりまだマシだ。
「別にいいだろ。好きで買ってるんだ。俺がどんな趣味持っていようが二人には関係ないだろ」
「うっ・・・まぁ、そうなんだけどね・・・アキラって案外、隠そうとしないんだね」
「趣味に関してはオープンな方だ。変に隠しているよりかは気が楽だからな」
俺がそう言うと、エミールは一瞬だけ目を見開いたと思ったら、今度は苦笑いを浮かべながら呟いた。
「そっか・・・・・・・・・・・・・・・"
暗い様子で俺の言葉に反応を示したエミールが呟いた言葉を聞き逃す程、俺の聴覚は壊れていない。難聴系ラノベ主人公とは違うのだよ、難聴系ラノベ主人公とは!
「・・・・・・」
ついでに言えば、そんな様子のエミールの隣で様子を窺う如月の難しそうな表情を見逃す俺ではなかった。違うからね。文面的に変な意味に聞こえなくもないけど俺にそんな趣味は無いからね? ほ、本当なんだからね!
「え、えっと・・・・・・そ、そうだ! 兄さん! 早く食堂に行きましょう! カレンお腹が空いて倒れそうです!」
様子の可笑しい二人に気を遣ってか、さっきまで首を傾げていた妹さんがその場の空気を取っ払うようにそう言い放った。締まらないなぁ・・・。
決闘の原因となった二人と友人になり、原作主人公とヒロインとのおふざけ回でした。
ついでにオリ主の好物は百合でしたーな回でもありました。話が全く進まない。
この作品のメインヒロインも全く出てきてない。(大問題)
そう思っているあなた。安心してください、次回は出ますよ!(誰かと言ってない)
と言う訳で次回投稿も未定です。
それでもいいと言う方はまt(ry
それではまた次回。ノシ
追伸、三の丸さん。誤字報告、ありがとうございます。修正しました。