ハンドレッド―とある転生者の奮闘記―   作:konvoi

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ごめんなさい。焦って投稿ミスしてしまいました。
ですが本文は完成しているので改めて投稿させていただきます。

このミスも含め、2週間近くも時間を掛けてしまい申し訳ありません。文章詰めてたら軽く12000字以上超えてました。感想送ってくれた方にもお待たせして本当に申し訳ありませんでした。

それと今回は原作キャラの戦闘メインなのでオリ主はまだ戦えません。というかまだ序章がまだ続きます。・・・あと1話くらいで終わらせます。ごめんなさい。

謝罪してばかりですね。それでは第二話をどうぞ。


タフタフ☆サベージ

 

「それでは・・・行きますわよ」

 

 

 クレア・ハーヴェイ――リトルガーデン艦長にして生徒会所属の生徒会長であり、選抜隊(セレクションズ)のリーダー格を兼任する美女。

 武芸者(スレイヤー)の中でもトップクラスの実力と指揮能力を持ち、世界中にその名を轟かす『ワルスラーン社』の社長令嬢でもある彼女が、今目の前に立っている。

 そして俺にとっては転生してからも未だに記憶に深く根付いている存在。そんな彼女が、俺達家族を襲わんとしたサベージに対して敵意を向けながらそう呟いた。

 それは向こうも同じことで、砲撃を防がれたサベージは明確な敵意を持ってして、その腕の鋏を振り上げる。

 

「――《気高き戦姫(アリステリオン)》!!」

 

 彼女の言葉に反応するように、クレアのハンドレッドである周りの浮遊砲台――《気高き戦姫(アリステリオン)》の内の三基が前に躍り出る。

 三基の浮遊砲台は後部同士で接続して壁となり、サベージの鋏を防ぐ。それだけにとどまらず、残った二基の浮遊砲台が眼前のサベージに向かって先端の砲口から緑色の光線―武芸者(スレイヤー)は自らの体内に循環する生命エネルギーを"センスエナジー"、通称エナジーと呼び、それを戦闘に用いる―それを放射する。

 その巨体故に回避行動が取り辛いサベージは光線の直撃を食らい、たたらを踏みながらもその場にとどまった。その上、直撃を受けたのに皮膚の表面に煤が付いた程度で大したダメージを与えられた様子がない。

 

「あら。他の個体と比べて堅いのですわね。でしたら、これはどうかしら?」

 

 その言葉と同時、壁となっていた三基の浮遊砲台も戦列に参加。全ての砲台が攻撃態勢に入る。しかも、その攻撃は先ほどのように光線を放射するのではなく、弾丸状に形成した光弾を連続で発射し始めるというものだ。さながらビームガトリングガンである。あとユニ〇ーンガン〇ムのシールドファ〇ネルを思い出した。まさかIフィールドとか付いてないよなアレ。つうかあんな使い方があったのか。原作にはなかったような。

 先ほどの直撃を受けてなお踏みとどまったばかりでなく、今度は連続掃射による攻撃を受け始めたサベージは身を丸くして絶え凌いでいる。どうやら反撃の糸口すら見せないようだ。

 すると五基の内、二基が掃射を停止してエナジーを収束し始める。僅か数秒でチャージを終えた一際大きなエナジーの弾丸が2発同時に発射され、その場に釘づけにされたサベージに襲い掛かる。

 瞬間的に圧縮されたエナジーの塊がサベージの皮膚に触れると大きな爆発を起こし、その衝撃に耐えきれずにサベージは後方に吹き飛ばされる。

 

 

「すっげ・・・」

 

 俺は思わずそう呟いた。実際の戦闘――いや、確か抗戦だったか。その光景を前にして素直にそう思った。

 

「あれが、クレア・ハーヴェイか・・・」

「噂には聞いていたけど、まさかここまでなんて」

 

 父さんと母さんが落ち着きを取り戻したのか、感心するように静かに呟いた。・・・どうでもいいけど、俺はいつまで両親に覆い被されているんだろうか。いやほんと、両側から挟まれてちょっと息苦しい。はたから見たら完全に変な一族にしか見えないなこれ。

 

「そちらの方々。動けるようなら今すぐに移動しなさい。ここからは戦闘が激化する恐れがあります。今のうちに避難所まで退避を」

 

 敵を吹き飛ばして尚も射撃を続けるクレア・ハーヴェイが背後にいる俺達に言う。それもそうだ。助けられたからか、無意識に安心しきっていたようだ。今のうちに移動しないと。

 

「エリカ。彼らの護衛を任せますわ」

「了解しました」

 

 赤い縁の眼鏡を掛けた女性、エリカ・キャンドルが俺達の傍に駆け寄り、声をかけてくる。

 

「立てますか?」

「あ、ああ。すまない。助かった」

「いえ、これも私たち武芸者(スレイヤー)の仕事の内ですから。近くにリベリア軍の部隊が待機しています。とりあえずはそちらまで護衛します」

「わかりました、ありがとう」

「あ・・・ありがとうございます」

 

 退去を促されながら両親がそれぞれに礼を言う。俺も戸惑いながら言うと、彼女に先導されながら移動を始めた。

 

 

 

 

 

 ★☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「――どうやら彼らは離脱できたようですわね」

 

 サベージと相対してから数分。クレア・ハーヴェイら選抜隊(セレクションズ)が救助したアキラ達家族が自分たちから離れた事を確認するように呟く。その呟きに答える者がいた。もう一人の生徒会、リディ・スタインバーグである。

 

「そのようです。他にも3体の個体がいるようですが、そちらはリベリア軍所属の部隊が対処しているようですね。こちらも直ぐにでも」

「ええ。終わらせましょう」

 

 その言葉と同時、クレアが操作する浮遊砲台がそれぞれの砲口から、先の光線よりも一際極太の光線を照射する。計五基の砲台から照射された光線はサベージの左右の足と右腕を打ち抜き、表面にある模様よりも一際光り輝く頭部が砕け散り、黄色の体液が漏れる。

 サベージはかろうじて五つの内一つの光線を左腕で防ぐも、完全に受け流す事は出来ずに表面の皮膚だけが砕かれ、黄色い体液を辺りにまき散らす。

 そして頭部から露出する形になったサベージの急所――所謂心臓部に値する"(コア)"が、黄色の輝きを帯びながらその外観を露わにする。

 

「行きますわよ、リディ!」

「了解!」

 

 クレアからの呼びかけと同時にリディが駆ける。左手の盾を投げ捨て、右手に持つドリル状のスピア──《漆黒の天槍(ミドガルドシュランゲ)》を前に突きだした。

 リディの身長分もあるほどの長いスピアに、紫色の輝きが宿る。それに伴い、爆発的なエネルギーが槍全体から溢れ出す。

 

「――貫く」

 

 リベリア軍の武芸者(スレイヤー)部隊がいるとはいえ、他の個体にも対処しなければならない為、クレアとの連携によって一分でも早く目の前のサベージを屠らなければならない。ならば、この一撃で終わらせる。

 リディは呟き、スピアの矛先を定める。目標はサベージの(コア)。他の部位はほぼ死に体。余計なことは考えず、(コア)を破壊する事だけに集中する。

 

「っ!!」

 

 右腕両足をもがれて身動きの取れないサベージの(コア)に意識を集中させ、スピアを前に突きだしたままの体勢で地を駆け出すリディ。

 そのリディに気が付いたのか、サベージは残る左腕の鋏を獲物を引き裂かんとばかりに振り上げる。しかし、それを妨害する者がいた。

 

「させませんわ!」

 

 クレア・ハーヴェイである。彼女は浮遊砲台二基を量子変換し、一丁のライフルへと再構成する。右手に握ったグリップから長銃身が形成され、中央には細長いバレルが延びている。

 そんな長大なライフルをすぐにサベージの左腕に狙いを定め、間も置かずに一射を放つ。エナジーには指向性を持たせることで貫通力を高める事も出来る。一定の方向へ螺旋状に飛ぶ一射は見事にサベージの左腕――人間でいうところの二の腕を貫通、分断せしめた。

 

――グォォォォォッ!!

 

 砲撃以外の攻撃手段を断たれたサベージは叫びながらも口を大きく開く。その中央には筒状の発射口があり、今すぐにでも放たんとばかりに眼前の敵対者達に抗う姿勢を見せるが、時すでに遅し。既に近くまで迫っていたリディが地を蹴り出してサベージの頭頂部――(コア)に向けて跳躍していた。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 (コア)の真上へと一瞬にして跳躍したリディが雄叫びを上げながら、落下しながらスピアを突き出した。

 ドリル状のスピアが回転し、唸りを上げる。エナジーを帯びながら突き出された突貫がサベージの(コア)に触れた。

 回転が増し、更に唸りを上げ続けるスピアが徐々に(コア)に亀裂を入れ始める。ピキリ、と音を立て、リディはスピアの勢いをさらに加速させる。

 サベージは自らの(コア)に亀裂を入れられた程度では直ぐには死なない。粉々に砕けるまで破壊しなければ、撃破する事は出来ないのだ。そのために、リディは《漆黒の天槍(ミドガルドシュランゲ)》の威力を高めている。

 (コア)に亀裂が入っているなら後はこちらのもの――あと一歩で(コア)を破壊できる。そう確信し、リディは更にスピアの先端を(コア)に押し込んだ。

 

「これでぇっ・・・終わりだぁぁぁっ!!」

 

 宣言し、リディが叫ぶ。刹那、亀裂がサベージの(コア)全体に入り、スピアの先端が(コア)の向こう側へと貫き通した。

 心臓部を破壊されたサベージの全身から発していた黄色の模様は輝きを失い、それに伴い静かに沈黙。叫び声すら上げられずに絶命した。

 

「ハァ・・・ハァ・・・クレア様」

「ええ。まずは一体目、ですわね」

 

 軽い息切れを覚えながらもリディがクレアに向き直る。その意図を察してか、すぐに答えたクレアは海岸側へと顔を向けた。

 

「リディ、まだ戦えますか?」

「はい・・・問題ありません。行けます」

 

 リディの返答をきっかけに、クレアは浮遊砲台を使って自らも宙に浮かび上がり、他の個体がいるであろう地点に向けて飛翔する。その後を追いかけるように、地上でリディは自ら投げ捨てた盾を拾いながら走って追いかける。

 

 

 

 

 

 ★★☆☆☆

 

 

 

 

 

「こっちです」

 

 俺達が先ほどの現場を離れて数分走った地点の曲道、先導するエリカ・キャンドルが道を示してくれる。

 恐らく避難所までは結構距離が離れている。しかしなぜ彼女は地図もないのに避難所までの道がわかるのか。原作知識からだけど、彼女の掛けた眼鏡のレンズがデータリンクするモニタになっていた筈。それで避難所までの道を検索しているんだろう。ぶっちゃけあんな真正面にモニタがあって目が疲れないのかと思わなくもない。

 

「アキラ。まだ走れるか?」

 

 父が心配する言葉を掛けてくる。俺の手を引いて少し前を走る母さんも同じような表情を浮かべている。

 普段の厳格な父ならそんな言葉を掛けてくる事は滅多にない。これは本心で心配してくれているんだな。ならそんな父を安心させるため、俺はあえてこう言わせてもらおう。

 

「はい、アキラは大丈夫です!(榛名感)」

「「「・・・・・・・・・」」」

 

 俺がそう言うと、三人は揃って奇怪な物を見る目で俺を見てくる。とても避難中のやりとりとは言えませんねぇ。

 

「なんなのですか? その子。避難中に言うような事には聞こえなかったのですが」

「すまない。変なのは物心ついた時からだから問題ない」

「そうね。時折変な事を突拍子もなく言う子だから。でもいつものアキラだから逆に安心だわ」

(良いのですか、そんな扱いで?)

「ところでエリk・・・お姉さん、その眼鏡なんか光ってますけど大丈夫? 目痛くならない?」

「本当に突拍子もないですね! この眼鏡はモニタになってるので光ってるように見えるのは当然です! あとレンズがブルーライトカットになってるので目の負担は抑えられてます!」

 

 知 っ て る 。あ、でもブルカ(ブルーライトカットの略)は知らなかった。なるほど。

 

「そろそろリベリア軍が展開した武芸者(スレイヤー)部隊と合流できる地点ですが・・・! 止まってください」

 

 そこで初めて俺達は市街地内に入っている事に気が付く。和風な雰囲気があるヤマトには無いような建物が多数建ち並び、煉瓦造りの建物が多く見受けられる。大通りには大量の車が乗り捨てられ、どこかの店のチラシや破れかけた新聞紙が辺りに散っている。

 人の通りは一切なく、まるで元から人はいなかったような錯覚を覚えながらも、エリカ・・・ここからはさん付で呼ぶか。彼女は"ある一点"に注視する。

 そこには、一体のサベージと抗戦している1人の男性武芸者(スレイヤー)と、その周りを囲むように立つ三人の女性武芸者(スレイヤー)達の姿があった。

 エリカさんが注視している中、父さんが覗き見るように彼らの様子を伺っていた。

 

「あれは・・・他の個体よりも一回り大きいな。最初の三体とは別個体か」

「ええ、恐らく」

 

 父さんが冷静に言って、エリカさんが短く返す。するとエリカさんは訝し気に父さんを見ながら訊ねる。

 

「ところで、あなたはなぜそんなに冷静なんですか? 普通一般人がサベージを見たらパニックに陥るものなんですが」

「ああ、そういえば自己紹介が遅れたな。私と女房は"ワルスラーン社の技術部副部長を務めている者"だ」

「はぁ、そうですk・・・って、えぇっ!?」

 

 そうです。俺の両親はまさかのワルスラーン社で割と高めの地位の職業に就いています。技術者と言う職のおかげで金に困る事はほとんどありません(ゲス顔)。俺も聞くまで知らなかった。因みに知ったのは俺が8歳の時。原作知識があっても驚いたのは良い思い出。だって今生での両親が原作に絡むかもしれない可能性が微レ存だもん。期待が膨らむー♪

 そんな俺の記憶とはさておき。父の驚愕の一言でエリカさんが素っ頓狂な声を上げる。まぁそれは当然の反応だな。エリカさん達からしたらリトルガーデンってワルスラーンがあってこそ建造できたものだから。

 

 

「ちなみにリトルガーデンの設計にも一枚噛ませてもらった者でもある」

「あの頃は楽しかったわー♪」

「えぇぇぇぇっ!?」

 

 

 ちょっと待って、それ初耳なんですけど!? エリカさんと俺が揃って驚きの表情を浮かべた。俺はそんな爆弾発言を投下した父さんに詰め寄って問い質す。

 

「父さん母さん待ってそんな話聞いてないんですけど!?」

「なんだ、聞いてなかったのか。その事は話したと思っていたんだが」

「ほら、随分前に私たちが数か月くらい帰ってこなかった時期があったでしょう? あの頃からリトルガーデンの建設に携わっていたのよ」

 

 避難中という状況下を忘れ、両親が揃ってマイペースにそう補足してくる。数か月・・・・・・あ、そういえば、何かの組み立てで忙しいと2人が言って、帰ってくるのは随分後になるとか、そんな話をしていたような。心当たりめっちゃあるじゃん俺! 何でそういう大事なところに出くわさなかったんだ俺は!? もしかしたら原作キャラと絡む機会があったかもしれないじゃん! 馬鹿なのこのままサベージに向かって生身で吶喊してこようか俺!?

 

「えと、その・・・し、知らかったとはいえ、これまでのご無礼を、お、お許しください・・・?」

 

 ホラァッ! エリカさんも申し訳なさそうに頭下げてんじゃん! このまま菓子折り渡してきそうな勢いだよ持ってないけど!

 

「なに、こんな状況だ。保護した家族の素性を知らないのも無理はない。それとそこまで畏まる必要もない。君はいつも通りの姿勢で職務に励んでくれ。その姿を見るだけで私たちも安心する」

「そうねー。あ、でも無理はしないでね。力んで前に出過ぎちゃうと逆に心配になっちゃうから。主に私が」

「えー・・・えと、はい。善処します・・・」

 

 冷静さを通り越してマイペースな両親がエリカさんを優しく諭した。

 なにこの傍から見たら親子のようなやり取りは。緊張感っていうものが全くないんだけど。さっきまでの緊張感はどこ行った。家出か? 緊張感が家出したのか? というか事態に追いついていないせいで俺が完全に蚊帳の外なんすけど。つうかもっと状況見ろや(恕)。サベージが近い距離にいんだぞ。向こうで武芸者(スレイヤー)の方々が奮戦してるんだぞ何でこんな隅っこでほのぼのとした空間を形成しとるんですか緊張感帰ってきやがれいい加減。

 

「とりあえずそこら辺の話は後回しにして。今はここをどう切り抜けるかだよ」

「あ! そ、そうですよね!まずはあそこのサベージをどう避けて行きましょうか!?」

 

 俺の一言で我に帰ったエリカさんが早口で捲し立てる。キョドってるのが目に見えて可笑しい。この人ここまで動揺するような人だったっけ?

 

「まずは向こうの一人と連絡を試みます。あなた方はこの場で待機していてください」

 

 父さんに言って、エリカさんは物陰から飛び出して近くに乗り捨てられた車の影に隠れる。すると彼女はしゃがみこんでヴァリアブルスーツの手首に位置する小型の端末を数度叩き、口元に寄せる。

 

「通信機能か。恐らくあそこでサベージと抗戦している武芸者(スレイヤー)と通信を図っているんだろう」

 

 父さんが俺に解るように説明してくる。悪いけど父さん。それは見ただけで解っちゃったから補足は必要ないです、とは口が裂けても言えない。

 

 

 

 

 

★★★☆☆

 

 

 

 

 

「――こちら、リトルガーデン所属、エリカ・キャンドルです。そちらの部隊の方、応答願います」

 

 アキラ達から少し離れた位置に移動したエリカが通信機を介して、背にした車の向こう側でサベージと戦う武芸者(スレイヤー)に呼びかける。

 サベージと抗戦している中で、その呼びかけに答える者がいた。敵と最も近くで戦っている大柄な体躯の男性武芸者(スレイヤー)が通信に答える。

 

『あー、こちらはベルグリット・レオンハルト。現場の指揮を任されている者だ。今は忙しいんから後にしてくれないかっ、と!!』

 

 ベルグリットと名乗った男性の持つハンドレッドの斧がサベージの鋏と打ち合い、弾き返す。その張り上げた声で彼がどの位置にいるのかを把握したエリカは車の窓越しに向こう側の様子を探りながら答える。

 

「お忙しい中申し訳ありません。ですが、私は現在逃げ遅れた一般人の護衛に回っております。偶々あなた方の近くまで移動してきたもので・・・」

『なるほど。下手に動けばこいつがその一般人に目を向けるかもしれない、て事か』

 

 早々に察したのかベルグリットの張り詰めたような声に、エリカは「お察しの通りです」と返す。

 

「今はまだそこのサベージに見つかっていないようなので、何とかそちらに意識を集中させるか、可能であれば離れた地点への誘導を願いたいのです」

『そりゃ難しいな。アンタがどこから見てるかは知らんが、見ての通りこいつは他の個体よりもデカい。そのせいかパワーも通常のものよりかは強い。気を抜けば一瞬で逝くことになる。そんな奴を遠くへ誘き寄せるってのは、まだ"ひよっこ"のこいつらには荷が重すぎる』

「ひよっこ? 一緒に戦っている武芸者(スレイヤー)はまだ実戦経験が無い、という事ですか?」

 

 通信で答えてくるベルグリットの一言に気付き、確認の言葉を掛けるエリカに返ってきた返事は「ああ」の一言だった。

 よく見れば前衛で戦っているのはベルグリットだけで、他の三人は立ったまま微動だにしていない――さらに目を凝らして見てみれば武装を展開しているが、その三人は強張った表情を浮かべたままガチガチと体を震わせてサベージを凝視しているではないか。あの様子から鑑みるに・・・恐らくは、サベージを前にした時の恐怖心に苛まれているのだろう。あれでは動くどころか思考する事すら放棄していると見ていい。エリカとベルグリットの通信に気が付かないのもそのせいか。

 しかし、恐怖心からくるのか、彼らはベルグリットからやや離れた位置に立っていた。サベージの攻撃圏外にいるおかげか、彼らは未だに傷一つ付いていないようだった。

 棒立ちの三人の武芸者(スレイヤー)の様子を見て見当を付けたエリカに、ベルグリットは自らの斧で次々と繰り出されるサベージの鋏の殴打を受け流しつつ言葉を紡ぐ。

 

『俺はワルスラーン社所属の武芸者(スレイヤー)だ。つい先日こちらに教官として派遣されてきたばかりで、肝心の教導する部隊には実戦経験がないと来た。そんな連中をしごいている日々を送っていると今の状況になった、て訳だ』

「なるほど、ワルスラーン社の方でしたか。・・・待ってください。そんな部隊がどうして出動なさっているのですか? ・・・まさかとは思いますが、彼らの上司からの命令で、ではないですよね?」

『・・・・・・そうだ』

 

 エリカの予想の言葉に肯定するのは他でもないベルグリットだ。彼の重苦しい声色を察して、「無茶苦茶な上司ですね」とエリカがそう零す。

 

『『実戦経験がないなら実戦で埋めればいい』なんて言われてな。俺は反対したんだが、無理矢理押し通されてしまった。だからこうして俺が一人で奮戦してるって訳だよ、っと!』

 

 サベージの鋏を掻い潜りながらすり抜けざまに、敵の脚に強烈な一撃を見舞うベルグリット。その衝撃でサベージは横倒しになり、体勢を立て直そうとジタバタし始めた。あの状態なら、少しの間は余裕を保てるだろう。

 通信しながらも余裕で抗戦を続けているのはひとえに彼がベテランだからだろう。見た限りでは彼に疲労の様子はない。自らの体力とスタミナを考えながら立ち回っている事を鑑みて、確実に彼が経験豊富ということの顕れだ。そんな彼の様子にエリカは感心の表情を浮かべる。

 

『さて。そんなわけで、そちらはどうにかしてこの場から離脱してくれ。できればサベージ(こいつ)に見つからないように、な』

「・・・・・・」

 

 エリカは言い淀む。できれば元来た道を迂回して避難した方がいいのだろうが、先ほどの地点まで戻ると他の個体に遭遇する可能性が非常に高い。

 仮にクレアとリディがまだ抗戦していたとしても、そちらに戻れば二人に防衛してもらいながら抗戦を続ける負担を負わせるだけになってしまう。かと言ってベルグリット達の傍を通るわけにもいかない――ならば、道は自ずと一つしかない。

 ほかの道に迂回せず、且つ誰にも負担を掛けない手段――エリカ自身が、ベルグリットの援護に回るしか道はない。

 

「・・・でしたら、私が一時的にあなたの援護に回ります」

『何? そちらには民間人がいるんだろう! まずはそちらを最優先に避難させるべきだ!』

 

 エリカの突然の提案にはベテランであるベルグリットも度肝を抜かれたのか、取り乱さないように平静を装いつつも通信機の向こうにいる相手に否定の意を示す。当然だ。なぜならその提案は民間人を放置する事を意味しているからだ。

 「そんな提案は受け入れられない」とベルグリットが言い出す前にエリカが続けざまに言葉を紡いでいく。

 

「『一時的に』と言った筈です。私が一瞬だけサベージの身動きを奪います。あなたはその隙を突いてサベージの(コア)を破壊してください。出来れば一撃でサベージのシェルターを(コア)ごと"破砕"できる威力で仕留めていただければ、と」

『マジかよ・・・。確かに"クラッシャー型"である俺ならシェルターごと奴の息の根を止める事も不可能じゃねぇが・・・それでも奴の身動きを封じるなんてことは』

「出来ます。何故なら私のハンドレッドは"アルセーヌ型"ですから」

 

 

 

 ハンドレッドは"百武装"という意味を持つ。その由来は、ヴァリアブルストーンが所持者の意思に呼応して無数の型に姿を変えるからであり、その型は百種類以上にも及ぶことから『ハンドレッド』と名付けられた。

 ベルグリットの持つハンドレッドは、斧や鉄球等の一撃の威力に優れた"クラッシャー"。

 エリカのハンドレッドは敵の動きを封じ込め、エナジーに反応して伸縮したりダメージを与えられる、味方の支援に優れた"アルセーヌ"。

 この様に多種多様な特徴に秀でた型と武芸者(スレイヤー)の組み合わせによって《第二次遭遇(セカンド・アタック)》以降、人類はサベージを効率的に討伐できるようになったのである。

 

 

 

 エリカからの自信のある答えに合点がいったのか、ベルグリットは笑みを零しながら「なるほど」と呟く。

 

『しかし、民間人の方はどうする? いくら一瞬とはいえ、目を離すのは』

「その点ですが、おそらくは大丈夫かと思います。私が護衛する彼らはワルスラーンとも繋がりのある人物なので、後ほど説明すればご理解いただけるかと」

 

 そう言って先ほどアキラ達を置いてきた方向へ顔を向ける。すると、顔を覗かせたアキラの父がこちらの様子を悟ったのか親指を突き立てた。所謂『GOサイン』というやつだ。

 そんな彼の意図を汲み取って、エリカは了承を得た肝を伝える。

 

「OKのようです」

『それなら早速・・・と、奴さんのご起床だ』

 

 通信機から流れる言葉に、エリカは車から顔を覗かせ向こう側を覗き込む。

 そこには、ベルグリットの方へ顔を向けながら無数にある両足でやっと地に足をつけ始めたサベージが起き上がろうとしていた。

 

「早速仕掛けます!」

『はっ!?』

 

 突然すぎて素っ頓狂な声を上げるベルグリットを余所に、ゆっくりと起き上がろうとするサベージの死角からエリカは勢いよく飛び出す。

 エリカの狙いはサベージが起き上がる寸前。自らの脚で立ち上がろうとしているサベージの後ろ足を引っ張ってもう一度転倒させるのが狙いだ。後ろにはアキラ達民間人がいる為、すぐにでも処理しなければならない。敵の意表を突くには今しかない。

 彼女の右手のガントレット――"アルセーヌ型"である《絶対運命の鎖(エヴァーラスティング)》から先端にフックを取り付けたエナジーの鎖が伸び始める。エナジーによって伸ばした鎖がサベージの後ろ足に括りつけられ、それを力の限り引っ張り出す。

 

「倒れなさいっ!」

 

 狙い通り、エリカの放ったエナジーの鎖はサベージの後ろ足をがっちりと掴んだ状態で後方に引っ張られ、その拍子にサベージは前のめりになって再び転倒した。

 意識がベルグリットに集中していたせいもあってか、サベージは成す術もなく倒れ込む。そんなチャンスを見逃さないベルグリットではなかった。

 

「これで終わり、だぁぁぁぁっ!!」

 

 ベルグリットの口から放たれる、生の叫び声――サベージの間近で、渾身の叫びと共に振り下ろされたクラッシャー型の斧は頭部のシェルター―(コア)を保護する膜―を容易に破壊せしめ、そのまま(コア)に叩き付けられた。

 勢いよく振り下ろされた一撃はシェルターを破壊するにとどまらず、(コア)に亀裂を入れ、それが一瞬のうちにして全体に広がり心臓部としての全機能を奪い去るに至る。そして、サベージの全身から発する黄色の模様が失せ、敵は静かに沈黙した。

 

「・・・・・・ふぅぅぅぅぅっ」

 

 斧を振り下ろしたベルグリットは深く吸い込んだ息を吐き出す。深く食い込んだ斧を(コア)から引き抜き、黄色の体液を地面に振り払いつつ肩に担いだ。

 

「・・・これで、仕留めたんだよな?」

「ええ。見事な一撃でした」

 

 不安そうに呟くベルグリットの元へエリカが近づきながら答える。対面するように向き合った二人はそれぞれの得物を下ろしながら敬礼をする。

 

「改めまして。リトルガーデンから出動しました、エリカ・キャンドルです。抗戦中にも拘わらず、通信した事と合図も無しに戦列に加わった事を謝罪します」

「ベルグリット・レオンハルト。ワルスラーン社所属の武芸者(スレイヤー)だ。通信に関してだが問題ない。そのくらいはそつなくこなせる技量はあると自負してるしな。むしろ、味方が縮こまって動けない状況で支援してくれたことには感謝しているくらいだ」

 

 温厚な笑みを浮かべて答えるベルグリットに、エリカは「ありがとうございます」と礼を述べた。

 エリカは建物の陰に隠れた家族に手を振り、避難を再開する合図を送る。

 

 

 

 ★★★★☆

 

 

 

 エリカさんが離れてしばらくはその様子をうかがっていた。と言ってもそれを殆どしていたのは父さんで、俺は影からチラチラと向こうの様子を見る事くらいしかできなかったが。

 

「どうやら終わったみたいだな」

 

 激しい振動と鋼を叩くような甲高い音を聞いていたのは先ほどまでの話で、今はそれらは全て止み、暫く静寂を保っていた時だ。向こうの様子を見ていた父さんが見計らったかのように「移動するぞ」と言い始めた。

 既に抗戦は終わっているらしく、向こうでエリカさんが手を振っている。こちらへ来いと言っているように思え、俺達はそれに従って建物の影から彼女らの元まで歩き出した。

 俺達が傍まで歩み寄ると、エリカさんは唐突に申し訳なさそうな表情を浮かべながら頭を下げた。

 

「お待たせしてすみませんでした。それと、申し訳ありません。待ってろと言った挙句、放置するようなことまでして」

「いや、君があのような行動に出たのは直ぐに理解できた。先の道を逆走するのは危険なうえ、君の仲間に負担を強いる事になってしまう。かと言って此処まで道は一直線だった。他の道はない為、ここであのサベージを倒した方が良いと判断したのだろう。懸命だ」

 

 父さんの半ば推測のような考えは的を射ていたらしく、エリカさんと男性武芸者(スレイヤー)は揃って驚きの表情を浮かべている。どうやら図星だったようだ。・・・ん?

 

「ご理解、ありがとうございます。あ、こちらの片は・・・」

「私はベルグリット・レオンハルトです。所属はワルスラーン社で、現在はリベリア軍の武芸者(スレイヤー)部隊で教官を任されています。どうぞお見知りおきを」

「私は・・・と、アキラ! どこへ行く!」

 

 父さんらが自己紹介している中、俺は黙ってその場を離れた。先ほど倒されたサベージの躯に、武芸者(スレイヤー)の女性が近づいたからだ。

 俺も興味本位で近くまで寄ろうとした――その時だ。女性武芸者(スレイヤー)は、倒れたサベージの右腕の鋏を右足で思い切り踏みつけ始めたのだ。まるで『行き場のない怒りを発散させる』ように、それを思い切り踏みつけ続ける。

 

「クソッ! クソッ!!」

 

 女性の悪態が足蹴と共に放たれていく。そんな時だ。彼女に対して怒声を放つ人物がいた。

 

「おい! 何をやっている!」

 

 父さんと先ほどまで話していた男性武芸者(スレイヤー)だ。彼が自分の獲物である斧型のハンドレッドを担いで女性の元へ近づこうとした。

 俺とすれ違った直後に気付く。この人は『原作キャラ』だという事に。

 

(あー・・・すっかり忘れてた。あの人は確か原作6巻に出てたベテランの)

 

 うっすらとなりつつある原作知識を辛うじて引き出しつつ、俺は不意に躯となったサベージに目を向ける。

 

 

 

 

 

 そこで気付いた。サベージの触覚器官がピクリ、とわずかに動いたことに。

 

 

 

 

 

「ッ!! サベージから離れろ! そいつ、"まだ生きてる"!!!」

 

 俺の叫び声にいち早く反応を示したのはベルグリットさんだ。ほんの少し動揺するも直ぐに持ち直し、一番近くにいた女性武芸者(スレイヤー)に向かって駆けだした。

 更に女性武芸者(スレイヤー)が俺の言葉に気付いてサベージを見ようとした直前、ベルグリットさんがタックルするように女性を突き飛ばした。

 そんなベルグリットさんも自分ごと倒れ込む――直後、女性が立っていた場所に息を吹き返したサベージの右腕が縦に振るわれた。ベルグリットさんもギリで躱し切れたが、黄色の体液を滴らせ続けるサベージは地面を抉った右腕の鋏の先端を地面に突き立て再び立ち上がろうとしていた。案外タフだなあのサベージ。

 

「クソッ! 仕留め損なってたか。坊主! そこから離れろ!」

 

 ベルグリットさんが俺に叫ぶも、その前に俺は動けずにいた。突然の事で脳の処理が追いついていなかったのか、それとも"俺の存在に気付いた"サベージが俺の方へ向き直り、ぎろりとした眼球が俺の姿を完全に捉えたせいか。

 改めてサベージを眼前にした俺の心身を恐怖心が支配し始める。足が震えて動けない。その場から動く事すら出来ずに俺はサベージと正面から見据える。

 

 

 交差する視線。全身から黄色の模様が点滅するサベージの眼球が俺を凝視している。俺もまた同様にだ。互いに凝視し続けている中、サベージは空いた左腕の鋏が、俺を掴まんと伸ばし始めた。




12000字以上の割にはあまり面白くなかったかもです・・・。
次回から面白く書くように努力していくのでお許しください!

ぶっちゃけ早くオリ主にネタ発言を連発させたい(願望)。

それではまた第三話で。

追伸:本文中にミスが見つかりました。オリ主がベテランが原作キャラと気付いた際のセリフです。性格には「4巻」ではなくて「6巻」でした。
申し訳ありません。
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